高橋克彦のレビュー一覧

  • 完四郎広目手控

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    広目屋・藤岡屋由蔵に居候する武士・香冶完四郎の謎解き短編。1篇30頁程度で非常にテンポ良く読みやすい。魯文や芳幾を始め実在の人物を交えたバラエティ溢れるストーリーが魅力的。特に高橋氏らしく怪談関連が多く、現代の怪談には興味がない私だが、虚実の狭間を突く今回のような物語は非常に良い。相棒・魯文の下っ端感と由蔵の面倒見の良さ、完四郎の飄々としつつも誠実な優しさが綺麗に混ざり合い、心地よい雰囲気を醸し出している。最後の安政の大地震は非常にショッキングな事件だが、被害や被害者にスポットを敢えて当てずに復興や正常化に向けて奮闘するメディアの意義に焦点が当たっており、非常に示唆に富んだ短編になっていると思

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    2025年07月20日
  • 完四郎広目手控4 文明怪化

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    江戸時代を舞台にしていた作品が、明治時代に舞台を移したとたんに、何となく違和感を感じることが多い(少なくとも僕は)のだけど、この作品は、そんなことなく、むしろ、より面白くなった。高橋克彦さんは、このシリーズを書き始めた最初から、明治時代まで書き進めることを前提として考えていたのだろう。さすが!と思う。

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    2025年07月01日
  • 完四郎広目手控3 いじん幽霊

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    ちょっと大袈裟かもしれないけど、このシリーズはエンターテイメント小説だと思う。幕末を舞台とした時代小説であり、サスペンスであり、スリラーであり、史実に乗っ取った歴史小説でもある。非常に面白い!

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    2025年06月07日
  • 完四郎広目手控2 天狗殺し

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    前にも書いたけれど、高橋克彦さんの作品では、陸奥3部作のような大長編の重厚なものばっかり読んで来た。しかし、このシリーズのような短編集も良い。短編集と言っても、高橋克彦さんらしい、芯の通った作品だから読み応えがある。

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    2025年06月01日
  • 写楽殺人事件 新装版

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    序盤、視点や描写が定まらず少し読みづらいが、中盤からの写楽の謎を追うフィールドワークのパートが、とにかく面白い。
    作者の浮世絵に対する知識と熱量が伝わってきて、導き出された大胆な仮説は、発表から40年以上たった今でも新鮮。

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    2025年05月13日
  • 完四郎広目手控

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    高橋克彦さんの作品は、今まで、陸奥3部作や「水壁」のような”重い”ものしか読んでなかったけど、この作品のような”軽い”ものも良い。”軽い”と言っても、歴史の要点はキッチリ押さえてあるし、謎解きの部分には深みがある。さすが、と言うしかない。

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    2025年05月08日
  • 火怨 上 北の燿星アテルイ

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    東北の人々が
    蝦夷と呼ばれていた時代に、
    その命と誇りを
    守る為に戦い続けた
    英雄 阿弖流為(アテルイ)と
    仲間達の話。

    その生き様と信念の強さを
    見事な文章力で表現している。

    上下巻だがあっという間に
    読み終わってしまう。
    怒涛の熱い展開に、
    涙を流さずにはいられません。

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    2025年04月19日
  • 噴怨鬼

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    応仁の乱の後の話に道真が出てきたらうれしいのに名前すら出てなくて残念…
    判大納言が怨霊となって奮闘。
    読んでいて緊張感全然ないよなぁ何故だろうと思っていたら、会話のテンポと髑髏鬼のお茶目なやり取りでゆるい話になっていて意味不明な事は髑髏鬼も意味不明なので疑問をぶつけてきてくれる。会話になっているので説明文よりわかりやすいのかも。

    前回までの内容も所々で出てくるので思い出しながら読み進めるが楽しい現実逃避できた時間を過ごす事ができた。

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    2025年01月21日
  • 鬼九郎孤月剣 舫鬼九郎4

