相沢沙呼のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
女子高生マジシャン酉野初とその同級生須川君が高校の様々な謎に挑む、『午前零時のサンドリヨン』の続編となる連作ミステリ。
前作ラストで須川君も成長したのかな、と思っていましたが、相変わらずですね(苦笑)。ヘタレで臆病ですが、でも変わらずに誠実で優しいです。
そんな須川君の語りは相変わらず面白い。自虐的な言葉や特に2話目の「ひとりよがりのデリュージョン」の彼の受難っぷりは申し訳ないながらもとても笑えます。
各話のミステリのロジックも面白いですが、この作品の読みどころはその動機だと思います。
楽しいカラオケに行くはずが突然帰ってしまった同級生、入れ替わった封筒の中身の謎、教壇に集められたバレンタインチョコの謎
それぞれの裏にあるのは、青春時代の甘さであったり苦さであったり、人への微妙な気遣いや人間関係、カーストであったり。
そうしたものが不可思議な謎としっかりと結びついているのがやっぱりすごいな、と思います。
そして連作としての仕掛けも見逃せません。読み終えるとある登場人物の振る舞いの裏にどんな思いがあったのか、ついつい考えてしまいます。
謎を解いていく初も須川君も臆病で傷つくことを、傷つけることを恐れながらも、それでも謎の裏にある時に残酷な事実を明らかにします。
その行動の根底にあるのは、何とかなるかもしれない、奇蹟は起こせるかもしれない、魔法はあるかもしれないという希望を、そしてその魔法を人のために使いたい、という優しさが二人は持っているからだと思います。
臆病な二人が傷つき悩みながらも魔法を信じ行動し続けるからこそ、このミステリには単なるミステリを越えた”何か”が詰まっているように感じます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作で明かされた衝撃的な真相を踏襲しているため、本作では「特殊設定ミステリ」としての仕掛けは必然的に鳴りを潜めます。
つまり、「霊媒」という能力なんてものはなく、実際には鋭い洞察力と論理的な推理力だけで事件を解決に導いている——その前提が明かされたうえで展開される本作は、前作以上に純度の高い倒叙ミステリへと進化を遂げているのです。
収録されている短編群は、まさに『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』を彷彿とさせる、王道の倒叙ミステリのスタイルです。
冒頭で犯人による殺人シーンが描かれ、完璧に思える完全犯罪の計画が示されます。
しかし、どれほど緻密な策を弄しても、わずかな綻びは必ず生じているのです。
そこを手繰り寄せ、静かに、そして確実に犯人を追い詰めていくプロセスには、倒叙ミステリの醍醐味が凝縮されていると言えるでしょう。
特に圧巻なのは最終話です。
倒叙形式の枠組みを保ちつつ、大胆な叙述トリックを織り交ぜてくる構成の妙には舌を巻きます。
また、作中で主人公がミステリ論を語る場面からは、著者自身の倒叙ミステリに対する並々ならぬ矜持と愛が垣間見え、ミステリファンとしても非常に興味深く読まされました。
一点だけ、個人的に残念だったのは、前作に比べて主人公のキャラクター造形がやや過剰に感じられた点です。
魅力的な人物であることには変わりないものの、盛り込みすぎた演出によって少し軽薄な印象を受けてしまいました。
とはいえ、作品全体の完成度が極めて高いことには変わりありません。
個人的には、現代倒叙ミステリの最高峰と言っても過言ではない傑作だと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ霊媒師と推理作家のバディもの。霊媒で犯行の状況はわかるけども、非科学的なので証拠として使えない。それを補うために、推理作家が持ち前の論理で証拠を集めて犯人に辿り着く…というストーリー。
結論を書くと、とても楽しめた。
最終章の後半から、展開が一気にひっくり返る。
女性キャラ、特に主人公翡翠の外見の描写、過剰ともいえる女性的な振る舞い、香月に対する歯の浮くようなセリフなど…読んでいてくどいとすら感じたが、いわゆる「才色兼備、だけど天然なお嬢様探偵」というテンプレートなのだろう…と思っていた。
それらの描写も、最終章に至るまでの伏線だったとは全く思わず…予想外の展開にただ驚くばかりだった。さながら、苦労して解いた数学の問題を、目の前でいとも簡単に別解を導かれていくのを見せられているような感覚だった。
ただ、最終章。
犯人に対しての口調が気になった。勝ち誇るというより嘲る、煽っている感じで、どうにも好きになれなかった。小馬鹿にするような口調や、謎を解くまでに掛かったほんの数秒をいつもより時間が掛かった(=その程度の謎だった)と嫌味に表現するなど。やり過ぎ感が否めなかった。
この章は、第1章から最終章に至るまでの全ての解答編であるため、派手な演出と言えば仕方ないかもしれないが…
買ってよかった1冊であるとともに、おすすめしたい1冊。
ただ、翡翠…というより女性キャラ全般の描写で好みが分かれるかもしれない。
以下ネタバレ。
叙述トリックとはこういう作品なのかと思った。感動。
エピローグを読むと、最終章の豹変ぶりは演技だったようで。