島田荘司のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレんんんこれは評価が難しい。
いや面白いことは面白かったのだが。
夏目漱石の渡英時期・下宿先がホームズの活躍時期・ベイカー街に近しかったことから、両者が邂逅する物語。
夏目視点とワトスン視点が交互に描かれるが、同じ出来事なのに描写が大きく食い違う。
特に夏目視点のホームズは酷いの一言で、完全な狂人、しかも周囲はそれを踏まえて腫れ物のような接し方。
ここに何か大きな仕掛けがあるのかと読み急いだが、そうではなかった。
中でもショッキングなのが、モリアーティは架空の人物だとワトスンに言わせたこと。頭がおかしくなる前のホームズの活躍は確かだがモリアーティ関連はワトスンの創作だと言う。最後まで読んでもこれは覆らなかった。
シャーロキアンには噴飯ものではなかろうか。それとも、世の中にはホームズパスティーシュが溢れ過ぎていて、なんでも来いという心境なのだろうか。
冒頭で、「夏目視点の描写には少々脚色がある(意訳)」という注釈があるのを加味しても説明がつかない。
ワトスン視点の描写があまりに本家の再現度が高いため、かえって「夏目視点の方が真実なのでは?」という錯覚に陥らせてしまう。しかし夏目視点の方も夏目優位に書かれているはずと考えなければ公平ではない。
この作品を読んで自分が夏目寄りに感じるのは、自分が夏目作品の教養がないために夏目の作風を感じ取れていないのかもしれない。それがわかったら、「夏目視点の描写も大概嘘っぱちだろうなぁ」なんて感覚で双方を面白おかしく読めるのだろうか。
とにかく、作者がなぜこのような書き方をしたのか意図が読めない。
正直、作者が島田荘司という信頼のおける大作家でなければ駄作と断じていただろう。
しかしこのようにつらつら感想を纏めていると、こう考えを巡らすことにこそに意味があるのかもしれない。
なお、最終章は文句なしに素晴らしく、こんなにも戸惑うのに読後感は爽やかという不思議な作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ上巻から合わせて一気呵成に読み終えられます。非常に読みやすいです。
看護師辰巳洋子はベビーシッター中に子供をあやまって殺してしまう。小坂井はそれを隠蔽しようとし、ネルソンパクはそれをさらに指導する。そして巨悪である日東第一教会(統一教会)を御手洗潔が裁くお話。
教会のトップであるネルソン・パクを星籠を使って捉え、胸が空くような結末となります。
ただし、従来の御手洗物でよくある、ミステリーの大仕掛けを御手洗が解き、読者がカタルシスを得られるといったことはないです。
大掛かりの謎はなく、面白いながらも淡々と話は進みます。
ちょっと一風変わった御手洗物です。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったな〜!
「数字錠」がトリックもストーリーも一番良かった。「占星術殺人事件」でもそうだったけど、犯人のどうしようもない気持ちを書いて、それと真摯に向き合う御手洗の考え方が好き。
「疾走する死体」は、ええ〜!?と言いたくなるトリック(名探偵コナン的な)だった。
新聞社の人の話はホームズの「赤毛連盟」を彷彿とさせた。
「ギリシャの犬」もトンデモトリックだったけど、犬が活躍したので良かった。
最後の「御手洗潔の志」は、御手洗が日本人の性格を分析して、それと真反対の行動や発言を「選んでいる」という事実に、なぜかとても感動した。
あのキャラクターは御手洗が自身で構築したものなのか、と。
この志が「凝り固まった日本人の価値観にメスを入れてやろう」というもので、それが作者の志か、あるいは御手洗のものか、それはどちらでもいいけれど、変人変人と言われ続けてきたキャラクターに意味があり、魅力を感じる理由がちゃんとここにあったんだな、と思った。
「御手洗潔の志」はこの先シリーズを読み進めても、定期的に読み返したい。 -
Posted by ブクログ
「御手洗潔」を知る一冊。
(数字錠)での「御手洗潔」に胸アツになりました。
これまで占星術殺人事件、斜め屋敷の犯罪、異邦の騎士と順番通りに読んできましたが、私には何処となく、ぼんやりというかモノクロの人物でした。
この一冊を読んで「御手洗潔」に温かい血が通って、色彩を持ったような感覚です。
ダイナミックで一歩間違えると・・・なトリックの(疾走する死者)で石岡君に掛けた「懐かしかったろう?」の一言。 いいですよね。
何処となく、かの有名な同盟を思い出す(紫電改研究保存会)や、犬好きが微笑ましい(ギリシャの犬)も楽しめました。
「御手洗潔」が読まれる理由が判った気がします。
あと、巻末の新・御手洗潔の志は必読です。