乾緑郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「機巧のイヴ」「見返り検校(文庫化の際に「仇討検校」に改題)」が好きで、こちらも時代物ということもあって読んでみた。
「機巧のイヴ」とはまた違ったタイプのファンタジー。
二代目瀬川菊之丞の兄弟子・八重桐の不審死から始まる話はミステリーかと思いきや、東上桟敷を買い占めながら姿を現さない客、そこで起こる怪異、菊之丞が連れ去られた『戯場國』、冥府と現世を行き来する小野篁と志道軒。
軸となるとは小野篁の禁断の恋と、江島生島事件。
特に江島生島事件については興味深い解釈があった。
生島新五郎という、この事件でしか知らない役者と二代目團十郎との間にこのような因縁話を思いつくとは。
登場人物が多いわり -
Posted by ブクログ
江戸時代を思わせる時代風俗を背景に、最上位の花魁の姿をうつした機巧人形〈伊武〉と、その美しさ、その不思議に魅入られた人々、機巧の秘密を守る天帝家などをめぐる連作短編集。
乾緑郎さん、初読。
名前は知っていたけれど、ご縁がなかった。
人の手によって作られた人形に心はやどるのか。
完璧な複製が存在するとしたら、オリジナルとの違いは何か。
生身の身体を少しずつ機巧人形のパーツに置き換えていったら、人間と人形の境界はどこにあるのか。
「ブレードランナー」「からくりサーカス」「バイセンテニアル・マン」「ファンタジスタドール イヴ」などなど、よく似たテーマを扱った作品は数あれど、本作もまた面白かっ -
Posted by ブクログ
読まなければ知らなかった歴史上の実在人物も、空想と創造によって物語にされると、わかったような気がしてきておもしろい。
菅鍼法(鍼を管に通して打つ)というのを編み出して有名な(当然知らなかったけど)杉山和一(杉山検校)という盲目の鍼灸師の一生を描いているのだが、伝記的に描いてはつまらなかっただろう。
その人物はある時ある事情から別人にすり替わっている、という物語にしてしまったのだ。そしてそのすり替わった人物柘植定十郎は、目が健常なのだからまたまた複雑になる。目が見えていて白い杖を突いて、胡散臭いのだけど、鍼灸の修行を成し遂げ、開業して人気が出て将軍まで診てしまう出世街道まっしぐら。それだけで