あらすじ
鍼灸道を確立し、五代将軍綱吉の御殿医にまで登りつめた鍼聖・杉山検校。じつは、贋者だった!? 一度でも人を斬り殺したものは、血塗られた仇討の連鎖からは逃れられないのか。怨念の呪縛に囚われ、自らを偽り、仕込み杖を携え盲目を装い、因果の大渦から逃げ続けた恩讐の彼方に、その目が見たものは――。目眩くほど壮絶な八十五年の生涯を描く、一気読み必至の大作。『見返り検校』改題。(解説・細谷正充)
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Posted by ブクログ
読まなければ知らなかった歴史上の実在人物も、空想と創造によって物語にされると、わかったような気がしてきておもしろい。
菅鍼法(鍼を管に通して打つ)というのを編み出して有名な(当然知らなかったけど)杉山和一(杉山検校)という盲目の鍼灸師の一生を描いているのだが、伝記的に描いてはつまらなかっただろう。
その人物はある時ある事情から別人にすり替わっている、という物語にしてしまったのだ。そしてそのすり替わった人物柘植定十郎は、目が健常なのだからまたまた複雑になる。目が見えていて白い杖を突いて、胡散臭いのだけど、鍼灸の修行を成し遂げ、開業して人気が出て将軍まで診てしまう出世街道まっしぐら。それだけでなく、勝新太郎も真っ青な仇討活劇と運命とに翻弄されるストーリー展開。
ところでわたしは鍼・灸・指圧が苦手というか、その効果を信じていないところがあるが、ちょっと考え直した。この作者が鍼灸師の資格をお持ちで、このような小説を創るその情熱が伝わってくるので。