三浦しをんのレビュー一覧
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購入済み
自分の若い頃を思い出す
就職活動をする女子大生の姿が生き生きと描かれている。家柄を考えれば、無理して就職をする必要も無いと思われるが、それに対して反発してなんとか自活して生きていこうと考えている。
漫画を趣味とする主人公の可南子は出版社で働きたいと願う。未だ男性優位の考えがうっすらと残るのが会社であり、筆記試験では合格しても面接では面接官のなんとなく女性を馬鹿にしたような質問に窮して、上手くいかない。大手業界は落ちてしまうのだが、中小の業界への就職活動を諦めずに続けていく。
大学の友人たちとの気心の知れた気軽な会話には、はやり言葉など世代の違いがあって意味が分からず、辞書を引いて理解するという面倒を感じたが、正直 -
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「彼」・古代中国を研究している大学教授村川融をめぐる男と女の物語は、連作短編という形をとりながら、全て読み終わったあとは20余年にわたる長編小説を読んだような充実感で満たされる絶妙の構成となっている。
そのうえ、一つ一つの短篇の完成度が恐ろしく高い。
どの話も静かに始まり、終盤に向けて大きなカタストロフィを迎え、収束する。そのエネルギーがすさまじくて、物語にぐいぐい引き込まれる。
「彼」の妻や息子、不倫相手、その娘など、関係者それぞれが抱えた闇に焦点をあてた個々の短篇では、恋愛、家族、友情といったあたりまえの人間関係のはかなさや、頼りなさが描かれている。
どのページを開いても、お気に入り -
Posted by ブクログ
「漫画の王国」に生れた小説家の乙女な日常生活。バンドを追っかけ上方へ、愉快な仲間と朝まで語り、わきあがる妄想の楽園に遊ぶ…色恋だけじゃ、ものたりない!なぜだかおかしな日常はドラマチックに展開―日本の政局も、家族の事件も、人気のTVドラマも、考え始めたらいつのまにかヒートアップ!「読んで楽しく希望が持てる」、笑い出したら止まらない、抱腹微苦笑ミラクルエッセイ。(表紙裏)
2か月も空くとは思わなかった。
読んだのは三冊目ですが、刊行されたのはこれが一番最初ですね。今では語り草になっているアルバイト時代の話もちらほら。
ですが、やはり肝は、いつでもどこでも突入する三浦さんの妄想展開でしょう。楽しそ -
Posted by ブクログ
ネタバレしをん女史の爆笑エッセイ。
相変わらずのマイペースぶり。
そして独自の視点が読んでいて心地好い。
しをん女史のみならずご家族や友人も侮れない。
友人に将来への不安を愚痴った時「いざとなったらあんた一人ぐらい食わせてあげるよ」とさらりと言われたしをん女史。
なんてカッコいい女友だち!
時にしをん女史の悪い部分もビシビシ指摘してくれる、こういう心の支えがあるしをん女史がほんと羨ましい。
笑える話の中にたまに真面目ではっとさせられる文章があるのがまたニクい。
「目に見えるなにかを生まないならば、そのひとの生は無意味だと断じるような、妙な考えには取り憑かれたくない」
最近巷を賑わしている「生産性」問 -
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本屋さんでなんとなく文庫を手に取ったら、なんと松苗あけみ先生が解説マンガを描いているではないか。単行本を持ってるけど、これは買い!文庫ってこういうことがあるからなあ。本篇に負けず劣らず面白い解説があったりして。文庫版あとがきも楽しいし。
で、松苗先生の解説マンガだが、何と言ってもしをんちゃんの弟のビジュアルが注目だ。弟君、すんばらしくかっこよく描かれているのであーる。こ、ここまで美形に、かつクールに描かれているとは。私の脳内では、ケミストリーの川畑的な、ちょっとラッパーみたいな(よく知らんけど)イメージで登場するんだけど。弟君の出てくる話はどれも可笑しくて大好きだが、さて、実際はどうなのか。 -
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大人の「おとぎ話」
大人の話と言えば、エロティックなもの。加えて乱暴な、暴力的な諍いものが大概だろう。いわゆるえげつない話しである。そうした先入観があるから、読んでいても大して面白いとは思われない。突飛な作り話でバカバカしいと思う。でも、大人が集まればたぶん似たような話しをするだろうから…
この小説に出てくる人物も、ヤクザの女に手をつけて殺されかけているホスト、空き巣の話し、父の弟と関係を持ち、精神科で強制的に治療受けている自殺願望がある女性(高校生)、過疎地の若い漁師の話し、美容整形治療中の女を乗せたタクシー運転手の話し、新種の花の開発に携わる研究員と付き合っているが無気力に生きる女性の話し、などが収められて -
Posted by ブクログ
ひとはいつまで乙女を自称しても許されるものなのか。そんな疑問を胸に抱きつつも、「なげやり」にふさわしいのは、やっぱり乙女。熱愛する漫画の世界に耽溺し、ツボをはずさぬ映画を観ては、気の合う友と妄想世界を語り合う。気の合わない母との確執も弟とのバトルも、日常の愉楽。どんな悩みも爽快に忘れられる「人生相談」も収録して、威勢よく脱力できる、痛快ヘタレ日常エッセイ。(表紙裏)
読んでいて微妙な既視感を覚えるのは、文章や内容が昔懐かしいテキストサイトのノリだからだと思いました。
後に残るものは何もありませんし作者さんもそう仰っているので、他の既刊も探してみます。 -
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不思議な作品
この物語を読んでいて、初めの設定がつまらない。読む気が起きない。考えてみれば、物語の場所が東京郊外の架空の町「まほろ市」だからなのからかもしれない。さらに、便利屋を営む主人公の多田と店に転がり込んできた級友の行天という人物に、物語の中で通常の生活実態が窺われないのだ。だから共感を持って読み進むことが出来ない。非常に読みづらい物語だ。
しかし、無理にでも読んでいくと、いつの間にか物語が面白くなり引き込まれて、読むスピードも上がってしまう。あっという間に読み終えてしまう。そこに不思議さと魅力を感じる作品だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読売新聞の読書委員会で「色物担当」のしをんさんらしい書評集。
さすが色物好きとあって今まで足を踏み入れたことのないジャンルの本が多々あり、お陰で世界が広がった。
本を暖房代わりにしたり、通い婚の復活を夢見たり、教科書に載っていた中島敦の『山月記』に笑い転げたり、漫画やBL物についてアツく語ったり、と書評だけでなく本に纏わるしをんさんの日常もまた面白い。
特に共感したのは、子供の頃に本を読んでいると誉められたのに、大人になって本ばかり読んでいると煙たがれるエピソード。
私もしをんさんと同じで不思議な現象だと思っていたし、しをんさんとの共通点が見つかってなんだか嬉しい。
しをんさん曰く
「本は -