小野寺史宜のレビュー一覧
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再読。小野寺さんの作品はやっぱり好きだ。
読んでいると、さわやかな風と太陽を浴びながら見晴らしのいい河原を歩いているような気持ちになる。最近読んだ「いえ」と同様に、主人公が川の近くに住んでいるから、余計にそういう気持ちになるのかも。
今回は特にうだつの上がらない主人公だった。基本的に優しいし周りの人を大事にはするが、人生を割とだらだら過ごしていて、きっと身近にいたらイライラしてしまう人。
しかし彼がすごいのは、どんな人とも馴染めてしまうところ。初対面でもまるで長年の友だちのように、年上や年下でも気軽な仲の同年代のように、緊張せずするすると話している。
人見知りの私からするとその個性は特殊能力のようにも見えるが、きっと主人公は他人とのあいだに隔たりがないか、隔たりがあってもそれをとても低く見せられる人なのだろう。
数年前、本作を読んでから著者の作品をよく手に取るようになった。勝手な想像ではあるが、おそらく私は小野寺さんと人を好きになるポイントが近い。
登場人物たちのこういう所が好きだなぁと思うところを余すことなく押さえてくれる。ちょっと嫌だなぁと思う人でも、近づいて関わってみると、根がまじめなところやかわいいなぁと思えるところがある。どの作品でも必ずある。だからストーリーは軽妙で読みやすいのに、とても印象に残る。
最後に、以下印象に残ったところ。
ー牧田梨紗は、玄関に行って、くつを履きかけた。が、すぐに戻ってきて、僕をハグした。ふわりと。どこからか吹いてきた風のように。
「ほんとにありがとう」と、彼女は僕の耳もとで言った。
上品な花のような柔軟剤のいい香りがするシーンだった。そんなことは書いていないのに。この瞬間、私は完全に「僕」になって、彼女が離れた後もしばらく甘い空間に包まれて、ぼーっとしていた。主人公に言わせると、これが「牧田梨紗はやっぱりすごい」ということなんだろう。
この作品は、きっとまた数年後に読みたくなるだろう。 -
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小野寺さんのたいていの作品は
読んでいると、
“一人の女の子に片想いした二人の男の子がその子を巡って勝手に決闘する”ような幼稚な男臭さのようなものを感じるんだけど、
今回も多分にその雰囲気があった。
作風としてそう書いているのか、認知がそちらに偏っているのか、毎回考えながら読むけれど、少しメタ的に否定するような表現もあって結論は出ないまま。
自分自身は別にパートナーが異性と旅行に行ってもあまり気にならないし、それが少数派な気はしているし、とはいえ仮にDNA検査の話をされた日には、先輩だろうが領域に踏み込んできすぎなので、とても腹が立つと思う。 -
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ネタバレよむーくとちいかわのコラボ栞が欲しくてたまたま購入した本でしたが、思った以上に良かったし、好きなお話しでした。
こども食堂を始めて、そこにボランティアで来てるスタッフさんや来てくれる子供や親の視点でのお話しを短編でつづったものでした。
最初はこども食堂が題材だし、いい話風にして終わるのかなぁと思っていましたが、ちゃんと個人個人の気持ちが書かれていて、しかも現実的というか共感する部分が多くて、ただこども食堂を開いて子どもの為にやってます、良いことしてます!みたいな単純な話しではなかったから良かったのかなぁと思います。特に主人公?の松井さんの考え方や話し方に凄く好感がもてたのも良かった要因かと。
特に最後のシーンはホロリと泣いてしまいました。
この作者さんの作品はこれが初読みでしたが、他の作品も読んでみたくなりました。
好きな言葉があったので…
「ありがとうはね、言った方の負けじゃないですよ。言ったもん勝ちですよ。」
「汚いところをきれいにするのが掃除。きれいなとこをまたきれいにする掃除じゃ意味がないの。それはただの自己満足」
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小野寺史宜さんの『ひと』『まち』に続く物語
今回の『いえ』は、家族が主なテーマ。
舞台は変わらずに主人公だけチェンジ!
