相沢沙呼のレビュー一覧

  • ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎

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    私の好きな作家さん4人の短編集。初めて本格的な大人のミステリーに触れるのにぴったりです。怪盗レッドの秋木真さんがこのメンバーに入ってるの、児童文学読みにはニヤリとさせられます。4人(4作品)なのは、作品順にホワイダニット、フーダニット、ハウダニット、そして叙述トリックをテーマにそれぞれ書かれているから。作品の表紙に気をつけて読むべきポイントなども示唆してあり、本当にミステリー入門書を意識したつくりになってます。内容は小学生でも大丈夫だけど、やはり殺人など出てくるし、装丁が大人向けなので、中学校以上向け。

    「ヤンキー、ミステリと出会う」青柳碧人
    WIND BREAKER な感じのヤンキー高校(明るいケンカ)集合地帯で、1人の不良くん、法蓮虎矢が、個性的なミステリ好き女子高生三田村かなでと知り合う。そして町で裕福な反谷ソース社長が狙われる事件へ挑む。なぜ法則性を持って人を襲うのか?
    「将棋部、無実を証明せよ」秋木真
    将棋部の2人が犯人だと思われるような状況で油絵紛失事件が起こる。その直前に起きた写真ばらまき事件と、極少ない関係者たち。果たして犯人は誰か。
    「屋上の雪融け」相沢沙呼
    これは、めちゃくちゃ続きっぽいキャラクター達の話で、いや?でもこんな話なかったよな、と思って調べたら、劇のキャラクターなんですね。豪華声優陣による口上劇みたいなヤツ。本じゃなかったからスルーしちゃったけど、見に行けば良かった~……はおいといて。屋上から飛び下りた人は状況から明らかに自殺。でも、絶対に自殺じゃないと言う親友のために、藍莉はその職業に納得していない、名探偵の助手なんかをやってる兄、斗真摂理や探偵の暁玄十朗に相談するのだが、芳しい返事はない。しかし、兄が現場検証に同行してくれる。やはり、犯人の影がない現場なのだ。どうやって殺せるのか?
    「学生時代の母の原稿」似鳥鶏
    いきなりファンタジー小説が始まり、いつまでこれ続くんだろう?と思って読んでいたらいつの間にか話に引き込まれてと思ったら、謎解き始まります。

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    2025年10月27日
  • ココロ・ファインダ

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    ミラ子、カオル、シズ、秋穂それぞれの話になってて面白かった。読みやすくてあっという間に読み終わった!
    みんな他人からは見えない悩みやコンプレックスを抱えていて、でも写真部同士で支え合っている関係がバランス良くていいなぁと思った。
    完璧な人はいないんだと思わされた。

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    2025年10月23日
  • ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎

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    全員作品を読んだことがあったので、それぞれの良さなどを改めて感じながらそれぞれの章ごとのコンセプトを楽しめた。

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    2025年10月21日
  • ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎

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    who,how,whyダニット、叙述トリックを集めた初心者向けミステリアンソロ。日常系が3/4。お気に入りは、盗まれた絵を探す秋木真「将棋部、無実を証明せよ」。将棋部メン好き。青柳碧人「ヤンキー、ミステリと出会う」からミステリ全般に興味持ってくれたら嬉しいね。相沢沙呼「屋上の雪解け」は、幻視探偵暁玄十郎と摂理と藍莉が元気に活躍する短編。暁玄十郎の幻視が炸裂‼︎……するのではなく、藍莉と摂理のW助手によるハウダニット。3人の活躍もっといっぱい読みたいです。

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    2025年10月19日
  • ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎

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    最後の似鳥鶏先生のトリックには
    全く気づかなかった。
    ここまで何も気づかないで仕掛けられる先生には
    すごい以外の言葉が見つからず
    自分の語彙力の無さに苛立ちすら覚える。

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    2025年08月28日
  • ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎

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    おそらくは新たな読者を発掘しようとする思惑で出版されたアンソロジー。ミステリーの基本である、ホワイダニット、フーダニット、ハウダニット、そして叙述トリックの4種類の短編が収録されています。どの作品もテーマに則って直球な話になっていますが、似鳥先生は変化球すぎませんか?あと似鳥調のあとがきがないのに、物足りなさを感じてしまう。

