あらすじ
称徳帝が没し光仁天皇の御世になって8年、物語の舞台は陸奥に移る。平城の都で働く道嶋嶋足に対し、伊治鮮麻呂は陸奥の地で、蝦夷でありながら国府多賀城の役人として蝦夷の乱の鎮圧にあたっていた。祖国を戦場にしないため、朝廷と蝦夷の共存を目指し腐心してきた鮮麻呂だったが、8世紀半ばに発見された黄金を狙う陸奥守の横暴、背後で牙を剥く朝廷側の無理難題に我慢は限界に達していた。さらに、蝦夷の地である奥六郡に城を築く計画が着々と進み、また蝦夷を人と思わない帝の勅に、鮮麻呂はもはや戦を防ぐ手立てはないと決起を覚悟する。後事を託すのは胆沢の首長・阿久斗とその息子・阿弖流為(アテルイ)。狙うは陸奥守の首ひとつ。ついにその時はやって来た。北辺の部族の誇りをかけた闘いが、ここに幕を下ろす。「風の陣」シリーズ、感動の最終巻。『火怨』『炎立つ』へと連なる著者渾身の大河歴史ロマン、堂々完結! 解説はマンガ家の里中満智子氏。
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最終巻は伊治鮮麻呂が主役。4巻までが嶋足・天鈴の京視点の蝦夷だったため、少し残念と思っていたが、最後まで読んでそもそも4巻までが鮮麻呂の物語の御膳立てだったのだと思い構成に舌を巻いた。
本巻は陸奥三部作に劣らない「熱」があった。内外両方から敵と見做されながら耐え続けてきた鮮麻呂の保っていた糸が切れた瞬間(天皇の勅令で蝦夷を獣と呼んだ場面)が鮮明な印象に残った。鮮麻呂は嶋足も同じ気持ちだったのかと思い耽る場面があるが、私はレベルが違うと思う。嶋足は重用はされずとも自ら蝦夷に手を下すことはなかったが、鮮麻呂は忠誠心を示すために仲間を殺さなければならなかった。最後に自死を選んだのはその贖罪もあるのだろうと思う。
鮮麻呂は風、阿弖流爲は炎。風が炎の勢いを強める。まさに言い当て妙。
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風の陣最終刊。伊治鮮麻呂を中心に展開。蝦夷を狼とし、卑しい蝦夷を刈り取り滅ぼせ、との勅令についに、鮮麻呂は決起を決意する。
阿弖流為という次代のリーダーをみて、鮮麻呂は、
紀広純、道嶋大楯らの首をとり、蝦夷らを一つにするため、身を捨てる覚悟をする。
自分がかけた橋を阿弖流為らが渡っていくだろう。その先の大地は阿弖流為らが切り開く。たとえ、自分が見られなくても構わない。
素晴らしい、壮大な物語。
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奈良時代、陸奥の鮮麻呂は、蝦夷の誇りを懸けてついに決起を覚悟する。朝廷と蝦夷の戦乱を描く歴史大河ロマン最終巻。
シリーズ最終巻の主人公は、今までの嶋足から鮮麻呂に引き継がれ、舞台は陸奥に移り、蝦夷がどれだけ朝廷からさげすまれていたのかが、描かれています。
これまでの嶋足や天鈴の権謀術数も通じず、戦いを避けては通れなくなった鮮麻呂の苦悩がとてもよく伝わってきました。
戦うことで蝦夷の思いを若い世代に伝えていこうとする鮮麻呂の生き方は、一人の人間として価値あるものだと感じました。
自分が子供たちや次の世代にどんなことを伝えていくことができるのかそんなことも考えさせられました。
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シリーズラスト。先に読んだ火怨に、どうつながって行くのかを思いながら、わくわくしながら読み進みました。
最終章では、火怨では胆沢側の視点で描かれていたシーンが、鮮麻呂側の視点で描かれているのも良かったです。
あとの時代の物語(火怨)を先に読み、そのきっかけとなった前の時代(風の陣)を後から読むというスタイルは、スターウォーズシリーズのエピソード展開のようでもあり、わかりやすだけではなく、作者のより深い想いが感じられた気がします。
