あらすじ
選考委員が即決した『このミス』大賞受賞作!少女漫画家の和淳美は、植物状態の人間と対話できる「SCインターフェース」を通じて、意識不明の弟と対話を続けるが、淳美に自殺の原因を話さない。ある日、謎の女性が弟に接触したことから、少しずつ現実が歪みはじめる。映画「インセプション」を超える面白さと絶賛された、謎と仕掛けに満ちた物語。
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雰囲気がよく、面白かった。
意識不明の人の精神に入るという設定もめっちゃ好みで、読後感もかなり良かった。
序盤から弟くんが死んでることにはうすうす気づいていた。岬さんと木内くんが出てきたところで、主人公が夢の中にいると予想。珍しくアナグラムにすぐ気づいたから、嬉しかった。
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久しぶりに一気読みしました。気になってほんとに止まらない。色んな布石が繊細でリアルで(でもほんとのrealではなくて)…ナッツのように後引く話でした笑 そして最後がまた…終わり方が良いですコレは大賞とりますね。ぜひ読んでいただきたい作品です。メチャクチャ面白かった。
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タイトルに惹かれて手に取りましたが、まさか少し前に読んだサリンジャーの「バナナフィッシュ」が出てくるとは思わず驚きました。
物語は“夢と現実のあわい”を描くような不思議な世界観で、神秘的なのに読みやすいのが印象的。
個人的にはスパッとした結末が好みなのですが、本作はむしろ読み終えたあとにじんわり考えさせられる余韻が残るタイプでした。
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現実世界とセンシング世界とセンシング世界の中のセンシング世界という3つの構造からなる物語。途中読んでて違和感を感じた出来事は主人公が現実世界にいると思い込んでいるが故の出来事かもしれない。最後にはセンシング世界の中にいることを確信して引き金を引いて終了。死んだ人であってもその人のことを覚えている人が生きている限りは本当の意味での死ではないとして、最後には自然流産の女の子まで出てきた。バナナフィッシュという物語が引用されていたり終わり方もそのオマージュらしくそこの理解が追いついていないので素人は作品の100%を感じられずに終わってしまううかもしれない。。
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「SCインターフェース」
それは、植物状態の患者と家族が
意思疎通ができる医療器具。
少女漫画家の淳美は、この器具を使って
自殺未遂して意識不明となった弟 浩市と
対話をし、自殺を図った理由を聞こうとする。
しかしある日から淳美の周囲に不可思議な現象が
起こりはじめ、事態はまさかの方向へ……。
というお話。
クリストファー・ノーラン監督のインセプションを
はじめとして「これが夢か現実か」を問う物語は
たくさん見てきましたが、小説でこの世界観を
味わうのははじめてでした。
読んでる最中も、「これは夢やろ…」
「え、どっちなん?」とか
疑心暗鬼とワクワク、不安が入り交じる
おもしろい読書体験ができ、最後は
「あれま…なるほど……」と、これまた
捻りのあるラストで、気持ちよく
気持ち悪くなりました。
マジのおすすめSF小説です!ぜひ読んでみてね!
