川上未映子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あえて整理せず、頭の中の思考のログをそのまま反映させたような文章。読みづらいのに読み進めてしまう不思議な魅力があった。
女性としての体を取り戻したいという衝動は、欲求とか下心とかではなく、もう制御の効かない動物としての本能に近いものなのかなと感じた。
あらゆるものに関して「ほんまのこと」は意外と存在していなくて、普段の自分の行動も、大切にしている拘りも、理由づけがされないまま出力されている。
P.S.
どこかの記事で読んだか動画で見たか忘れたが、椎名林檎の作品について
「椎名林檎の本質は女じゃないと理解できない。男がいくら考察を重ねようが研究しようが、女という性の根源の体現者である椎名林檎の作品を男が根元から体感するのは不可能だ(意訳)」
的なことをおっしゃっている方がいた。
『乳と卵』もそういう作品のひとつなのかもしれない。私がいくらこれを読み返そうがどれだけ調べ上げようが、真にこの作品を理解することはできないかもしれない。悔しいけれど。 -
Posted by ブクログ
下巻は上巻よりもあっという間に読めた。
仕事も暮らしも精神もどんどん苦しく、窮屈になる。
人一倍責任感の強い主人公の頭はどんどん黄色に支配されて、おかしくなっていく。
でも汚い手段で手に入れたお金は表の世界では使えないし、一度裏の世界に染まってしまうと、責任感の強い人ほどそこから這い出るのは難しい。
性格が良くても頭を使うのが苦手な人は、性格が悪くて頭を使うのが得意な人に利用されて使い捨てられる。
主人公が、あんなに大切だった黄美子さんや仲間、自分の罪を忘れたのは自分の精神を守るための防衛本能で、この物語に共感できる体験なんて何一つしていないのに、なんだかすごく分かるなあと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ黄美子さんが結局何なのかがわからなかった。
途中からぼーっとしてる描写が多く、存在感があるようなないような。でも花にとっては大切な必要な存在だったことが終盤の展開からもわかる。
20年後くらいの犯罪の記事から再開し、一緒に来ないか?と言うくらいだから。 花は何とかしてあげたかったのか?そうすることで罪の意識だったりから少しでも解放されたかったのか。
花のキレ具合が面白い。
カード不正などで金を稼ぐ。燃えて無くなってしまった「れもん」をまたやりたいとお金を貯めるが、悪い稼ぎ方だ。それでもお金が必要。
蘭、桃子、琴美、映水
琴美さん魅力的だった。 -
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尊い。
1人の人間がこの世に誕生することって、
自分の力じゃどうにもならないくらい偉大だからこそ畏怖の念を抱かざる終えない。
怖いんだけど尊い。
怖いと尊いって、相反する感情なんだけど、読んでいて
それが一気に押し寄せる感じ。
逢沢さんは、夏子に出会えて良かった。
生きる意味なんてない。
生きているだけで尊い。
善さんは、夏子と相反する価値観で1冊の中で、いろんな価値観が描かれているところも、これまた面白い。
そんな価値観、自分でも考えなかったような価値観に出会えることが読書の醍醐味だよな。
ゴンドラにのる2人のシーンは映画のワンシーンのようで、尊い!
