あらすじ
朝廷に背き、蝦夷(えみし)の側に身を投じて戦った父藤原経清、叔父平永衡の名を継いだ清衡は源義家の力を借りて乱を治め、藤原に姓を改めて平泉に黄金の都を築いた。堂塔を建て勅使を迎えて栄華を誇る孫の秀衡の許に源氏との宿縁が3たび影を落とす。壮大なスケールで描く、傑作歴史小説ついに完結! (講談社文庫)
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ついに最終巻。読み終えた達成感と充足感、そして読み終えてしまった…という寂しい気持ちとで半々。
確かに歴史伝奇小説なんだけれど、俗説を拾い上げて正史の行間を埋めるように昇華しきっていると感じた。
特に藤原泰衡は、こういう人物像もあり得るんじゃないかと思わされる。義経との絆には泣かされたし、泰衡の最期の演出もニクかったなぁ…。
平泉に行ってみたい。
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藤原経清から始まる壮大な物語。歴史はわかってはいますが、蝦夷の物語をどう完結させるのか、わかりませんでした。
やられました。素晴らしい。
蝦夷の国は陸奥に暮らす全ての胸のなかにある。一人ひとりが蝦夷の国。皆が生き延びてくれれば、形としての陸奥はなくなったとしても、滅びはしない。
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最終巻は、戦をしない、りっぱな武士の話でした。
以前、何も知らないで中尊寺に行きましたが、今度はしっかり参りたいと思いました。
「まことの武士たるは安寧にあって乱に備え、乱にあるや一人平穏を保つ者である」
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世界遺産 平泉へ訪れるなら、この作品は必読です。何も知らずに金色堂と密集したお寺を眺めるだけではなく、「浄土を作る」というコンセプトがどんな背景からできたのか想像しながら歩くと、感動の大きさは歴然の差があると思います。
それほどこの作品は私のような初心者にも、陸奥の歴史を鮮やかに想像させてくれました。著者の歴史への知識に裏打ちされたストーリーと、「武士」としての人間関係や判断に引き込まれます。
お気に入りは「そうきたか」と呟いてしまうほど良い意味で期待を裏切るクライマックス。当時の武将の取る選択肢としては考えられない視野の広い人道的な感覚です。歴史的な真偽は知らないのですが、小説として大変楽しませてくれました。
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ついに完結。
最後まで清々しい蝦夷の志に心を打たれました。
源平の戦いの陰に隠れた奥州平泉の物語が真実かどうかはわかりません。ただ、この作品で描かれているような高貴な魂の結果が今の日本に少しでも影響していればと願ってしまいます。
もう一度平泉を訪れたくなりました。そして、平氏や源氏の視点から描かれた作品も読んでみたいです。
義経の生涯は諸説ありますが、本当はどうだったのかと想像すると夢が膨らみました。
文句なしの5点満点です。
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武士の美学…。新渡戸稲造が言ってたニワカBUSHIDOなんかじゃなくて、これぞ武士道。こんな大きな死に方見たことない。
源義経の高橋克彦流の解釈。かなり『吾妻鏡』とは違う。
吾妻鏡では、泰衡が秀衡に義経を守るように託されるも、頼朝に恭順すべく義経の首を差し出し、さらに義経に心酔していた弟の忠衡も誅滅したという。それによって頼朝に許しを得ようとするも、頼朝は勅令に背いたは大罪として断固として奥州藤原氏を討ち亡ぼすよう攻め込んだとしている。泰衡は逃げ続けたが最後は郎従の河田次郎に首を獲られたとされている。