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    2025年08月05日
  • ブラックボックス、誰が解く? 君に綴る4つの謎

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    サクッと読み終えられた。
    それぞれ異なる話で冗長ではないので気軽に読めてよかった。
    個人的には『屋上の雪融け』の続きが気になる。

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    2025年08月02日
  • 雨の降る日は学校に行かない

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    女子中学生の校内カーストで下位に位置付けられてしまう生徒の胸の内が語られていて辛い。
    もし自分がその立場であったらどう打開していくのだろう。
    作品の中それぞれのエピソードの結末はあるのだがハッピーエンドではない。
    その結末の後も彼女らの苦しみと戦いは続いていくはず。
    この作品を読み終えてもそれだけでは現実問題に解決の道があるという光明はない。
    何故ならカースト上位の彼女達が作り出す陰湿な現実を誤魔化しなく描いているだけで救いの手をのべてはいないから。
    ただひとつ、苦しんでいるカースト下位の彼女達がこの作品を読めば自分だけが辛いのではないと思い至るきっかけにはなる。
    それは解決にはならないが彼女達のひとつの心の拠り所になるかもしれない。

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    2025年07月31日
  • 彼女。

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    またしても斜線堂有紀だ。
    今回は『百合である値打ちもない』で殴ってくる。
    確かに「釣り合いが取れているかどうか」って無視できない。
    だけど圧倒的なビジュアルの差はそう簡単には埋められない。
    多分これ、男女だったらスルーされてる部分だと思うんだよなあ。
    恋愛は二人でできるのに、その関係は社会的に認められないといけない。
    だから「絶対に認めさせる」という二人の覚悟と言動に思いがけず涙が出た。
    他にも面白い作品があったはずなんだけど、もう全部吹っ飛んでしまった。

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    2025年06月17日
  • マツリカ・マハリタ

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    話が難しかった!!
    主人公の柴山が新しい居場所を見つけて変わっていく
    マツリカさんが妖艶でどきどきした2作目から読んだので1作目もよみたい

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    2025年06月10日
  • 雨の降る日は学校に行かない

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    中学校生活に上手く馴染めない生徒たちの話。
    いじめ、疎外感、ノリの合わなさ等各々悩みの大小はあれど、決して良い人生を歩んでいない。
    普通でないことの怖さと自由さを同時に運んでくる。ただ一つ言えるのは学校という檻に閉じ込められる期間は有限で、未来は分からないということだ。
    「耐えることだけが美徳じゃないこと」「他人の価値観が絶対じゃないこと」
    学校だけじゃなく、社会を生きる我々にも大事な要素だと思う。

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    2025年06月01日
  • 教室に並んだ背表紙

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    ネタバレ

    ここまでではないけれど、中学生の頃自分も同じ目にあっていたので、気持ちがわかります。
    特に最後の彼女の話が読んでいて1番つらかったです。
    声を上げるということが大事と言っても、勇気と何かいろいろなぐちゃぐちゃになって固まった感情が、それを妨げるし。

    こういうひとが近くにいて、ちゃんと実行してくれる大人がいる環境をもっと整えてほしいと感じました。

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    2025年05月19日
  • 小説の神様

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    色々問題は解決しなかったような気がするけど、小説を読みながら小説を書く人の葛藤を読むなんて面白い体験だった
    苦しい描写が多い
    書いた作品は残り続けるってそれだけで幸せだな
    人それぞれに物語はあるって
    そうなんだけど、自分は何も残せてないな
    だから残せる人はいいなと思ってしまう
    もう一度読みたくなる本

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    2025年05月15日
  • 雨の降る日は学校に行かない

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    学校生活でこういうことあるあるだったなあと感じながらサクッと読める。最初はモヤっとするものの、最後希望が見えそうな終わり方、しかし全ては書かないのがすてき。

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    2025年04月25日
  • 彼女。

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    ネタバレ

    レズに焦点を当てた話だった。

    話によって当たり外れがあるけど、あたりの素晴らしさで⭐️4にしました〜

    前半は面白くない、後半が面白い
    あと、後半になるにつれ内容が過激に…笑
    私はエロがないと楽しめないのかもしれない笑

    あとは、有名作家さんの方が今回はハズレが多かった気がする。
    特異性を狙いすぎるからかな?

