高橋克彦のレビュー一覧
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久々に、わくわくした。
日本人なら誰でも知っている通り、秀吉は日本を統一した。つまり、主人公の九戸家は滅ぼされるという結末が見えていて、それはすごく悲しいことなのだけれど、それを忘れるくらい、九戸政実がかっこいい。
他の郷士から兄貴としたわれるけど、分かる!
ワイルドスピードのドミニクタイプで、男が惚れる男です。
北条家の小田原城攻めに加わらず、滅びた東北の小大名たちを「時節と読み損ねたな、バーカ」と思っていたが、その認識が恥ずかしくなった。
戦国時代は、ほとんどの大名が命をかけて、精一杯の知略や武力を尽くして、生きる道を模索している。どの人にも、そういう行動をとった背景があるはずなのだ -
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高橋克彦氏の小説はいつも時代イメージが広がり興奮するので楽しい。時宗を読んでみる。
鎌倉幕府衰退の時期の話で最初あまり「ぱっとせんな」と思っていたが、「元寇」に繋がっていく。元寇に繋がるのかと思うと俄然興味がわき話にのめり込んでいく。
最初は鎌倉、御所も巻き込んでの権力争いの話だが、元寇の脅威をだいぶ前から感じ、鎌倉の意志を統一し、元寇に備えていく。
また時代イメージが広がり嬉しいのと、神風だよりだけで回避した訳じゃなく、色々準備をしていたのだなあと感心。
元寇
モンゴル帝国(大元ウルス)およびその属国の高麗王国によって2度にわたり行われた対日本侵攻1度目を文永の役(ぶんえいのえき・127 -
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司馬遼刷り込み症候群(司馬遼太郎の小説で歴史上の人物像が出来上がってしまい、他の人の小説を読めなくなった人たち)の方にオススメ。
何せ平安末期・奥州と司馬遼太郎さんが描いてない世界(もっとも5巻目は重なるが)なので、登場人物が受け入れやすい。
そういう意味ではちょっと北方謙三の世界に通じるものがある。主人公達が理想を追い求めるところも似ている。
全体としてはやや冗長な気もするし、登場人物が相互に相手のミスを指摘するシーンが多いのが気になるが、途中から止まらなくなって、一気に5巻読み終えました。
恐らく、歴史家の人から見れば史実とは大きく違うのでしょうが、教科書にも出てこない所のためか、 -
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ジャンルが難しいが、フラッシュバックする忘れていた記憶と盛岡がテーマで、思い出したら怖いという短編集。
昔繰り返し聴いていたがヒットしていない曲、その楽しげなフレーズから、開かずの間を思い出す。日の当たらない開かずの間では、なぜか若い叔母と男性が楽しげに暮らしていて…。
高橋克彦の十八番である怪談とホラーの中間という点では、それぞれの単体はよく出来ている作品であろう。ただ、集めてしまうと辛いのが、全部同じパターンで、「何で思い出すかな?思い出したら人が死ぬやつだよね」と3本目くらいで変な予想をし始めるので、後半の新鮮味は感じられないのが難点。途中、親の不倫という話が被っているのも食傷。
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全3巻。1500ページに亘る作品です。
それだけでなく、著者のあとがきに拠れば7年を費やした大作です。
しかし、そのせいでしょうか、物語の途中で登場人物の印象が変わってきます。時に主人公の弟・実親や敵役の信直などです。いささか戸惑いを覚えます。
淡々と歴史的な見方をすれば、主人公・政実は南部の反逆者であり、やらなくてもいい騒動を(自己の権勢欲の為に)起こした人物でしょう。それをあえて"南部のため"という大儀に生きた人物に仕立て上げてます。そのために、色んなところに無理が出ているように思います。せめて信直の人物設定を"目指すところは違うが一種の英雄" -
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人間として扱われず獣としか見られなかった蝦夷たちの、朝廷との22年の闘いを描いている。
蝦夷の中心となったアテルイを筆頭に、
賢く、力強く、優しい蝦夷の武将たちが魅力的だった。
22年の戦は気が遠くなるほど長い。
読んでいる方も参ってしまうほど。
まだやるのか、という思いを蝦夷も朝廷ももっていたと思う。
そんななかで最後にアテルイたちが選んだ戦術は、予想を遥かに超えるものだった。
取実、たけひこ、いさしこの最期はとにかく壮絶。アテルイ、モレ、飛良手の最期は涙なくして読めない。(私は飛良手推しです。)
ただ、同じ人間として認め合い、家族や友達と故郷で静かに暮らしたかっただけ。それすら叶わ -
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良いですね、理想に燃える若武者。
アテルイに関する小説は先年、澤田ふじ子さんの「陸奥甲冑記」を読んでいますが、比較すればこちらの方が随分とダイナミックで(当然の事かも知れませんが)男性的な魅力があります。紹介してくれたShortさんの言われる如く、主要登場人物が皆さわやかで、しかも個性がしっかりした”イイ男”達です。戦闘シーンも随分と迫力があります。
難を言えば、ちょっと格好良すぎることでしょうか。その為かやや上滑りな感じもしないでもありません。その当りの感覚は同氏の「炎立つ」にも有ったと思います。
何れにせよ、本格的な歴史小説で、面白く読ませる作品でした。
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「炎立つ」にすっかり魅せられたので時代を遡って本シリーズに突入。
第1巻はひたすら朝廷の政争に終始していますが、文明が未成熟なせいか、やり方がいちいちえげつない。但し蝦夷や物部氏を中心に個性溢れる魅力的な人物が続々登場しており、嫌気を覚えることなく先の展開を楽しみに読み進めることができました。
既にこの時代から日本の政治家は政より権力争いに執心していたとは。ちょうど読んでいる最中に希望の党が結成された現代との類似性が、何とも情けなくて可笑しいです。
名前が似ていて区別がつかなくなるという恐ろしい噂の「麻呂麻呂地獄」も、巻頭の人物紹介欄の助けを借りながら何とかクリアできそうかな。