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Posted by ブクログ
スピンオフをアンソロジーで読んで、面白かったので本編を購入。奥深い、味わい深い面白さ。
生身の人間と変わらない外見や動きを備えた機械人形が存在するようなSF性と、武士や忍びが活躍する江戸風の舞台。歯車やバネがみっしり詰まっているのに、関取に想いを寄せたり願掛けをする人形。由来も仕組みも説明のつかない、この時代の中で浮いた存在である伊武に、久蔵も甚内も惹かれているが、伊武自身が何か行動して物語が動くわけではない、というところも良かった。信じたり欺いたり、助けたり殺したり・・・動いてかき回すのは人間だ。だから行動に破綻や不可解さはなく、時代小説のように読んでいける。SFに寄りすぎていないバランスが好みだった。
「どうやってその証を見せる」
「あるからこそ、今、それを失うのだ」
機械人形に心は宿るのか、という命題も組み込まれている。
「人の体をどんなに細かく腑分けしても、機巧と同様、その人の心を現すものや感情や記憶を思い起こさせるものなど、一切出てこないのだ。――振る舞いの中に命がある」
それと装画がカッコよくて忘れられないインパクト。くじらの模様の帯を持つ"太夫"。
Posted by ブクログ
江戸時代を舞台にしたSF。機械仕掛けで、全く人間と区別がつかないイヴをめぐっての4つの連作短編集。思いが寄せられる程度によって、機械仕掛け(機巧)の人形の心の具合が決まって来るのだ。機械仕掛けの蟋蟀、相撲取り、幕府隠密、天帝、天帝を守る隠密、絡繰り師などが入り乱れて、話は次々と展開する。思いを寄せるから魂が生まれる!?では、その思いを寄せる人間の魂はどこから来たのだろうか。攻殻機動隊のゴーストというのを思い出してしまった。機械のタチコマたちには、ゴーストはあったように思うのだが。イヴはお千度参りなどをして、人間になる事を願っているが、既に人間の魂を持っているのだ。
AIの原型
SFのテーマとして有名な「アンドロイド AIが高度に発達すると、人間そして自意識との区別があいまいになる」を扱っている。
しかも舞台を未来ではなく日本の江戸時代に類似した世界にしているのが実にいい。
文体もその妖しい雰囲気をよく伝えている。
Posted by ブクログ
いつだったか表紙買いしてそのまま本立てに置いてあったもの。
なんとなく引っ張り出してみたらこれが面白いのなんの! 攻殻機動隊江戸時代みたいなのかなぁ、とぼんやり読み進んでみたらまあまあまあ!! なんということでしょう
寛永・元禄の華やかさ、賑やかさを如実に感じさせながら、一方でSF、一方でミステリー。この3つの組み合わせが実に心地よいのです。解説では幕末モデルとありましたが、空気感はむしろ寛永元禄。その中で上代の雰囲気も江戸後期の要素もちょっと混じっており、異なった次元の倭国がそこにあるのです。こちらの日本で伝えられている伝説や史実がちょこちょこ工夫されているのも成る程。
これは多くの方にオススメしたい、本当に面白くて読みやすい。時代小説もSFも、ミステリーすらよくわかんない、という人でもすらすら読めると思う。それほど人を選ばず楽しめるお話だと思うの。
あと女の子かわいい。
あの子とかあの子とか、ほんとかわいい。
Posted by ブクログ
これはすごい作品!あえていうなら「時代劇版ブレードランナー」とにかくめちゃめちゃ面白かった!
五つの連作短編集。それぞれが単独でも楽しめる上に、読み通すとさらなる感慨に浸れる構成。
最初の作品は小噺のような伝奇のような、つかみとしては見事としか言いようがないお話し。
その後に続く二作目以降はより連作の様相が強くなっていき、読み応えも俄然増す。
徐々に明らかになっていく「伊武」の正体。その謎解きの過程がまた見事。
そしてその「伊武」がとても魅力的で可愛らしい。甚内、春日、そして天帝といった登場人物たちもまた実に魅力的。
そして大森望さんのあとがきでの絶賛ぶりが熱い!
初めて読んだ作家さんだったけど、他の作品も読んでみたくなってきた。映画化された『完全なる首長竜の日』の作者さんだったのか。
最後に印象的だった文章を引用。それぞれ352頁より。
「人の体を細かく腑分けしても、機巧と同様、その人の心を現すものや感情や記憶を思い起こさせるものなど、一切出てこないのだ。」
「魂とはどこからやってくるのか。そしてどこに隠れているのか。それがずっと疑問だった。」
「誰かに気に掛けられたり、愛されているからこそ、それに応えるために、(中略)、人のように振る舞うことができる。その振る舞いの中に命がある。」
Posted by ブクログ
パラレル江戸時代を舞台にしたミステリーファンタジー。アンドロイド誕生にまつわる秘密やスチームパンク風味がたまらなく好みでした。
表題作の短編から5つの物語を通じて、スーパーテクノロジーの結晶である伊武の誕生の謎と、天帝家に係る隠蔽された秘密が徐々に明らかになっていく展開に引き込まれ、圧倒され、そして最後は胸アツに。
筋立てが鮮明で、謎解きも納得できて、魅力あふれる物語でした。
伊武がお百度参りしたり、「箱」に座るヤツがいると激怒したり、人間味とはこういうところにあらわれるのだなと思わせるキャラでほんとに好き。
対称的に、神器は幕府への復讐を背負わされた冷徹さのみかと思ったけど、暗闇を共にした蟋蟀への感情があるところなど、その単純ではない精神構造に心が動かされてしまい…
魂がどこから来るのかとか、魂はどこに宿るのかとか、もう一度そんな疑問にぶち当たって、深く考えさせてくれるような話でした。
続編、楽しみにしています!
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