    全体として、やっぱり登場人物が毎回美人。
    百合であるためには美人であることが必須なのか。

    ◯当たり
    斜線堂有紀「百合である値打ちもない」
    相沢沙呼「微笑の対価」

    ◯ 斜線堂有紀「百合である値打ちもない」
    面白かった、本当に面白かった〜
    他の話と違って純恋愛に偏っているし、
    エッチとかリアルなのも描かれてるし、
    乃枝の性格も顔も全て完璧すぎるのに、最後のリアルな声が良かった。
    しかもリアルな声なのにもし私が言われたら全く嫌な気がしなくて、乃枝ちゃん素敵すぎる。♡
    カップル兼配信者としてのビジュアル格差と整形とかどう頑張ってもハッピーエンドにならないだろうと思ってたのにこんなに100点満点のハッピーエンドあるんだ〜

    とっても面白かった〜

    ◯ 相沢沙呼「微笑の対価」
    殺人事件と掛け合わされていた。
    ストーリーは男と女じゃなければかなりあるあるなのかもしれない。
    紫乃が冒頭から不器用でうまく生きていけない女の子のイメージだったのに、警察が訪問してきたあたりから急にえ、そんな一面あったの!?と印象がガラッと変わる。
    だんだん不信感が強まってきて、本当は悪い女だったんだろうなと思ったけどなんとかハッピーエンドに持っていけた印象。
    女性がめちゃめちゃ魔性な話が私のお好みなのかも笑

    でも、お母さんの不審死、謎の占い師、これ以上夜の仕事を続けないでと行った後から冷たくなった態度
    の謎は解かれぬまま…

    この話単体のクオリティはそんなに高くないのかもしれない。

    個人的には好きでした!

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    2025年02月16日
  • マツリカ・マジョルカ

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    ミステリ要素はあるがメインは高校生の感情を追う青春小説。連作短編としての大きな仕掛けも気持ちよく、それぞれの短編も感情の動きがしっかりと想像できるような流れがあり、非常に読みやすい。
    マツリカのミステリアスな状況を不思議と思わせない高校生男子目線の描写も効果的で微笑ましかった。
    続編も読みたくなる良作でした。

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    2025年01月31日
  • 彼女。

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    女たちのクソデカ感情のぶつかり合い、色んな百合が詰まっててとても良かった。学校生活の百合から大人の結構歪んだ百合まで。
    馬鹿者の恋と百合である値打ちもないが特に好きだったかな。
    有名だけどほとんど読んだことがない方々のアンソロだったので、興味持った著者の本読んでみようと思う。

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    2025年01月30日
  • invert 城塚翡翠倒叙集

