島田荘司のレビュー一覧
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「ゴーグル男の怪」
哀しいという言葉を使った意味が分かる。
タバコ屋の老婆が殺された夜。現場付近でゴーグルで顔を隠した男が目撃された。警察はその男を容疑者として捜査を開始する。深い霧と共に現れるゴーグル男は一体何者か。
複数の謎が張り巡らされたミステリ。久々の島田荘司であり、時間をかけて読んだ。一つのテーマに複数の人間が絡む。そのテーマはゴーグル男が抱えるトラウマと大きく関係する。過去に縛られ、苦しめられる。そこから脱する為には、殺しを厭わない、殺すしか術が無い。ミステリとしては大きな仕掛けは無い分、ゴーグル男の苦悩と救いに焦点が当たっている。
もちろん老婆を殺したのはゴーグル男なのか、何故男はゴーグルを掛けていたのか、は重要な謎である。
前者のポイントになるのは、現場に残されていた黄色く塗られたピン札。同様のピン札は町の他のタバコ屋でも発見されるが、何故黄色く塗られていたのかが分からない。この謎は実に練られていて、本作がゴーグル男だけに留まらないストーリーになっているのは、この練り具合のおかげだと思う。ゴーグル男だけに注目していると、途中辺りで風向きが変わることを感じ、意外な展開に転がっていくのに気付けば、島田荘司上手いな〜と感じるのでは無いか。ゴーグル男の使い方も上手い。
ゴーグル男が現れた町は、核燃料製造会社である住吉化研が落とすお金によって支えられている。一方で、ある被曝事故を機に忌み嫌われている。恨んで死んでいった者達の怨念により、会社の敷地には幽霊が現れるとまで囁かれる。後者では、この住吉化研が関係している。住吉化研のような会社でも小さな地域が社会的・経済的に存在する為には、危険だが完全に排除することは出来ない。
重層なトリックが駆使されるタイプのミステリでは無いが、島田荘司の腕が光ったミステリだと思う。ゴーグル男が隠す怪の発散の仕方も良く、最後辺りはゴーグル男にどこか同情し、彼なりの解釈に理解をせざるを得ない。苦しめられながらたどり着いた結論は、彼の思い通りにはならなかったが、何故そうなったか?の部分の展開がキモとなっている(しっかり推理している)。
果たして、ゴーグル男はこのあとどうなったのだろうか。殺人事件を機にゴーグル男は変わったのだろうか。殺人ものには似つかわしくないが、少しだけ前向きさを感じさせる。 -
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目次
・踊る手なが猿
・Y字路
・赤と白の殺意
・暗闇団子
「踊る手なが猿」は、手なが猿の意味が分かれば事件のからくりはわかる。
だから純子がそれに気づいて泣き崩れるところで話が終わった方が、切れがいいんじゃないかなあと思ったんだけど、猿の種類がハヌマンラングールであることにこだわるのなら、最後のオチまで持って行くしかないのか…。
その方が動物としての人間の性が感じられていいのかもしれない。
でも、私なら猿の種類にこだわらずに、猿に気づいたところで終わらせるなあ。
好みの問題だと思うけど。
「暗闇団子」はタイトルのおどろおどろしさとは反対に、すごく切ない恋物語。
お初にとって、人生で立った半年だけの幸せな時間だったんだろうなあ。うるうる。
江戸時代の庶民の生活が生き生きと描かれ、ついうっかり居眠り紋蔵さんはいつ出てくるのだろうと思ってしまった。
4つの作品がそれぞれ全く違った味わいで、うまいなあと思う。
どの作品が好きかは、その時の気分だな。
今は「暗闇団子」が一番いい。 -
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ネタバレ「御手洗潔、その時代の幻」「天使の名前」「石岡先生の執筆メモから。」「石岡氏への手紙」「石岡先生、ロング・ロング・インタビュー」「シアルヴィ」「ミタライ・カフェ」「あとがきに代えて」の八篇収録。語り手は島田荘司。石岡君の風貌が遂に語られる!ヒュー・グラントに似てるって、『モーリス』のクライヴじゃん。やっぱりそうだったのね、ハアハア……。島田が分析した里美やレオナの話もあります。御手洗シリーズフアンは必読。「天使の名前」があるからシリーズフアン以外でも読んでOk だと思う。御手洗父は天使が見える ちがい❪敬虔なクリスチャン❫で被曝者救護に奔走する話。
