2024.05.01 『星の王子さま』サン=テグジュペリ
良い本というのは読んだあとの余韻が凄いなと思うのですが、『星の王子さま』は、まさに余韻のすごい本でした。
なんでもっと早く読まなかったんだろうと思うほど、1-2時間で摂取できる本にも関わらず、読後は人生通して寄り添ってくれる名作。
そりゃ
...続きを読む70年経っても語り継がれる作品ですわと。
「大人と子供の違いとは?」
「習慣とは?権威とは?」
「飼い慣らすとは、そこに絆が生まれるということ?」
小説でありながら、絵本のようで詩のようで、ある種哲学書のような側面も持ちます。
--ここから少しネタバレ--
砂漠に不時着したぼくが、小さな星を旅立ち、いくつもの星を旅して地球に辿り着いた星の王子さまと出会う物語。
地球にたどり着くまでに回る星は、
「権力がほしい王様のいる星」
「承認欲求の強い大物気取りの男がいる星」
「恥ずかしさを忘れるために酒浸りになる男のいる星」
「すべてをお金で見るビジネスマンのいる星」
「規則だからと電灯をつけた消したりする点灯人がいる星」
「本に乗っていること以外興味のない地理学者のいる星」
と一風変わった星ばかり。
ただ読者は、この星に住む人達は変でありながら、自分の中に潜む一部分と向き合うことになります。
読むときの年齢や状況で、感想が変わってくると、よく言われる所以はこのあたりにあるのではないでしょうか。
『星の王子さま』は、大人について様々言及をします。
「大人というのは何もわかっていないから、子供の方はいつも説明しなければならなくてうんざりしてしまう」
「大人は数字が好きだ。新しい友達ができたよと言っても、大人は大事なことは何も聞かない」
「大人を相手にするときは子供は寛大でなければならないんだ」
このあたりは、過去に回ってきた星の人間から王子さまが得た教訓なのでしょう。
そんな中、『星の王子さま』の中で最も語り継がれる台詞であろう、一文が出てきます。
「ものは心でみる。肝心なことは目では見えない」と。
これは、王子さまにキツネが言う台詞なのですが、
主人公も眠っている王子さまを両腕に抱いて歩いた時、
「ここに見えてるのは殻なんだ。いちばん大事なものは目には見えない。」と同じようなことを思います。
花畑にある一輪の花に特別な意味はありません。
夜空にある無数の星の中で輝く、1つの星に特別な意味はありません。
ただ、そこに自分が育てた「花」、友人が住んでる「星」と、ある種、飼いならした関係になると、そこに特別な絆が生まれます。
これは人間関係にも言えることなのだろうと思いました。
改めて、読後感が爽快なお話でした。
本編ともあまり関係がないけれども、『花の自尊心』という言葉が気に入りました。