島田荘司のレビュー一覧
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ロンドン留学中の夏目漱石とシャーロック・ホームズの夢の競演である。二人が同時代人であることにちょっとした驚きを感じたけれど、言われてみたらその通り。この豪華キャストできちんと本格ミステリを書くのだから対したものだ。
構成もおもしろく、夏目漱石の手記とワトスン医師による記録が交互に出てきて物語を進行していく。漱石の文章はいかにも彼の文章らしくちょっと皮肉なユーモアに満ちている。ワトスン医師の記録は、正編のムードをきちんと醸し出していて贋作としても水準を十分にみたいしてる。
同じ出来事を二人の筆者がそれぞれの立場から書いているところがいくつかあるのだけど、文体どころか出来事までもうんと異 -
Posted by ブクログ
最近「傘を折る女」がモーニングでコミカライズされましたが、内容をほとんど忘れていたので文庫版で再読。去年の11月に読んだものをここまですっぱり忘れてしまえるのものかというくらい忘れてました。
やはり馬車道時代はいいなぁ。御手洗も石岡君も生き生きしている。わたしは「傘を折る女」より「UFO大通り」の方が好きなんですが。軍隊気質な猪神刑事のキャラもいいし、その猪神刑事をおちょくって楽しむ御手洗とはらはらする石岡君が面白い。御手洗のペースに巻き込まれて意味不明な啖呵切ったり最終的には涙目になってる猪神刑事が可哀想で好きです。
漫画にするなら「UFO大通り」の方が向いてたんじゃないかなと思いました。と -
Posted by ブクログ
講談社ミステリーランド第1回配本作品の文庫化。
作品冒頭、ペルセウス座流星群の夜が、なんともいえず美しい。
主人公の少年と隣人の男性が、真夏の夜の浜辺に腰をおろし星を見上げながら語り合う…というか、主に男性が語る場面なのだが、その一言一言に心を動かし、見えるもの聞こえるものに敏感に反応する少年の様子が、みずみずしくもせつない。
ミステリーとしては、とてもフェアに書かれているため、謎の核心にあるものが何かは最後の解明を待たずとも察することができる。しかし、それをこの作品のテーマに持ってくるとは、しかもこれほどリリカルに書ききるとは…さすが島田荘司! それに、あっぱれミステリーランド! です。