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    ネタバレ

     第20回本格ミステリ大賞受賞等、様々なミステリランキングで1位を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の続編。目次に、「この作品は、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の結末に触れています。未読の方はご注意ください。」とあるように、前作のネタバレが含まれる。
     そのそも、前作である『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、一見、霊能力者である城塚翡翠が霊能力で見つけ出した犯人を、探偵役の香月史郎が論理的に謎を解き明かす…という構造をして、実は香月史郎が真犯人の殺人鬼でした!というオチのミステリと見せかけ、さらにその裏に、実は、城塚翡翠は霊能力者でなく、より早く、より論理的に事件を解決し、霊能力者のフリをして香月史郎を騙し、香月史郎の正体を見破ったというミステリだった。霊能力者である美少女、城塚翡翠のキャラクターが反転する最終「 VSエリミネーター」には驚愕したものである。
     今作は、城塚翡翠があざとい探偵であることを前提としつつ、倒叙ミステリとして犯人側の視点から犯罪が描かれ、犯人のミスを城塚翡翠が暴いていく。
     倒叙ミステリとしてはオーソドックスでありつつ、古畑任三郎のパロディめいた部分もあり、作者の遊び心が伺われる。倒叙ミステリで肝心な部分は、一見、犯人が完全犯罪を成し遂げたと見せかけ、思わぬほころびから決定的な証拠を見つけられ、犯人が敗れるという展開となることである。犯人の犯罪が杜撰なものであったり、探偵からの指摘にいくらでも言い逃れできそうなのに、犯人があっさり諦めるのも興ざめ。探偵対犯人という構造を簡単に作れるため、サスペンスフルで読んでいるときは面白く感じる作品が多い一方で、最後まで読んでがっかりすることも多いジャンルでもある。
     1作品ずつ掘り下げた上で、最後に感想を述べる。
    ● 雲上の晴れ間
     システムエンジニアの狛木繁人が、自身が勤務する会社の社長・吉田直政を殺害する。柏木と吉田は中学校時代の同級生でもあり、柏木は吉田に負い目を感じていることもあって、吉田に利用されていた。犯行があった時間。急遽発生したバグの調査を会社で行っていたというアリバイ工作をする。
     柏木の隣家に、城塚翡翠が引っ越してきて、翡翠は柏木に接近しつつ、犯行の証拠を探る。
     invertの1作目で、倒叙作品としての形が示される。犯人の身近な人物として翡翠が犯人と接する中で、犯人のミスを誘うというもの。翡翠の仕掛け、犯人のミスは以下のとおり
     翡翠曰く、稚拙な犯罪のくせに、幸運に恵まれ、指紋やDNAなどの証拠を残さず、たまたま監視カメラや人の目にも留まっていない犯行とのこと
     犯人のミスは以下のとおり
    ・浴室の位置を知っていることがバレる。
    ・「水が流れる音」を「水が注がれる音」と言ってしまう。
    ・(会社内と見せかけるために)ホワイトボードを動かしたことが見破られる。
    ・ペットボトル(炭酸水)にキャップが開けられていた。
    ・被害者の眼鏡のレンズに不自然に掌紋の跡が残っていた。
    ・被害者のPCのデスクの指紋がふき取られ、誰かが利用したように見える。
    ・煎じ薬が黒いと知っていることがバレた。
    ・コンロの火を消してしまった。
    ・キャップが空いていたのに指紋がないペットボトル。犯行現場に第三者がいた。
     そして、この作品のポイントとなる部分。柏木はどのようにしてアリバイを確保したのか。また、デスクに残っていたCが示す物証とは何か。
     柏木のアリバイ工作。吉田のデスクを利用し、会社にいるように通信相手に見せかけた。バグは自分で用意したミス。あらかじめ修正したものを用意しておき、23時まで吉田のマンションにいて、1時間かけて会社に戻り、会社で修正した。
     デスクのCは、ノートパソコンの底のゴムの滑り止め。この部分に漢方薬の成分が残っていた(物証)。
     エピローグ。千和崎真は、翡翠がノートパソコンの底のゴムに物証を偽造したのではないかと疑う。もしかすると、翡翠には本当は霊能力があるのか。翡翠の闘い方はつらくなのか…。
