湊かなえのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読み終わって「少女」のタイトルをみると、純粋故の恐ろしさを感じる。関係なさそうに思えた人物たちが実はつながっていて、おじさん達を追い込んでいく。。。
少女が主だと、どうしても「性」の話に行きがちだけど、今回はそこまでではなく、より少女らしい動きだった。それがより一層、純粋さを強調しているように感じた。
子どもは想像力が豊かなようで乏しいんだなと感じた。乏しいからこそ、やりたいと思ったらすぐに行動に移せるし、様々な事件を起こしてしまう。「死」に好奇心をもち、それが他人に振りかかるのを求めてしまうのも、想像力の乏しさ故なのかも。
純粋さは想像力の豊かさとも、乏しさとも共存できるみたい。子どもみたいな犯罪者は、純粋だけど想像力が乏しいまま成長してしまってるのかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったです。
物語は、「珊瑚の女王を殺したのは誰なのか」という謎から始まります。
そこから登場する9人を一人ずつ追い、それぞれの視点から同じ出来事や人間関係を見ていく。
この構成がとても良かったです。
単純に犯人を探して終わるミステリーではありません。
一人の人生から別の誰かの人生へ。
そこからさらに別の人物へ。
物語が枝葉のように広がっていき、少しずつ全体像が見えてくる。
その作りがかなり面白かったです。
9人全員に物語がある
特に良かったのが、9人それぞれのキャラクターです。
誰か一人だけが物語を動かすのではなく、それぞれに考えていることがあり、それぞれに隠しているものがあります。
同じ出来事でも、立場が変われば見え方も変わる。
ある人物から見た誰かと、別の人物から見たその人では、まったく印象が違ってくる。
そんな視点の変化を繰り返しながら読み進めていくことで、登場人物たちがどんどん立体的になっていきました。
そして9人とも、それぞれ魅力があります。
人がいなくなっても物語は続く
この作品で印象的だったのが、中心にいた人たちがいなくなったあとまで、きちんと描いているところです。
普通なら、大きな事件が起きて真相が明らかになれば、そこで物語は終わるかもしれません。
でも『王国』では、その出来事によって残された人たちがどう変わっていくのかまで続いていく。
一つの出来事から、人と人との関係が枝分かれしていきます。
誰かの言葉が別の誰かに残る。
誰かの思いを受け取って、また別の人物が生きていく。
そんなふうに、人の思いが循環していくような感覚がありました。
そこがすごく良かったです。
誰かのために生きている
9人を追っていくと、それぞれが自分一人のためだけに生きているわけではないことも見えてきます。
誰かを思っている。
誰かを守ろうとしている。
誰かのために何かを隠している。
その行動が正しいのかどうかとは別に、人間の行動の奥には必ず誰かへの思いがある。
そこがこの作品の温かい部分でした。
事件そのものは決して明るい話ではありません。
辛いこともあるし、嫌な出来事も起こります。
それなのに、読み終わった時に残るのは単純な嫌悪感ではありませんでした。
むしろ、少し切なくて優しい。
そんな不思議な読後感があります。
ミステリーの先が面白い
もちろん、「珊瑚の女王を殺したのは誰なのか」という謎があるので、ミステリーとして先を読みたくなる面白さもあります。
ただ、個人的には犯人探し以上に、人間関係が少しずつつながっていく部分が面白かったです。
最初は少し離れた場所にいた人物たちが、一つの事件をきっかけに関わり始める。
それまで知らなかった誰かの気持ちを知る。
そして、過去に起きた出来事の意味まで少しずつ変わっていく。
読み進めるほど、「この人はここにつながっていたのか」と分かってくる感覚があります。
ワクワクしながら読める一方で、かなり切ない。
この両方があるのが良かったです。
9人で作られる一つの王国
『王国』というタイトルも、読み終わると少し違って見えてきます。
一人の主人公だけで作られた物語ではありません。
9人それぞれの人生があり、それぞれの秘密があり、それぞれの思いがある。
その全部がつながって、一つの大きな物語になっています。
辛い事件を描いたミステリーなのに、最後には人と人とのつながりが残る。
誰かが誰かを思い、その思いがまた別の人へと続いていく。
湊かなえ作品らしいミステリーの面白さがありながら、それだけではない優しさと切なさのある作品でした。
かなり面白かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新進気鋭の映画監督である"香"と、うだつの上がらない脚本家見習いの"真尋"が「笹塚町一家殺人事件」の真相にせまる湊かなえの『落日』。
本作において最も魅力的だったのは、登場人物たちが持つ「知りたい」という価値観の対比と、その関わり合いを通じて価値観が変容していく様である。
香はかつて、父の死や母からの拒絶に対する自己防衛から「知りたい」という欲求にバリアを張っていた。
しかし、同級生が「最後の晩餐」を調べる姿を見たことをきっかけに、父が最後に見た映画を知りたいと強く願うようになり、「知ることが救いになる」という生き方に変容していく。
一方、真尋は姉の死から目を背け、「真相を知っても事実は変わらない、知りたいと思うのはエゴだ」と語った。
香と衝突する中で自分の逃避に直面し、ついに姉のことを「知りたい」と向き合ったことで、事件の真相へと辿りついてゆく。
本作は「知る」という行為が多角的に描かれている。
知ることは生きる支えであり、前に進む力であり、救いであると同時に、エゴでもあるという。
かのアリストテレスが「すべての人間は、生まれつき知ることを欲する」と述べたように、知ることは人間を人間たらしめる根源的な欲求であることは間違いないだろう。
しかし、そこに「エゴ」というどす黒い側面を孕んでいるということを突きつけられたことは、目からウロコだった。
最後に、タイトルについて考えたい。
『落日』とは、太陽の沈みゆく様を意味する。
事件の真相が真尋の脚本によって暴かれるラストは、
まさに本作にとっての日没、つまり物語の激しい終焉そのものであったように感じる。
随所に散りばめられた伏線が、文字を追うごとに回収されていく様は、まるで走馬灯を見ているかのようだった。
このタイトルは事件の闇の終焉と、登場人物のそれぞれの葛藤の終着点を指し、その様を疾走感あふれる伏線回収により表現したのではないかと推し量る。
心躍る読書体験で、忘れられない一冊となった。 -
Posted by ブクログ
普段は小説を読まないが、友人に勧められ読むことに。
本当に面白い作品で、するつもりは毛頭なかったのにぶっ通しで読み続け、数時間で読破してしまいました…
作中、随所で
同じストーリーのはず…なのに、視点が変わる度に感じ方が変わるなぁ…
一人一人の登場人物が鬱陶しいはずなのに、視点が変わると同情の気持ちが湧くなぁ…
という感情を抱いていた。
ラストの小島さと子の一言…
「長年暮らしてきたところでも、一周まわって(観覧車から)降りたときには、同じ景色が少し変わって見えるんじゃないかしら。」
このセリフを読んだ時に、湊先生がそれらを意図していたことを確信した。
本当に心躍る読書体験でした!