あらすじ
傑作中編集。民族紛争地帯のボスニア・ヘルツェゴヴィナで、酸鼻を極める切り裂き事件が起きた。心臓以外のすべての臓器が取り出され、電球や飯盒の蓋などが詰め込まれていたのだ。殺害の容疑者にはしかし、絶対のアリバイがあった。RPG(ロールプレイングゲーム)世界とこの事件が交差する謎に、天才・御手洗潔が挑む。同じく民族紛争がもたらした怨念が胸をえぐる中編『クロアチア人の手」も収録。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
島田さんの作品を読むのは『占星術殺人事件』依頼。本作もスケールが大きくて面白かった。あらすじだけ読むと、どういうこと?と思っちゃいましたが、最後でちゃんとまとめられて、すごい、と思いました。
Posted by ブクログ
昨年6月、「クロアチア人の手」だけ先に読む。
1年後の今月10日、化学療法センターでの点滴中「リベルタスの寓話」前編を読む。敬遠していた理由は、島田ミステリ特有の「しまだ世界昔ばなし」が入っていたから。
「水晶のピラミッド」など、長々とした古代の悲恋ばなしが、現代の謎解きと特に関係ないのだから、読み手は徒労感を覚えてしまう。
難癖をつけたが、自動人形にまつわる奇跡譚は感動的だった。
翌11日、同・後編を読む。なるほど! クイーンのあれのバリエーションか。
Posted by ブクログ
リベルタス~もクロアチア人~も面白かった。
どっちも他国の人ゆえのグロさと難解さがあった気がする。
義手はちょっとトリッキーすぎる感じもあるが、嫌いじゃない。
Posted by ブクログ
推理云々ではなく歴史だとか民族だとかの情報を娯楽小説で得ようとしているのではないかという自分の陳腐さを思い知らされる。教養ある人は楽しく読める?はず。私には知らないことが多すぎるのだろう。
Posted by ブクログ
中編2編で、いずれも民族間の紛争が根底にある事件。
表題作は、謎の提示の仕方が非常にいい。残虐な殺され方をした屍体が発見されるが、それにはきちんとした意味があった。
さらにその話が、オンラインゲームとつながって、という展開から思いも寄らない真実が。
Posted by ブクログ
「リベルタスの寓話」「クロアチア人の手」の二本収録。ストーリー的には繋がりはありませんが2つの事件の背景がクロアチア紛争ということ、発生が恐らく同時期であることから1つの社会派作品としても見れます。
解決に若干腑に落ちない点はあるものの、細かい部分を気にせず実情を反映させた民族対立の物語として考えれば非常に興味深い作品。実際の紛争の経緯などをちゃんと理解したいという気にもさせられました。
Posted by ブクログ
読み終わってから何かのシリーズらしいと知った
戦争では往々にしてあることだけど後々まで尾を引いて、一度振り上げた手を誰も下ろせないでいる…悲しみだけが残ってなんだかやりきれない
日本では普段意識せずに暮らしているし、民族紛争もなかったところだから実感があるわけではないけど、水に流すというのもそう簡単にできることではないよなぁ
実際のところどれだけの悲惨なことが行われたんだろうとつい考えてしまう
Posted by ブクログ
『リベルタスの寓話』
御手洗潔シリーズ
NATO監視下のサラエボで起きた殺人事件。民家で殺害された内戦中に虐殺を働いたセルビア人民族主義者クラバッシと2人の遺体、モスリム系のクルポの遺体。腹を裂かれ内臓を取り出された遺体。セルビア、モスリムと対立するクロアチア人の犯行か?NATOに協力を求められたハインリッヒ。容疑者は末期がんで入院中のクロアチア人ディンコ。しかし犯行現場に残された犯人の血痕の血液型とディンコの血液型は別。攻めよせるオスマン軍を撃退したある少年の内臓を詰めた人形・リベルタスの寓話に隠された秘密。ネット世界で取引された仮想の金貨の秘密。
『クロアチア人の手』
御手洗潔シリーズ
クロアチア内戦中に親友であったボジョビッチの密告で妻と娘を殺害され片腕を失ったイヴァンチャン。内戦終了後日本の俳句協会に招かれて来日したボジョビッチとイヴァンチャン。泥酔した2人を部屋に送り届けた俳句協会の委員。隣り合った2人の部屋。翌日密室のイヴァンチャンの部屋で発見されたボジョヴィッチ。顔と腕をピラニアに食われた遺体。ボジョビッチが見た動く腕の夢。同じ朝交通事故に会い爆死したイヴァンチャンと思われる男。静寂恐怖症と周囲に漏らしていたイヴァンチャンの腕に隠された秘密。
Posted by ブクログ
都市・歴史研究や先端医学の知識に基づく最近の他の作品群と同様、この小説も読み応え十分。挿入されている寓話だけでもすごいミステリでした。この寓話から着想を得たのかと思いきやオンラインRPGの問題を書きたかったのがきっかけというのもさすが島田荘司さんの奇想です。
Posted by ブクログ
グロイ表現もあったけど、相変わらずスタイリッシュでした。
トリックや伏線に気づいた時の頭をガツンと殴られたかのような衝撃が凄かった。御手洗潔はホントすげぇや!!!