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名前を聞いたこともあるし、絵も見たこともある。
でも知っているようで知らない『東洲斎写楽』。
そもそも写楽別人説が色々語られるほどの謎の人物で有名ってのも初めて知った。
それ以外にも浮世絵で知っている有名どころ葛飾北斎や安藤広重、喜多川歌麿がある程度近い時代の人達で顔見知り的な存在であったことも。
読んでる最中から『ゆっくり浮世絵を鑑賞してみようかな?』と興味が湧いてきた。
物語はその写楽の謎が解き明かされていく流れだけど、まったく予備知識の無い私でも引き込まれていくほどしっかりとした作りの小説。結局は違ったけれど、初期に出てきた『写楽=平賀源内』説はすっかり信じてしまうほど。
また作品は主人公のいる現代の話と、写楽が活躍した江戸時代を蔦谷重三郎を軸とした話を交互に進められる。その蔦谷をはじめ江戸時代の人々のやり取りがテンポの良い江戸っ子口調で、それに馴染みのない私でも活気の溢れるお江戸に混ざった気分になれる。
この小説における写楽の正体もしっかり合点がいきました。私より浮世絵などに興味を持つ父に薦めてみたい一冊です。 -
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名前を聞いたこともあるし、絵も見たこともある。
でも知っているようで知らない『東洲斎写楽』。
そもそも写楽別人説が色々語られるほどの謎の人物で有名ってのも初めて知った。
それ以外にも浮世絵で知っている有名どころ葛飾北斎や安藤広重、喜多川歌麿がある程度近い時代の人達で顔見知り的な存在であったことも。
読んでる最中から『ゆっくり浮世絵を鑑賞してみようかな?』と興味が湧いてきた。
物語はその写楽の謎が解き明かされていく流れだけど、まったく予備知識の無い私でも引き込まれていくほどしっかりとした作りの小説。結局は違ったけれど、初期に出てきた『写楽=平賀源内』説はすっかり信じてしまうほど。
また作品は主人公のいる現代の話と、写楽が活躍した江戸時代を蔦谷重三郎を軸とした話を交互に進められる。その蔦谷をはじめ江戸時代の人々のやり取りがテンポの良い江戸っ子口調で、それに馴染みのない私でも活気の溢れるお江戸に混ざった気分になれる。
この小説における写楽の正体もしっかり合点がいきました。私より浮世絵などに興味を持つ父に薦めてみたい一冊です。 -
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ネタバレ島田荘司さんの小説を読むのはこれが初めてです。
自分が好きな作家さんがこの本の名前をあげていらしたので、手にとってみました。
一部が切り取られた女性の遺体が
森の中に吊るされているのが発見されたところから物語は始まります。
猟奇殺人事件と思われたこの連続殺人から
重力論文へ構成が展開していくわけですが、
興味深い内容の論文にページを捲る手が止まりません。
初めは唐突とも思えるある人物の論文の転記に戸惑いますが
読み進める内に犯人の意図が見えてくるところが恐ろしいです。
実際の科学者であればこのような論文や、こういった書き方はしないという指摘もありますが
この辺りは飽く迄もフィクションということで自分は割り切れました。
地球の自転速度が遅くなり、重力が変わったことで恐竜が絶滅したという説が
あまりに突飛であり一笑に付して終えられないじわりとした恐怖。
日本人作家が書いている外国が舞台の物語ですが、海外ミステリーのようなタッチで違和感もなく読みました。
下巻でどのようにまとめられるのか非常に楽しみです。