乾緑郎のレビュー一覧
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読まなければ知らなかった歴史上の実在人物も、空想と創造によって物語にされると、わかったような気がしてきておもしろい。
菅鍼法(鍼を管に通して打つ)というのを編み出して有名な(当然知らなかったけど)杉山和一(杉山検校)という盲目の鍼灸師の一生を描いているのだが、伝記的に描いてはつまらなかっただろう。
その人物はある時ある事情から別人にすり替わっている、という物語にしてしまったのだ。そしてそのすり替わった人物柘植定十郎は、目が健常なのだからまたまた複雑になる。目が見えていて白い杖を突いて、胡散臭いのだけど、鍼灸の修行を成し遂げ、開業して人気が出て将軍まで診てしまう出世街道まっしぐら。それだけで -
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ネタバレ――
“ 馬離衝《バリツ》と呼ばれる武術の特徴は二つある。
一つはその呼吸法だ。馬離衝では「相気」と呼び、これを調和させることを目的とする。
一元、太極、三才、四神、五行の五種類の呼吸法があり、敵をねじ伏せるのではなく、調和することによって力を封じ、無力化するのが馬離衝だ。”
……いやぁSFだなぁ。真面目に。
乾緑郎『機巧のイヴ』二作目は新世界覚醒篇、ということで前作から約100年の時を経て、舞台は大陸へ移る。万博という、云うなれば技術狂いの舞台設定の中に、けれど機巧人形は埋没することはなくて。むしろ技術の先端でこそ、いのち、との境目は歴然として。
前作よりもハードボイルド -
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漫画家の和淳美は、意識不明のまま入院中の弟の浩市と最先端の医療技術を使ってコミュニケーションを取り続けていたが、浩市の自殺未遂の謎は解けぬまま。そんな折、自身の長年の連載終了が決まったり、ふとしたことで子供の頃の遠い記憶を思い出したり、様々なことが起こるが、どれも夢のような現のような不思議な雰囲気を纏って話は進む。
後半の展開は「そうきたか」という感じ。拾いきれていないけれど、今思えばたくさん伏線もあった。エンターテイメントとして読めば面白い話だ。でも、この話を「自分だったら?」と思ったとたん、とても怖くなる。読み終えた今は、私は怖い気持ちの方が強い。
これの映画は、一体どんな感じだったのだろ