吾妻鏡は鎌倉幕府のつくった史書であり、ご都合主義が採用されていると思われる。だから高橋克彦氏の言うように奥州藤原氏の一連の顛末はああだったかもしれない。
しかし、それにしても美談に作り上げられている。それでも、面白い。
蝦夷の政治学が鎌倉幕府に転用されているという考えは非常に面白い。記録には残らないから奥州藤原氏がどのように広大な蝦夷一帯を治めていたかは正確にはわからない。しかし、安倍貞任から150年もの長い間を独自の治め方をして、平和を作り上げたのだから、特筆すべきものがあったに違いない。
実に興味深い、奥州藤原氏論だった。
高橋克己の陸奥三部作をここから読み始めたので、他の『火焔』『天を衝く』も楽しみ。
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源氏による蝦夷奥州討伐の話。
この時代の時代小説は珍しく、また日本の成り立ちのイメージも膨らみ、歴史に対する好奇心が広がって楽しかったな。
1巻2巻は「前九年の役」
3巻4巻は「後三年の役」
5巻は「源義経」の話
源義経の話は多いが、藤原氏視点と言うのは珍しいのではないか。興味深かった。
【メモ】
平将門の乱が平定されて100年後、蝦夷の反乱は、小規模ながら有るものの朝廷がよく機能し収めていた。朝廷は平氏や源氏を筆頭とする武士団に対して警戒するようになっていく。
この国はもともと我らの祖先が開いた国、そこに帝の祖先が兵を率いて襲ってきた。我らの祖先はその時出雲を本拠地としていたが、追われて諏訪や津軽に逃げた。日の本の国名は出雲に由来している。出雲の中心に斐伊川が流れていて上流には蝦夷が開いた鉱山がある。祖先は斐の本の一族と呼ばれ、日の本、日本となった。陸奥に出雲の大国主命を祀る神社が多い。蝦夷、物部の神は蛇神、帝の祖先の須佐之男尊が出雲で退治したのはヤマタノオロチ、すなわち大蛇。
藤原経清のもと妻が奥州を平らにしたと言うことで、息子らに真衡、清衡、家衡の名前をつけ、それ以来藤原家では、○○衡が続く。
平氏、源氏は遡れば帝の流れ、藤原は蝦夷の流れ
藤原経清・結有(前九年の役)
┗清衡(後三年の役)
┗基衡
┗秀衡
┗安衡、忠衡
藤原秀衡、先先代が陸奥の支配者に成ったのは源氏の後ろ楯があったから、その恩を受けて、源義経を奥州に守り引き立てる
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時代が下って、平氏の台頭から奥州藤原氏の滅亡まで。泰衡が義経を逃がし、奥州の平穏を守るため、自ら滅ぶ道を選んだというのは、もちろん定説ではありませんが、これは「アテルイ」からの筆者の基本的な姿勢。まあこれはこれで良いかと。
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今までの集大成。全5巻は多いという方も、最終巻だけでもおすすめです。
読後に奥州に旅立った方が結構いらっしゃってびっくり。…自分も旅立ちました(大笑)!
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大好きな作品の最終巻。
1巻と5巻(最終巻)のみのレビューという中途半端さですみません笑
蝦夷と朝廷との戦いを描いた大作。
最終巻は経清の子孫である泰衡が主人公。
泰衡は、史実上では保身のために義経を売ったような印象やったけど、ここでは全く違う描かれ方をしていた。
「国は滅びても人は残る」
それを信条に、繁栄を極めた平泉を滅ぼし、自分も死ぬことになっても、そこに暮らす人々を、文化を生かそうとした。
それは、同じく泰衡の祖先、経清の息子である清衡が、仏教によって人を治め、平和をはかったように。
大切なのは人と文化。それを守るためにどうするか。
少なからず、それを考えて歴史を作り上げてきた先人たちがいると思うと胸アツ…!
