高橋克彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本を手に取ったきっかけは、会社の宝塚ファンの人から借りた「阿弖流為」のDVDでした。とても良かったので原作も読みたくなって、購入。
奈良時代、陸奥に暮らす蝦夷(えみし)と呼ばれた人々と、朝廷との戦いを描いた物語です。普段あまり歴史小説を読みなれておらず、最初は少し読みづらかったけど、ネットで昔の陸奥の地図を調べて位置関係を把握したり、高校の頃の地図帳や歴史便覧を引っ張り出してきて調べたりしながら読み進めました。(読書に関してだけは真面目なのだ!)
歴史便覧には「坂上田村麻呂、蝦夷征伐」の一文で片付けられているけど、こんな攻防が繰り広げられていたんだと思うと胸熱。歴史って知れば知るほど面白い -
Posted by ブクログ
ネタバレ学生時代、ゼミの先生に「小説の面白さはストーリではなく、プロットの確かさに依る」と言われたことを思い出しました。
高橋克彦の書く東北の歴史小説ですからするする読めるのです。
登場人物こそなじみは薄いですが、戦国時代が舞台となると、流れは読めてしまいます。
秀吉が勝つに決まっている。
だからなのでしょうか、人物が薄っぺらいのです。
圧倒的に強くて、頭が回って、人の心をつかむ男、九戸政実。
周りが口をそろえてほめたたえるほど、政実が薄っぺらになる。
もちろんほめたたえる側も、敵役の北信愛(のぶちか)も。
それだけできる男なら、私を滅して南部家を支えるなり、見切りをつけて独立するなりすればいいの -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公・九戸政実が率いる九戸党は、南部家を宗家と戴いている。
南部は隣接した地域・津軽との小競り合いが絶えない。
そして南部家(源氏の流れ)と敵対している安東家(蝦夷の一族)。
時は戦国。
右を向いても左を見ても戦のたねは転がっているというのに、南部家のお館様は自分のことしか考えない、器の小さな男であった。
政実は伊達や最上の動向を見、武田、上杉、織田などが着々と勢力を広げているのを忸怩たる思いで眺めている。
自分もせめて東国(関東)に生まれていたら、もっと活躍できたはずなのに、陸奥で仲間内の勢力争いばかり行っていることにうんざりしている。
結果を知る身からすると、政実は秀吉に勝たない -
Posted by ブクログ
タイトル通り「記憶」がテーマの短編集。
遠い過去の記憶がいつの間にか都合よく書き換えられているのですが、書き換えられるには必ず相応の理由があり、それを思い出す過程で忘れたかった忌々しい真実が明らかになるという同じパターンの構成となっている。
今から30年近く前にも書かれた作品であり、その当時に過去を振り返っているので、高度成長期を迎える前の東北地方という日本の原風景的な描写が少しだけ怖い雰囲気ながらどこか懐かしい印象を受けます。
高橋氏といえば東北地方を舞台にした歴史ものか浮世絵シリーズという印象だったので、こんな作品を書いていて、かつそれで直木賞を獲ったなんて意外でした。 -