谷瑞恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ついにシリーズ完結。
「思い出」は日々の暮らしの中で美化されたり、歪められたりする。
そして、そのどちらも時に自分や大切な人を苦しめる。
そんな、悲しみと苦しみの中にいる人の思い出を修理するのがこの場所だった。
本書は『昼と夜のエタニティ』『幸運のタイムカプセル』『パートナーのしるし』の三編からなる。
『エタニティ』はペアウオッチにまつわる話だ。
理想の夫婦であったはずの両親が離婚することに......。
だから二人の思い出の品であるこの時計を直したら、もしかしたら二人の関係も修復できるかも!
そんな子供じみた発想にもすがりたい和歌。
その思い出は太陽と星の時計によって、過去ではなく、未来へと舵を切ることになった。
『パートナー」は明里と秀司の未来に続く物語。
秀司は独立時計職人になるのか。
明里は彼についていくのか。
夢か、現実か、そのどちらを選択するのか、二人は自分自身に迫られる。
いつまで待てばいいのか。
大切なものを、二兎を追うことは無理なのか。
いろいろな感情が溢れる二人。
二人の下した判断は......。
人には大切なものがいくつもある。
一つに絞れないことは往々にしてある。
自分を押し殺して誰かのためだけに生きるのも、自分のことだけを優先するのも、一つの生き方として尊重はするが、私は、それは対等な関係ではない気がする。
二人の未来に幸おおからんことを。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間の本質はいつも同じ?
グリム童話を題材にした短編集。初めて読んだ作家さんもいたが,これがその人のスタイルなのか,グリム童話が元だからこうなったのか,考えるところはありつつ。
谷瑞恵「ルンペルシュティルツヒェン なくしものの名前」就活が上手くいかない亜美に,不思議なメールが届く。それは小学生のときに出会ったカメに関するものかもしれない。亜美は少しずつ当時のことを思い出していくが。金の布を紡ぐ,名前を思い出す,童話のキーワードを元にささやかな恋愛モノになっている。ルンペルシュティルツヒェンは少しマイナーで,モチーフとしては弱かったかも。
白川紺子「白雪姫 白雪姫戦争」一番好きな話かも。文化祭で“白雪姫”に選ばれるのを目指す小雪。その本性はナルシスト,でも読み進めていくうちに可愛げが感じられる。ライバルの夕妃。こちらもなかなか強烈なキャラクターだが,にくめない。
響野夏菜「かえるの王様 二十年」ある意味,ホラー。オチが怖い。いや,女も男も怖い。かえるの王様にある,ちょっとグロテスクな,ちょっと怖い部分がよく出ている。奈々央はとあることから生理的に気に入らない根木と行動を共にすることになる。苛立つ奈々央に対して根木が言ったことは……。
松田志乃ぶ「眠り姫 のばらノスタルジア」古くからの西洋ホテルの娘・寧々は,ホテルの再建のため,有力なリゾート会社の御曹司・直人と婚約することになる。年も離れた直人だったが,寧々には簡単に突き放せない人で……。茨に囲まれ眠っていたのは誰だったのか。鮮やかなどんでん返しだった。
希多美咲「ヘンゼルとグレーテル お菓子の家と廃屋の魔女」霊力を持った白石月也と,探偵の桜鳥岳がこの作家のレギュラーキャラクターなのか。ケーキ屋を営む奥川愛美が持ち込んだ依頼は,廃屋にお菓子の家を注文する人を探してほしいというもの。そこには兄と妹の秘密があって……。二組の兄妹の関わり合いが,そうか,ヘンゼルとグレーテルだなぁと。
一原みう「シンデレラ A Cinderella Story」女優の娘・クレアは,母亡き後,映画監督の父の後妻に入った女優で芸能オフィス社長のイザベラが気に食わない。彼女は私を不当に扱っている。ある日,クレアはオーディションを受けるチャンスを与えられるが……。面白かったけど,この短編集で言うと,白雪姫での継母との関係が,眠り姫とはオチが,重なっていて残念。継母って物語の鍵になるので,特に童話では悪役でよく出てくるからかもしれないが,後ろになったこの話はちょっと損だったかもしれない。 -
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美術ミステリーの4冊目。
千景と透磨の関係は少し進展し、千景の記憶が少しずつ戻ってきている。
透間は彼女の戻りつつある記憶と、現在の彼女との間でどう立ち居振舞うのか。
彼女を過去から守るために、彼は何をするのか?
千景の父、そして姿の見えないカゲロウなる人物も徐々に姿が見え隠れし、今後の展開が更に気になるところである。
本作では「禁断の絵」が鍵となる。
目隠しをした女は何を意味し、どこにいたのか。
それが明らかになったとき、千景自身が覆い隠していた過去が現れてくる。
目隠しをした女というとすぐに思い出すのがレディ・ジェーングレイの処刑を描いた絵画だ。
白く浮かび上がるジェーングレイ。
彼女が示す意味は......。
人を羨ましがる心はほんの少しなら自分を磨く石になる。
しかしそれが多すぎたり強すぎたりすると一体どうなるのか。
嫉妬は七つの大罪の一つである。
自らを破滅せしめるもの、それが嫉妬が大罪である理由に違いない。
絵画には力がある。
かつて文字の読めない人々が大多数だったとき、絵画のモチーフで、情景で、人々は絵画から意味を読み取り、自らの心に留め置いた。
それは言葉より強く、直接的に自らをかえうるものであったかもしれない。
それと同じように、「イチジクの実」は千景の心に届くだろうか。
そして彼女は楽園の外で何を知るのだろうか。