Posted by ブクログ
「ロシア幽霊軍艦事件」と同様、ヨーロッパの暗黒史に材をとったもの。
微妙に交錯するふたつの事件をうまく構成しているのはさすが。
事件自体はそれほど、面白いものじゃない。
むしろ、そこに至る動機や暗黒史の方が読み応えがあった。
ただ、RMTがそれほどのマーケットになっているというのは
少しリアリティにかけた。(自分が知らないだけだろうけど)
あと、石岡君の活躍がもっとみたかった。
Posted by ブクログ
丁度旅+歴史のクイズ番組でやってたのですよね。
そして私は行ってたのですよね。ドゥブロヴニク。
クロアチアやスロベニア。アドリア海。
と、色々懐かしくてしかも御手洗と言うことで購入。
そしてそしてネトゲな要素もあるとかないとか。
買うに決まってるじゃないのですか。
ドゥブロヴニクのお話に関しては、情景が、本当にあの町が蘇って来て、写真出して見てしまう程。
史実にはなかった創作だったそうなのですけど、ありそうありそう。
確かに民主国家で独立してたっぽかったし、ふしぎ発見でもそんな事言ってたし。
もう一つのお話に関しても、RMTの仕組みは分かっていたし、海外の……と言うかほぼ中国だと思っていたのですけど、日本人の個人ユーザーだけじゃない、海外の組織的な金策の影を感じていたのは事実で、そしてそれはMMOの世界じゃ皆知ってる事なのでしょうけど……何と言うか、思ってたのと少し違った……。と言うのが正直な感想だったのです。
御手洗は数える程度しか読んでいないので(だって老後にとって置くから)御手洗探偵って……こんなホームズ拗らせたようなキャラだったっけ?と、そんな事を思ってしまったのでした。
やっぱりしーなの記憶にある勝手な御手洗イメージは、島田潔の方だった……ora
Posted by ブクログ
リベルタスの寓話とクロアチア人の手の2話。
なんでそんなことをしたのかわからない殺人事件に
論理的にその理由を明らかにしていく、いつもの感じ。
これが心地よくて好き。
ただ今回は舞台がボスニア・ヘルツェゴヴィナやクロアチアなので民族紛争や人種の話などが少し関わってくる。
ネトゲのRMTも題材にした、なんかちょっと考えさせられる話でした。
Posted by ブクログ
「リベルタスの寓話」「クロアチア人の手」の2編収録。
ええと、毎度のことながら東欧史ほとんど知らないので、ううむ、あまりよくわからない…。いかんなあ、歴史の勉強不足…。
ただ、島田氏が書くとどれも史実のように思えてしまうらしく、よく本当にあったことかと問い合わせがあるそうで、巻末に後書きとして、自身の創作部分と史実部分との注釈がついていた。
ついていてもよくわからない自分が情けないが。
構成がやや変わっていて、「リベルタスの寓話」の前編と後編の間に、「クロアチア人の手」が入っている。最初、それがちょっと理解できなくて一生懸命繋がりを求めて読んでいた私。あ、なんだ、別の話か…。まあ、もちろん狙いがあっての構成なんだけど。
それにしても、マネーロンダリングの話はちょっとよくわからない。
バーチャルと現実のからみもイマイチピンとこず。
あぁ~、ダメだなあ私。わかってないことだらけ。
わかってないことだらけの上に、トリックというか謎解きというか、それも今一つだったなあ。
Posted by ブクログ
民族紛争を経験したことがない日本に住んでいると、本作の重要なテーマである「民族浄化」という問題がピンと来ない。殺人の動機が読めないといったところか。
但し、島田氏の壮大な奇想トリックメーカーぶりは期待どおりで、寓話のリベルタスの奇跡の話も面白い。
Posted by ブクログ
うーん、御手洗が登場する作品としてはイマイチだった作品。
著者が後書きで解説しているように、
・ユーゴスラビア紛争という民族紛争が生んだ悲劇
・医学的知識に基づいた血液型トリック
・日本のオンラインゲームで取引されるRMT
・ドゥブロブニクという自治都市を舞台に展開される「リベルタス」という寓話
これらの要素が複雑に絡み合いながら
物語が展開していくわけだけど、