これは小説だし、本当のところは分からない。
けれど、こんな見方もありなのか、と思ったら、歴史の中で散っていった多くの人間の中に、もっともっとロマンが隠されているのでは、と思うと感動で胸がつまります。
歴史の奥深さを教えてくれた運命的な小説です。
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かなり長い年月に及ぶ大作。
中尊寺は何度か行ったが、この本を読んでから行くと全く違った感じ方ができるのではないだろうか。あの急坂をどういう気持ちで登って行ったのか、蝦夷の魂が眠る金色堂を隠した理由など。
蝦夷は最後まで自らが攻め入る事は無かった。あくまでも蝦夷を守る為にしか戦わなかった。
ロバート•レッドフォードとポール•ニューマンの映画『明日にむかって撃て』の美学にも似てると思った。彼らは数多くの強盗をしたが決して人は殺さなかった。(最後に多くの警察官に囲まれ、銃殺されるが)
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清衡は楽土を作り上げた。
その楽土を受け継いだ者たちが源頼朝により滅亡するまでの物語。
自分たちの立場を絶対的にするために招いた源義経。
その欲が奥州藤原氏滅亡に帰結する。
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「炎立つ」全5巻。
アテルイ時代の「火怨」から引き続き読む。全5巻の大作なれど、要所要所で泣かせて頂きました。蝦夷の民や誇りを次代へ受け継がせるためには、自身が滅び去ることも厭わない蝦夷の強さにただただ圧倒されるばかり。歴史の名において、決して勝利ばかりを手にしているわけではないが、その後も蝦夷の血がその地に絶やすことなく、脈々と受け継がれていることを思えば、戦に破れて命を落としていった者も全て勝者だと言える。現代の東北人の根底に彼らがあるとするならば、本当に羨ましいとさえ思った。
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最終巻。いよいよ義経が登場し、奥州藤原氏と源頼朝の政治的な駆け引きも面白い。
最後の展開は、とてもドラマティックであるが、藤原泰衡の『楽土』に対する考え方が、平泉が、今尚、世界遺産として脈々とその姿を引き継いでいることで目的が達せられたのだろう、と心に刻まれた。
奥州藤原氏は、何故、寺院を盛んに建立したのか。これは、宋の僧を惹きつけるためでもあった。つまり、膨大な知識を持った僧が、政治の仕組み兵書など様々な情報を奥州にもたらした。
「土地があるから国と申そうが、そこに人がおらぬでは、ただの荒れ野。つまりは人があってこその国。国を守るということは人を守ることに他ならぬ」
義経の、一の谷の戦い、壇ノ浦の戦いの勝利が、奥州との繋がりの中で描かれている。
義経は、飽くまでも、この小説では主人公ではないが、義経伝説を思い抱く結末となっている。
平氏が公家に取り込まれて滅亡したのに対して、頼朝は、京から独立した形で権力を維持した。つまり武家社会を新たに造ったわけだが、その政治的な仕組みは、やはり京から独立して『楽土』を実現した平泉より学んだ、とする考察。
「平泉のやり方を学べば内理がなくとも治めていける。鎌倉が平泉と同じ力を持てば、もはや公家の方々の役割も終わる。武士の天下となろうの・・・」
平泉は世界遺産に指定されたが、平泉とは?奥州藤原氏とは?理解する上で大切なことは、蝦夷といわれながらも、そこに秘められた『楽土』の考え方を知ること。
この小説は、その考え方を登場人物を通じて生々しく心に迫る。
登場人物として安倍氏の存在がスパイスのように効いている。
物部氏につながり、神秘的な存在である彼等のルーツを知ることも、自分の中の次のテーマになった。