     城塚翡翠という人間の存在そのものを一変させるという大がかりな仕掛けを施したmediumから、倒叙モノに切り替えるその最初の一編として、オーソドックスな倒叙モノに仕上がっている。アリバイトリックは、いわば、自らトロイの木馬を仕掛けておくという、「すべてがFになる」に通じるようなトリック。これはむしろ、ありがちと感じる。犯人が犯行を認めるノートPCの底のゴムの滑り止めの件は、エピローグで千和崎真の口からも語られるとおり、これが本当に決定的な証拠になり得るか、リアリティにはやや欠ける。もっとも、倒叙モノとして、しっかりとした物理的な証拠があるものは少ないので、十分及第点である。
    【印象に残る一文】
     プログラムは思ったとおりに動かない、書いたとおりに動く。
     殺人鬼と恋愛ごっこをすることでスリルと快感を得る変態ドS探偵
    ● 泡沫の審判
     卑劣な盗撮犯、田草明夫を、脅迫されていた女性教師末崎絵里が、3階からの転落死という事故に見せかけて殺害する。
     警察の初動捜査では、「小学校への不法侵入を試みた人間が、校舎の三階から転落した事故」と思われたが、城塚翡翠は、田草が灯りを持っていないにもかかわらず、軍手をするという灯りとなるスマホを操作できない状態で死んでいたことから、殺人事件だと考える。殺人事件があったとすれば、当日残っていた教職員のうち、3階に教室がある2年生の末崎絵里が犯人だと考え、スクールカウンセラーの「白井奈々子」として小学校に潜入する。
     田草明夫が盗撮のために小学校に忍び込んでいたことが分かり、小学校を取り巻く状況は一変し、教師はより過酷な状況に追い込まれてしまう。
     城塚翡翠は、スクールカウンセラーの「白井奈々子」として、末崎絵里と面談し「霊感がある。」と偽って犯人だと疑っていると示唆したり、話しかけるなどして苛立たせ、犯行を裏付ける証拠を固めていく。
     教師が残っている時間帯であれば、教師にさえ会わなければ盗撮したカメラの映像の回収は容易であるにもかかわらず、教師が帰ってから侵入し、防犯システムに引っかかったという点がそもそも不自然。末崎絵里が、盗撮のカメラが仕掛けられていた3階のトイレを使わなくなっていること、末崎絵里と一緒に犯行当日、残っていた古茂田という教師が、田草が忍び込んだ理科室の窓の鍵を20時に占めていたという証言、20時に競馬新聞を買った田草が、1時間48分の時間を過ごしてから、21時48分に不法侵入を試みたのは不自然。むしろだけかと待ち合わせをしていたと感がる方が自然といったことから、末崎絵里の犯行を裏付ける外掘りを埋めるが、起訴に至る決定的な証拠が見つからない。
     白井奈々子(城塚翡翠)は、取引現場にカメラが仕掛けられていたいう嘘で罠にはめ、末崎絵里を更に追い詰めるが、決め手とはならない。
     城塚翡翠と千和崎真の会話の場面が描かれ、「メレンゲが甘すぎるのは、味を整えるのが目的ではなく、泡を安定させるため、」というヒントから、城塚翡翠は事件の決定的な決め手となる「砂糖の入ったシャボン玉液」の存在に気付く。
     解決編では、城塚翡翠は、対峙する末崎絵里に、まず、田草の死が殺人事件だと考える理由として軍手の存在があることを伝える。
     次にトリックを暴く。このトリックは、ハムスターのタンジが脱走し、防犯システムに引っかかったというもの。21時48分に、タンジが防犯システムに引っかかったことと、田草の死をむすび付け、末崎絵里はアリバイを偽装するだけでなく、田草の死が不法侵入の末に事故死したのだという印象を強固にしようとしたと指摘
     決めてとなる砂糖の入ったシャボン液。二年になってから転校してきたという小池大地が、1年生の9月に行われた末崎絵里のシャボン玉のことを知っていたことが伏線となる。小池大地は、放課後、こっそりシャボン玉で遊び、シャボン液をこぼしていた。田草明夫は、そのシャボン液を踏んでいた。教室に入ったはずのない田草明夫の足から、シャボン液の成分が検出されたこと。これが決め手となる証拠となった。
     城塚翡翠は、「自分が正しいと思えば人を殺してよいと生徒に言えるか。正しいと思ってころしたという殺人鬼には、大切な人を殺されても仕方がないと言えるか。」と末崎絵里を追い詰め、自首させる。
     小学校教師のブラックな実態や犯行の動機から、犯人である末崎絵里に同情の余地があり、非常に読後感の悪い作品。一方で、倒叙ミステリとしては読み応えがある。殺人事件であり、末崎絵里が犯人だと断定するロジック、そして、犯行を認めさせる証拠。犯人の明確なミスというより、不運の部分もあるが、倒叙ミステリとしての納得度は高い。傑作といっていい1編だと思う。
    【印象に残ったセリフ・描写】
     「シャボン玉が弾けるみたいに、呆気なく、命は抜け落ちる。」 