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     鬼九郎シリーズ最終巻。ツッコミどころ満載のはちゃめちゃ話だったが、作者の目指す娯楽時代小説としては満点だと思う。
     1、2巻で敵対した左甚五郎が仲間になったように本作の序盤、中盤を引っ張った風魔の西鬼、南鬼、小五郎が、中盤以降の主役、高澤恒志郎、青柳元七といった強者が皆敵から味方となり、200人近くを相手に大乱闘を繰り広げる圧巻のラスト。
     九郎と又右衛門が九郎の理不尽に命を狙われる境遇を嘆くシーンは高橋氏らしい熱を持っていて、明るい展開が続く中で、短い文章で泣かされた。
     まだまだ続いてほしい気もするが、蛇足になりかねない気もするので丁度良い完結だったと思う。

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    2024年12月30日
  • 完四郎広目手控4 文明怪化

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    今回は完四郎が帰国してからの短編集。
    毎回露文センセーやその仲間が瓦版と新聞の中間のような錦絵付き一枚新聞のようなものを持ち込んで、完四郎がどうも額面通りの事件じゃなさそうだと背後を推理し始め、現地入りして真相を暴くという趣向。
    真相が分かったところで、決して杓子定規に善悪の裁きをしないところが江戸時代からの流れをくんでいて古き良き日本の雰囲気が好ましい。
    完四郎以外は実在の人物が数多く登場して、何となく本当にこんなことがあったかもと思えるのも高橋作品によくある魅力です。

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    2024年11月22日
  • 鬼九郎五結鬼灯 舫鬼九郎3

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     シリーズ3作目。今回は短編5作で、鬼九郎以外の面々を主役に据えながら、1つ1つが読み応えのある作品に仕上げられている。
     どれも良いが、『怪談高尾』はホラーとミステリを混ぜた独特な雰囲気と展開で先が読めない面白さがあった。全員集合で犯人を嵌めるのはお決まりであり、この話の読後が一番良かったと思う。
     ただ本作のハイライトは最終話の『九郎非情剣』。九郎の出生の秘密が判明。私の予想は将軍の腹違いの兄弟だったが、その更に上で、かつ実の親に命を狙われるという非情。皆が九郎を守るために命を張る場面は心揺さぶられる。決して大きく感情を顕にしない九郎が涙するシーンは、それが皆への感謝の嬉しい涙であり、親に

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    2024年10月20日
  • 時宗 全4冊合本版

    KOU

    購入済み

    時宗

    元寇から日本を守ったのは台風みたいな認識だったが北条時頼、時宗と二代に渡って何年も前から巧妙な作戦を立てていた。
    北条と言えば権力争いしかしてないみたいなイメージだったが、、、長兄の時輔が実際はこんなにすばらしい性質の方だったかは
    さておき、いい味出しています。北方謙三さんがチンギス紀の次に元寇の話らしくたのしみだ。

    #憧れる #感動する #アツい

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    2024年10月01日
  • 火怨 下 北の燿星アテルイ

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    朝廷側ではなく蝦夷側の視点が新鮮。歴史物なので最後はわかっているのでせつないんだが、登場人物が魅力的だ!

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    2024年08月22日
  • 前世の記憶

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    なんとなく興味のあるタイトルだったので期待してしまってたのですが、期待を超える面白さで良かったです。記憶にまつわる短編集で、どれも身近にありそうで、奥が深い内容でとても好みでした。著者さんの作品をもっと読みたいです。

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    2024年07月31日
  • 鬼九郎鬼草子 舫鬼九郎2

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     シリーズ第2巻は、江戸を離れ、作者得意の東北を舞台を移し、前作の面白さを大きく超えてきた。左甚五郎の配下がおっちょこちょいすぎる点と長兵衛たち侠客組が小物すぎる点は気になるが、十兵衛・九郎・徳兵衛の三銃士の活躍が楽しい。
     この江戸前期は戦国時代と江戸の安定期の狭間であり、政治的な苦心(配慮)が色々な事件を通して見ることができる非常に興味深い時代。会津騒動は名前以外を詳しく知らなかったが、この事件と絡めるのかと感心させられた。
     今回は天海も不気味な存在であり、より人間関係が複雑になりそう。1・2巻で悪役として描かれた左甚五郎だが、そろそろ仲間になりそうなほど愛嬌があるキャラになってきている

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    2024年07月20日
  • 緋(あか)い記憶

