川上未映子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
わたがしみたいに柔らかいのに、触れた瞬間どろりと溶けてしまうような春の不穏さを味わえる短編集。
「青かける青」の美しい文章に打ちのめされたあと「あなたの鼻がもう少し高ければ」でスーッと肝が冷えた気分に……。「ブルー・インク」はほのかに村上春樹の風味。
春のほのぼのした心地良さの中に身の毛がよだつゾクりとしたちぐはぐさがあり、夢中で一気読みしました。
「あなたの鼻がもう少し高ければ」が一番お気に入り。どこにでもいる若い女の子のどこにでもありえる日常。現代を生きる若い女の子の心情の生々しさは、もはや物語ではなく現実だった。
SNSの幻惑的な世界に魅了され、小さいスマホ画面から大きな夢を見る -
Posted by ブクログ
この本が芥川賞取ったのって2008年とかだったのか。
なんか全然古くさくないというか、すごい新鮮な気持ちで読めた。
生理についての描写が多かった。ちょうどこの本を読んでいるときの私は生理二日目だったので、薬を飲んでもなおじわじわと生理痛に苦しめられており、股の間から流れ出ていくぬるりとした血をいやでも感じなければならないときだった。読みながら登場人物たちと自分がなんとなくリンクして、少し生理痛が和らいだ。
緑子の迫るような大きい方のノートの文章が好きだった。
思わず声に出して読み、そう、本当に、そうだよね、としみじみ考えるような文章がたくさんあった。
一方で、40ページくらいからの胸大きく -
Posted by ブクログ
しばらく
読書から遠ざかって、遠ざかって
世界の片隅で、
仕事に追われて、を言い訳に
無気力に勝てず…、が理由で…
そんな、
クッタクタの日々を何とか乗り越えて、
こえて
手に取った本書。
この人の言葉には、
嘘がないと言うか
表裏がないと言うか
体の芯から出てくる感じが「ビッシバッシ」と
響いて、伝わってくる。
好きですな。
かっこつけてない
が
カッコいいんだよなぁ
2011から2022までの11年間に渡るロングスパンのエッセイ集。
著者が35歳くらいから46歳頃かな
いわゆるアラフォー時代
小説の合間に書かれたであろうエッセイたち。
小説の書かれた時代に合わせて、
小 -
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親戚のちょっと年上のお姉さんが優しく話しかけてくれるているようなエッセイ。
何より、川上未映子さんってこんなエッセイ書かれるのかー!という発見でまた一段と作家さんのことを好きになる。
ときどき、あなたはどう?と語りかけてくれるから、自分の中のいろんな気持ちや思いを言葉に直して考えるきっかけにもなった。
雑誌の読者に向けたものだから語り口的にもそう感じるのかもしれないけど、とにかく温かく包み込んでくれる。
ひとつひとつが短くて読みやすいし、懐かしい人と久しぶりにゆっくり話して心がじんわり温かくなるような、そんな読後感でとっても好きです。
サイン会に来て涙が溢れてしまった女の子に対するエー -
Posted by ブクログ
川上さんの小説を多く読んでいる訳ではないので偉そうに言えないのだけど、エッセイという性質からか、音楽的な文章だな、という印象を抱いた。
小説よりももっと自由度が高くて、自らのリズムに気ままに言葉を乗せている感じ。
(放埒な文章という訳ではない、断じてない)
詩的、というよりもっと音楽的で何なら歌みたいとさえ思える。
脳細胞がシャキシャキ動くのを感じる。
川上さんの言葉の、表も裏もぜんぶ読み取って吸収したいという欲求が、脳細胞の働きを活発にしている気がする。
なんというか、作家という仕事は、言葉に対するセンスとか感受性の豊かさとかが大事なのだと思うけど、さらに物事や思考をどこまでも深く掘り -
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Posted by ブクログ
お初の川上未映子作。表題作は文体に驚いたが、脳内で語りが生々しく再生される独特な感覚が早いうちに掴めてぐんぐん読み進められた。緑子が抱く、否応なくやってくる身体の変化で「女になる」ということを思い知らされたり、他者からそう思わされたりすることへの言いようのない居心地の悪さや気持ち悪さが、混沌としたまま、ただどうにも受け入れたくない気持ちは確かに日記に紡がれている。母親が豊胸にこだわる理由も、語り手が血のついた下着を見て受精の予定ないけどなとふと思うのも、なんか女であるという事実と、性・生との結びつきが強固である(強固なものであるとされてきた)ことによるもののような気がする。「生きづらさ」と言っ