乾緑郎のレビュー一覧
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面白かった。
無人島なんて普段生活の上で考えたこともない舞台がテーマの小説で、実に興味深かった。
内容の参考となっている実際に無人島で起きた事件のことも初めて知って、調べる良い機会にもなった。
生きる上で改めて、世の中自分の知らないことばかりで面白いことが沢山あると、本を通して痛感する。
文明利器に甘やかされて守られて生きてきて、無人島なんて行きたくもないが、もしとんでもないパンデミックが起きてそれに近い生活を強いられたらどうなるのだろう、と考える。
今ではコロナウイルスもすっかりただの風邪扱いだが、当時周りの薬局から衛生用品や備蓄食料があっという間に底を尽きていたことを思い出す。
皆が皆パニ -
Posted by ブクログ
スピンオフをアンソロジーで読んで、面白かったので本編を購入。奥深い、味わい深い面白さ。
生身の人間と変わらない外見や動きを備えた機械人形が存在するようなSF性と、武士や忍びが活躍する江戸風の舞台。歯車やバネがみっしり詰まっているのに、関取に想いを寄せたり願掛けをする人形。由来も仕組みも説明のつかない、この時代の中で浮いた存在である伊武に、久蔵も甚内も惹かれているが、伊武自身が何か行動して物語が動くわけではない、というところも良かった。信じたり欺いたり、助けたり殺したり・・・動いてかき回すのは人間だ。だから行動に破綻や不可解さはなく、時代小説のように読んでいける。SFに寄りすぎていないバランスが -
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ネタバレ機巧のイヴシリーズ完結編。
シリーズを読み終え、今後、日本で本作を超えるSF物語が生まれるのだろうか...
それ程の余韻に浸れる作品でした。
大きく分けると大正時代と昭和初期を彷彿させる時代設定での二部構成。
大正時代と言えば何を思い浮かべますか?
大正浪漫、ハイカラさん、そうです、全部入ってます(笑)
しかも、前作から主要登場人物は変わらず、舞台は日下國へ。
おかっぱ頭で袴を履き自転車に乗るイヴ、想像したら思わず吹き出しそうになりました。
そして後半は舞台を大陸の新国家・如州へと移ります。
ここではイヴの女学校時代の友人・ナオミの秘密が明かされると共に、イヴとナオミの側にいた多く -
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ネタバレ普段あまり手にすることのないSF、時代物、そんな一見して交わることのなさそうな2つのジャンルが掛け合わさるととんでもない作品が生み出されました。
その名は「機巧のイヴ」。
主人公を変えながら進む5作の連作短編が生み出す衝撃の面白さ。
江戸時代を匂わせる時代設定の中で、現在の科学技術でも創り出すことが出来ない人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした〈伊武〉が存在!
いわゆる人型ロボット(アンドロイド)なのですが、無論、ICチップもコンデンサも、モーターさえも入っていません。
所謂、からくり人形です。
しかし、この伊武がなんともいえないぐらいに魅力的なんですよねー。
続編買わなくち -
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平賀源内と言えば『土用の丑の日』で鰻屋を儲けさせたプロデューサー!
『エレキテル』(使途不明)なるものを作り出した発明家!?→本書ではエレキテルがどういうものかの説明あり
はたまた、絵を描き、戯作を書き、蘭学者で植物学者で陶芸もこなし、金山も掘り当てる非常にマルチな才能を持つ男!現代であればインフルエンサーとして何らかの富は築けたはず・・・
しかし、そんな彼の最期は意外と知られていない・・・
まさかの、人を殺して投獄、破傷風にかかり獄死!!!
本書は天才 平賀源内の犯した殺人事件の謎に迫る!
最後がせつない・・・
因みに本書を読んで得た雑学としてシロツメグサとはオランダからの積 -
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江戸時代を舞台にしたSF。機械仕掛けで、全く人間と区別がつかないイヴをめぐっての4つの連作短編集。思いが寄せられる程度によって、機械仕掛け(機巧)の人形の心の具合が決まって来るのだ。機械仕掛けの蟋蟀、相撲取り、幕府隠密、天帝、天帝を守る隠密、絡繰り師などが入り乱れて、話は次々と展開する。思いを寄せるから魂が生まれる!?では、その思いを寄せる人間の魂はどこから来たのだろうか。攻殻機動隊のゴーストというのを思い出してしまった。機械のタチコマたちには、ゴーストはあったように思うのだが。イヴはお千度参りなどをして、人間になる事を願っているが、既に人間の魂を持っているのだ。
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購入済み
AIの原型
SFのテーマとして有名な「アンドロイド AIが高度に発達すると、人間そして自意識との区別があいまいになる」を扱っている。
しかも舞台を未来ではなく日本の江戸時代に類似した世界にしているのが実にいい。
文体もその妖しい雰囲気をよく伝えている。 -
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舞台は戦国時代。武田のもとに身を寄せる山本勘助と武藤喜兵衛。喜兵衛は後の真田幸村の父である真田正幸のことである。そして信玄に滅ぼされた諏訪頼重と晴信の妹の間に生まれた寅王丸がなぜか加藤段蔵こと「飛び加藤」の通り名で知られる忍者として現れる。
「忍び秘伝」
デビュー作の「忍び外伝」で朝日時代小説大賞受賞した乾緑郎先生の忍び作品の2本目である。加藤段蔵の時代のずれは少し感じたがこの際お構いなしで熟読。SF的な要素も含め正統的な時代小説と言うよりも新しい感はあるが、どんどん引きずり込まれる!
ただ、この作品に関しては斜め読みや速読をしていては、見落とす箇所が何カ所もある。もう1回見たくなる映画