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    記憶をテーマとしたホラー短編集。
    ふと思い出した記憶を探るためジグソーパズルを埋めるように遡っていく人々の話。
    記憶は現実にだぶるものだと思う。記憶と現実とは重なるわけがないけれど何か繋がりがあり、そこに欠落を感じる。
    その欠落が何かを理解するために、納得するために現実をほっぽって過去へと向かう、途中で恐ろしいものが行き止まりにはあると考えても行き着くまで止まることはない。
    破滅を呼ぶわけでもないのに、忘れる事がよく生きるコツなのかとさえ思う。

    好きな作品は捻れた記憶と膚の記憶。

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    2024年07月18日
  • 火怨 下 北の燿星アテルイ

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    気になったところ、心に響いたところ。

    774年、蝦夷が桃生城を攻撃。ここから蝦夷の大和朝廷との防衛戦争が始まる。いわゆる38年戦争。
    続いて、伊治城の伊治呰麻呂が反乱を起こす(780年)。阿弖流為が登場するのはここから。物部が後ろ盾となる。

    上巻 ページ98。  

    母礼の言葉。  
    「だからこそ、物部は同族の暮らす陸奥を頼ってきたのだ。 かつては出雲が我ら蝦夷と物部の祖先の暮らす。 土地であったらしい。 それを海を渡ってきた朝廷の者らの祖先が奪い取った。 我ら蝦夷は北へ逃れたが、物部はなんとか止まって朝廷に従うことなったのだ」  
    阿弖流為。 
    「我らと物部が同族。」  
    母礼。  

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    2024年05月05日
  • 舫鬼九郎

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     舫鬼九郎、天竺徳兵衛、柳生十兵衛。3人の最強剣士が江戸の闇を明かしていく。この説明は間違っていないはずだが、実際は3人は三つ巴の敵として登場し、十兵衛以外の架空の2人は未だ身元ははっきりしていない。故に2人の正体や3人が手を組んでいく過程が物語の面白さを増していると思う。
     他にも宇都宮駅前でお馴染みの初代横綱・明石志賀之助、天海僧正、左甚右衛門など有名人も続々登場し史実と虚構が上手く構成させれていて楽しい。最後の"海戦"も派手で良かった。
     細かい点では、最後の勝負でいくつか作戦を挙げて実現可否を検討していくのが高橋先生らしいと思った。決まった作戦を紹介するだけで物語的

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    2024年03月09日
  • 風の陣【天命篇】

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     再読。第二作で手を貸した道鏡が巨大権力を握っていく中、嶋足と天鈴がそれを阻止すべく奮闘する。
     本作は最後を除き天鈴の策が尽く外れる。それだけ道鏡が狡猾だったということを表しているが、聖武天皇以前の藤原氏の権勢(称徳天皇自身、祖母も母も藤原氏)を知っているだけにこの一瞬で藤原氏の勢いが減退したという事実は改めて見ると面白い。もし称徳天皇が藤原氏の血を疎んで意図的に道鏡を利用していたらという妄想も…(澤田瞳子氏の『月人壮子』に感化されて)。
     いずれにせよ、道鏡の試みはあっさり阻止され、蝦夷にとっては苦難の時代に入る。道鏡が皇位についた方が蝦夷にとっては良かったのかとも思ってしまう辛い歴史が…

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    2024年02月22日
  • 緋(あか)い記憶

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    あとがきで川村湊さんが、
    岩井出身の“みちのく”作家。
    心の中の “みちのく”の情景を描く。
    と、上手こと表現している。
    直木賞の人生の曖昧となった記憶を物語とした
    7編の記憶シリーズ。舞台も東北が多い。
    どの短編も、記憶から欠けた時間を探し始めるところから始まる。そこに記憶を封じなければならなかった事情を思い出していくという構成。
    各作品、設定も展開も工夫されて、とても素敵な短編集です。

    「緋い記憶」
    故郷での緋色の記憶。そこに残る少女との思い出。なぜか、住宅地図には、その家の記録がない。
    「ねじれた記憶」
    男は母との記憶が残る寂れた温泉宿へ。そこは、母親の自殺した場所。母親とよく似た女性

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    2024年01月31日