よしもとばななのレビュー一覧
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従妹のチエちゃんと暮らす「私」の日々。未婚の母とオーストラリアのヒッピーコロニーのようなところで育ったチエちゃんはちょっと独特な感性をもっている。そんなチエちゃんの言動も以下のような感じですてきなんだけど……
「私はサーフィンをしなくて見ているだけだけれど、見るのは好き。ずっと見ていると少しわかってくる。今日の午後、どんな波が来るのか、ある程度予測はつくんだよね。うんと慣れてくると。でもそこが人というものの弱いところで、サーフィンをする生活が数年続いてルーチンになってくると、いつかの天候、そのときの波と比べるようになってしまうし、波のことがわかったような気になってきてしまうみたい。それでケガして、また反省して、またケガして、を繰り返す人はとても多いよ。同じところをぐるぐる回ってるのには気づかないの。実は違うんだと思うんだ……。毎回違う波だというふうに思えることのほうが、似た波を分類するよりも大事なの。天気の分析は欠かせないものだし、するべきなんだけれど、同じような天気と波があると思ってしまうのはとても傲慢なことで、同じようなものがあるとしたら、それは自分の内面のほうであって、世界のほうではないの。これって、自然はすごいっていう話じゃないよ、全然。自然以外も、全てのことがほんとうはそういうふうに毎回少しずつ違っているのに、広すぎてこわいから、人間はいつでも固定させて、安心しようとするの。知ってることの中に。」(p.126)
……それよりも、42歳で独身でそこそこの仕事にやりがいを感じながら生きている「私」がまた、親さを感じるせいか、いいなと思った。以下のような感じ。
「~前略~ 私に言わせれば、今目の前にある仕事にぴったりと、まるでオーダーメイドの服のように合わせなくてどうするのだろう? という気がした。
先のことを考えて取り越し苦労しないでいれば、そのときにはそのときのチャンスが無駄なくやってくるに決まっているのだ。」(p.122)
ちゃんと上手に世渡りしていけるんだけど、自分らしさの芯はしっかりしているみたいなね。
「私」と恋が始まりかける篠田さんも上質な感じの人だし、勤め先のセレクトショップをやっているおばさんも。「私」の周りにはすてきな人がけっこういて、幸せな気持ちになる小説だった。 -
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随分昔、子どもの頃に読んで印象的だった「とかげ」がリメイクされていたと聞いて手に取りました。
併録されているとかげと読み比べると、うんうん、確かに本筋もところどころの描写もそのまま、仕事への取り組み方、人との関わり合い方、生きる事への姿勢がより深く描写されて「人」が彼らに落とす「影」の部分と、それにより浮かび上がる光がより感じられる物語が繰り広げられているな、と。
ぎゅっと削ぎ落とされた濃密な空気の詰まったとかげ、そこからより一歩深く闇と光が色鮮やかに見えてくるひとかげ、どちらからもよさが手に取るように伝わって心地よくやわらかに胸に落とされる光と影を感じました。 -
Posted by ブクログ
2013年11月24日、京都精華大学創立45周年記念事業として行われたダライ・ラマ法王による講演会二日目に、よしもとばななさんの朗読がありました。先日、この動画をYouTubeで観たのですが「小さないじわる」という言葉と説明にドキッとさせられました。私自身がこの「小さないじわる」に身に覚えがあったからです。小さないじわる、とても的を得ていて自省を促す言葉です。
「小さないじわる」について、ばななさんはもっと詳しく著書に書いてないだろうか?と探し当てたのが本書です。結果的に本書は、あくまで講演録だったのですが、この「小さないじわる」を自制するためのアイテムとして、有効に活用していこうと思います。私が無意識にやっていた行為に、「小さないじわる」と言う名前を付けて、明確化してくれたばななさんに感謝です。 -
Posted by ブクログ
自分が親から貰った愛情を
きちんと受け取りなおすこと
自分を客観視すること
そんな通過儀礼を、
この一冊通じて体験したような気がした
自分が決めた愛のイデアみたいな像があって
それに当てはまらないものは
見て見ぬ振りをしてきていた
ほんとうはこの世の中は
愛でいっぱい溢れているのに
悲しい思い出がなければ、幸せになれる訳じゃない
受ける歯車と渡す歯車がかみ合わないだけで
人ってこんなに孤独になってしまうものなんだなぁ
未来に心奪われるのは過去に捕らわれるのと一緒
ただ、今ここの、特別でも何でもない
一つ一つの手の動き、話す言葉、噛み締める味わいが
人生を形作って乗り越えさせてくれる
毎日をしっかり生きる、っていうのはつまり、今の自分の動きにどっしりと集中することなんだなと最近になってよく思う
よしもとばななと同じ時代に生きられて良かった
長生きしてほしいなと身勝手に願う
職業として小説家の体を取っているけど、彼女こそ現代のよい魔女なのかもなぁと思う