川上未映子のレビュー一覧

  • まちねずみジョニーのおはなし

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    新訳版を絵本の森美術館で購入。
    やさしい絵柄とやさしいお話に癒される。
    (ちょっとツッコミどころのある設定にもクスッとなる)

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    2024年09月02日
  • こぶたのロビンソンのおはなし

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    ピーター・ラビットシリーズの十九巻目ですね。
    ピーター・ラビットシリーズは絵本だと思いましたが、この「こぶたのロビンソンのおはなし」は、児童小説ですね。八章からなる長いお話です。
    第一章は、ビアトリクス・ポターの思い出話から始まり、猫のスーザンが、港に買い物に出かけるお話です。そこで、船に乗る、猫とこぶた(実は、こぶたのロビンソンです)を見かけます。
    第二章から、こぶたのロビンソンのお話になります。
    こぶたのロビンソンが、腰を悪くしたおばさんたちに、港に商品を売りに行くように、頼まれます。お代で買ってくる物と、ロビンソンの好きな物を買うように言われます。
    第三章から、いよいよ、こぶたのロビンソンの冒険の始まりです。
    ビアトリクス・ポターの長いお話を、川上未映子さんが、リズミカルに翻訳されています。今までのお話とは、違って漢字が沢山出てきます。
    様々なアクシデントが、飽きを感じさせず、ユーモアたっぷりに楽しませてくれます。
    ロビンソンの名前の由来は、最後にわかりますよ。
    面白く愉しく、ロマンとファンタジーを、爽やかに楽しみました。

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    2024年08月14日
  • パイがふたつあったおはなし

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    ピーター・ラビットシリーズの十七巻目ですね。

     犬のダッチェスは、猫のリピーのお茶会によばれました。ごちそうは、ねずみのパイみたい。でもダッチェスはねずみを食べたくありません。
     そこで、ダッチェスは自分でパイを作って、入れかえようと思いました。作戦はうまくいくのかな?
     
     猫のリピーは、このシリーズでよく出てくる猫のタビタさんのいとこです。ビアトリクス・ポターの得意な猫の絵が、とても可愛いですね。
     犬のダッチェスも愛らしく描かれています。
     とてもあどけないどたばた騒ぎが、愉しい物語でした。ビアトリクス・ポターは、この物語を友達の赤ちゃんに送ったみたいです。
     川上未映子さんは訳で、抑揚をつけていますが、赤ちゃんが喜ぶように工夫がされているのですね。
     童話の愉快な楽しみを味わえました。

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    2024年08月02日
  • ジンジャーとピクルスのおはなし

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    ピーター・ラビットシリーズの18冊目ですね。
    猫のジンジャーと犬のピクルスの二匹は、雑貨店ををひらいています。お店は品ぞなえが、ばつぐんなので、いつもお客さんがやってきます。
    でも、お客さんは、つけで買い物をするので、お店はだんだんお金がなくなってきました。
    ジンジャーとピクルスはどうするのかな?

     ビアトリクス・ポターは農業経営をしていましたので、こうしたお店のお話が語らされます。擬人化の楽しい、また、寓話の要素があるのがピーター・ラビットシリーズの魅力ですね。
    なんといっても、ビアトリクス・ポターの絵の美しさが物語を美しく彩るのも人気のひとつですね。
    物語がたくさんあって、ビアトリクス・ポターの創作の素晴らしさにも惹かれます。
    次に読む本が楽しみです!