Posted by ブクログ
胡蝶の夢、サリンジャーのバナナフィッシュをチラつかせて夢か現実かという印象を読者に与える。
そして主人公、読者ともに(もしかして…)と思わせていく。
流れとしてはもしかしたらn番煎じなのかもしれないが、そこにどれだけの物語性や納得感を持たせていくかという点において作者の筆力の高さが伺えた。
前半までのどこかで、敦美が自身の漫画を「杉山さんとの子どものようなもの」と表現しており、そこで別の(もしかしたら…)が自分の中で湧き上がった。そういうチラつかせ方も上手いなぁと感じた。
次はサリンジャーを読もうかな。
この原作を読んでしまうと、11年前の実写映画の鑑賞を躊躇する。映画では敦美と浩一が恋人同士になっているし色々違うみたいだから…。
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不思議な読後感。
ミステリというよりはSF小説だと思う。
SCインターフェースという架空の医療機械を通して夢と現実を行き来する。
日常がいきなりグニャと非現実に変わる場面が何度もあるが村上春樹のような感覚。
もう少し物語のスケールが大きければもっと面白かった気がするのだが、設定やアイデアなどがとても新鮮で新しい読書体験ができた。
Posted by ブクログ
SFミステリー初めて読んだな。
現実と夢、過去と未来の描写が目まぐるしく入れ替わり読みながら混乱したが、ラストにかけての回収でなるほどーってなる感じ。
面白い作品だった
Posted by ブクログ
植物状態になった患者と、意思疎通ができる医療器具が発明された世界。少女漫画家の和淳美は、自殺未遂を起こした弟と意思疎通をはかる。
現実の世界と精神世界が交互に混じり合い、双方を行き来する、不思議な世界観。SFミステリというのだろうか、初めて読む読み味の作品。しかし、この世界観と文章に惹き込まれた。とても、面白かった。
完全にタイトルで購入したけど、当たりだった。
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ミステリを得意とする乾さんの約10年前の作品。映画化もされ覚えている方もいるはず。意識不明の弟はなぜ自殺を図ったのか、主人公は夢と現実を行き来しつつ謎に迫っていく。夢なの?現実なの?という展開からラストは爽やかめ。乾さんの作品のなかではちょっと変わり種?かなと思った。
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SFインターフェースという近未来な機器を介して繰り広げられる夢と現実に魅せられた作品だった。
どこまでが夢で、どこまでが現実なのか、、
序盤はミステリー要素がなかったが、徐々に歪みが明かされるのが面白かった。
アートとか医療の難しい用語多すぎだったけど、ざっと読んでいくと読みやすかった。
映画化されているらしいので観てみたい。
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現実と虚実が混ざり合う世界を、納得の描写力で書く力量はすごいと思う。最初から最後まで読んでて心地良い。
しかし これがミステリーかと言われると疑問に思う。僕的には サイエンスフィクションかなー?
雰囲気を味わう作品かと思う。
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SFサスペンス。
これにアクションが加わればもうハリウッド映画みたいな設定。
現実と夢の区分は当事者には難しい。
誰もは一度は考えるテーマかもしれません。
びゅんびゅん話は飛び、恐ろしいと思った。
「この世界が現実かどうか試したくなった」
っていうセリフが印象的でした。
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2011年のこのミステリ大賞。ミステリーというよりちょっとサイコスリラーでちょっとSF。でも文体やラストは良かった。わたしがSF好きなのでそう感じるのかも。
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大転換までのストーリーが長く感じるも、そこまで描かれるものに愛着を感じさせることで、大きな変化への進行をスリリングにしているとも言えそう。中盤までに描かれた様々な挿話や小物が全て伏線になっていく仕掛けは目を見張るものがある。読み終え、最初から振り返ってみたくなる面白さも。
Posted by ブクログ
第9回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作。
