深町眞理子のレビュー一覧
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ネタバレやっぱりキングは面白い! 個人的ハイライトは主人公の息子が家の目の前の道路で車に惹かれて死んでしまうところ。その場面を主人公はなんどもなんども夢に見ます。まだよちよち歩きのその子を必死で追いかけ、車が来る寸前に襟首を掴んで、やった、助けた! というところで目を覚ます。夢では幸せ、現実は悪夢。次第に追い詰められていく主人公は、その夢と現実の配置をひっくり返そうとします。
絶望は一種のエンターテイメントです。キングの小説ではいつもそれを思い出します。上記の男の子が死ぬ場面なんかその中の白眉! 単なる幼児の死がこんなにも怖くて悲しいのは、彼に注がれた家族の愛の存在があるからです。キングの描く絶望には、必ず深い愛情がよりそって、お互いの存在をくっきりと引き立たせます。
またキングの代表作のひとつである「呪われた町」では、主人公が愛する人たちを取り戻すために行動します。そして「呪われた町」をポジとすると「ペット・セマタリー」はネガにあたります。どちらも深い愛を起点にした結果で、だからこそ「ペット・セマタリー」の主人公の愚かな行為はやるせなく、救いがないラストにも読者を納得させる充足感を与えています。 -
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ネタバレ『海浜の午後』
海辺のビーチチェアに寝そべる人々。夫アーサーをほったらかして友人のボブと砂の城を創り遊ぶノーリーン。ジョージとクラム夫人の会話。息子を支配するガナー夫人。盗まれた首飾りの話。彼らの周囲を歩き回る謎の美女。首飾り盗難事件を捜査するフォーリー警部。
『患者』
何者かに突き落とされたウィンクフィールド夫人。精神的なショックから会話をすることができなくなった夫人。犯人を突き止めるための実験。瞬きによる会話。夫であるブライアンの浮気相手の正体。
『ねずみとり』
マイケル・トランスに誘われ彼の家にやってきたサンドラ。マイケルは旅行中で留守。家にいたジェニファー。誘い出されたことに気がつくサンドラ。同じく誘い出されたデイビッド。サンドラの元夫の死に不審を持つアレック。部屋から発見されたマイケルの遺体。仕掛けられた罠。 -
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第二次世界大戦中、ユダヤ人だったアンネとその一家と、ファン・ダーン家と、デュッセル氏の8人が
オランダ・アムステルダムで共に隠れ家生活を送っていたころを中心として綴られている、アンネの日記を読んだ。
ユダヤ人を迫害するナチス・ドイツの支配下にあるオランダでの潜行生活という特異な状況の中で、
13~15歳の思春期を過ごしたアンネ・フランク。感受性の強い彼女の、さらに多感で悩み多き時期の、
元気だったりくじけたりした心の内を綴った、
「人間」と「平和」を静かに見つめ直すことになるような読書体験を得られる本でした。
小学校高学年のころの教科書に、『アンネの日記』の抜粋の短いのが載っていて、
それを扱った授業があったようにも思うのだけれど、
内容はさっぱり覚えていない。それでも、隠れ家生活をする少女から生まれ出た文章という、
漠然としたイメージはずっと心に残っていました。そして、いつかは読もうと思い、
今年の初めに『ブルータス』で紹介されていたのを目にしたのを機に購入して読んだのでした。
10代の頃はね、『アンネの日記』なんて、女の子の日記だから、
読むときまずいような気がしていました。
20代の頃は、色あせた作品のように感じていた。
そして30代になって、存在感のある読み物として捉える事ができるようになったし、
どんなことが書かれていても…、たとえ戦時下の恐怖や悲しみに満ちた内容であろうとも、
読みとおす覚悟で臨みました。
しかし、読んでみると、暗い日記ではない。
”キティ”という架空の親友に向けた、手紙という形で日記は進められていく。
今日でいえば、ブログに近い書き方かもしれないです。
泣いた日のことも、家族とケンカした日のことも、ペーターと親密になった日のことも、
隠れ家の住人が皆いがみ合っていた日のことも、物音におびえた日のことも、
乾いた文体で、簡潔に、そしてできるだけ客観的な視点を心がけて書かれています。
最後の方になると、深く内省するその自己批判力と洞察力に、もしも彼女が生きていれば
鋭い観察眼や批評力を発揮するジャーナリストなり作家なりになっていたかもしれない輝きのかけらが
見られたりします。
戦争は、そして人種差別は、こういう素晴らしい才能、快活な魂を摘んでしまうものなのです。
非常に残念です。
そして、読者である僕も、読みながら彼女たちが最後には捕まることが分かっているので、残念なことに、
その破局を心待ちにしている気持ちがありました。
アンネの記述から、彼女はもちろん他の7人にも生きている人として、流れている血の温かさのようなものを
感じてきましたから、逆にというか、その命が絶たれる痛みを待望する気持ちが、正直に言いますが、ありました。
このあたり、終わってしまった悲劇をなぞるからこそ、そういう悪い期待をしてしまうのでしょうか。
とはいえ、読んでいる間の9割方は、綴られるアンネの心情や状況にのめり込んで読んではいるのですけど。
当時の生活の様子が、それが潜行生活であったとしても生き生きを書かれているので、
古臭くてかび臭いような、ぼろぼろの古い時代として感じることはなく、
今と太陽も月も星も森の様子も風も川の流れもそこに魚が泳ぐことも鳥が空を飛ぶことも
変わらないんだなーというのが身にしみるようにわかる感じで読める本でした。
思春期の物の考え方って、やっぱり基本になるようなものがあり、
再発見させられることもあるかと思いますし、
人間模様とその分析などには、ヒントになることも多いと思いました。
そういうような意味でも、この『アンネの日記』は一面的に読めば終わりという
本ではありません。多面的にいろいろ感じたり考えたりできる本なので、
読む方はまずは偏見をできるだけ持たずに向かい合ってみることをおすすめします。