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    2024年06月26日
  • まちねずみジョニーのおはなし

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    ネタバレ

    ピーター・ラビットシリーズの絵本ですね。
    シリーズの十三巻目です。
    「まちねずみジョニーのおはなし」と言う題名になっていますが、いなかのねずみティミーとの、おはなしですね。
    そう、イソップのお話のオマージュと言えます。
    ですから、ビアトリクス・ポターは作品の始めに「あちらにいるイソップにささぐ」と記しています。

     いなかのねずみティミーは あるとき やさいかごにはいって いましたが なんとそのまま 町までつれていかれました。
     とほうにくれた ティミーですが つれていかれたお家で まちねずみジョニーと であいます。
     さぁ~? これから ティミーとジョニーの ものがたりが はじまります。

     イソップのお話と似ていますが、ビアトリクス・ポターはもう少し、二匹のねずみを擬人化して、個性豊かに物語を展開します。落ちはイソップと同じですね。そして何と言っても、ビアトリクス・ポターの絵の素晴らしさが、作品に品格をもたらします。
    ピーター・ラビットシリーズの魅力はこうしたところにも有るようですね。

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    2024年05月17日
  • ウィステリアと三人の女たち(新潮文庫)

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    〈彼女と彼女の記憶について〉
    東京で女優の端くれのような仕事をしながら、嫌みにならない程度に計算し尽くしたブランド品を鎧のように身にまとい、田舎で行われる同窓会に参加した彼女に、私ははっきりとした好感を抱く。
    そこで突然ぽんと手渡される記憶の箱。黒沢こずえという少女と仲が良く、一緒に遊んでいたこと。黒沢こずえという少女に自分がかつてしていたこと。そして黒沢こずえという少女が辿ることになったその後の顛末。
    黒沢こずえが、独りきりではなく、もう一人の女性と亡くなったと聞いたときの、主人公の心情はどんなだろう。安堵?嫉妬?罪悪感? 何も感じない、なんてことはないはずだ。
    私も、誰に会いたいとかではなく、それが喜ばしいものであれ、恐ろしいものであれ、記憶の箱を受け取るためだけに同窓会に参加したい。
    確かに存在しているのに、すっかり忘れ去られてよそにいってしまった記憶を突きつけられたい。記憶は、どんなに時が経とうが決してそれがなかったことにはならない。

    〈シャンデリア〉
    多額の印税が振り込まれることで、暇と財力を持て余して一日中デパートを徘徊している46歳の女性。彼女には生活の不安も悩みもなく、自由を謳歌しているように思えるのだが、どうやらそうではないらしい。
    幼い頃に母親と共に貧困で苦しんだ過去は、そして母親亡き後に舞い込んできたお金は、今がどれほど裕福でもすべての景色を無意味なものにしてしまうのだろうか。

    〈マリーの愛の証明〉
    乙女の園のような、無垢で甘やかなミア寮。元恋人に「私のことを愛していた?」と聞かれたマリーが、真摯にていねいに紡いでいく愛の証明。
    愛は、目に見えないうえに正解もなくて、飽くことなくいつまでも考え続けられる気がする。
    この短編は初めて読んだときから好きだけれど、数年ぶりに再読して愛の続きに気がついた。ミア寮で看護係として働く40歳のアンナは、7年前に当時1歳の娘を喪った。
    もちろん娘にもう触れることはできないけれど、愛していたという事実が確かにそこにあったのだから、今ではきっと違う方法でまた娘に、大きな愛に触れることができるのだということ。

    〈ウィステリアと三人の女たち〉
    今は空き家だが、大きな藤の木が咲き誇る近所の屋敷に忍び込んだ女性が、夢をみるようにその屋敷で起きた過去を回想していく幻想的で美しい話。
    不妊治療に理解がない夫に対して、これまでは言いなりだったのが、それが起こったあとには凜とした強さを湛えている気がした。

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    2024年05月08日
  • ラヴレターズ

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    ネタバレ

    圧倒的に西川美和のラヴレターが良すぎる


    いろんな人の本気のラヴレター(実在する人宛て)を覗き見できるため、若干の背徳感がある。

    「なんだかんだあったけどまあそこそこにいい感じでぼちぼちお互いやっていこうね〜」というメッセージを、それぞれが添い遂げるパートナーだったり、二度と合わない初恋の人だったり、恨み怨みの愛人だったりに向けているのがおもしろい。山あり谷ありの人生を追体験している気分だった。

    西川美和のラヴレターは、宛先の相手の印象が、こちらの中でジェットコースターみたいに乱高下するからなかなか像が定まらないんだけど、最後はそこに落ち着くのか〜って感じだった。あつあつの肉まんを食べ終わった直後みたいな感覚になった。