今でもどこかを飛んでいるボイジャーの話が寂しく、孤高で尊かった。
ミッションを終えても、地球と交信をつづけながら、今も飛行を続けているボイジャー。
辛い時は、ボイジャーのことを思い出せ
尊さが詰まっていた! -
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ネタバレシノギ、シマ、アガリ、ポン中、、、
知らない言葉ばっかりの、闇の世界が描かれている小説だった。
別にハートフルな話ではないと思ってたけど表紙が可愛かったので予想外。
ここ最近読んだ本の中では読みやすくてスラスラ〜と読めた。
親がイカレポンチで歪んでしまった子どもたちと黄美子さんの共同生活。
黄美子さんってものすごく何かが欠けていて不思議、、なんと言ったらいいんだろ、、
優しそうに思える時もあれば人の気持ち全く理解してなさそうな時もある、
何考えて生きてるんだろ?まあ基本ボケーっとしてるのかな?と思ったらラッセンの絵を振りかざしてふすまボコボコにしちゃう
そして常に拭き掃除してる
近くにいたら私は「こわい大人」と認定して近づかないんだけどね、花にはその感覚がなかったみたい。むしろ黄美子さん=救世主
金ために水商売や詐欺をする花。
ただ、金金金!とはなってるけど別に贅沢な暮らしがしたいわけじゃなくて、中卒で身分証もない・銀行口座もない、の状態だからこれでやっていくしかないんだよね。
ほんとはどれもこれも、親のせいだと思うのよ。
色々あったからお金貸してと娘に無心してくる親。しかも200万。
で結局亡くなった後にどれくらい貯めてるのかと蓋を開けたら7万、、、、7万って。返す気なさすぎだろ。
とか思うけど本人(花の母)は本気で頑張って7万貯めたんだろうね。
日本のどこかにリアルに存在しそうな人たちではあったのでちょっと心痛くなった。
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この物語を貫くのは、世間が押しつける「家族の幸せ」といった生ぬるい綺麗事ではない。
作中、夏子が編集者から「あなたの文章の良さ、リズム、それは強い個性」と評されるシーンがあるが、まさにこの小説自体のリズムと流れが、読者の身体にドクドクと流れ込んでくるような心地よさと、圧倒的な強さを持っている。川上さん自身もこう言われてきたのだろうか、と思わせるほどに言葉が生きている。
特に胸に刺さったのは、美化されがちな「思い出」や「女性の身体」の、あまりにも泥臭く生々しい描写だ。
幼い夏子のために、姉の巻子が一生懸命に考えてくれた「ぶどう狩り」。それは決して美化された思い出なんかではなく、どこまでも「情けない」光景だ。嬉しさよりも情けなさが勝ってしまった幼い夏子の記憶。けれどそこには、紛れもない姉としての温かい「思い遣り」があった。大人になった今、夏子が抱く巻子への大いなるありがたさと、当時の切なさが交錯するからこそ、このシーンは涙なしには読めない。
また、姪の緑子が頭に卵をぶつけて叫ぶ場面。
頭からどろりと滴り落ちる黄身と白身の描写は、月に一度、女の身体の中で飛び出る卵(排卵)、つまり、女性として生まれてきたことの抗えない肉体の現実と生々しさを、視覚的に突きつけてくる。
「子孫繁栄、は?なんですかそれは」
女性にばかり犠牲を強いてきた歪んだ社会システムを冷ややかに一蹴し、産むイニシアチブを自らの手に取り戻そうとする女性たちの静かな逆襲。今の非婚化や少子化の本質が、ここにすべて描き出されている。
しかし同時に、物語はさらに深い深淵へと私たちを連れていく。
「子どもはこの世に生まれたかったわけじゃない。産むということは、とても罪深いことなのではないか」という、逃げ場のない倫理の問い。
やはり妊娠や出産は、人間がテクノロジーでコントロールしてはならない「神の領域」なのではないか、という畏怖。
だが、本書を読み終えた今、もう一つの冷徹な救いのような視点に気づかされる。
生物学的に言えば、私たち生き物は次の世代を生み出すことで、「今生きているモノ」としての役割を終え、この世から静かに消え去る権利(バトンタッチ)を得るのだ。
ハッピーエンドもバッドエンドもない。
ただ、命をめぐるあまりにも重い矛盾の前に、立ち尽くし、震える。今を生きるすべての人に、この言葉のうねりを体感してほしい。 -
Posted by ブクログ
夢中になって上下巻をあっという間に読み切ってしまった。特に最後の100ページ。W杯で乱れた睡眠リズムを取り戻そうと、早く寝ようとした夜に気づいたら2時間30分。25時30分まで読んでいた。
川上美映子さんはどうやってこれを書いたのだろう。貧困から犯罪に手を染める、あの罪悪感を打ち消す自己肯定。少しずつ気が狂っていくも、本人は気づかない、そして気づいた時の絶望感。全ての描写、解像度が異様に高い。
自分も何かに気づかずに毎日を過ごしているのでは?何かを見ないふりをしているのでは?と恐ろしくなった。読書というよりアートのような。ハッとさせられる作品だった。
この後、色んな方々のレビューや、作者のインタビューを読んでみようと思う。それも楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
パンデミック目前の日本で生きる人々の短編集。
その「パンデミック」というテーマがどれほど物語に影響しているかと言われると、あんまり関係ないのかなと思う物語もあるのだけど、総じて不穏な空気、人間の狡さや弱さ、生と死みたいなものを考えさせられるお話だった。
「青かける青」の『戻れない場所がいっせいに咲くときが、世界にはあるね』という一文のそこはかとない愛しさにしばし呆然とした。
結論のないふわっとした短編なので好き嫌いは分かれそうだけど、わたしは川上未映子さんの紡ぐ言葉が好きで、当たり前なことをこんなに詩的に捉えられる彼女の感性にうっとり憧れてしまうのでした。