今村翔吾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今村翔吾さん著「九紋龍」
羽州ぼろ鳶組シリーズの3作目。
今作品も素晴らしい。
これはきっと残りのシリーズ全て共通だろう。
今作の中心人物は「ろ組」の辰一。
彼に纏わる背景がミステリー風に描かれていく。そこに絡ませてくる人情物語。読み応えが抜群。
この先のこのシリーズ、「火喰鳥」率いるぼろ鳶組と新キャラクターを掛け合わせて火事場を設ければ幾らでも物語が描けてしまうだろう。
著者のこの黄金プロットに脱帽。
それにしても毎回ここまでの人情劇を絡ませてくる著者の力量、本当に素晴らしい。
まだまだ続くぼろ鳶シリーズ、読破目指して読み進めていきたい。 -
匿名
ネタバレ 購入済み時代は文永の役のあと、一度撃退した元の再来に脅かされている鎌倉時代中後期。
もともと鎌倉幕府最強の水軍とうたわれた伊予の河野家は、
承久の乱で幕府と敵対したことと、お家騒動のために没落の憂き目を見ていた。
その河野家の若き当主六郎は、市で奴隷として売られていた金髪碧眼の娘と、高麗人の男を引き取る。
物珍しさというより、見知らぬ土地への強い関心からだったが、
令那と繁と名付けた二人ともが元の襲来のため故郷を追われていたことを知る。
やがて再び元軍が襲ってくる気配が濃厚となり、幕府から出撃を要請され、九州へ出向く。
九州で元軍を迎え撃つことになり、元の船と人数に圧倒されつつも元を翻弄する。
そして、野分が吹き荒れたことで、元軍は壊滅するが、
六郎は幕府側の指示に逆らい、元軍の兵たちを助けようとする・・・。
最前線で戦う武士の側から書かれた元寇というのはあまりないので、興味深かったです。
ちょっとラストが「あれ、これで終わり?」と思ったりもしましたが、
結末は読者それぞれにゆだねられたという気がしました。 -
Posted by ブクログ
爱媛県の人がこの小説を読めば、松山城主や大洲城主の複雑な描かれ方に戸惑うかもしれない。NHKの『豊臣兄弟!』の影響もあり、このタイミングで手に取ってみたが、実に読みごたえのある面白い作品であった。
本書の構成はユニークで、七本槍の武将一人ひとりを主人公にした7話からなり、それぞれの武将と「八本目の槍」である石田三成との関係を通じて人物像をあぶり出している。そのたくましい想像力と構成力には感嘆させられる。三成の壮大な経済的見識や知略はさておき、武将同士の相互の人間関係の描かれ方は息をのむほど面白い。
特に驚愕したのは大蔵卿局の生き方である。大蔵卿といえばNHKの『真田丸』で同役を怪演した女優・峯村リエの顔が浮かぶだけに、その印象とのギャップによる意外感は大きい。また、石田三成が米の石高から世の中のあり方を計算していく視点も面白く、家康の描かれ方も凄まじい。
思わず読み返さずにはいられない章もあり、この小説には大きな衝撃を受けた。それはちょうど、その頃に観ていたドラマ『Tシャツが乾くまで』で、蒼井優演じる主人公が過去の運転免許証を4枚出すシーンに直面したときと同じくらいの衝撃であった。 -
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ネタバレ不条理が罷り通る戦国時代にありながら、『弱者が虐げられず、誰もがその人らしく生きられる人間(じんかん)』を希求した、松永弾正少弼久秀を描く歴史フィクション。
フィクションとわかっていても、読み終わるまでに松永久秀のことが好きになってしまう。もっと多聞丸、三好元長、九兵衛の夢の続きを見たかった。
例えば『へうげもの』や、今の『豊臣兄弟』などの大河ドラマでも、おかしく爆死させてイロモノ扱いされていたり、三悪のイメージを強調して表現されていることが多い。たしかに私も、希代の梟雄ではあるけれど、あまり良い印象は持っていなかった。
しっかり裏切られます。
「世間の噂だけであの者は悪人だと決めつけていた。何も知らずに生きていた。」
今から500年近く前のことを描いているのに現代社会を揶揄されているようで、まったくその通りだな。と思う。