    喉のあたりには温かい空気が留まり、身体の重心あたりにぎゅっと中身が詰まっているあの感じ

    いいきぶん

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    2024年04月30日
  • つまさきティミーのおはなし

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    ネタバレ

    ピーター・ラビットシリーズの絵本ですね。
    灰色りすの夫婦のお話です。

    灰色りすの つまさきティミーと つまのグッディは
     ふゆにそなえて 木の実をたくさんあつめました。
    あるとき 忘れんぼうのりすの銀色しっぽに 木の実をぬすまれたと うたがいをかけられてしまいます。
    さぁ~たいへん どうなるのでしょう?

    ティミー夫婦を助けるのは、しまりすの夫婦です。
    二組のりすの夫婦のお話は、楽しくて愉快になります。ビアトリクス・ポターの絵はいつも可愛らしさにあふれています。このお話は心が温かくなりますね。

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    2024年04月20日
  • モペットちゃんのおはなし

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    ピーター・ラビットシリーズの21巻目ですね。
    この巻の主役はこねこのモペットちゃん。

    ねずみをつかまえようとして よけられて たなにあたまをぶつけてしまいました。
    モペットちゃんは ねずみに しかえししようとして
     さくせんを かんがえました。
    さぁ~、どうなるのかな?

    これは、どうでしょう!
    主役が、モペットちゃんではなく、お兄さんのトムだったら。トムとジェリーの原作みたいですね。
    ねこ好きの私には、モペットちゃんの絵は最高です。ねずみも可愛く描かれています。いつもでしたら、ねずみにも名前があるのですが、なぜか今回はありませんでした。名前を付けると、もう一冊物語が出来そうですが、残念です。でも、ねずみのお話は五冊もありますから、もう十分だと思ったのかもですね。
    愉快な楽しいお話でした。

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    2024年04月05日
  • ラヴレターズ

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    作家や俳優などの著名人が、いろいろな相手に対してラブレターを
    書くというコンセプトの作品集。

    ラブレターを出す相手が、必ずしも人ないし生き物とは限らない
    ところが、このラブレター集の面白いところで、
    素直なラブレターもあれば、作家ならではな小説を書いてるような
    ノンフィクションなの?と思うのもあったり、
    まさに、この人と言えばという独特な愛のカタチのラブレターも良かった。

    松尾スズキさんのとある女優への思いを綴ったラブレターは、
    同じ職業としての思いを綴っていて、感動しました。

    一部文体が読みにくいのもありましたが、概ね、他人の書くラブレターを
    のぞき見る感じもあって、楽しめました。

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    2024年03月17日
  • あひるのジマイマのおはなし

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    ネタバレ

    ピーター・ラビットシリーズの九巻目ですね。
    あひるのジマイマは じぶんの卵を あたためたいのですが いつも農場のおばさんが 持っていってしまいます。
    そこで ジマイマは山まで飛んでいって 卵を産むことにしました。
    山に行くと 新聞よんでいる紳士がいました。
    ジマイマは紳士にそうだんします。
    ところがこの紳士は きつなのです。
    さぁ~たいへん、どうなるのかな?

    ビアトリクス・ポターの物語はいつも機知に富んでいます。今回も起死回生のお話しです。
    いつもながら、ポターの絵の美しさに引かれながら物語に引き込まれていきます。
    この時代の物語は寓話の要素がありますから、因果応報で、それでも仲間の手助けで窮地を切り抜けます。
    この作品も「ライフとベッツィーにおくる、農場のおはなし」とありますから、こどもたちは何かを感じ取ったことでしょう!

