小野寺史宜のレビュー一覧
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小説家と編集者でのW主人公作品。以前読んだ他作品にも同じ形式のやり取りがあり、今回もすんなり入れた。
もちろん同い年である横尾さんにがっつり感情移入する。後が無いはずなのに、余り追い詰められた感じがなく重くなく読める。苦労はしているのたけど。
弓子の病気を知り、先のことを考える辺りは自分自身にも問われているようで身に沁みた。この先も弓子とはこのままの関係で良いパートナーであって欲しい。理想的な関係なのかも。
終わりの方でどっから現実で、どこから作品なのか入り乱れて少し混乱してしまったが、終始横尾さんの生活の様子にハマってしまった。また再読しよう。 -
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寝坊で卒論を出しそこね、内定を取り消され、彼女まで失った田渕海平。
オレオレ詐欺の片棒を担がされそうになった中林継男。
とある理由で東京で出会った二人は年の差五十三歳で、共通点は片見里出身ということだけ。
東京で一人暮らしの友人を気にかける75歳独身の継男がいい人すぎて、何だかしみじみと心に沁みてくる。
一方の22歳海平も、継男に出会ったことによって人生が少しずつ変わり始める。
小野寺さんの描くお話は、淡々としているように見えるけれど奥が深くて、老いも若きも関係なく、生きてるっていいなぁと思わせてくれる。
人との出会い、特に家族や同級生たちとの再会を通して地元愛を感じる、前向きで温かい作品 -
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多少、名の知れたクラリネット演奏家だったが、46才になり仕事が無くなってきた。男やもめの侘しい生活が延々と書かれて行く。節約のために豆腐が入っているパッケージの汁を飲み、週1回のモーニングを食べにファミレスに通う。スーパーでも安い物だけ購入。それでいて、クラリネットを上手く吹けるようにという気力も無く、淡々と日常を過ごすだけ。このような記述が続き、読む気を削いで行く。
そんな中、昔付き合っていた女性の息子が突然現れる。ギタリストの息子を切っ掛けに音楽の道が再度開く。高校時代に親しかった女性との交流も復活して、後半からは希望を感じさせる展開となって行く。
前半のあの停滞感は何だったのだろう。最後 -
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さまざまな年齢の「泉ちゃん」と出会った人たちが語る泉ちゃんについての短編集。
泉ちゃん好きだった~♪
正直もっと読んでいたかったし、現実に泉ちゃんと友だち・同僚でもいいからなってみたい。
一緒にいると居心地がよくて楽しくて明るい気持ちになる。なぜか人を惹き付けてしまう。
こういう人いるよなぁ。
ハッキリものを言うところも、他愛ない会話すらも愉しげ。リラックス感がすごい!
こちら『みつばの郵便局』シリーズに登場の泉ちゃんに焦点をあてた作品。あいにく未読ですが、「絶対シリーズも読みたい!」って思いました。
近所のお姉さんから見た小学生の泉ちゃん。
部活の友だちから見た中学生の泉ちゃん。
ア -
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東京にある大手出版社の景談社に勤める4人の既婚者を中心に、夫婦という関係の機微を描いた連作短編集。
◇
その日の佐原滝郎は、朝から落ち着かなかった。ひとり娘の楓が彼氏を家に呼び、両親に紹介することになっていたからだ。妻の和香も落ち着かないのか少々はしゃぎ気味だ。
約束の時間は午後1時。30分前に特上にぎり寿司5人前も届き準備万端だ。
ところが1時になっても玄関のインターホンは鳴らない。5分過ぎ10分過ぎても同様だった。楓が一緒にいるはずだが連絡もない。心配し始めたところ15分遅れで2人が到着した。
「おじゃましま~す」というチャラい挨拶とともに姿を見せた彼氏 -
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今作も小野寺史宜さんの小説の主人公はいい人でした!
小学校教師を辞め、商業施設で警備員として働く石村。
困っている人を助けたいと思ってとった行動が元で教師を辞めることになり、人と関わることを避けて生活してきたが、勤務先で置き引きをしようとしている少女を見かけたことから、もう一度自分の心を見つめ直すことになる。
自分が正しいと思ったことも世間からは正しくないと思われることがある。思われるだけではなく糾弾されてしまえば自分の信念を貫き通すのは難しい。
でも、自分を偽って生きるのはもっと苦しい。
石村の周りに石村を理解してくれる人がいて良かった。それが一番の力になる気がする。
ラストはタイトル -
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大地は伯母と2人暮らし。
みつば高校の三年生で、サッカー部では補欠。
大地の母は、大地が中一の時にがんで亡くなっていて、母の姉である絹子伯母さんが大地を引き取って育ててくれている。
学校と家を往復するだけの日々。
伯母さんはキャリアウーマンのしっかり者で、いつだって大地の味方だし、決して強豪チームではないけれど、監督をはじめ、サッカー部の部員たちと女子マネージャーとのふれあいも、読んでいてとても好感が持てます。
物語が淡々と進んでいくのだけれど、不思議と続きが気になります。
高校三年生という貴重な時間の中で、部活も進路も淡い恋心も、大地の心の揺れが痛いほどわかります。
主人公の描き方がさり