「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師森口によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸
...続きを読むした、イヤミスの女王・湊かなえのデビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラー。
自分だけの世界に浸り肥大した承認欲求をもてあまし命の価値を実感出来ない思春期の生徒、娘を殺した生徒に対して巧妙に仕組まれた復讐を仕掛ける担任教師森口、犯人生徒、犯人生徒のひとりに片思いする女子生徒の視点から描かれる森口の復讐から浮かび上がるのは、思春期の生徒の独り善がりな正義感や自分の感情と承認欲求しか大事に出来ず命の価値を実感出来ない歪んだ心理(特に自分の才能を発揮して自分を捨てた母を振り向かせたい一心で起こしたのが殺人だった主犯の生徒のサイコな心理や女性教師森口に操られているとも知らず主犯の生徒をいじめる生徒の独り善がりな正義感など)、息子を美化するあまり本性が見えず悲劇的な結末を迎える犯人の一人の生徒の母と熱血教師でいようとするあまりクラスの実態に気づかない熱血教師ウェルテル、復讐の果てにあるとことん救いのない結末まで、アンチ学園ドラマイズムで描き抜く、逆説的命の授業的な傑作イヤミス小説です。
「あなた方は嘘をつくのが上手いですから」「誤った生徒に自分の罪を認めさせ命の大切さを実感して欲しい。自らの犯した罪の重さを知り、それを背負って生きて欲しい」「法律が許しても私はあなたを許しません」「これが私の復讐です。本当の地獄。ここからあなたの本当の更正が始まるんです」