    →殺人の場面での何気ない描写だが、この事件の決定的な証拠である「砂糖の入ったシャボン液」を示唆している。
     「…それとも金色の自転車で来た方がよかったです?」
    →古畑任三郎を連想させるセリフ
    ● 信用ならない目撃者
     冒頭で、政治家に対し恩を売る探偵としての姿が描かれる。
     雲野泰典による曽根本の殺害。ビルの3階のベランダに目撃者らしい人物がいたように感じたが、万が一目撃されたとしても、まさか殺人をしているとは考えず、通報もされないと考え、偽装工作をする。最後に、カーテンを閉めるために、干されてる状態から床に置き、血がついてしまった靴下を現場から持ち去る。
     涼見梓は、向いのマンションに拳銃を持った強盗がいたという目撃情報を母親に電話していた。
     警察の岩地道と蛯名が城塚翡翠のふりをした千和崎真と会う。「はわわ」ではなく「あわわ」と言っているのは伏線。「城塚翡翠」と名乗り、目撃者がいたことを告げる。
     シーンが変わり、千和崎真と城塚翡翠の会話。これは叙述トリック。雲野泰典に会ったのは城塚翡翠のふりをした千和崎真だったが、城塚翡翠が会っていたかのように読める書き方をしている。このとき、雲野泰典が目撃者に接触するかどうかを賭ける。
     雲野泰典は、涼見梓の家を訪れる。対応したのは涼見梓のふりをした城塚翡翠。次の場面で、涼見梓から城塚翡翠に電話があるというシーンがあるが、これも叙述トリックで、まるで、雲野泰典の訪問を受けて、涼見梓が証言を変えたように見える。
     雲野泰典と城塚翡翠のふりをした千和崎真の対決シーン。わざと警察にバレるように備考をさせたり、下手なコールドリーディングをする。靴下についてのやり取り等をするが、決め手に欠ける。ここでは、雲野泰典が、このやり取りに勝利したかのような描写がされている。
     以下、特別な注意がない限り、城塚翡翠のふりをした千和崎真を翡翠、涼見梓のふりをした城塚翡翠を涼見とする。
     雲野泰典と、涼見が食事をしている場面で、翡翠が現れる。スマートウォッチの脈拍と、靴下の話をする。このやり取りの後、運野泰典が圧力をかけ、尾行や監視が中断する。実際は、これまではわざと下手な尾行をし、これより後は慎重に尾行・監視がされていた。城塚翡翠と千和崎真がマジックショーに行き(このショーが、バー「サンドリヨン」で、演者が西乃初のように見えるのも粋な演出)、時計のやり取りからヒントを得て、解決編に結び付く。
     城塚翡翠からチケットをもらったという形で、雲野泰典と涼見はマジックショーに行く。そこで、マジックのショーの演目を利用し、涼見が記憶を取り戻す可能性があると、雲野泰典に感じさせる。
     涼見梓のマンションに、雲野泰典と涼見が訪れる。涼見は、事件の夜を再現し、目撃した犯人の顔を思い出したふりをする。そこに、翡翠が登場。涼見との間で一芝居をうち、雲野泰典から時計を奪う。犯行時もしていた時計には犯行の痕跡があるはず。雲野泰典は、時計から証拠が出ようが出まいが、家宅捜索をされれば失脚すると考え、城塚を撃ち、涼見も撃つ。しかし、実際は城塚翡翠の手で弾は抜かれておっり、涼見は、「んふっ、ふふふっ、ふふふふっ」と笑い出し、自分こそが城塚翡翠えあると告げる。
     警察が踏み込む。城塚翡翠は雲野泰典を犯人だと確信した、「秘密の暴露」に当たる発言を告げる。それは、「拳銃を手にした不審人物」の目撃情報を聞いたとき、「それは拳銃を手にし躊躇っていた曽根本自身だった可能性は否定できないのでは?」と言った点。通常であれば、不審者が夜道などを歩いているところを目撃したと思うはずである。ここから、城塚翡翠は、雲野泰典が犯人だと確信した。
     雲野泰典が目撃者の自宅を知っていたことを明らかにしたのも失敗。犯人しか知り得ない情報であり、そもそも警察は目撃者がいたことすら知らなかった。城塚翡翠は、目撃者の目を隠すために洗濯物を外してカーテンを閉め、戻そうとしたが血が気が付い靴下を持ち去ったことから、目撃者がいると考えた。しらみつぶしに探し、涼見梓を探し当て、涼見梓になりすましていたのだった。
     自殺でなく、殺人であるとすれば、これだけの偽装ができる人物は限られる。現象を成立させることができる人間が限られているというロジックから、城塚翡翠は、当初から雲野泰典を疑っていた。
     亡き妻への思いを口にする雲野泰典に、城塚翡翠は、「人間は、死に取り憑かれるものです。そこから再び歩みを進めることは、一人きりでは、とても難しい。」と告げる。
