川上未映子のレビュー一覧
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ネタバレ予想以上に川上未映子が突っ込んだインタビューをしていて、かなり読み応えがあった。
あの村上春樹が、作品や過去に受けたインタビューで答えた内容との矛盾?を川上から指摘され、ややたじろぐ様な場面もあり、読んでいる方がハラハラ。それでも飄々と村上節でかわしていく?様子はさすがだなと。だけど終始和やかな雰囲気で、2人の信頼関係がこちらまで伝わってきて、作家として人間としてリスペクトし合っているのがめちゃくちゃ伝わってくる。
さすがというか、とにかくインタビューの内容が濃い。かなり勉強になりました。
家に例えると、その人の普段の生活や考えてることを1階とすると、日本の近代文学は地下一階を扱っていて、村上春樹は地下二階を書こうとしているという話。
リアリズムをリアリズムの文体で書くことを試みたノルウェイの森、テーマやストーリーよりも文体が先であること、物語というフィクションは過去から現在、未来に至るまで一番強いポリティカルであり得るのではないか、ここに書き出したらキリがないくらいの興味深い話が繰り広げられて。
ほんまに?!何この人本気なん?!と川上未映子と一緒に村上春樹の井戸に入って何が見えたのか、私は入ってみて本当に良かったです。
さてさて、来年は村上春樹をしっかり読んでみようか!
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ネタバレ「あこがれ」が小さな冒険につながっていくふたつのお話。第一章は小学四年生の麦くんのお話で、第二章は六年生になった麦くんの親友の女の子、ヘガティーが主人公のお話です。
このさき、ネタバレありです。というより、今回はネタバレばかりです。読んだことのない方には「てんでなんのことやら」かもしれませんが、あしからず。
海外文学ぽい感じを試したのかなあと最初は思った第一章。ストーリーからの感想などの、本来メインともいうべき感想からは離れたようなことを言うことになります。
主人公・麦彦のおばあちゃんの人となりが感じられるところがよかったです。人間の老化は避けられません。でも、まだ十分に動けていた過去というものは消えることはなく、たとえば主人公の少年の記憶の中には、おばあちゃんがしっかり歩いていたり話していたりしたときの様子が残っている。老いて介護が必要になったおばあちゃんが今のおばあちゃんなのだから、そのおばあちゃんという人間は老いて動けなくなった人だというふうに理解され、接せられようになっている。でも、そこばかり見ていると、なんら無味乾燥な見方しかしていなくて、実はなにもわかっていないと言えるものだったりもする。その人が生きてきた経過、内容、過程。音楽だって、最後の10秒だけ聞いてもわからないのといっしょで、人間だって、たとえば最後の1年だけ見ていてもその人という存在はわからないのだと思う。本書でおばあちゃんについて書かれているところは短いです。それなのに、しっかり「人」を理解するためにとらえておくポイントがわかって書かれているから、おばあちゃんが出てくると、なんだか胸が温かくなるのだと思う。
これは、主人公があこがれる若い女性・ミス・アイスサンドイッチが最後に主人公と喋るところもそう。そこでミス・アイスサンドイッチにやっと平熱とでもいえる温度が宿って、それまでの距離感からくる「他人的な理解」から、しっかりその人の人生を肯定した「隣人的な理解」へと印象が変わり、そのうえで人物が描かれているように感じられた。ミス・アイスサンドイッチにもまぎれもなく血が通っていて、考えて感じてその都度選択をして生きていて、自分の人生を歩いているさまがある。おばあちゃんと同じようにミス・アイスサンドイッチも、短い会話シーンだけでもう立体的かつ愛すべき人間として描かれていて、それは作者の優れた筆力のほかに人間観から大きくきているだろうことなので、そういった豊かさのこもっているところがいいなあ、と僕は思いました。
海外文学的な乾いた文体で表面的に文章が流れていく感覚が強めのスタイルに挑戦しての本作なのではと思えたのだけれど、おばあちゃんとミス・アイスサンドイッチ、この二人に人間の良心が反応するものが息づいていて、それは本作では子ども視点で書かれているものゆえに、ちらりといった程度でのそういった人間性の登場になったのでしょうが(なぜかというと、大人が大人になっていく過程や大人として生きていくなかで培われるものだろうからです)、作者の才能の本流はその、ちらりのほうだよな、と僕には感じられました。
