今村翔吾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
歴史小説のなかでも、有名な武将や偉大な功績を残した教科書に名前が載る人物などではなく、ただ戦を終わらせたいと願う2人の職人に焦点を置いた作品だ。主人公に関しては一応、穴太衆の匡介だと思われるが、登場する人物のキャラクターはどれも濃く、主人公に負けず劣らずと言ったところだ。戦国時代の知識は作品をより理解する事ができるという点で非常に大切だが、この小説はあまり詳しくない人でもとっつきやすいと思う。前述したが華やかな武将でもない職人が中心である本作がなぜここまで面白いのかと考えてみると、やはりそれは場面、展開の移り変わりの丁度良さにあるのではないだろうか。とても言葉で形容しがたい自分の文章の組み立て力不足に歯痒い限りだが、とにかく丁度良い。ここぞというタイミングで話の転換がもたらされる。読者を飽きさせないこの絶妙な演出は上から目線で申し訳ないがただただ素晴らしい。個人的にはマイナーな武将が登場するのも嬉しいポイントだった。今村翔吾先生は正当な評価を得られない人物のクローズアップを作品ごとに行ってくれる。それが上から目線で重ねて謝罪させてもらうが大変気に入っている。クライマックスのシーンは誰もが手に汗握る緊迫の展開に脱帽だ。歴史小説が気になっている人は是非とも手に取っていただきたいと自信を持って本書を推薦する。
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Posted by ブクログ
めっちゃ面白かった。570ページも読むの大変だったけど、先が気になってどんどん読み進められる。最近戦国時代を勉強し始めて、ストーリーの大筋がうっすら分かる、くらいのレベルで見てるから特にちょうどいいんだと思う。逆に全く戦国武将を知らないと登場人物のイメージが掴めなくて読むの大変かも。
真田信之、幸村を題材として、大坂夏の陣での不可解な謎を5人の証言と共に家康が解き明かしていく。織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永から見た大阪城での真田の戦、そしてその間にこの兄弟の昔話が入って一つの物語となっている。この昔話が始まるたびに六文銭が一つずつ集まっていくのが洒落てて好き。
私の推しポイント一つ目は、一人一人にしっかりフォーカスが当たっていて、それぞれの物語を持っているところ。南条元忠って誰だっけと思いながら読んでいたけど読み終わる頃には感情移入してる。楽しみながら各々の生い立ちを知れるのが良い。伊達政宗の話が好きでした。
二つ目は、幸村の不気味さが感じられるところ。真田幸村という男は一体誰で、何を考えているのか。真田目線ではなく周りの証言をもとにして話が進んでいくので、得体の知れなさが伝わってくる。当時の家康の気分が味わえているようで面白い。
三つ目は、幸村だけではなく真田家の戦として大阪城での戦いが描かれているところ。実際はわからないけど、昌幸から継いだ思いを兄弟2人が力を合わせて見事に叶えた、という話には夢があると思った。信之は戦場に出たわけではないけれど、話に一枚噛んでいたとしてしっかり登場してくれるのが嬉しい。
四つ目は、「幸村を討て」というタイトル。みんなが口々に幸村を討て!と言うんだよね。「関東勢百万も候え、男は1人もいなく候」というセリフが本当にかっこよくて。しかもその言葉ですら幸村が相手に言わせてたと閉めるのも良い。
忘れた頃にもう一度読みたいな。
以上戦国時代に全く詳しくない人の感想でした。 -
Posted by ブクログ
明暦2年、十蔵は日本橋松川町に寺子屋の青義堂を開いた。十蔵の寺子屋は安い。そして男女の別なく、どの身分でも入れる。
実は十蔵は伊賀者だった。神君家康公を本能寺の変からの逃走中にお守りして以来、部下に加えられた。今も大名家を探ったりする。というのに悪戯っ子達に水をかけられる失態をおかしたりする。
第1話 月岡鉄之助は剣術に打ち込みたいのだ。寺子屋で座っている場合ではない。しかし父は今のご時世剣だけでは食べていかれぬという。どうせ剣でも筆でも生きていかれぬ世の中だから、仕方ないと思うのだ。
母を飯盛女と求馬に侮辱されて、鉄之助は立ち会う気になった。青義堂を破門にしてもらわねばならない。十蔵がやってきて、刀を収めるように言われた。そしてなぜか、道場主の兵部衛と十蔵が戦うことになった。
