高橋克彦のレビュー一覧
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先月読んだ『前世の記憶』が印象的だったので、シリーズの前作にあたるこの作品集も読むことにしました。これ、ほんとにすごいシリーズですね。もしまだ続けて書かれているなら、次の作品集もぜひ読みたいものです。
古い住宅地図から子供の頃に住んでいた町の記憶が次々によみがえるのに目当てにしたある家だけが見つからないという表題作もおもしろかったけれど、やはりこの作品集でもっとも怖くそして美しいのは「ねじれた記憶」でしょう。思わず何度も読み返してしまいました。そうする価値があるでしょう?例えば現代恐怖アンソロジーを組むなら必須の作品といってもよいですね。あとでカバーの解説をふと見たら直木賞の選考委員が激賞とか -
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高橋克彦というと『総門谷』とか『写楽殺人事件』とかそういうイメージだったので、こういう短編集は意外だったのですが、氏の直木賞受賞はこのシリーズの前作にあたる『緋い記憶』ということなので、これはぼくの不勉強ですね。
表題作の「前世の記憶」はちょっとストレートすぎるかなという気がしましたが二番目に収録されている「針の記憶」では思わずうなってしまいました。これはいい。それと「匂いの記憶」がじつに怖くて秀逸。なまじのホラーではこの話のラストシーンにたちうちできないでしょう。思えば「記憶」だけをテーマにしてこれだけ書くというのはすごいことなのでしょうね。ぜひ『緋い記憶』も読んでみなければなりません -
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ネタバレ南部は信直が継ぎ、いよいよ愛想を尽かした政実は葛西を見据えて和賀を攻める。だがしかし、戦国の世は政実の想像を越えた急流で、ついに秀吉の手が小田原を越え陸奥へと伸びてきてしまった。
序盤の和賀攻めはこれぞ九戸党と言える名勝負で、その後の南部本家の浅瀬石攻めの体たらくと比較でき面白い。また大浦為信決死の秀吉謁見もなかなか。さて、安東愛季が死に、奥州仕置が始まり、高水寺斯波が潰えた…急に陸奥が乱れ始め、伊達と九戸の未来に暗雲が立ち込める…ここからどうなるか。
にしても南部の小田原参戦はいやにあっさり書いてるな…本書では敵役とは言えもうちょっと書いても良さそうだが… -
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伊達や最上など戦がイマイチな戦国東北にあって、精強をもって知られる九戸政実が主人公の歴史小説。戦国ファンにとってもなぜ政実が当時天下人であった秀吉相手に喧嘩を売ったのかは明確でないし、そもそもろくに資料も残ってないにも関わらず見事に主人公らしい男前なキャラクターを作れている。この巻では安東からの長牛城奪還〜南部晴政死去あたりまで。
北の鬼といわれる九戸政実が、2歳違いの信長が尾張に畿内にと八面六臂の大活躍を見せているのを羨み、南部という辺境で足掻く様は見ていてもどかしい。また戦の天才とはいえ政争や駆け引きにはちと弱い印象があり好感が持てる。この巻の最後でついに南部晴政が死に、南部藩の結束崩壊は -
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鈴木春信の作品を巡る殺人事件の謎を美術品の探し屋である耿介が解いていく作品。まず作者の代表作の浮世絵三部作の続編として、同連作の津田(名前のみ)や塔馬が登場するのは非常にエモい。そして春信と司馬江漢という一般知名度の低い2人の過去や特徴を知れるのは非常に良かった。個人的には三部作の『北斎〜』や『広重〜』より好きだ。
事件自体は脱税や複雑な売手買手の利害といった俗世的でかつ込み入っておりその点が読む上での難点だった。が、舞台をNYまで広げ、絵探しから殺人事件まで広がる謎を解決していく展開は面白かった。江漢キリシタン説なる、高橋氏お得意の突飛でかつ興味深い学説も終盤に登場しファンも満足の仕掛け -
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広目屋・藤岡屋由蔵に居候する武士・香冶完四郎の謎解き短編。1篇30頁程度で非常にテンポ良く読みやすい。魯文や芳幾を始め実在の人物を交えたバラエティ溢れるストーリーが魅力的。特に高橋氏らしく怪談関連が多く、現代の怪談には興味がない私だが、虚実の狭間を突く今回のような物語は非常に良い。相棒・魯文の下っ端感と由蔵の面倒見の良さ、完四郎の飄々としつつも誠実な優しさが綺麗に混ざり合い、心地よい雰囲気を醸し出している。最後の安政の大地震は非常にショッキングな事件だが、被害や被害者にスポットを敢えて当てずに復興や正常化に向けて奮闘するメディアの意義に焦点が当たっており、非常に示唆に富んだ短編になっていると思
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鬼九郎シリーズ最終巻。ツッコミどころ満載のはちゃめちゃ話だったが、作者の目指す娯楽時代小説としては満点だと思う。
1、2巻で敵対した左甚五郎が仲間になったように本作の序盤、中盤を引っ張った風魔の西鬼、南鬼、小五郎が、中盤以降の主役、高澤恒志郎、青柳元七といった強者が皆敵から味方となり、200人近くを相手に大乱闘を繰り広げる圧巻のラスト。
九郎と又右衛門が九郎の理不尽に命を狙われる境遇を嘆くシーンは高橋氏らしい熱を持っていて、明るい展開が続く中で、短い文章で泣かされた。
まだまだ続いてほしい気もするが、蛇足になりかねない気もするので丁度良い完結だったと思う。 -
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シリーズ3作目。今回は短編5作で、鬼九郎以外の面々を主役に据えながら、1つ1つが読み応えのある作品に仕上げられている。
どれも良いが、『怪談高尾』はホラーとミステリを混ぜた独特な雰囲気と展開で先が読めない面白さがあった。全員集合で犯人を嵌めるのはお決まりであり、この話の読後が一番良かったと思う。
ただ本作のハイライトは最終話の『九郎非情剣』。九郎の出生の秘密が判明。私の予想は将軍の腹違いの兄弟だったが、その更に上で、かつ実の親に命を狙われるという非情。皆が九郎を守るために命を張る場面は心揺さぶられる。決して大きく感情を顕にしない九郎が涙するシーンは、それが皆への感謝の嬉しい涙であり、親に