サン・テグジュペリのレビュー一覧
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<その夜を、越えられるか>
サン=テグジュペリの名を世に知らしめた作。1931年原著初版刊行。アンドレ・ジッドの序文が添えられている。
南米大陸で、新事業である夜間郵便飛行に挑む男たちの物語。
南米各地からブエノスアイレスへと荷物を運び、それを各地へ、また欧州へと運ぶ。
黎明期の事業の存続は綱渡りだった。民間の商業航空が生き延びるには、夜間の定期便を飛ばすよりほかなかった。
一方で、当時の飛行機の性能はさほど安定しておらず、通信も万全ではなかった。暗黒の中に飛び立つには危険が大きい。
しかし。
夜を越えねば未来はない。
物語の舞台は主に、空を飛ぶ若きパイロットの飛行機と、地上支援を行う老いた社長のいる事務所である。午前0時から2時のわずか2時間の出来事が主である。
この夜、ブエノスアイレス上空は晴れていた。しかし、パタゴニアから飛んだ機は激しい嵐に見舞われていた。
パイロットは必死に奮闘する。しかし、燃料は限られており、時間の猶予はない。
帰らぬ機を待つ社長は苦悩する。この機の荷を移し、欧州便を飛ばさねばならないのだ。夜間飛行には反対の声も多く、ここで失敗すれば事業自体がつぶれてしまう。
嵐に揉まれ、荒れ狂う海に翻弄されるかのような中で、パイロットはふと見えた上空の星を目指す。雲の上に出た彼が見たのは、星がちりばめられた、信じられぬほど美しい光景だった。
だが、それはつめたい宝石に囲まれた場所、誰ひとり生きていない世界でもあった。
静謐で美しい絶望。
制限時間が過ぎた中、地上の社長は1つの決断をする。
彼らは果たして、それぞれの夜を越えられたのだろうか。
ジッドをして、絶賛の序文を書かしめた一作。
簡素にして緊迫感に満ち、美しい。
後年、サン=テグジュペリは、第二次大戦中、飛行機で偵察に出て、消息を絶つ。自殺も疑われたが、ドイツ機による撃墜が真相のようである。
飛行機を愛し、飛行機乗りに愛された作家は、自身、空の上の夢のような世界を見ただろうか。あるいは今でもその空を飛び続けているのだろうか。 -
Posted by ブクログ
「夜間飛行」というタイトルにひかれて手に取った。夜間に広い南米大陸を飛行機で郵便配達する話ということで、静かでロマンチックな話かと思いきや、まったく違った。
20世紀前半は飛行機の性能、無線通信技術、運行管理などが当然ながら現在ほどではなくて、天候の急変が襲ったり、パタゴニアやアンデス山脈の暴風が吹けば、途端に命の危険に晒されるという状況が前半で提示される。
そして後半で...という展開。
一見非情とも思える運行管理者の言動にも考えさせられる。航空機輸送が鉄道や船舶に劣後していた時代、ルーチンワークの中で重大トラブルが発生したとして、管理者はその業務を止められるのか。自分ならどうするかみたいなことを考えた。
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「星の王子さま」を含めて、初読。
聖書と資本論に次いで多くの翻訳がなされた本、とのことで、納得の名作。
数多い印象的な場面の中で、お気に入りは、
冒頭の、ヒツジの絵を書く場面で、なかなか王子のOKが出ないので、(一休さんのように)、箱の絵を描いて、「きみのほしがっているヒツジはこのなかに入ってる」と、やったら、王子が顔を輝かせて喜ぶ場面。
あとは、(以下、抜粋)
23
「こんにちは」と小さな王子がいった。
「こんにちは」と商人がいった。
それはのどの渇きをしずめるという、あたらしい薬を売る商人だった。週に一粒、その薬を飲めば、それでもう何も飲みたくなくなるのだそうだ。
「どうしてそんな薬を売ってるの?」小さな王子はたずねた。
「ずいぶん、時間のせつやくになるんだよ。専門家が計算してみたんだ。そしたら、毎週五十三分のけんやくになるらしい」
「その五十三分をどうするの?」
「好きなように使えばいいさ・・・」
小さな王子はつぶやいた。(ぼくだったら、もし五十三分つかえるなら、どこかの泉まで、ゆっくり歩いていくだろうなあ・・・)
26
「きみが夜、空をながめるとき、どれかの星にぼくが住んでいて、そこでぼくが笑っていると思えば、きみにとっては全部の星が笑っているようなものでしょう。きみがもてるのは笑うことのできる星なんだよ!」
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Posted by ブクログ
ネタバレ時代を思わせる夜間郵便配達の過酷な状態とそれに従事する人々の矜持と心理。
部下に危険を回避するのは臆病で懲罰ものだ、と鼓舞する指導は、現在における日本の雇用の考え方では、亡くなられた遺族の訴訟や再演防止策の策定などで仕事が確実に滞ることもあり、危険なことはさせない。それに対し、ありえないくらい危機管理が希薄だが、現代に置いても戦争をしている当事国なら今もこんな考え方に至ることもあるのかと考える。
後半、郵便配達パイロットのファビアンの消息について、緊迫した情景描写とともに描かれ、最後まではらはらさせる読ませ方は上手い。
郵便配達パイロットの目線での人々の営みを観察し、思いを馳せるところは、皆がそれなりに心のなかで感じている事であり、共感する。
運行業務責任者であるリビィエールの苦悩と孤独も、管理者の辛さを浮き彫りにする。
以前、新潮文庫版の読みにくさに途中で投げ出したが、本作ではとても読みやすく、かつより豊かな表現で描かれていると感じた。
翻訳小説は、役者の方針でかなり変わると痛感させられる。 -
Posted by ブクログ
サンテグジュペリ 「戦う操縦士」
人気作家の不人気作品?(他と比較してあまり見ないけど)。ストーリーの展開は見られない。敗戦の中から 人間のあるべき姿を見出して、復興の力を感じさせる言葉の数々。終盤に出てくる「真人間」の定義がわかりにく以外は 良書だと思う
前半は 戦争の無益さや愚劣さを語りながら、飛行の追体験、仲間との連帯感、自己犠牲の物語。後半は 種子や絆、弟の死をキーワードとして 人間中心主義が独白される構成
真人間は、個人を超えた存在であり、神の下で平等であり、民族的アイデンティティなど共同体の絆を自覚した人間 と捉えた
16歳のときの弟の死の回想シーンの言葉「人間は絆の塊だ。人間には絆が重要なのだ」が 著者の人間中心主義の姿なのだと思う
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じわじわ来る
クローズアップされる人物が場面ごとに入れ替わって
それぞれの立場で考えさせられる
良い小説だと思います。
人類の自然に対する挑戦の物語なのかな。
そう言ってしまうと古くさくなってしまうけど。
それでもその挑戦する精神は色褪せないのだと思います。