第二章。
四年生から六年生になり、そして男子から女子へ主人公も変わって、言葉で世界をとらえる解像度が上がっているし、考えることの深みも増しています。ひょんなところから、主人公・ヘガティーに異母姉がいることがわかり、ヘガティーの心理が変わっていく。お父さんに対する心理についてはもうそうですが、そのお姉さんの姿を一目ながめてみたい、と思うようになる。そして、会うことが出来て、姉の家に招かれたところの様子からがとくに引きこまれました。姉は、自分の実父のことなんかどうでもよいと考えているし、妹がいることにも何とも思わないと率直に述べるのですが、この姉とその母に対するヘガティーとの距離感、場違いな感じにはたまらないものがあります。他人同士の気づかいよりも近く、そして肉親の距離感にしては嫌悪感みたいなものがある息苦しい空気が醸し出されます。こういう居づらい感じってときにあるよなあ、と僕も思い出しながら読んでいました。そして、この家を出てからが圧巻のスピーディーな流れに巻き込まれることになります。剥き出しの自分のままぶつかっていくように生きているところの描写、といえばいいでしょうか。著者はそういった生々しく激しいところを活写する力が相当ある方だと思います。そして、そういった力で畳みかけられて、圧倒されるようになって、書かれている言葉を、がぶがぶあっぷあっぷと飲み干すような読書体験になるのでした。この最後の数十ページで、『あこがれ』という作品の高みがぐっと持ち上がった感じがします。
というような、「作品紹介」ではなく、「個人的雑感」といったレビューになりました。執筆終わりでへろへろになっているときはこんなものでしょう……。とはいっても、今回三作品目となった川上未映子さん。もうこの方は、作家としての力はすごいものだ、手に取るときに躊躇することはないぞ、という思いが確たるものとなりました。相性もあるのでしょうが、そういった作品に出合えたこと、この世界に存在することを知り得たことは、自分にとってものすごく幸せなことなんじゃないだろうか、というような、ちょっと噛みしめるような喜びがあるのでした。 -
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ネタバレピーター・ラビットシリーズですね。
16作目になります。
この作品はちょっと怖いお話になります。
子猫のトムが、なんとネズミのサミュエルに食べられそうになるのです。さぁ~どうしましょう?
イギリスのお話には、マザーグースのようにとても恐ろしいブラックユーモアの伝統があります。
ビアトリクス・ポターさんも、メルヘンながら、いたずらっ子にはそれなりのリスクを背負わせます。
日本の小さなお子さんには、ちょっとドキドキが強いかな。
日本の昔話でも、鬼ババや、うわばみ、カッパ、妖怪、魔物など恐ろしいものが登場します。
お母さんやお父さんが、しっかり子供を守る気持ちを伝える手だてになりますね。
この物語でも、トムのお母さんのタビタさんは必死にトムを探して救出します。
川上未映子さんの訳は、そんなやり取りをユーモアを交えながら、柔らかく描き出しています。
今まで読んだ、ピーター・ラビットシリーズで一番長いお話でした。 -
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ネタバレ『ピーター・ラビット』シリーズの十巻目ですね。
ピーターの妹のフロプシーは、いとこのベンジャミン・バーニーと結婚して、六匹の子どもをさずかり、子育て中。
ある時、ベンジャミンは子どもたちをつれて、ピーターの畑にいきます。
ピーターも結婚していて、キャベツ畑を作っていました。
残念ながら、ベンジャミン親子に、分けてあげるキャベツがありません。
しかたがないので、マグレガーおじさんのごみすて場にやってきました。さいわいな事に、花が咲いてしまったレタスがすててありました。
たべるのに もんだいはありません。おなかいっぱいに たべて おひるねをしてしまいました。
すると、そこにマグレガーおじさんがやってきて ねている六匹の小うさぎを ふくろにつめてしまいました。
さぁ たいへん 子どもたちはどうなってしまいのでしょう?
