乾緑郎のレビュー一覧
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いつだったか表紙買いしてそのまま本立てに置いてあったもの。
なんとなく引っ張り出してみたらこれが面白いのなんの! 攻殻機動隊江戸時代みたいなのかなぁ、とぼんやり読み進んでみたらまあまあまあ!! なんということでしょう
寛永・元禄の華やかさ、賑やかさを如実に感じさせながら、一方でSF、一方でミステリー。この3つの組み合わせが実に心地よいのです。解説では幕末モデルとありましたが、空気感はむしろ寛永元禄。その中で上代の雰囲気も江戸後期の要素もちょっと混じっており、異なった次元の倭国がそこにあるのです。こちらの日本で伝えられている伝説や史実がちょこちょこ工夫されているのも成る程。
これは多くの方に -
Posted by ブクログ
これはすごい作品!あえていうなら「時代劇版ブレードランナー」とにかくめちゃめちゃ面白かった!
五つの連作短編集。それぞれが単独でも楽しめる上に、読み通すとさらなる感慨に浸れる構成。
最初の作品は小噺のような伝奇のような、つかみとしては見事としか言いようがないお話し。
その後に続く二作目以降はより連作の様相が強くなっていき、読み応えも俄然増す。
徐々に明らかになっていく「伊武」の正体。その謎解きの過程がまた見事。
そしてその「伊武」がとても魅力的で可愛らしい。甚内、春日、そして天帝といった登場人物たちもまた実に魅力的。
そして大森望さんのあとがきでの絶賛ぶりが熱い!
初めて読んだ作家さんだっ -
Posted by ブクログ
パラレル江戸時代を舞台にしたミステリーファンタジー。アンドロイド誕生にまつわる秘密やスチームパンク風味がたまらなく好みでした。
表題作の短編から5つの物語を通じて、スーパーテクノロジーの結晶である伊武の誕生の謎と、天帝家に係る隠蔽された秘密が徐々に明らかになっていく展開に引き込まれ、圧倒され、そして最後は胸アツに。
筋立てが鮮明で、謎解きも納得できて、魅力あふれる物語でした。
伊武がお百度参りしたり、「箱」に座るヤツがいると激怒したり、人間味とはこういうところにあらわれるのだなと思わせるキャラでほんとに好き。
対称的に、神器は幕府への復讐を背負わされた冷徹さのみかと思ったけど、暗闇を共にした -
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将軍が治める「天府」の城下、幕府精錬方手伝を務める釘宮久蔵の元に、一人の侍が訪れる。馴染みの遊女にそっくりの「機巧人形(オートマタ)」を作って欲しいと依頼する侍の前に現れたのは、生身の女性と区別が付かない美しい機巧人形の伊武(いゔ)。久蔵はこの伊武をベースに遊女の機巧人形を作ってみせると言い放ち、その後侍の元に遊女そのものの女が訪れる・・・
いやーーー、これはやられました。めちゃくちゃ面白いです!何と艶やかな世界観!
文化文政時代の江戸に酷似した「天府」を舞台に、機巧技術を巡る権謀術数が繰り広げられる短編5本による連作です。連作集のタイトルにもなっている冒頭の作品「機巧のイヴ」が、その後の -
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ネタバレううむ、乾緑郎おそるべし。
予想以上にすんごい面白かったー。
さすが注目の大型新人。
てゆーかホントに新人?今までどこに隠れてたの。
戦国時代の予備知識なんて全くないですが、読ませる読ませる。
武田信玄が天下取りのために手を出した凶神。
戦場に降りれば血を求めて殺戮の限りを尽くす神。
川中島では敵を一網打尽にし、辺りを地獄絵図に陥れる。
その神の秘密を握る孤児の少女。
怪しい技を駆使する忍びの男・・・。
歴史小説読んでると名前とか似てるもんで血縁関係とか主従関係が混乱しがちなワタシですが、そのへんも多分できるだけシンプルにしてくれていて、わかりやすい娯楽に徹してる。
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現実世界とセンシング世界とセンシング世界の中のセンシング世界という3つの構造からなる物語。途中読んでて違和感を感じた出来事は主人公が現実世界にいると思い込んでいるが故の出来事かもしれない。最後にはセンシング世界の中にいることを確信して引き金を引いて終了。死んだ人であってもその人のことを覚えている人が生きている限りは本当の意味での死ではないとして、最後には自然流産の女の子まで出てきた。バナナフィッシュという物語が引用されていたり終わり方もそのオマージュらしくそこの理解が追いついていないので素人は作品の100%を感じられずに終わってしまううかもしれない。。
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平賀源内の最期に何があったのか。
あの事件の真相は。
史実としても、あそこから生き残っていたという説も(可能性は低いとはいえ)あるらしい。
冒頭のあの事件は、実際に起こっているんだよね。。。
そして、その後に語られる話の意味、そうきたか。
あの事件に至るまでの源内さんが周囲の人の視点から語られる。志乃との関係がよかったなぁ。櫛も、本当によかった。
たけとんぼ、平賀源内の発明っぽく書いてあるのも楽しい。(史実ではないっぽいけど、気にしない。)
非業の最期を遂げた人が生き延びていたかも、というのは、後世の人の願いでもあるのだと思う。
さて、源内さんはどうだったのだろうか。 -
Posted by ブクログ
「SCインターフェース」
それは、植物状態の患者と家族が
意思疎通ができる医療器具。
少女漫画家の淳美は、この器具を使って
自殺未遂して意識不明となった弟 浩市と
対話をし、自殺を図った理由を聞こうとする。
しかしある日から淳美の周囲に不可思議な現象が
起こりはじめ、事態はまさかの方向へ……。
というお話。
クリストファー・ノーラン監督のインセプションを
はじめとして「これが夢か現実か」を問う物語は
たくさん見てきましたが、小説でこの世界観を
味わうのははじめてでした。
読んでる最中も、「これは夢やろ…」
「え、どっちなん?」とか
疑心暗鬼とワクワク、不安が入り交じる
おもしろい読書体験