天野純希のレビュー一覧
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偶然手に取ったものであるが、想像を超えて面白さを有していた。
島津家四兄弟(義久、義弘、歳久、特に家久)を中心に、薩摩、三州統一、九州統一の手前と、大友・龍造寺・秀吉軍との壮絶な戦いを、それぞれの個性をぶれることなく描き出した歴史小説。
九州の武将や覇権を握る戦の詳細はあまり知らないが、つい島津一強というイメージは、実はそうではなく、如何に精強になっていったかが、戦巧者家久から窺い知ることができ、また戦一つ一つが手に汗を握り、脳裡に戦場を容易に浮かび上がらせてくれたのは、筆者の筆実力の妙か。
勿論家久の類稀なる戦略眼に目を見張らされるが、徐々に拡大していく組織まとめ上げることに苦心し、兄弟への嫉妬すら滲む出させる長男義久は、むしろ家久よりも何処となく現代人を思わせ、共感するところが多いかも知れない。
中山義秀文学賞と、あまり知られていない賞を受賞しているのも納得のものであるか。 -
Posted by ブクログ
斎藤龍興が主人公。歴史好きならえぇ、あの暗愚な龍興?と疑問を持つこと必至。龍興と言えば信長正室として有名な帰蝶の父斎藤道三の孫(だから蝮の孫)、そして信長に負けなかった勇将斎藤義龍の子として有名だが、その有名さはかなり情けない武将としてである。家臣の竹中半兵衛には居城である稲葉山城を乗っ取られたこともあり、信長との戦いでは配下の3重臣に裏切られて敗走。今放映中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」でもかなり駄目な君主として描かれていた。しかし史実の龍興はどうやらそこまで駄目な武将では無いらしい。逃亡後越前の朝倉氏に匿われた後、美濃再興を夢見て、信長との戦いに身を投じ、26歳でついには戦死するという、なかなかダイナミックな一生を送っている。さらには、どうやらその刀根坂の戦いを生き延びて、久右衛門という名で現在の富山県に村を作り、86歳まで存命したとの伝承があるらしい。この小説はそこに題材を取っているのです。龍興様、途中からはえらくかっこいい。実際どうだったかはともかく読後感とても爽やかな小説に仕上がっており、読んでよかったです。