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Posted by ブクログ
堀口大学訳の新潮文庫版、ロングセラーの地位はいまも不動。私もずっとこの詩的な堀口訳に慣れ親しんできたが、引っかかる訳語がいくつもあった。
今回、渋谷豊訳の光文社古典新訳文庫版では、それがすっかり解消されている。たとえば、サンテクスの最初の職業フライトの場面。午前3時半、雨のなか、彼が乗り込むのは飛行場行きの「マイクロバス」なのか、「路面電車」なのか。渋谷訳は「路面電車」。タイトルも、堀口訳は「土地」だったが、渋谷訳は「大地」だ。
どちらの訳で読んでも、サンテクスが初仕事に向かうその緊張感と高揚感の描写はたまらない。そして彼とプレヴォがリビア砂漠の真ん中にクラッシュしたエピソードも。3日間飲まず食わずで、蜃気楼、錯覚と幻覚に悩まされながら生き延び、奇跡的にベドウィンの遊牧民に助けられる。何度読んでも、感動的だ。
Posted by ブクログ
サン=テグジュペリの最高傑作。
若い人に読んで欲しいとあとがきにあったが、読んでも理解するのはずっと後になるだろう。人生における普遍的な真実をあの若さで書くことができたのは、死と隣り合わせの職業だったからではないか。読んでいて、極限状態に追い込まれないと真実には辿り着けないのではないかと感じた。
近しい身内を亡くした人間は、高次の意識に近づくと感じるけど、すぐまた元に戻ってしまう。
極限状態に居続けることは考えるだけでもしんどい。でも主人公は心が安らぐという。死ぬ瞬間には理解できるのだろうか。
いつもは考えない人間の根幹とか普遍的な何かとかを考える読書だった。浮かんでは消えていく感じだけど、サン=テグジュペリが伝えたいことの片鱗は誰の中にもあるのではないか。
Posted by ブクログ
郵便飛行士だったサン・テグジュペリが、自身や僚友たちの飛行体験を通して、「人間とは何か」「使命とは何か」「愛とは何か」を問いかける一冊のように思いました。
サン・テグジュペリやギヨメの遭難のくだりを読み、思い出したのがフランクルの『夜と霧』でした。フランクルは、収容所で生き延びたのは愛する人と再会したい、成し遂げたいことがあると思い描いた人だと書いています。
サン・テグジュペリも僚友のギヨメも同じで、極限状況で人を支えるのは体力だけでなく、愛する人への思いや使命感なのだと感じました。何かが起きてからではなく、人との関わりや使命感を日頃から大切にすること。その積み重ねが人を支える力になるのだと思います。
「愛するとは互いに見つめあうことではなく、一緒に同じ方向を見つめることだ」という一節も、心に残りました。
ラストの「一人一人の中にいる虐殺されたモーツアルト」という表現の意味がすぐには分からなかったのですが、モーツアルトを人間本来の可能性や魂の輝きの象徴と捉えると、貧困や戦争、不平等によってそれが奪われることへの苛立ちなのだと腑に落ちました。
それに続くラストの「精神の風が粘土の上を吹き渡るとき、初めて人間は創造される」という一文からは、旧約聖書の創世記の、神が土のちりから人を形づくり命の息を吹き込む場面が自然と重なりました。
「精神の風」とは、愛すること、真理を求めること、責任を引き受けること。そうした風が吹き込まれて、人は人間たらしめられるのだと思います。
『人間の大地』は、「人間とは何か」を問い続ける一冊でもあると思います。
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