それに成功しているとは言い難く、
物語として引き込まれないまま終わってしまった。
セルビア人の民兵組織が、活動資金を稼ぐために
日本のRMTで荒稼ぎしているという設定も
リアリティにかけるし
(韓国人組織とか中国の華僑とかだったら説得力あるが)、
血液型トリックも最後のほうにチラッと出て終わった
オマケ感が強い。
物語の構成として、
・リベルタスの寓話(前篇)
・クロアチア人の手
・リベルタスの寓話(後編)
の3部構成になっているが、
途中に「クロアチア人の手」が挟まれる必然性が薄く、
興が冷めがちになってしまうのも痛かった。
ただ、挿話の巧さは衰えがなく、
「リベルタス」という寓話は非常に面白かった。
史実を参考に虚構を交えたものということだけど、
読ませる話だった。
Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ御手洗潔シリーズ。
著者らしい話の展開が懐かしくも面白かった。
ただ、ミステリーに絡めてある題材がリアルすぎて、単純なエンターテイメント作品として読むと重いかもしれない・・・。
Posted by ブクログ
さすが島田荘司!
巧みなストーリー構成で怪奇事件の謎解きにとどまらず、
事件が起きた根深い背景を歴史嫌いな私にもじわーっとわからせてくれる。
舞台は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで起きた怪奇事件。前編、後編の間(中編)では、日本で起きた怪奇事件を御手洗潔がさらっと解きます。
どちらも民族紛争を題材にしている。
1980年代までユーゴスラビアは、模範的な社会主義国と言われていた。しかし、社会主義国崩壊後に起きた内戦で、正教徒のセルビア人、カトリックのクロアチア人、イスラム教徒のモスリム人のスラブ系民族同士が三つ巴の殺し合いが行われた。
強烈な印象に残ったのは「民族浄化」。「穢れた血を薄める」。人間はこんなに残酷で無能なことができてしまうのか・・・衝撃を受けました。
時間がたち建物がきれいに治っても、民族紛争によって傷つけられた人の心(怨念)は、癒されるものではない。
民族紛争が残した消えない爪痕。
ミステリーを通して民族紛争の痛みをしることができた作品。
キーワード:ドゥブロブニク、ボスニア紛争、民族浄化、モスリム人、セルビア人、クロアチア人、仮想
Posted by ブクログ
民族紛争という主題そのものが、平和ボケした島国に暮らす日本人にはどうしても理解が難しいなあ、ていうことが第一印象。知識としてすら知らないことが多いからなあ…。
表題作に関しては、創作寓話と絡めたトリックが相変わらず島田荘司らしい説得力で読ませます。その状況にどう現実味持たせるのよ?!てとこに見事に現実感をこじつける手腕が絶品。まさか臓器を抜いたのが××××ことを隠す為とは…。難を挙げれば、RPGを絡めたせいでページの割りに詰め込みすぎた感があることでしょうか。どうせならもう少し軽い扱い方でも良かった気がしますが、島田先生はこの世界が書きたかったんでしょう。仕方ない…。
「クロアチア人の手」は名探偵不在の助手活躍譚ということで期待大だわ〜(*^ω^*)ガンバレ石岡くん!で読み始めたんですが…部屋入れ替わってたりピラニアに食べられてたりの不可解性も文句無しなのですが…
そ の ト リ ッ ク 厳 し く な い で す か 島 田 先 生 !!
これは昔からの島田ファンも唖然としたと思います。絵的には面白そうだけど。
●リベルタスの寓話…心臓以外の臓器が取り出され、電球や携帯電話、ホースなどが詰め込まれた死体がボスニア・ヘルツェゴビナで発見された。
その死体の周囲には、敵対する民族の死体が並び、それらは性器が切り取られていた。しかし、最重要容疑者には絶対のアリバイがあった…。
●クロアチア人の手…一旦施錠されれば外からは出入り不可能な部屋の中、水槽に顔を突っ込んだ溺死体が発見された。同時刻、死体の友人は車に跳ねられた衝撃で爆死するという不可解な事件。御手洗が不在の中、助手の石岡は助言を請いながら解決に乗り出すが…。