よしもとばななのレビュー一覧
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乾いてひび割れた地面に、しとしと落ちてしみていく水みたいな。そんな小説だなと思った。
彼女の目線が怖いくらい素直で、目に映る情景が哀しいくらい綺麗で、透明なんだけど、どこか優しくて。話自体はすごく重たい話しなんだけど、重苦しさはなくて。なんだろう…当たり前のようでふだん目にもとめてないような、忘れてしまっていた何かほんとうに大切なものを取り戻していくような、そんな感じがして、「彼女」にとっても読み手のわたしにとっても、これはある部分で癒しの物語なんだなと感じた。
吉本ばななの本は、取り立てて何かあったわけではないけれど、なんとなく気持ちが落ち込んだり不安になった時、気持ちがぐらぐらして心もとない気持ちになった時、ふと読みたくなる。
天気は曇り。なんとなくふわふわしていて落ち着かない心持ちの、空白の時間にぴったりの1冊だった。2020.5.3 -
Posted by ブクログ
死の匂いがしみこんだ人にしかできない、ほんとうの思いやりを私はかぎわけていたのかもしれない。
買ったものの、表紙の絵がなんとなく怖くて読めてなかった。この人がとかげさんかな?
一瞬で読めてしもた、久しぶりに本読んだのに…
とかげもひとかげの後ろに載ってて、だいぶここ変わったなってとことかあってひとかげの表現の方が好きだなあってとこが結構あった。
最初によしもとばななさんのコメント?みたいなので書いてよかったって本人も言ってるけどうんうん!って思う
自分の中の子どもに気づいてる人が読むとちょっと泣きそうになる部分があるかもしれない、私はそうだった… -
Posted by ブクログ
よしもとばななさんの小説を読むの結構久しぶりかも。読みやすいし染みるなぁと改めて思いました。
この本はとくに短めだしわりと平坦というか、大きな事件はあまり起きない内容で、だけど大切な人の死と多少のオカルト的な要素というばななワールドは確かに存在していて、人が死ぬ小説とかオカルト的なものは嫌いという人も多いから好き嫌いは分かれると思うけれど、それだからこそ唯一無二の世界観なのだろうか、と考えたりした。
痛いからこそ傷ついている人に優しいし、登場人物たちも当然完璧ではないから作中でもがいたり苦しんだりしていて、それを読みながら読み手も再生していける感覚があるのだと思う。
幼い頃に両親をなくした姉妹は預けられた先で苦しい思いをしながら育ち、とくに妹のぐり子は思春期に死にかけるほどのどん底を味わったのだけど、大人になった2人を見るとより闇が深そうなのは姉のどん子かもなと思う。
すべて見て感じて落ちる時は落ちる妹と比べて、姉は見えていても感じないように紛らわすような生き方をしている。すべてにおいて、予防線を張っているので、恋愛も多くするわりにいつも最後を見ていて刹那的だ。
最初妹のぐり子は自分には姉という存在が必要だと思っていたけれど、もしかしたら逆なのでは?と気づくくだりにとても頷いた。
経験から受けた対処の仕方はそれぞれだ、と思う。似たような経験をしていても、全く違う風に出てしまう。
どんぐり姉妹という相談サイトを開設して、人からのメールを受けて返信をするという日々。内容はたわいのないものから、重たいものまで様々。
感受性の強いぐり子は読んだメールから影響を受けておかしな夢を見たりもするけれど、これもまた彼女の再生のための大切な要素なのだろうと思う。
よしもとばななさんの小説には「再生」というキーワードが欠かせない。だから優しいのだと、改めて感じた。 -
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よしもとばななは甘くて明るい。上質な砂糖菓子みたいに、甘いんだけど、くどくない。
既読作品でも感じましたが、今作は特にそんなばななカラーを強く感じました。
薄明るいピンク色の世界に、キラキラ輝く金色の粒子が舞ってるような世界でした…。
のっけから不穏なセンテンスで物語は始まって、これは…重いやつや……と覚悟を持って読み進めたら、なんのなんの。失ったある人との記憶や温もりを糧に、軽やかに日々を過ごす主人公の姿が、ただただ眩しい。
大切な人を失った人間は、失うことの悲しみを知る人間は、その分優しく、強くなれる。
そうでありたい。
そうであってほしい。
そんな祈りのようなメッセージを優しく伝えてくれる物語でした。
大人のためのお伽話かもしれないな。
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ネタバレ吉本ばななの紡ぐ世界はいつも優しくて理解のある人たちが溢れていて、ちょっと非日常な状況でも主人公の考えそのものはあまり突拍子のないものじゃなく、ただただ「ああ、そうかもなあ」と思わされる。そして最後に無理矢理じゃなく、それなりの穏やかなエンディングが待っている。そういうところが好きです。下北沢って一度行ったことあるくらいだけど美味しいものがたくさんありそうだなあという印象。そこにキッチン感はある、かも?
ただ、最後本当にちゃんとお母さん、家にいたのかな…?っていうよく分かんない不安が…。
尚、序盤で共感できないお母さんのご意見がありました。
「一日の時間の流れって、夕方になる前にぐうっと長くなって、日が沈むと急に早くなるじゃない?」(p.53)とのことですが、どっちかというと私は逆。夕方が一番時間の流れが早い。この人、ちゃんと主婦としての活動してたのかな?っていうw私だけかな…? -
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ネタバレよしもとばななさん、初めてよみました。
有名な方なのに なんとなく御縁がなかったのか、特に避けていたわけでもなく、食わず嫌いのような感じだった…のかなぁ?不思議。それがいま、こうして触れているのも不思議です。
たまたま、10年くらい前の雑誌のインタビューをみて、そのまま流れるように読んでみました。
自分であること、そこには世界があること、誰のものでもなくて、急かされていなくて、卑屈になることはなくて、大事なものを大事にしていられるしあわせ。
生き方、言葉にならない寂しさ、仕事をするということ、自分とも重なったり違ったり、悩みながら生きている人はどこかしらにひっかかるところがあるのではと感じました。
物語を読んでいるのだけれど、自分の中の自分に会いにいくような感覚。
カオリさんは自分の中にダイブできるのがすごい。自分は浅瀬で潜りかたがわからなくてじたばたしているところでもあるし、ある程度自分も歳を重ねてきて、感じることがあるんだろうなと思いながら読めました。空気感が心地よかったです。文章の感じはクセもあるのでしょうか。他のも読んでみたいと思います。 -
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突然の交通事故で最愛の婚約者を失った女性が、臨死体験から恢復し、周囲から見守られ周囲を見守りながら、「大切なひとを失った自分」を受け入れ、自らの生を肯定していく、というストーリー。
作者お得意の「喪失→再生」もの。ここまで千篇一律に同じテーマを繰り返していること自体に敬服させられる。視点人物がこの世界の輝きと人間のあたたかさを改めて見出していく様子を描く表現はほとんど職人芸的で、掛け値なしで「うまいな」と思わせられる。欠落を抱えた人物どうしが出会い、スピリチュアルなものも含めて交歓を経て、互いが互いをケアしあっている様子をさりげなく描き取っていくさまもさすがの筆づかいである。
問題は、これが東日本大震災の被災者を意識して書かれている、という新しい言葉をどう受け止めるかだろう。作者は何ひとつ新しいことはしていない、というのは簡単だが、「3・11」という出来事は、作者にどんな課題意識をもたらし、どんな種類のモチベーションをもたらしたのか。作者自身の発言とあわせ、慎重に吟味する必要があるのだろう。