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風の陣の完結篇は、これまでの嶋足から鮮麻呂の陸奥での戦いが中心となる。蝦夷の部族としての心意気と葛藤は最後まで心を揺さぶる。鮮麻呂に惹かれて配下となった登場人物一人一人がその時代の歴史を表しているのだろう。長い物語だったが、感動の完結。
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蝦夷の誇りを守るために生きる漢たちの話です。
命をどう使うのか?ということを考えさせられます。
この後、火怨に続きますが、この風の陣を読んでからが、絶対おすすめです。
火怨読んだばかりですが、もう一度読まずにはいられなくなりました。
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鮮やかに描かれる「人として扱われない苦しみ、忌まわしさ」の受け手の感覚。
「蝦夷は人ではないこと」が普通になっている天皇を含めた大和の感覚に随分温度感があるように感じます。
ずっと堪えてきた蝦夷がついに決起。
やっぱりそうこなくっちゃ、と思いつつ、戦の時代に雪崩れ込む予感にゾクゾクします。
個人的には、前半主人公の嶋足が全く出てこないで終わったのが少し残念。。
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「風の陣」シリーズ、5作目。完結編。
この巻だけ、主人公は鮮麻呂。それまで主人公がずっと嶋足だっただけに、嶋足に対して悪態さえつく鮮麻呂に前半は正直、感情移入し辛かった。しかしながら、いざ鮮麻呂が決起を決断したところからはグイグイと物語に入り込み、最後は結局泣いてしまった。「火怨」のストーリーともオーバーラップし、次代に繋ぐ重要な場面を読むことが出来て、感嘆たる思いに駆られた。この後の東北三部作に出てくるアテルイたちといい、蝦夷の男たちの、勝負に勝って死ぬ姿は皆、物凄く格好イイ。
惜しむらくは、最後だけでいいから嶋足が登場して欲しかったこと。嶋足側から見た鮮麻呂の決起を描いて欲しかった。確か「火怨」でもちゃんと描かれていなかったように思う。それが本書で読めると思っていただけに残念だった。
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ついに完結!
「火怨」冒頭の鮮麻呂の乱を鮮麻呂側から見られたのに感動。しかし4巻まで苦しんでた嶋足が全く出てこなかったのが残念。ラスト鮮麻呂と別れた猛比古が都で嶋足に会う場面とかが欲しかった。
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良かった。けど、嶋足どこいった?
結局タイトルの風って鮮麻呂の事だったのね。
そしてラストの〆を丸々鮮麻呂が持って行っちゃってそれまでの嶋足の話しが薄れて消えたのは私だけか。
終わり方は火怨に繋がってもう一度火怨から読みたくなるけど…。
どうせなならラスト嶋足出して欲しかった。
Posted by ブクログ
「風の陣」完結編。物語内では前作から8年が経過。舞台は陸奥へ移り、伊治鮮麻呂を中心に話が進む。
これまでの都における嶋足や天鈴の苦労むなしく、搾取と差別にひたすら耐える蝦夷。
大望を抱きつつ朝廷に従い続ける鮮麻呂。
お涙ちょうだいを適度に挟みつつ終盤の反乱へ向けて一気に読ませる。
「火怨」では阿弖流為サイドから描かれていた鮮麻呂の乱が、鮮麻呂サイドから語られる。本書を読み終えてから「火怨」の冒頭を読み返してみたら台詞や場面がかなり重なっていたのが面白い。
文庫版の1巻が出たのが2001年。10年かけて完結したという感慨も深い。
けどただただ残念なのは、嶋足を中心とした話で終わって欲しかった。
「火怨」では忌み嫌われていた道嶋嶋足。
4巻まで主人公だった彼はどうなったの?
なので星は3つ。