審査員が全員一致で決まったそうで、そんなことを不意に思い出したので読もうかなと積読の山から下ろしてきた。
テーマは映画「胡蝶の夢」らしいが。読んでいくうちに、あの不思議な胡蝶の夢の雰囲気もどこか感じられるようになってきたが、映画のテーマは別にしても時代が違う。今なら病院に収容されても、夢を探る機器も現代的で、主人公はこれが夢なのか現実か迷う事も記録に残せる。あるいはときには冷静に向き合うことができるかもしれない。
主人公の女性は漫画家で成功している。子供のころ一家で行った奄美の島で幼い弟が波にのまれた。
西湘にある病院では、それ以来入院して昏睡状態の弟に、技師が立ち会って意識と繋がる実験(セッション)を行っている。そこで弟の意識に強い自殺願望があるのを知る。
姉もともに被験者になっている。一時的に頭にチップを埋め込むSCインターフェイスを採用して、脳を刺激してお互いの感情を呼び出し、弟とドリームボディを共有する(センシング)、これは技師者が常に記録をとっている。
漫画を描くには様々な行程がある、作品の評判がよく忙しくなったので助手を雇い、自宅にはデビュー当時から指導をうけた編集者も加わっていた。だがプライベートに使うリビングには誰も立ち入らせない孤独な生活をしている。
時代の波で漫画雑誌の読者傾向の変化とともに、月刊の連載が打ち切りになった。仕事の後始末の段階になったがまだ当分暇がない。
リビングに不意に弟が現れる。そして部屋でピストルを撃って自殺するが、気がつくと弟は既に跡形もない。
編集者にその様子を話すとまるで「胡蝶の夢」のようだねといった。姉の意識か、弟の意識か。現実なのか、幻なのか。根拠なく現れたり消えたりするようになる。
繰り返し、子供のころ遊んだ奄美の海を思い出す。磯で満ちてきた潮にさらわれていく弟を助けようと懸命に繋いだ手を離してしまったのだ。
事故の後、父は母と別れて去り、母は死んだ。
時々、それも不意に現れる弟は、いつも自殺をして消える。弟はなぜ自殺したいのか。
そのうち新たな人物が現れるようになる憑依(ポゼッション)なのか。
そしてついに、それが日常生活にまで入り込んでくる。
現れる人たち、現れては死んでいく弟。頻繁に異常が日常になってくる
ついに奄美のあの島に行ってみる、歳月の影響はあるが確かに記憶の場所に家があり、海岸は護岸工事で形は変わっているが海は満ち干を繰り返し、若い両親や伯父たちが周りにいる。そして耐え切れず過去の風景から逃げて帰ってくる。
病院のそばの海岸を散歩して、首長竜の置物を見つける。それは仕事部屋にあったあの置物なのだが、なぜここに。
この物語は様々なモチーフがちりばめられている、それらの作品が何らかの形で、テーマを繋ぎ、弟や周りの人たちとの意思疎通の形を支え、インパクトを次第に強め、読者を物語の中に引き込んでいく。
まず最初に「胡蝶の夢」。サリンジャーの「ナインストーリーズ」。マグリットの非現実的な風景画等々。こうして主人公の前に現れていた現象が(夢か現実か)終盤になって、主人公を伴って大きな展開を見せる。
「胡蝶の夢」のようでもあり、また夢から醒めてもまた夢の世界のようでもあり、現実はどこにあるのか。こういった構成がいい。
ただ、登場人物を語るには、現象が統一されないままに多すぎる、主人公の混沌がそのまま読者に手渡されてくる。それを最後に、姉の存在理由を一気に閉じることは、無理があるように感じる。本人にもわずかに自覚されてきた病状が、終わりに向かって失速気味なのはとても残念だった。
随分前に「胡蝶の夢」らしい映画を見た。モノクロで、老人(荘子だったのだろうか)が若返って美女に会いに行くというようなストーリーが妙に幻想的で現実離れはしているが、見る夢が、跡を残さずかすかに心理的な痕跡だけを残す、そういった世界を、姉と弟のつながりの中で一種のオマージュのように書こうとしていることが理解できる。
こういった感情や意識が、正常だという自覚があっても時にふっと心が流されていくことがあるが、読んでいると、この過去にトラウマのある姉が見る世界に誘われそうになりつつ、物語は不思議な風景と世界をストーリーは行き来する。
この不安定な精神は過去の出来事に常にリンクしているようで、その心理は非日常に形を変えて派生して取り留めもなく、現実に溶け込みそうになる表現がこの作品全体の非現実感で覆いつくしている。ときに誰しも支えもない危ない淵に立っているように思えることがあり、そう言った感覚に共感を持った。
作者の手にかかり夢は予期しない形で終わる。揺れ方が非日常に見えて現実でもあるように。
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読み始めるまで、殺人事件が起こるミステリだと思ってたけど、これも悪くないです。SF要素が入ってる分好物な方でした。
