「世界とどのように関係を結ぶか」がテーマと理解した。
庭に咲いている5000 本のバラじゃなくて、星の1本のバラが大切な理由。5億の星ではなく、1つの星。20億の他人ではなく、1人の友達。それは、たまたま出会い、時間を共にして、お互い「飼い慣らす」から、大切になる。人も、土地も同じ。価値があるから
...続きを読む好きになるのではない。好きになるから価値があるという、逆説。
無限の承認欲求市場の登場によって「価値のある自分になろう」「トロフィーを、バッヂを集めよう」というメッセージが数多く発されるなか、このような考え方は、人の足を、地面に着かせてくれる。
池澤夏樹も巻末に記しているように、王子様は、手仕事を大切にしていることも、示唆に富んでいる。「水を飲まずに過ごせる薬」を開発した人は自信満々に「その時間で別のことをしよう!」とPRする。それに対して王子様は「その時間を何に使うの?僕なら、水辺まで散歩することに使いたい」と言う。そうなのだ。体を使って作業することや、生きるために必要な各種の活動を、楽しんで、味わうこと。これこそ豊かな人生なのではないか?サン=テグジュペリの言葉が聞こえてきそう。(このあたりの考え方は、エンデの『モモ』とも共通する。掃除夫ベッポは、掃除を天職として、とても大切に考えている)
「クラフト、アート、サイエンスのバランスが大事」と説いたのは山口周だが、王子様は「クラフト&アート」型の珍しい人材だと思う。そしてこのような生き方は、地に足のついた、真に豊かな人生の一つの理想だと思った。
4歳になったばかりの息子に、「ゾウを飲んだボアの絵」を見せたら、「カタツムリ」と答えた。サン=テグジュペリなら、息子になんと声をかけてくれるだろうか。
子どものころに読んだけど、あるアーティストの方が、キツネの「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ」を引用していて、気になって再読した。本当に良かった。