最後に、
震災や平泉を通じて注目を集めている東北。
この本は、東北の”心”を感じることができる歴史小説として、この夏一番のお奨め。
Posted by ブクログ
蝦夷に焦点を当てた「炎立つ」シリーズの最終巻。個人的趣味により、この巻から読み始めました。
歴史上では、圧力に屈して父の遺言に背いて義経を討ち、結果平泉を滅ぼすことになったと、あまり良く書かれない四代目泰衡ですが、ここでは全く違った視点から描写がしてあります。平泉を心から愛しており、そして最後まで義経の良き兄であり理解者です。
事実の解釈を変えるだけでここまで印象が変わるとは、と、驚きでした。最後はほろりと泣かされてしまいました・・・。
余談ですが、遙か3の泰衡を好きな方には自信を持ってお勧めできます(笑)
Posted by ブクログ
新規購入ではなく、積読状態のもの。
2009/2/22〜2/23
源義経を主役としてのストーリーしか知らなかったが、平家と源氏の争い、奥州藤原氏の栄華と頼朝の征伐など、もちろんフィクションが沢山含まれるとはいえ、史実には不思議なことが沢山ある部分について、なるほどそうだったかもしれない、と思わせる展開。また、この全5巻を通じて、政治とは、政治家とは、ということを非常に考えさせられた。もちろん小説の中の話ではあるが、今の私利私欲しか考えない人たちに是非読んでもらいたい一冊である。
山形にいる頃、中尊寺に行ったことがあるが、是非もう一度訪れたいと思う。
Posted by ブクログ
再読。
やはり面白い。
スケールも大きく、時代小説の熱さを存分に味わえる。
さらに、東北地方に縁のある人には絶対におすすめ。
歴史とは何か。
解釈によって、視点によってこれほどにも違って見えるものかと思う。
経清、貞任の第一部も大変な引力を持っているが、
泰衡の最終章がもっとも印象的。
そもそも四代泰衡という人は、名君藤原秀衡と対比的に国を滅ぼした愚将と語られるのが常だ。
その泰衡の真意が語られるシーンは感動的。
長らく中央政権から隔絶し、幕府権力に滅ぼされた奥州藤原氏について、
信頼できる文献史料はおそらく望めないだろう。
だから、実際の平泉がどうだったのかは、誰にもわからない。
この小説も、結局は完成度の高いフィクションでしかない。
しかしこの小説は、娯楽性を備えながらも、歴史の多面性、日本人の多様性を訴えて余りある。
東北出身の筆者の心からの訴えであろうと思う。
東北地方が、現在もなお、軽んじられる傾向にあるのは確かなことだ。
それが、軽んじられている側にしか感じられないような程度であったとしても。
奥州は、戊辰戦争でも反勢力を形成した。
日本はなまじ狭いだけに、全国統一の波にいつも飲み込まれてしまってきたけれど、
東北史を見ていると、二国共存ないし連邦制の可能性もゼロではなかったのだと思う。
同じ可能性が、日本各地にあったのだろうと思う。
地方分権、道州制が叫ばれて久しい今、「炎立つ」に
地方自治の可能性についての想像力をかきたてられる、といっては言いすぎだろうか。
Posted by ブクログ
正史とは違ってて蝦夷寄りで、蝦夷とは国とは人とはが描いてある
平泉行ってみたいな
そういえば昨日多賀城と言う地名もニュースで出てきてたな、おおおおお
Posted by ブクログ
1993年のNHK大河ドラマの原作小説…。
平安時代…、
前九年の役・後三年の役~源平合戦・奥州合戦までの、
約150年間の蝦夷(東北地方)と中央との騒乱を描く。
小説は、全5巻の大長編となる。
ドラマでは、
前九年の役~後三年の役(第1、2部)が6割、
源平合戦~奥州合戦(第3部)が4割の構成でしたが、
小説では、
全5巻のうち、最終巻となる第5巻のみが、
源平合戦~奥州合戦(第3部に相当)となっており、
物語の着地に必要不可欠なエピローグ的な扱ぃか…?