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    2024年03月14日
  • ラヴレターズ

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    ネタバレ

    大御所によるラブレターのアンソロジー。失恋した時におすすめしたい本。

    俵万智さん、吉本ばななさん、壇蜜さんが特に響いた。『心に墓を建てる』という表現や、吉本さんの清らかな恋愛の瑞々しさも響いた。

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    2024年02月20日
  • はりねずみティギーのおはなし

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    ネタバレ

    ピーターラビットの絵本6巻目ですね。
     
     小さな女の子ルーシーは、とてもいい子なのですが、いつもハンカチをなくしてしまいます。
     この日も、ハンカチを三枚とエプロンをなくしてしまいまた。ルーシーは泣きながらさがします。
     ピーターラビットの仲間たちに、さがしものを見なかったたずねて歩きます。
     たずね歩いて、山のなかにのぼっていきました。すると大きな岩のしたにドアを見つけます。
     ドアの中から、歌っているではありませんか!
     ルーシーは思いきってドアをあけました。
     なんとそこには、おばさんのせんたくやさんがいました。
     ルーシーのハンカチは見つかるかな?

    このお話は、とても楽しい物語になっています。
    「ニューランドに住んでいる、ほんものの、小さなルーシーへ」と扉にありますから、よい子のルーシーが喜ぶ物語なのですね。
    ピーターラビットの仲間たちが沢山登場します。

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    2024年02月19日
  • みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    予想以上に川上未映子が突っ込んだインタビューをしていて、かなり読み応えがあった。
    あの村上春樹が、作品や過去に受けたインタビューで答えた内容との矛盾?を川上から指摘され、ややたじろぐ様な場面もあり、読んでいる方がハラハラ。それでも飄々と村上節でかわしていく?様子はさすがだなと。だけど終始和やかな雰囲気で、2人の信頼関係がこちらまで伝わってきて、作家として人間としてリスペクトし合っているのがめちゃくちゃ伝わってくる。
    さすがというか、とにかくインタビューの内容が濃い。かなり勉強になりました。
    家に例えると、その人の普段の生活や考えてることを1階とすると、日本の近代文学は地下一階を扱っていて、村上春樹は地下二階を書こうとしているという話。
    リアリズムをリアリズムの文体で書くことを試みたノルウェイの森、テーマやストーリーよりも文体が先であること、物語というフィクションは過去から現在、未来に至るまで一番強いポリティカルであり得るのではないか、ここに書き出したらキリがないくらいの興味深い話が繰り広げられて。
    ほんまに?!何この人本気なん?!と川上未映子と一緒に村上春樹の井戸に入って何が見えたのか、私は入ってみて本当に良かったです。
    さてさて、来年は村上春樹をしっかり読んでみようか!

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    2023年12月24日
  • あこがれ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「あこがれ」が小さな冒険につながっていくふたつのお話。第一章は小学四年生の麦くんのお話で、第二章は六年生になった麦くんの親友の女の子、ヘガティーが主人公のお話です。

    このさき、ネタバレありです。というより、今回はネタバレばかりです。読んだことのない方には「てんでなんのことやら」かもしれませんが、あしからず。



    海外文学ぽい感じを試したのかなあと最初は思った第一章。ストーリーからの感想などの、本来メインともいうべき感想からは離れたようなことを言うことになります。

    主人公・麦彦のおばあちゃんの人となりが感じられるところがよかったです。人間の老化は避けられません。でも、まだ十分に動けていた過去というものは消えることはなく、たとえば主人公の少年の記憶の中には、おばあちゃんがしっかり歩いていたり話していたりしたときの様子が残っている。老いて介護が必要になったおばあちゃんが今のおばあちゃんなのだから、そのおばあちゃんという人間は老いて動けなくなった人だというふうに理解され、接せられようになっている。でも、そこばかり見ていると、なんら無味乾燥な見方しかしていなくて、実はなにもわかっていないと言えるものだったりもする。その人が生きてきた経過、内容、過程。音楽だって、最後の10秒だけ聞いてもわからないのといっしょで、人間だって、たとえば最後の1年だけ見ていてもその人という存在はわからないのだと思う。本書でおばあちゃんについて書かれているところは短いです。それなのに、しっかり「人」を理解するためにとらえておくポイントがわかって書かれているから、おばあちゃんが出てくると、なんだか胸が温かくなるのだと思う。