という構成なので、前作までの主人公にもひょっこり出会えるのが楽しみだったりする。
【あらすじ】
主人公の三上傑には、大学生の妹、若緒がいる。
ある日のデート中の交通事故で、若緒は後遺症で足を引きずるようになった。運転していた若緒の恋人は、傑の友人でもある城山大河だった。
この事故をキッカケに、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡って、一家はギクシャクし始める・・・
【レビュー】
兄の傑は社会人3年目、
妹の若緒は就活中の大学生。
家族との付き合い、
友人との距離感、
社会との接し方、
この年頃特有の世間にあまり揉まれていないが故の不器用さやもどかしさ、苛立ちや葛藤が、傑目線でとても真っ直ぐに描かれていた。一方で、自分の至らなさや未熟さに向き合い、誠実に対処していこうとする姿は、とても新鮮で好感が持てた。
私自身どうだっただろうと思い返してみても、何だかもっと奔放に自分勝手に生きていたように思えて、気恥ずかしくなった。
人と人が出会い、繋がり、家族を持った先にある『いえ』を舞台にした本作。血が繋がっていてもいなくても、言葉にして伝えなくては伝わらないことって必ずあると思う。
特に、人に謝ることって本当に難しい。
たとえ大人になっても、
これは出来る人と出来ない人がいる。
謝ることによって、他の誰でもない自分自身が救われるのかもしれないと、本作を通じて改めて気付かせてもらった。
余談だが、物語の舞台となる総武線の平井駅。
私も一昔前、江戸川区に住んでいたので、情景が思い浮かび再来したくなった。
当初はディープな街というイメージしか持てなかったが笑、きっと同じ場所でも、出会う人、訪れる場所、その時の自分の置かれた環境によって、見え方が180度変わるんだろうと思う。
それもまた人、面白い。
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ネタバレ去年発売の新作。
解散したバンドメンバーのそれぞれの人生の話。
音楽諦める、次の人生どーする?
そんな話からやっぱり音楽ていいよね、歌うっていいよね。声を合わせて音楽を作る。会話とは違う声の出し方。上手く言えないけど歌うっていいなって思った。
いい意味で考えなくても声が出せる、決められた音、決められた歌詞を歌って発信できる。
なんか日頃コミュニケーションに疲れてる私に染みる話だった。
声がうたになる。
湧き出てくるものがある、それがうた
素敵だなぁ。やっぱり小野寺さんは染みる。
人間関係に疲れた時にはこのシリーズ読み返したい。 -
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平凡な日々が描かれているようで、日常は平凡じゃないと感じた。昨今、切り取り動画が流行っているけれど、切り取り方次第で動画の印象が全く異なる。それと同じで、想い出をどう切り取ってどう思い出すか次第で、想い出も変わるんだと思う。平凡と思えば平凡な日々だし、特別だと思えば特別な日々。
短編のなかでも『君を待つ』が特に好き。とある事故が起こった電車に乗るはずだったけど乗らなかった男性。乗る予定がなかったのに乗った女性。その2人が出会ったことで新しく生まれた命。
こうして切り取ると特別な出会いのように思えるけど、その特別も日常の延長線上にあった出会い。
ありきたりな言葉だけど、本当の意味で全てのことに意味があると思えた。 -
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内容も小説の構成も非常に複雑な内容だった。
現在40才、18歳の高校3年生、20代、30代の繰り返しが3回続く。情報が小出しのため、全てを理解するのに最後まで読まないといけない。
友人と乗ったボートが転覆し、友人が死亡する。赤ちゃんが出てくるが、誰の子供かわからない。5人の高校生。生徒会長と副会長のカップル、元バスケ部のエースのイケメンと吹奏楽部のエース美女と4人のスターと普通な主人公がバンドを組む。
突然の隣家の奥様と主人公との一夏の経験。この奥様家族とは最後に意外な関係に。
5人の関係も複雑に変わって行く。エース美女との両思いなのに、告白されて断る主人公。皆んなくっついたり別れたり。主人公もある女性との交際で職を失ったり、忙しい。
イケメンと美女の結婚、それに複雑な思いの主人公。「夜の側に立つ」の題名が意味深。黒い主人公の内側が若干怖い。
最後まで読まないと、色々な秘密が解読できないので一気に読ませてもらった。 -
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銀座のミニシアター、数年前に亡くなった映画監督の作品が追悼上映される…そしてそこにたまたま集った観客6人には、それぞれの人生とこの映画には接点があった…
こんな一節があった。
一本の映画を通して観る二時間。その間は自分から離れ、自分でいる必要が無くなる。他人の日常を追体験し、元の自分に戻る…
まさに僕も映画が好きな理由はこれだ。
映画の中で、自分がいつの間にか政治家になったり、ヤクザ、刑事、ヒーローなり、違った人生を味わえる。(味わった気になる)
後からDVDとか配信で見るよりも、映画館で観るほうがやっぱり一番面白いよなぁ。
小説のストーリーは淡々と進んでいくが、映画のセリフや内容と観客の身の回りの描写が行ったり来たりして、時々見失うのが僕には少し残念だった。
銀座にあったシネパトス(2013年に閉館)や、飯田橋のギンレイホール(2022年に閉館)のことを思い出しました。今やシネコンばかりで、昭和の香りのするミニシアターは無くなる一方だけどなあ…