第2話 吉太郎は無駄銭使いの名人である。今は着物に凝っている。最近はどうやらふらふら出歩いているようで、十蔵は後をつけることにした。紙屑拾いに扮する。吉太郎は橋の下の乞食達に菓子や餅を配り出した。吉太郎は親の稼いだ金を泡銭だと思っているらしい。ところが吉太郎は拐かされた。
第3話 源也の父大工の棟梁定一が、息子を辞めさせると乗り込んできた。そろそろ大工仕事を仕込みたいらしい。源也は友達もいるし、青義堂を辞めたくないという。源也は陸船車を作っていた。からくり師になりたいらしい。
源也、吉太郎、鉄之助がいなくなった。
第4話 千織が今日は女論語で文句を言わなかった。千織がおかしいのは、縁談のせいだった。ほぼ小大名に等しい1万6500石の松根城代村井家からである。聞き込みをしたところ、破談になるとの噂。私は男に生まれたかった。女の身では何者にもなれません。と千織はいう。あれこ」あって縁談は破談に。
第5話 昔から十蔵は秀でた忍びだった。23歳の時、殺しの命を受けた。その時に睦月と出会った。もらってやって欲しいと言われる。2人は結婚した。しかし忍びの妻子が狙われる事件が相次ぎ、別れてくれと頼む。隠密をやめて寺子屋をやることにする。
第6話 伊勢詣をこっそり筆子達が企んでいる。どうせならついていってくれないかと相談を受けた。千織まで行くらしい。ほぼ書き上がっている「隠密往来」を預ける。男の足なら15日。女の足なら20日。126里の道程である。費用は福助が出してくれた。しかし菰野に住む睦月に魔の手が迫っていることを知る。
第7話 子供達は十蔵を守るために走る。
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シリーズ8冊目。
新之助がまさかの豪族一家殺傷事件の下手人(?)になり、娘二人を人質として逃げる逃亡劇。
街全体を敵にまわすことになってしまった時、自分だったらどう思うか。精神的にも並大抵のものではない。
でも常に誰かを助けることを第一に考える、火消のモットーからは外れない人だというのを、ひしひしと感じる。
情報が限りなく少ない江戸時代で、いかに真の下手人までにたどり着けたこと、また麒麟児と呼ばれる剣術は最高の賜物。奥義・転(まろばし)で敵を締めあげたのは、すごく格好良かった。
すべては才能でもあるが、源吾が新之助にしっかり伝承した証なんだよなぁと感慨深くもあった。
また源吾たちと京都で出会った長谷川平蔵(本所の銕)、新之助が下手人になったのかの真相を突き止めるが、今回の事件での影の立役者、そして火消の熱意と信頼が溢れ出ていた。普通だったら犯罪を犯す人に一歩引いとしまうもの、それが誰もが新之助は下手人じゃないという新之助を信じる心が厚かった。
今までよりも一番おもしろかった。
誰かのために命を懸けて戦い助けることを、常々『ぼろ鳶シリーズ』では彼らのハングリー精神にいつも度肝を抜かれます。 -
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本作は、攻める者と守る者の信念のぶつかり合いを描きながらも、単純な善悪では割り切れない構造となっている。攻める側には攻める理由があり、守る側には守る理由がある。そのどちらにも確固たる信念と正しさが存在するからこそ、両者の衝突はより重く、そして熱く感じられた。
構成としては、特に序盤から中盤にかけての展開が個人的に強く印象に残っている。登場人物たちの信念や職人としての矜持が描かれ、非常に熱量の高い場面が続き、この作品の魅力が最も感じられる部分であった。さらに中盤から終盤にかけては籠城戦を中心に緊張感が一気に高まり、手に汗握る展開となっている。
一方で、終盤から結末にかけてはそれまでの熱量がやや落ち着き、やや尻窄みな印象も受けた。しかしこれは単に勢いが落ちたというよりも、読者に作品のテーマを考えさせるための余韻として機能しているように感じられた。
また、登場人物の中でも特に印象に残ったのは京極高次である。彼は圧倒的な武の強さを持つわけではないが、優しさや人としての在り方を失わず、それでもなお戦いの中で立ち続ける姿が非常に魅力的であった。「蛍大名」と呼ばれるその存在は、儚さの中に確かな光を持つ人物として描かれており、その生き様には強く心を動かされた。
以上のように、攻める者と守る者の泰平への信念がぶつかり合う中で、信念の大切さを深く描いた作品である。読後には、「守るとは何か」「強さとは何か」「平和とは何か」という問いが静かに心に残る作品であった。