あらすじ
「夜の闇の中に橋を架ける必要がある」――夜空にひそむ美と脅威,人間の責務と幸福とのせめぎ合いを描く『夜間飛行』.アフリカ・南米航路の開拓者たちの命がけの挑戦や,現地の人々の気高さを語る『人間の大地』.生涯,飛行士として飛び続けた作家が,天空と地上での生の意味を問う代表作二作.原文の硬質な輝きを伝える新訳.
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Posted by ブクログ
「100分で名著」を見て、「人間の大地」は読まなきゃと思って読んだ。
というわけで、今回は「人間の大地」だけの感想です。
「大変美しい文章で描かれる遭難体験」という、酷い感想を持ちつつも、サン=テグジュペリが「地球」だったり「人間」だったりを、まるで肉体から離脱したような高い目線で見ているのは、本当に凄いと思った。それにしても、冬山をろくな装備もなく帰ってくる人がいたり、砂漠で水なしで生き延びたりと、当時の人の丈夫さを思ったりもした。
そして何より、「愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである」は名言だなと思いました。
Posted by ブクログ
・全体を通して
サン=テグジュペリは、夜間郵便飛行まで手掛けた優秀な飛行士でありながら、そこで得た体験を詩的・幻想的な表現で民衆に伝えることが出来た稀有な作家であった。
ボクはなんだかんだこの著者の作品を読んだのは初めてだったけど、この2作でサン=テグジュペリのことが相当好きになった。緊迫感を硬質な筆致で描写しながらも、別人のような表現で当事者の感動を幻想的に描いていた。
人間の尊厳と、生きるという奇跡を、とてつもない感動と共に理解することが出来た
しばしば、自然の驚異/脅威や雄大さを描くためにラヴクラフト的なゾクゾクするような幻想的な描写をするところもボクに刺さった
「一時間後、メルモーズは雲の下に潜り込み、幻想の王国に突入した。」
本当に読んだ方がいい。国際社会の分断が問題視される今だからこそ、「同じ方向を見つめること」としての「愛」を説いたサン=テグジュペリのこれら作品はすっごくおすすめ
すっごい面白かったし感動できた
「人間であること、それはまさしく責任をもつことだ。」
『夜間飛行』
何と感動させられる物語か
人間の気高さと幸福への渇望が葛藤して出来事を進行させていく、ということの意味や重みが心に深く沁み渡ってきた
普段あまり景色や眺めの描写に注意を払わないボクでも情景を思い浮かべ引き込まれるほどの緊迫感と臨場感。自然の雄大さ、人生の矛盾との孤独な戦いの様がまざまざと描かれておりすごく感動した。
片や郵便機のパイロット、片やオフィスの支配人という全く異なった境遇なのにも拘わらず、彼らの間に渡る言葉にならない信頼に、一万五千キロの隔たりに橋を架ける者としての覚悟が見えて、今では古臭いとされるロマンのようなものを感じた。
「とにかく生き続けることだ、作り出すんだ、この滅び去る体と引き換えに……」
『人間の大地』
圧巻のエッセイ集だった
著者が初めて定期飛行を行った時の心情を述べるところから始まり、仲間たちの偉業、飛行機がもつ魅力、砂漠の民の誇り、最後には人間を人間たらしめる本質について、詩的で神秘的な筆致で語る
8篇にわたるエッセイは、著者が当時どういう実感をもっていたのかを、神秘的かつ現実的に描き出している。
飛行している際の真っ暗な夜空から、凪いだ海のように穏やかで幻想的な砂漠まで、著者の体験を追体験してるが如く、没入して情景も思い描きながら読むことが出来た
普段ストーリーの流れしか気にしていない私でも、その美しさに感動するほどの文章だった
「どんなに目立たないことであっても、自分の役割を自覚したとき、われわれは初めて幸せになれるだろう。」
Posted by ブクログ
星の王子さまの作者 サンテグジュペリが飛行機乗りであった事は何となく知っていたがこの本を読んで 生死の境を行ったり来たりしながら人間とは何かを身をもって感じた人だったということに衝撃を受けた 戦争の最中でも淡々と自分のやる事をする兵士達 今でも繰り返される戦争 星の王子さまを再読しようと思う
Posted by ブクログ
『人間の大地』はやはり「「精神」だけが、その息吹が粘土の土の上に通うならば「人間」を創造することができる。」という最後の一文がすごく肝になっていると思う。
定期路線を飛行しているとき農夫を見て感じたこと、リビア砂漠で彷徨ったときのこと、戦時中フランスからパリに移送されるユダヤ人の人やその子供を見て感じたこと。どのエピソードも飛行機を通じて作者が体験し考えたものばかりで、大地に根付いた人間たちの物語なんだなと感じることができた。心に刺さる名言も多いし自分は『人間の大地』が好きだなあと改めて思いました。
ちなみに表紙の写真は長年の夢だった新品飛行機を買ったときの写真で、この直後にリビア砂漠に墜落して8章のお話ができた。当時いくらだったのかはわからないけどかわいそうって気持ちになってしまった。
新潮文庫版『人間の土地』の最後の文は「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる」です。こっちのほうがすっきりしていて入りやすい気もする。あとは評判のいい光文社古典新訳文庫の『夜間飛行』も読んでみたい。
Posted by ブクログ
楽しみにしてたよ〜〜〜〜
堀口大學訳で読んでから何年経ったかわからないけど
この2作を新訳で読めることに喜びを感じる!
当たり前だけど本当に読みやすくて、星の王子さましか読んだことがない方でも読めると思う。
ただ星の王子さまと同じ感覚で読むとびっくりするかも!ハードボイルドじゃない!?と個人的には思います。
郵便物を空路で運ぶよ〜な話。
空から見える景色が逐一美しくて好きだ〜。あと夜間飛行は空と大地それぞれで戦う者たちの精神に根拠があって全てのことがすんなりと頭に入ってくる。自由とはとか。
人間の大地もまぁ良かったんだけど、やっぱりなんか最初に読んだ堀口訳よりも魅力が減っている気がする〜〜〜!!
友情を樫の木に例える文も、初めてこの文に出会った時はとんでもない衝撃を受けたものでした。けど今回は2回目だからなのか私が訳を気にいらないのか、うーんかすんで普通の文に思えてしまった。
思い出補正の存在を抜きにしても、初で読んだ堀口訳の方がおそらく原文が持っているであろう豊かな美しさがあったかもしれないと個人的には思う。(そちらには南方郵便機が収録されているのでそれの印象が含まれているかも!&原文は南方郵便機しか持っていないので検証不可)
しかしながらサン=テグジュペリが残してくれた文章が素晴らしいことには変わりないので星4かな。他の方の感想を拝見して興味が湧いたので上記2名以外の翻訳者のものもいつか読んでみたいと思う。