あらすじ
傑作中編集。民族紛争地帯のボスニア・ヘルツェゴヴィナで、酸鼻を極める切り裂き事件が起きた。心臓以外のすべての臓器が取り出され、電球や飯盒の蓋などが詰め込まれていたのだ。殺害の容疑者にはしかし、絶対のアリバイがあった。RPG(ロールプレイングゲーム)世界とこの事件が交差する謎に、天才・御手洗潔が挑む。同じく民族紛争がもたらした怨念が胸をえぐる中編『クロアチア人の手」も収録。
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Posted by ブクログ
リベルタス~もクロアチア人~も面白かった。
どっちも他国の人ゆえのグロさと難解さがあった気がする。
義手はちょっとトリッキーすぎる感じもあるが、嫌いじゃない。
Posted by ブクログ
『リベルタスの寓話』
御手洗潔シリーズ
NATO監視下のサラエボで起きた殺人事件。民家で殺害された内戦中に虐殺を働いたセルビア人民族主義者クラバッシと2人の遺体、モスリム系のクルポの遺体。腹を裂かれ内臓を取り出された遺体。セルビア、モスリムと対立するクロアチア人の犯行か?NATOに協力を求められたハインリッヒ。容疑者は末期がんで入院中のクロアチア人ディンコ。しかし犯行現場に残された犯人の血痕の血液型とディンコの血液型は別。攻めよせるオスマン軍を撃退したある少年の内臓を詰めた人形・リベルタスの寓話に隠された秘密。ネット世界で取引された仮想の金貨の秘密。
『クロアチア人の手』
御手洗潔シリーズ
クロアチア内戦中に親友であったボジョビッチの密告で妻と娘を殺害され片腕を失ったイヴァンチャン。内戦終了後日本の俳句協会に招かれて来日したボジョビッチとイヴァンチャン。泥酔した2人を部屋に送り届けた俳句協会の委員。隣り合った2人の部屋。翌日密室のイヴァンチャンの部屋で発見されたボジョヴィッチ。顔と腕をピラニアに食われた遺体。ボジョビッチが見た動く腕の夢。同じ朝交通事故に会い爆死したイヴァンチャンと思われる男。静寂恐怖症と周囲に漏らしていたイヴァンチャンの腕に隠された秘密。
Posted by ブクログ
「ロシア幽霊軍艦事件」と同様、ヨーロッパの暗黒史に材をとったもの。
微妙に交錯するふたつの事件をうまく構成しているのはさすが。
事件自体はそれほど、面白いものじゃない。
むしろ、そこに至る動機や暗黒史の方が読み応えがあった。
ただ、RMTがそれほどのマーケットになっているというのは
少しリアリティにかけた。(自分が知らないだけだろうけど)
あと、石岡君の活躍がもっとみたかった。
Posted by ブクログ
うーん、御手洗が登場する作品としてはイマイチだった作品。
著者が後書きで解説しているように、
・ユーゴスラビア紛争という民族紛争が生んだ悲劇
・医学的知識に基づいた血液型トリック
・日本のオンラインゲームで取引されるRMT
・ドゥブロブニクという自治都市を舞台に展開される「リベルタス」という寓話
これらの要素が複雑に絡み合いながら
物語が展開していくわけだけど、
それに成功しているとは言い難く、
物語として引き込まれないまま終わってしまった。
セルビア人の民兵組織が、活動資金を稼ぐために
日本のRMTで荒稼ぎしているという設定も
リアリティにかけるし
(韓国人組織とか中国の華僑とかだったら説得力あるが)、
血液型トリックも最後のほうにチラッと出て終わった
オマケ感が強い。
物語の構成として、
・リベルタスの寓話(前篇)
・クロアチア人の手
・リベルタスの寓話(後編)
の3部構成になっているが、
途中に「クロアチア人の手」が挟まれる必然性が薄く、
興が冷めがちになってしまうのも痛かった。
ただ、挿話の巧さは衰えがなく、
「リベルタス」という寓話は非常に面白かった。
史実を参考に虚構を交えたものということだけど、
読ませる話だった。
Posted by ブクログ
さすが島田荘司!
巧みなストーリー構成で怪奇事件の謎解きにとどまらず、
事件が起きた根深い背景を歴史嫌いな私にもじわーっとわからせてくれる。
舞台は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで起きた怪奇事件。前編、後編の間(中編)では、日本で起きた怪奇事件を御手洗潔がさらっと解きます。
どちらも民族紛争を題材にしている。
1980年代までユーゴスラビアは、模範的な社会主義国と言われていた。しかし、社会主義国崩壊後に起きた内戦で、正教徒のセルビア人、カトリックのクロアチア人、イスラム教徒のモスリム人のスラブ系民族同士が三つ巴の殺し合いが行われた。
強烈な印象に残ったのは「民族浄化」。「穢れた血を薄める」。人間はこんなに残酷で無能なことができてしまうのか・・・衝撃を受けました。
時間がたち建物がきれいに治っても、民族紛争によって傷つけられた人の心(怨念)は、癒されるものではない。
民族紛争が残した消えない爪痕。
ミステリーを通して民族紛争の痛みをしることができた作品。
キーワード:ドゥブロブニク、ボスニア紛争、民族浄化、モスリム人、セルビア人、クロアチア人、仮想