     千和崎真と城塚翡翠のやり取りがエピローグ。今回の事件は、城塚翡翠が生理でダウンしていたから、千和崎真が初動捜査を代わって行った。警察にも雲野泰典を快く思わない者は多く、自殺でも他殺でもどうにか逮捕するという方針。城塚翡翠としては、靴下が持ち去られている可能性から目撃者を探し出し、その証言から他殺を確信。偽装工作ができる人物として、雲野泰典を犯人と目して捜査に当たった。
     城塚翡翠は千和崎真まで騙すことで、雲野泰典を騙し、自分を撃たせて犯行を暴いた。千和崎真はどこまでが計算か、どこまでが本性か、城塚翡翠をつかみきれない。いったいどれが本当の城塚翡翠だろう。全てが幻…といった作品。地の文で、城塚翡翠、涼見梓と描写されている人物が、それぞれ、千和崎真、城塚翡翠である部分もあり、ややアンフェアに感じる。読者を驚かす作品を書こうとする現れのように思う。そうすると、作中で城塚翡翠に語らせている、一般の推理小説読者批判も、かえってこの真相から目を背けさせるトリックのようにすら思える。
     城塚翡翠が千和崎真だったことはともかく、涼見梓が城塚翡翠だった点は、驚くというより混乱してしまった。分かってから読めば後につながる伏線もあるが、理解するまでちょっと間を要してしまい、その分、驚きより困惑があったのは残念。もっとミステリに慣れていない時期に読んでいれば、間違いなくほれ込んでいた作品。構想も描写も上手いと思う。★4かな。
    【印象に残ったセリフ・描写】
     真ちゃんの方こそ、ブラックで飲めないと子どもなんて、まさしく子どもの論理じゃないですか。
     推理小説は、推理を楽しむより、驚くことが目的となって読まれているじゃないでしょうか。
     城塚翡翠のふりをした千和崎真が「サンドリヨン」を注文するところは、「午前零時のサンドリヨン」を思い起こさせる。
     あの変態殺人シスコンクソ野郎は人間の心を持っていないので、まったく尻尾をつかめずに苦労しましたが…。あなたはごく普通の犯罪者です。人間の心を持っている。
    【気になった点】
     第三者視点の地の文章で、千和崎真のことを、「翡翠」と書いたり、涼見梓のふりをしている城塚翡翠を「涼見」と書いている場面があり、若干アンフェアに感じる。
    ● トータルの感想
     3編を通しての仕掛けはなく、独立した倒叙ミステリとして楽しめる。倒叙ミステリは難しいが、少なくとも東川篤哉の「魔法使い」シリーズよりは完成度が高い。大倉崇裕の「福家警部補」シリーズにも当たりはずれがある。石持浅海の碓氷優佳のシリーズは良作ぞろいと思っており、それに匹敵する完成度だと思う。
     キャラクターとしての城塚翡翠をそこまで好きになれないのが難点。碓氷優佳もそこまで好きではなく、この点も共通している。倒叙ミステリとしての完成度の高さと、特に「信用ならない目撃者」の読者を驚かせようとする姿勢を評価し、★4で。

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    2026年06月21日
  • マツリカ・マハリタ

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     自己肯定感が低い主人公が、クラスメートや写真部から聞かされた不可解な出来事を調べていくうちに、マツリカさんの正体に迫っていくことになる青春ミステリーで、個人的にはミステリーの要素よりも「他人と関わることで、自分も変われるはず」という部分が特に刺さった。

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    2024年11月16日
  • マツリカ・マトリョシカ

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    シリーズ1作目、2作目と、作家と共に主人公の男子生徒の成長も感じられる作品。
    女王様気質のツンデレなヒロインと思春期男子の妄想シーンに頼り気味だった作者に、ネガティブ思考の固まりだった主人公。
    それが今作では主人公には信頼できる仲間も増え、ウジウジしたシーンは大幅に減りました。作品としても、ミステリ、青春、思春期男子などのバランスが絶妙になりました。特にヒロインの出番が少なくなったのは、妄想シーンの描写が落ち着いただけにとどまらず、本当に追い詰められた時に颯爽と現れる探偵(ヒーロー)のような印象に好転しました。
    そしてそれには、一定以上のミステリとしてのレベルがあってこそです。
    思春期の妄想シーンなどを完全に受け付けないという方以外は、おすすめな一冊です。

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    2024年10月18日