自分の目で見、音を聴き、手で触れ、心を通わせたものでなければ知ることは難しいことが殆どであるはずなのに、往々にして知ったかぶりをしてしまっているなぁ。
あれ?でも、これもフィクションか。
作り話を読んだだけで、松永久秀のことを好きになってしまっている…
作者にまんまと騙されているのに快い。 -
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ずーっと楽しみにしていた『茜唄』。
同じ今村翔吾先生の『童の神』を読み、平安時代を舞台にした作品に続いて、今回は平安末期を描く『茜唄』を手に取った。
『平家物語』を題材に、今村翔吾先生らしく再構成して描かれた作品で、上巻では清盛が亡くなる少し前から木曽氏との合戦、水島の戦いまで、下巻では物語が大きく動き、平家の最期へと向かっていく。
自分自身、平安末期から鎌倉幕府の成立については学校で習った程度で、そのときの印象はどうしても源頼朝を中心としたものだった。
「源頼朝はすごい人物」というイメージがある一方で、平家には「平家であらずんば人にあらず」という言葉の印象もあり、正直、あまり良いイメージを持っていなかった。
しかし、初めて平家物語を題材とした作品を読んで、その印象が大きく変わった。
特に、不利な状況だと分かっていながらも颯爽と駆け抜けていく知盛と教経が好きになった。
勝てば官軍、負ければ賊軍――そんな単純なものではなく、そこにはそれぞれの信念があり、信念と信念がぶつかり合っていたのだと感じた。
これは現代にも通じるものがあると思う。
立場や結果だけを見て、どちらが正しい、どちらが悪いと簡単に決めつけるのではなく、それぞれの側にそれぞれの想いや正義がある。
題材としては決して簡単な時代ではない。それでも最後まで読み終えたとき、本当に最高の読書体験だったと思える作品だった。
そして、家族愛には何度も心を揺さぶられ、涙が出た。
物語自体が長く、途中で少しダレるところもあったものの、それを差し引いても十分すぎるほどの高評価。
子供への暴力や家庭内暴力などがニュースで取り上げられる今だからこそ、家族とは何なのか、人は何を守るために生きるのかを考えるきっかけとして、たくさんの人に読んでほしいと思える作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本史は中学の歴史までしかきちんと勉強したことがなく、後は興味ある時代の小説を少々読む程度。NHK大河すら全く観てない。なので知識は少なく、あっても間違ってたり誤解してたり…。
楠正成・正行親子のこともそう、父正成は有能な武将だったが、子正行はそこまでではなかったイメージだった。野球で言う長嶋親子、野村親子がダブっていたかもしれない。
とんでもない誤解だった。この本を読んでから史実を少々調べてみても、小説ならではの虚飾部分を除いても、正成に劣らぬ奮闘ぶりを示したのが正行なのである。
その正行を題材に今村翔吾が小説を描いたとなれば、そりゃもう間違いなく面白い。その期待を裏切らない傑作である。歴史小説は結末が分かってしまう(史実を曲げるIF系はもう歴史小説ではないと思う)ので、そこだけが残念だが、多聞丸(楠木正成)と楠一門の活躍を上下巻900ページ以上に及んで描き、退屈させないどころか、ページ繰る手を止めさせず、残りページ数を惜しませ続ける。
アクションや戦場シーンの迫力、吉野での政治対話の読み応え、日常生活の穏やかな描写、どこもここも読み所である上に、その配置がまた巧みで、緩急のリズムが素晴らしい。その上に、敵役、悪役に至るまで人物が全員魅力的なのも良い。高一族や北畠親房までが、どこか憎めない人物として描いているのは特筆すべき特徴と思う。
今村翔吾作品は今のところ、どれも傑作なんだが、この本は一つ抜けてるかも知れない。飯森山も金剛山も吉野だって家から日帰りで行けるところ、なんなら大原(桜井の駅)は実家から徒歩2分。こんなに身近にいる史上の大英雄。非常に遅まきながら、楠正行・多聞丸のファンになった次第である