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Posted by ブクログ
記憶をめぐる短編集。
現代ホラー小説を知るための100冊のうちの1冊だけどミステリ色も強い。終わりの二篇はとくに。「世にも奇妙な物語」や藤子・F・不二雄の短編を連想させる。
「緋い記憶」「言えない記憶」「遠い記憶」がよかった。少年時代に恐怖を体験し、その記憶を抑圧して何十年と生きてきたが、偶然のきっかけによりそれが蘇る。
収録作品が書かれたのが88年から91年。その時代に中年の語り手が少年時代を想起する短編ばかりでノスタルジックな風情が漂う。昔の住宅地図が重要なモチーフになる表題作はとくにそう。「オレの今暮らしている盛岡は、本当の盛岡じゃねえ。オレの町はこの地図の中にある。だから、どんなに古い町並みが壊されたって平気だよ」
Posted by ブクログ
東京でデザイナーをしている〈私〉は、共に盛岡での高校時代を一緒に過ごした友人である加藤から古本屋で、古い盛岡の住宅地図を買ったことを聞かされる。古い地図から過去の自分自身の記憶を振り返るのが趣味だというのだ。〈私〉には淡い記憶があった。彼に倣って住宅地図で過去を振り返ろうとした〈私〉は、記憶の中にある一軒の家を探した。確かにあったはずの家がどこにも見つからない。あの家の正体は。そしてあの思い出は。ラストに恐怖と切ない余韻が残る――「緋い記憶」
東北の民家が中心の画集の中に描かれた断崖の側に建てられた大きな宿屋の絵。〈私〉はその絵を見て、胸騒ぎがした。幼い頃、〈私〉はその岩手の山の奥の温泉に行ったことがある。なぜ母は郷里でもない岩手に。三十年以上の月日を隔てて、〈私〉はその宿を訪れる。母親が死んだその宿で、そこで〈私〉は美しい女性、静子と出会う。意外性もあり、奇妙な味わいのあるラストが印象的な――「ねじれた記憶」
記憶というのは、いまではなくなってしまった時点、必ずどこかがぼやけてしまっているものです。だからこそ無性に怖くなってしまう時があります。そのぼやけて、分からなくなってしまったところで、自分はとんでもないことをしでかしてしまったのではないか、と。本書は全七篇、記憶にまつわる短編が残っています。どこにでもある自然な一幕に不穏さが滲み出しくる導入と切れ味良くも決して合理では割り切ろうとしないラストが、全体的に素晴らしかったです。特に表題作の「緋い記憶」が印象的で、これからも読み継がれていって欲しい作品集だ、と思いました。
Posted by ブクログ
【ねじれた記憶】
『空耳だろうか。こっそりと忍び寄る足音が聞こえる。あれは私の足音なのだ。
振り返って確かめたい欲望にかられた。
ひたひたひた。
どちらの私も息を潜めていた。
【膚の記憶】
『体の関係ができたのは半年前のことだ。ママは三十八。私の生活に割り込んでくるような野暮な女ではない。五十にもなって妙な言い方だが、私たちは文字通り大人の付き合いをしている。』
【霧の記憶】
『だが、すべてはロンドンの霧のようにぼやけている。記憶にも時効があるのだろうか。
私はひたすらそれを願った。
でなければ生きていけないような気がした。
咲子を殺したのは私かも知れない。』
Posted by ブクログ
これは、面白かった~。
読んでて背中がゾクゾク、心臓がバクバクしてました。
これは、直木賞とって当たり前といえる作品。
短編っていまいち苦手だったりすんだけど、これは一編一編が内容の濃いものになってるので短編で正解。これ以上に長いと心臓が持たなかったかも(笑)
★緋(あか)い記憶
30何年か前にあったはずの家が地図に載ってない。その真実を求めて、久しぶりに故郷を訪れる。
★ねじれた記憶
ひょんなことで懐かしい人里離れた宿に泊まりに行く。実は、そこは母親が自殺した宿で、たまたま自分と同じ名前をもつ子供に出会う。。。
これは私のお気に入り。読んでてすっごく怖かった。
★言えない記憶
昔、一緒に遊んだ仲間たちとの再会。いつの間にかに、あの日缶蹴りの思い出がよみがえって。。。しかしその真相は。。。
★遠い記憶
取材のために昔生まれ育った土地に戻ってきた主人公は、昔一緒に遊んだ女の子と再会する。しかしその裏に隠されていた記憶とは。。。
★膚の記憶
食中毒を起こしやすい主人公は、自分の食中毒の原因は飲み屋でもらうミネラルウォーターだとつきとめ、その水源に行ってみる。そしてその背景に隠されていたものは。。。
これも結構好き。自分の存在の意味を問われるようなミステリアスさがたまらない。
★霧の記憶
学生の頃に旅をしたロンドンの話が30年後に復活してきて、事件の真相をしった主人公。
これは、一番読み込めなかった話。なんだかな~。ちょっと単なるミステリーに終わってしまった感じが受け入れられなかった理由かな~?
★冥(くら)い記憶
叔母たちと旅行をしてる間に、訪れる場所場所で次々と記憶がよみがえってくる話。
怖い話だったんだけど、結局殺したのは誰だったんだ?壁から出てきた鬼ってなんだったんだ?
なんか読み終わった後「???」って思った。。。
この短編全部、東北が舞台になってるの。
この日本の東北が今、被災してる最中にたまたま手に取った本が東北が舞台。
なんか因縁めいたものを感じます。
でもね、本の中ではホントに怖い印象のある東北地方も今は被災して、それ以上に怖い恐ろしい状態にあるんだよね。
一日も早い復旧作業が出来、そして復興して、またこういう素晴らしい本の舞台になれるようにみんなで支援していきたいと思います。
Posted by ブクログ
先月読んだ『前世の記憶』が印象的だったので、シリーズの前作にあたるこの作品集も読むことにしました。これ、ほんとにすごいシリーズですね。もしまだ続けて書かれているなら、次の作品集もぜひ読みたいものです。
古い住宅地図から子供の頃に住んでいた町の記憶が次々によみがえるのに目当てにしたある家だけが見つからないという表題作もおもしろかったけれど、やはりこの作品集でもっとも怖くそして美しいのは「ねじれた記憶」でしょう。思わず何度も読み返してしまいました。そうする価値があるでしょう?例えば現代恐怖アンソロジーを組むなら必須の作品といってもよいですね。あとでカバーの解説をふと見たら直木賞の選考委員が激賞とか書いてあった。あたりまえですね、いやほんと。
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