小野寺史宜のレビュー一覧
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ネタバレバンド「カニザノビー」の4人の物語。
何か劇的な展開がある訳ではないけれども、リアル。
東京の駅名や路線、街の雰囲気が事細かに表現されていて、私は都内に住んだことがないから全くピンと来なかったけど、暮らしたことがある人はありありと情景が浮かんできてより物語を近く感じるんじゃないかな。
話に出てきたビリーホリデイやマウンテンを流しながら読み進めていくのもとてもよかった。
バンド解散後、それぞれの道を歩み出した訳だけれども、絹枝がお母さんの姿を追いかけそれと同じことをやるだけでなく、新しい挑戦に向かっていくラストはとても爽やかだった。 -
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江戸川のほど近くにある、4室だけの小さなアパート「ベルジュ江戸川」。
そこに住む人々が直面する悩ましい出来事と、それに住人たちが向き合えるようになるまでを描く連作短編ヒューマンドラマ。
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東京メトロ東西線。その電車から私が毎日見てしまうのが妙見島と呼ばれる、2本の川に挟まれた陸地の部分だ。2本の川と言ってもどちらも旧江戸川で、わりと大きな道路が橋代わりに渡されているとは言え、どう見ても孤島だった。そこを私は、通勤の行きも帰りもつい見てしまうのだ。
島の目印はラブホの大きな屋上看板。別にラブホに興味があるわけではない。
ただ、都会の陸地と切り離された立地を見るこ -
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ひと、まち、いえに次いでうた。著者の小野寺さんのこれらの作品には共通して、暮らしの切り取り方が上手いというのがある。そこに世界を巻き込むような出来事や派手な展開はほとんどない。ただある街の若者たちの暮らしを追うのである。
今回の作品はうた。上で述べたように、歌で世界的ヒットをしたり歌が絶望にある人を救ったりというような大きな話ではない。ただ合唱団に所属する母や、バンドを組み共に青い夢を追った友人など、主人公と人との繋がりのそばにはうたがあった。そんな、どこにでもあり得るような、どこかで起こっているような話なのである。読み終わるときには多くの登場人物を好きになり、感情移入できる作品である。
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郵便配達員の日常を描く第6弾。みつば郵便局勤務7年目、30歳になった平本秋宏。
小野寺さんの小説は、「ひと」「まち」のときも思ったけれど、どんな通りすがりっぽい、そのあと出てくることはないんだろうなって人でも、ちゃんと名前がある。何ならフルネームのことだってある。
だから読み進めていくと、過去のエピソードがつづられたときに、あの人ね!となる。
初登場で苦情を言って、そのあと彼氏と別れた片岡泉さん。お茶やアイスを一緒に飲んだり食べたりする場面が出てくると、元気だったのね!とうれしくなる。
ある街の日常を見ているような、温かい気持ちになる。