サン・テグジュペリのレビュー一覧
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ネタバレ野崎歓による『星の王子さま』(原題『Le Petit Prince』)の新訳。『ちいさな王子』と直訳されたタイトルが示すように、原著に忠実な訳文であるよう。
内藤訳との大きな違いは、本文が敬体(ですます調)でなく、常体(だ・である調)で訳されていること。理由として訳者が、あとがきにて「『できるならぼくは、この話を、おとぎ話みたいにはじめてみたかった』と、語り手自身が述べているではないか。つまり、実際には彼はそういう語り方を採らなかったのである」と指摘しているのは説得力がある。
(その他はたとえば、主人公から王子への呼びかけが、「坊っちゃん」や「あんた」から、「坊や」「きみ」とされていたり、「けんのん」「寄せ算」「かんじん」といった言葉は「とってもあぶない」「足し算」「大切」といった現代風の言葉に置き換えられている)
内藤訳に慣れていると読み始めは戸惑うけれど、淡々とした野崎訳だからこそ、本書の端々に溢れる純粋さが際立って感じられる。内藤訳は名文だけれど、野崎訳もまた違った味わいがあって良い。 -
Posted by ブクログ
【コメント】
子供だった大人たちにむけて描いた物語り。
こう書くとなんだかワクワクする。
主人公と男の子が出会い、交流を通して
本当に大切なものは何なのかに気づいていく。
優しくユーモアがあり、ちょっと切なくなる
お話し。
*** 作品の時代背景
この本は著者が実在の友人のレオン・ヴェルト
に向けて書いた物語り。レオンはユダヤ人で
大戦で迫害を受けていたのだ。著者自身も
フランスがドイツに敗れ自身はアメリカに亡命
している。
そういう背景を知って作品を見てみると、
これは単にファンタジーを描いただけの
作品ではないときづく。そこには風刺
(王子が様々な星で出会う奇妙な大人たち
に対する)があり、友人レオンと同じよう
につらく孤独な思いをしている大人たちへ
のメッセージがこめられている。
【内容】
著者は、独り砂漠に不時着し難儀する。
そんな時にであった小さな男の子との交流を
通して、人生で本当に大切なものは何なのか?
に気づいていく。
小さな男の子は星の王子さまなのでした。
王子さまは、大切なものを自分の星に残して
旅にでてしまう。様々な星を渡って冒険する。
そうして地球にやってきたのでした。 -
Posted by ブクログ
この訳者は『星の王子さま』の題名の反対派。タイトルの”petit”、つまり「小さい」という形容詞を重要視しているからだ。確かに、小さな星からやっていた、小さな王子の、小さな物語かもしれない。
また、訳者は、この話の中で語り手が「おとぎ話みたいにはじめてみたかった。」とあるように、この話は、おとぎ話調、童話調ではない点を指針とした、とあとがきで書いている。とはいえ、様々な訳を読んだ中では、印象としては、おとぎ話風の印象を持った。
もしかしたら、これが訳者のいう、第二の指針とした、この物語の「温かさ」、サン=テグジュペリという人物のぬくもりの現れなのかもしれないな。 -
Posted by ブクログ
KiKi の子供時代、とあるコマーシャルで「大きなことはいいことだ」というフレーズが使われたことがありました。 でもその後の価値観の変動の中で「大きけりゃいいってもんじゃない」という風潮が生まれてきて、今はその延長線上にあるように感じます。 でも、一度は大きい方に舵をとったこの社会はこの「大きい」と「小さい」のひずみの中で喘いでいる・・・・・そんな気もしないじゃないんですよね~。
でね、今回、この「小さな」「大きな」という対比の中に、KiKi は「大きな組織で動く効率的・合理的社会」というものを感じ取りました。 もちろんそれが「悪いこと」とは言い切れないんだけど(特に落ちこぼれながら会計人感覚からすると 苦笑)、それでもその「効率性」「合理性」追及の陰に、王子が自分の星から地球に至るまでに立ち寄ったいくつかの星に住む不思議な住民の姿がダブって感じられるんですよ。 「支配だけしたがる王さま」、「ただ目立ちたがる男」、「自分を見失い酒ばかり飲んでいる男」、「ひたすら忙しがるビジネスマン」、「点灯だけを仕事とする男」、「フィールドワークをしない机にかじりついている学者」・・・・・・。
今更ながら・・・・・ではあるけれど、この物語ってひょっとしたら「人間性の喪失」に対する危機感の物語であり、どんどん近代化していく世界への警鐘の文学だったのかもしれません。 そう・・・・、言ってみれば「怜悧な社会風刺の物語」。 そしてもう一つ感じたのは、ここ何年か KiKi 自身もず~っと考え続けていることなんだけど「グローバル・スタンダードって本当のところ何???」という命題について扱っている物語でもあるんだなぁということでした。
(全文はブログにて) -
Posted by ブクログ
中学生の頃読み始めて、70ページのところでしおりが止まっていたこの本を、10年経った今やっと開きました。はじめから読み見直していると、当時の感情を思い出しました。当時は本当に意味が分からなくて、まだ子供の自分には難しい本なのだと読むのを諦めたことを思い出しました。また、わがままな王子に腹が立ってもいました。大人になって読んだこの本は、こんなに素敵なお話だったんだという気持ちで楽しめました。自己顕示欲や承認欲求といった無意味なことに時間を使っている大人への比喩を理解できるようになったし、その対比として目の前の楽しいことや自分の大切な相手のためだけに時間を使い、日々を楽しく過ごしている子供の眩しさも痛感できました。「人は、自分のいるところに決して満足できない。」という言葉は特に響きました。これも全て欲がまねいていることであり、子供は自分の持ち物だけでどうにか楽しみをつくる。大人になった今とても羨ましい能力です。ただ大人でも、その心を少しでも持つことはきっとできて、その第一歩として今夜からは「あそこには王子さまが住んでいるかもしれない」などと思いながら星を眺めることにします。また10年後この本を開いた時にもっと楽しめるように。