    これは、主人公があこがれる若い女性・ミス・アイスサンドイッチが最後に主人公と喋るところもそう。そこでミス・アイスサンドイッチにやっと平熱とでもいえる温度が宿って、それまでの距離感からくる「他人的な理解」から、しっかりその人の人生を肯定した「隣人的な理解」へと印象が変わり、そのうえで人物が描かれているように感じられた。ミス・アイスサンドイッチにもまぎれもなく血が通っていて、考えて感じてその都度選択をして生きていて、自分の人生を歩いているさまがある。おばあちゃんと同じようにミス・アイスサンドイッチも、短い会話シーンだけでもう立体的かつ愛すべき人間として描かれていて、それは作者の優れた筆力のほかに人間観から大きくきているだろうことなので、そういった豊かさのこもっているところがいいなあ、と僕は思いました。

    海外文学的な乾いた文体で表面的に文章が流れていく感覚が強めのスタイルに挑戦しての本作なのではと思えたのだけれど、おばあちゃんとミス・アイスサンドイッチ、この二人に人間の良心が反応するものが息づいていて、それは本作では子ども視点で書かれているものゆえに、ちらりといった程度でのそういった人間性の登場になったのでしょうが(なぜかというと、大人が大人になっていく過程や大人として生きていくなかで培われるものだろうからです)、作者の才能の本流はその、ちらりのほうだよな、と僕には感じられました。

    第二章。
    四年生から六年生になり、そして男子から女子へ主人公も変わって、言葉で世界をとらえる解像度が上がっているし、考えることの深みも増しています。ひょんなところから、主人公・ヘガティーに異母姉がいることがわかり、ヘガティーの心理が変わっていく。お父さんに対する心理についてはもうそうですが、そのお姉さんの姿を一目ながめてみたい、と思うようになる。そして、会うことが出来て、姉の家に招かれたところの様子からがとくに引きこまれました。姉は、自分の実父のことなんかどうでもよいと考えているし、妹がいることにも何とも思わないと率直に述べるのですが、この姉とその母に対するヘガティーとの距離感、場違いな感じにはたまらないものがあります。他人同士の気づかいよりも近く、そして肉親の距離感にしては嫌悪感みたいなものがある息苦しい空気が醸し出されます。こういう居づらい感じってときにあるよなあ、と僕も思い出しながら読んでいました。そして、この家を出てからが圧巻のスピーディーな流れに巻き込まれることになります。剥き出しの自分のままぶつかっていくように生きているところの描写、といえばいいでしょうか。著者はそういった生々しく激しいところを活写する力が相当ある方だと思います。そして、そういった力で畳みかけられて、圧倒されるようになって、書かれている言葉を、がぶがぶあっぷあっぷと飲み干すような読書体験になるのでした。この最後の数十ページで、『あこがれ』という作品の高みがぐっと持ち上がった感じがします。

    というような、「作品紹介」ではなく、「個人的雑感」といったレビューになりました。執筆終わりでへろへろになっているときはこんなものでしょう……。とはいっても、今回三作品目となった川上未映子さん。もうこの方は、作家としての力はすごいものだ、手に取るときに躊躇することはないぞ、という思いが確たるものとなりました。相性もあるのでしょうが、そういった作品に出合えたこと、この世界に存在することを知り得たことは、自分にとってものすごく幸せなことなんじゃないだろうか、というような、ちょっと噛みしめるような喜びがあるのでした。

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    2023年09月18日
  • はりねずみティギーのおはなし

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    ネタバレ

    人間の女の子ルーシーがハンカチ3枚とエプロン1枚なくしてしまうところからお話は始まります。山を登っていったさきで、洗濯屋さんのはりねずみのティギーさんに出会います。
    この洗濯屋さんのところには色んな動物たちの洗濯物が集まっています。ピーターラビットの服や玉ねぎ臭のついた赤い布もあります。
    そして、ティギーさんが洗濯物を届けたお客さんにピーターラビットとベンジャミン・バニーもいて、嬉しくなりました。
    可愛らしいお話です。