主題と副題が交互に混じりながら全体的なラストへと向かうまとめ方は、ほんとに芸達者な作風。
主人公の夢か現実か分からなくなる気持ち悪さを共有して、不思議というか不気味な感覚に陥るけど、続きが気になって読み進めてしまう。
そして、ラストのラストに劇的に締める感じがまた良かった。素直にハッピーエンドで終わらせてくれないんやなぁ。
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とても難しかった。
胡蝶の夢がテーマの作品。SF要素があり、おもしろい設定だった。
昏睡状態の患者とセンシングして、精神世界の中で対話する話。読み進めるに連れて少しずつ違和感が出てきて、どの場面が現実でセンシング中の夢の話なのか分からなくなった。
意識を取り戻したと思った主人公は結局夢から醒めることができていなかったのか。最後の1文をどう解釈したらいいのかわからない。もう一度読み直したい作品。
Posted by ブクログ
この手の夢と現実の曖昧な作品は嫌いではない。
そんなに悪くないが、オチもラストも想像とおりの展開で驚きがなかった。
映画になるようだが、どうなんだろうか。
Posted by ブクログ
【2023年7冊目】
物語の中にゆるゆると絡み取られました。どこまでが夢で、どこまでが現実なのか。覚めたと思った途端にまた夢に陥っている。今この感想を書いている私は現実にいるのだろうか、それとも。
現実だと思っていた世界から徐々に夢と現実の狭間に陥っていき、最後ははっと息を呑む終わり方でした。
Posted by ブクログ
どこからが現実で、どこまでが夢なのか。度々取り上げられるテーマなので、作者の力が試される。
ラストに至るまで特に驚きが感じられず、淡々と進んでいく印象を持った。
Posted by ブクログ
SFでマトリックスのような世界観で夢オチのような最後。
もう少しどんでん返しが欲しかった
実は姉が入院で全部が想像でした、ってオチで全てを回収してる感じ
あの狂ってるお爺さんがもっといい味するかと思いきや、そこまで登場してこない
映画では設定が原作と違うらしく、時間のある時にでも映画も見てみようと思います。
Posted by ブクログ
裏表紙の惹句を読んだ時に、まさか○○じゃないよな、と思ったらその通りだった。十年前の話だし、二十年前ならホントにこれを「衝撃の結末」と真面目に言う向きはいたろうから、時代の流れはあるかも知れない。けれども結末まで完全に予想通りで、これはもう様式美の域だと思う。乾緑郎氏は「ライプツィヒの犬」でも、予想通りのオチだけれど、つまらないわけではないという感じだったから、プロットのひねりより、ディテールの作家さんなんだろう。実際ヒロインの日常生活の手触りとかはよかった。しかしまあ、さすがにこれを「衝撃の結末」と煽られると絶句する。
Posted by ブクログ
これをミステリーと呼んでいいのかどうか。
一人称の語り部が、実は虚構の中の出来事を、こうあったらいいと思い描いていることが、実際の現実とオーバーラップして錯綜している。
それはどこか、虚構なのにあまりにもリアリティがあって、逆につかみどころがない。
首長竜の出番もあまりなくて、少しふに落ちない。
Posted by ブクログ
映画「リアル」の原作で、「このミステリーがすごい!」2010」年大賞受賞。
昏睡状態にある患者とインターフェイスという機械を通じてコミュニケートできる世界。自殺未遂を図り意識障害に陥った弟とのインターフェイスを通じて、自殺の原因を探ろうとする少女漫画家の主人公。
時折思い出す昔の風景やフラッシュバックする記憶をたどっていくうちに判明するのは・・・。
話の内容はさておき、巻末にある「このミス」の選考メンバーによる選評が想像以上に厳しくてびっくりしました。面白い作品を生み出すのって、大変なんだなと改めて思いました。
Posted by ブクログ
漫画家の和淳美は、意識不明のまま入院中の弟の浩市と最先端の医療技術を使ってコミュニケーションを取り続けていたが、浩市の自殺未遂の謎は解けぬまま。そんな折、自身の長年の連載終了が決まったり、ふとしたことで子供の頃の遠い記憶を思い出したり、様々なことが起こるが、どれも夢のような現のような不思議な雰囲気を纏って話は進む。
後半の展開は「そうきたか」という感じ。拾いきれていないけれど、今思えばたくさん伏線もあった。エンターテイメントとして読めば面白い話だ。でも、この話を「自分だったら?」と思ったとたん、とても怖くなる。読み終えた今は、私は怖い気持ちの方が強い。
これの映画は、一体どんな感じだったのだろう。