でも…、奥州藤原氏の視点から見た、
源平合戦~奥州合戦を読みたかったので、
歴史長編1本として、十分に楽しめました。
(邪道ですが…、第1~4巻は未読です…)
あえて、義経ベースで構成をとらえて見ると…、
起では、義経を平泉へ迎え入れるまでの顛末を、
承では、平泉での義経の成長と、面々の思惑を、
転では、源平合戦(ある意味、シンプルに)を、
結では、奥州合戦から奥州藤原氏の滅亡までを、
となりますが…、
物語を俯瞰して見ると…、限られた資料から、
敗者(賊軍)側から見た源平合戦~奥州合戦や、
奥州や平泉の成立ちと、その意味するところが、
しっかりと描かれていて、とてもよかったです。
しかし、一方で、1つ1つを局所的に見ると、
キャラクターの設定やその行動、展開などに、
作者なりの意図するところは理解できますが、
正統派の歴史小説としては納得できなぃかな。
(解説でも、伝奇小説扱ぃになってるのが、残念…)
それでも…、機会があれば、是非っ、
第1~4巻から、読み直してみたぃですね…。
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国は人でできていて、制度や支配の維持よりもそこに暮らす民の安寧と未来が大切。人があってこその国。
日本が国として成立し終えた現代ではあまり意識できないこと、国として完全に成立していない時代だからこそわかること。今の日本という国は、そこで生きていくなかで培われる感覚は、生活のすべては、当たり前なんかじゃない。
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4巻の後三年の役から一気に100年飛んで、源平の合戦から奥州藤原氏滅亡までを描く最終巻。
4巻で言及されだした朝廷とは異なるオルタナティブの体制がようやく姿を現した。朝廷とも鎌倉幕府とも違う第3の体制としてではなく、やがて鎌倉幕府へと引き継がれる体制として奥州は位置付けられた。鎌倉の体制はオリジナルではなく、その源流こそが半独立国家として繁栄した奥州の体制なのだと。
奥州を描くということは必然的に日本という国家の拡張過程を描くことになるわけで、それができなければ奥州を取り上げる意義は乏しい。4巻半ばまではそうした視点に希薄で成功していたとは言えない。最終巻も失敗しそうだなあと思っていたのだけど、最後の最後でなるほどこうきたかと納得。4巻で見せた片鱗がようやく花開いた。
ただ、その一方で奥州と鎌倉とを体制的に接続したことで、オルタナティブとしての意味付はかなり薄れてしまったという面もある。これによって、朝廷から鎌倉幕府へ、つまり貴族政権から武士政権への移行というストーリーの中に回収されてしまった感は否めない(※1)。ここを鎌倉幕府とも違う独立したシステムとして描くことができたなら、それこそあり得たかもしれないもう一つの日本像が提示できたはずなのだけど、そこまでは及ばなかった。
たぶん作者も相当に悩んだんだろうなっていうのは読んでいても想像がつく。人物の人柄ばかり描写されて確たるテーマを見出せないまま遅々として進まない3巻までと急に国家体制というテーマが立ち上がり駆け足になった残り2巻というのは、作品全体の構成としてはあまりにバランスを欠いている。普通の戦国ものであれば失敗作と言われてもおかしくない。文献も先行作品も極端に少ない中で奥州像を作り上げていくというのは間違いなく手探りの連続だろうし、それが執筆の遅れを招いて大河ドラマとのいざこざが生じたんだろうかなど想像してしまう(※2)。
4巻半ばまではほとんど期待できる水準でなかったし、5巻で大逆転というところにまでは届いていない。初期の段階からオルタナティブな国家体制というテーマをしっかり確立できていれば、最終5巻での到達点はもっと先にいけただろうことも惜しくて仕方がない。しかし奥州を描くということに真っ向から取り組んで一定の回答を提示することができた、その一点においてすごく意義のある作品だと思う。
※1 源氏の前に平氏による政権があるわけだが、これを朝廷を中心として制度の内部における貴族政権と捉えるか鎌倉幕府と近しい独立した武士政権と捉えるかは判断の分かれるところ。作中では前者として扱っているっぽい。そうしないと平氏→源氏と断絶なく移行してしまって、奥州が源氏に接続できなくなっちゃうもんね。
※2 この時の大河は「琉球の風」「炎立つ」と2作続けて国家の拡張を描いたわけで、「太平記」といい「花の乱」といい90年代前半の大河のアグレッシブさははんぱない。