ビアトリクス・ポターさんの物語は今回も、ハラハラ・ワクワクの大冒険です。
『ピーター・ラビット』シリーズの素敵なことは、絵の美しさと愛らしさですね。
絵を観ているだけで、癒されます。
家族を描いた物語りも、押し付けがましい教訓ではなく、さりげなく語りかけてきます。
フロプシー家族が幸せに過ごせますように願いますね。
シリーズが、ほんとうに楽しみになってきました。
次は、どんな物語に出会うのでしょう。 -
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いたばしボローニャ絵本館にて、原書と2つの訳を比べ読み。
こちらの新訳は、原書に極力忠実でありつつ、若干今っぽい訳という印象を持った。原書へのリスペクトを感じた点は2つ。まず、原作の絵を省略せずにすべて載せていること。そして、原書同様1文がページをまたぐ構成になっていること。この構成は、次のページが気になってどんどんめくりたくなる効果があると思う。(旧訳では文がページをまたいでいない。)
今っぽいと感じた点は、文末が「だけれども。」など、文としては中途半端な終わり方になっている箇所が複数あること。カジュアルで話し言葉のような印象を受けた。
一つ気になった表現としては、ピーターが野菜を食べすぎて"sick"になるところで、「胸が悪くなった」とある。(確か旧訳では「むかつく」だった。)「胸が悪い」は呼吸器系の病気の意味になってしまうのではないか。 -
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ネタバレピーター・ラビットシリーズの六巻目。
ねずみの夫婦の物語ですね。
人形の家の、お人形のルシンダとジェーンがお出掛けをしている間に、ねずみの夫婦トム・サムとハンカ・マンカが人形の家に忍び込んで大暴れ……。
ビアトリクス・ポターは「人形の家の、もちぬしのおんなのこ」のために、とても楽しい物語を創りました。
ねずみの夫婦は、たしかに、ものはこわす、人形の家の服などをもちだしてしまいますが、あとでちゃんとお代をはらいます。すべては夫婦の、こどもたちのための、しわざでした。
ポターは、ねずみたちの可愛らしい、ほほえましい絵で、この本を彩ります。
こどもたちのための、おはなしは、いたずらやおおさわぎを物語ります。
こどもたちは、そうしたことが大変好きですから。
でも、物語のなかで、やってはいけないこと、やってしまってもどうすればいいかを、絵本や童話などで学びます。
絵本は、とても想像力をかきたてます。
絵と文は未知の世界へと誘います。
絵本はとても楽しいですね。
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早川書房版ピーター・ラビットシリーズの四巻目。
ベンジャミン・バニーのおはなしですね。
福音館書店版と比較して読んでみました。
えは、早川書房版の方が鮮やかで、えの枚数も多いですね。
2022年初版。一巻目の説明のように、原作に忠実に添っておられるようです。
川上未映子さんの翻訳は、大人でも楽しめるように苦心をされています。リズミカルで、やさしく語りかけるように物語ります。
ピーターといとこのベンジャミンの冒険は(今回はベンジャミンが主役です)再びマグレガーさんの畑に…
ビアトリクスさんの絵には、いつもながらため息がでます。
おはなしもわくわく感が盛上がり、はらはらしながら、さいごは『あ~よかった。おもしろかった』と笑みがこぼれます。
シリーズはまだ始まったばかり、次の作品を読むのが楽しみですね。 -
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ネタバレピーター・ラビットシリーズの3巻目ですね。
イギリスのグロスターという都市の仕立て屋さんと、気立ての良いねずみたちの、心温まるお話しです。
貧しいけれども、仕事熱心な仕立て屋さんが、市長さんの結婚式の上着を作っていましたが、寝込んでしまいます。
さぁ大変、どうしたらいいんでしょう?
飼い猫のシンプキンに買い物を頼みましたが、気分が悪くなり寝込んでしまいます。
シンプキンはねずみたちには、恐ろしいものでしたが、仕立て屋さんには、お世話になっています。
ねずみたちの、恩返しが始まります。おりしもクリスマスの季節です。とても、素敵なお話しですね。
ねずみたちの、懸命な仕事ぶりに、シンプキンも心を入れかえました。
元気を取り戻した仕立て屋さんとシンプキンは、ねずみたちのおかげで、幸せをつかむことができました。
ビアトリクス・ポターさんの絵は、本当に可愛らしいねずみたちをみせてくれています。ねこのシンプキンも愉快です。
街中のスケッチも、120年前の雰囲気が伝わってきます。
川上未映子さんの訳も、リズミカルで、やさしく語りかけています。
この作品は、1901年のクリスマスに、ビアトリクス・ポターさんが、ずっとベッドにいる「大切なフリーダ」さんに心をこめてつくられた物語です。
やさしさに満ち溢れた心温まるお話しでした。 -
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芥川賞作家の川上未映子さんが村上春樹氏に4回にわたりインタビューする対談集。内容は、主に村上氏の小説の書き方、文章へのこだわり、スタンス、特にインタビュー直前に発行された「騎士団長殺し」について、様々な角度から切り込む形である。
村上氏は過去の著作をあまり振り返って読まないそうで、その理由は今ならもっとうまく書けるのにと思ってしまうからとのこと。本書の中でも、「え、そんなこと言ったっけ?」とか、小説の登場人物の名前を忘れたり、覚えていないこともたくさんあった。
私はわりと最近「村上さんのところ」を読んだので、彼の人柄や考え方は入っていた。基本的なところは一貫している。
本書では、川上未映子さんの事前準備に驚かされた。村上氏の過去の著作を短編含めてすべて読みこなしているだけでなく、発表した順番やスタイルの変化など研究し尽くしていた。それだけでなく、村上氏の愛読書や翻訳書、好きなジャズ音楽や哲学書についても勉強してあって、彼女のプロ意識が感じられた。
小説家というのは、たとえ稀有な才能があっても大変な職業なんだな、と改めて感じた。