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    2023年08月18日
  • ラヴレターズ

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    好きな人だけチョイスして読みました。
    初っ端の吉本ばななさんのを読んでたら何がどうなってかわからないけど高校のとき一時期気になっていた彼のことを思い出して仕方なくなって自分でもその人に向けてラヴレターを書くまでの始末(自分の携帯の中だけに留めとくよ)

    本当に人を好きになるって大事な感覚よね。

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    2023年07月20日
  • ひげねずみサミュエルのおはなし

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    ネタバレ

    ピーター・ラビットシリーズですね。
    16作目になります。

    この作品はちょっと怖いお話になります。
    子猫のトムが、なんとネズミのサミュエルに食べられそうになるのです。さぁ~どうしましょう?

    イギリスのお話には、マザーグースのようにとても恐ろしいブラックユーモアの伝統があります。
    ビアトリクス・ポターさんも、メルヘンながら、いたずらっ子にはそれなりのリスクを背負わせます。
    日本の小さなお子さんには、ちょっとドキドキが強いかな。
    日本の昔話でも、鬼ババや、うわばみ、カッパ、妖怪、魔物など恐ろしいものが登場します。
    お母さんやお父さんが、しっかり子供を守る気持ちを伝える手だてになりますね。

    この物語でも、トムのお母さんのタビタさんは必死にトムを探して救出します。
    川上未映子さんの訳は、そんなやり取りをユーモアを交えながら、柔らかく描き出しています。
    今まで読んだ、ピーター・ラビットシリーズで一番長いお話でした。

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    2023年06月24日
  • フロプシーのこどもたち

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    ネタバレ

    『ピーター・ラビット』シリーズの十巻目ですね。

    ピーターの妹のフロプシーは、いとこのベンジャミン・バーニーと結婚して、六匹の子どもをさずかり、子育て中。
    ある時、ベンジャミンは子どもたちをつれて、ピーターの畑にいきます。
    ピーターも結婚していて、キャベツ畑を作っていました。
    残念ながら、ベンジャミン親子に、分けてあげるキャベツがありません。
    しかたがないので、マグレガーおじさんのごみすて場にやってきました。さいわいな事に、花が咲いてしまったレタスがすててありました。
    たべるのに もんだいはありません。おなかいっぱいに たべて おひるねをしてしまいました。
    すると、そこにマグレガーおじさんがやってきて ねている六匹の小うさぎを ふくろにつめてしまいました。
    さぁ たいへん 子どもたちはどうなってしまいのでしょう?

    ビアトリクス・ポターさんの物語は今回も、ハラハラ・ワクワクの大冒険です。
    『ピーター・ラビット』シリーズの素敵なことは、絵の美しさと愛らしさですね。
    絵を観ているだけで、癒されます。
    家族を描いた物語りも、押し付けがましい教訓ではなく、さりげなく語りかけてきます。
    フロプシー家族が幸せに過ごせますように願いますね。
    シリーズが、ほんとうに楽しみになってきました。
    次は、どんな物語に出会うのでしょう。

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    2023年05月27日
  • ピーターラビットのおはなし

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    いたばしボローニャ絵本館にて、原書と2つの訳を比べ読み。
    こちらの新訳は、原書に極力忠実でありつつ、若干今っぽい訳という印象を持った。原書へのリスペクトを感じた点は2つ。まず、原作の絵を省略せずにすべて載せていること。そして、原書同様1文がページをまたぐ構成になっていること。この構成は、次のページが気になってどんどんめくりたくなる効果があると思う。(旧訳では文がページをまたいでいない。)
    今っぽいと感じた点は、文末が「だけれども。」など、文としては中途半端な終わり方になっている箇所が複数あること。カジュアルで話し言葉のような印象を受けた。
    一つ気になった表現としては、ピーターが野菜を食べすぎて"sick"になるところで、「胸が悪くなった」とある。(確か旧訳では「むかつく」だった。)「胸が悪い」は呼吸器系の病気の意味になってしまうのではないか。

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    2023年05月23日