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ひたすら泰衡がかっこいい。しかし最後は死を選ぶしかなかったんだろうか。史実は曲げられないとは言え、諦めよすぎるよ。勿論「諦めた」からの結末じゃなかったけど。
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平安後期の陸奥を舞台にした全五巻の長編。
第一巻~第三巻はいわゆる前九年の役での安倍氏と藤原経清、源氏を巡る話。
第四巻は藤原経清の遺児、清衡が後三年の役を通じて安倍氏の血を再興するまでの話。
第五巻は奥州藤原氏が滅亡する際の源義経との関わりを描く話。
本巻(第五巻)は、史実との辻褄を合わせるためのやや無理な展開が多かったので星を1つ減らしました。何故栄華を誇った奥州藤原氏があっさりと滅んでしまったのか。本作では藤原泰衡に華を持たせていますが、実際のところどうだったのか気になります。
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ここまでのあまたの闘いが雪や泥や血煙りに覆われていたのだが、急に光彩楽土が開けたような、美しい街の様子が目の前に広がる。その後も一筋縄ではいかない理想郷、しかし散り際の見事なこと。5巻を通してどんどん世界に引き込まれる。
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朝廷の支配が及ばぬ、平安末期の東北地方。ここに一大勢力を築いた、奥州藤原氏。東北出身のミステリー作家である著者が描いた一大ロマン。
その父祖、亘理権野大夫藤原経清は蝦夷(えみし)の豪族、安倍氏の娘を娶り、源義家の奥州征伐で安倍方に寝返る。時は流れ、その子孫である藤原四代は東北に覇を唱え、豊富な鉱物資源をバックに隆盛を極める。しかし、栄華は長くは続かなかった。
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全五巻通読後のレビューです。
ご存知、高橋克彦氏の陸奥三部作の一つです。
前九年の役から奥州藤原氏の滅亡までを描く。
アテルイ(こちらは『火怨』の主人公)たちが叛乱を起こしてからずっと中央政府の方針に納得がいかない陸奥の民はついに再び叛乱を企てる。その中心は安倍頼時(のち頼良)。ついに中央政府から陸奥守として源氏(源頼義)が派遣され、全面戦争に発展。安倍氏は陸奥の民の代表として、物部(吉次は物部の子孫とされる)の支援を受け、陸奥の大地で源氏を迎え撃つ。
そんな中、源氏側の一人としてやってきた藤原経清(奥州藤原氏の祖とされる)は、頼時の娘を妻にしていたし、義弟の平永衡(同じく頼時の娘を娶る)が謀反の嫌疑で殺され、明日はわが身、と危惧し(安倍氏側への共感や頼義への不信感もあった)安倍氏側に寝返る。そこから経清の獅子奮迅の働きもあって、戦いは一進一退の攻防を繰り広げるが、隣国清原氏を味方につけた源氏の征討軍が逆襲を開始。ついに安倍氏は滅亡、経清も鋸びきの刑で壮絶な死を遂げた。
その滅亡した安倍氏に代わって陸奥を収めたのは清原氏。そこに経清の遺児でのちの初代奥州藤原氏となる清衡が養子となって(この詳細は本でぜひ)、ひそかに父と安倍氏の志の実現を図ろうと企てながら暮らしていた。
そのあと紆余曲折あって(ここは本書でぜひ!)、ついに清衡は父・経清と安倍氏の無念を晴らし、奥州に楽土を作り上げたのであった。
そして、約100年勢力を保ち続け、秀衡の時代になると、完全に中央から離れたような楽土となっていた。
そこに、新たな敵が現れる。源頼朝である。秀衡は断固とした態度で頼朝の弟・義経をかくまい続け(しかし、それは隠し「陸奥にはいない」としていた)、その間は頼朝も攻める口実を作れず、にらみ合いが続いた。しかし、その秀衡が亡くなると、その息子・泰衡は頼朝の強硬な態度に屈してしまう。義経と奥州藤原氏はほぼ時を同じくして滅び、頼朝に覇権を譲ることとなった。
以上が小説のあらましですが、安倍氏の陸奥の地への、陸奥の民への思いの強さとその戦いぶりに胸を打たれます。また藤原氏の楽土への思い、それを打ち砕く頼朝のある種の執念のようなものの激突が見ものです。
Posted by ブクログ
5巻(最終巻)しか読んでないけど、これだけでもひとつの物語として読める。
源平合戦時代の奥州藤原氏の話。
盛り上げ方がうまいし、登場人物(歴史上の人物)も魅力的だった。