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Posted by ブクログ 2024年03月10日
最終巻は伊治鮮麻呂が主役。4巻までが嶋足・天鈴の京視点の蝦夷だったため、少し残念と思っていたが、最後まで読んでそもそも4巻までが鮮麻呂の物語の御膳立てだったのだと思い構成に舌を巻いた。
本巻は陸奥三部作に劣らない「熱」があった。内外両方から敵と見做されながら耐え続けてきた鮮麻呂の保っていた糸が切...続きを読むれた瞬間(天皇の勅令で蝦夷を獣と呼んだ場面)が鮮明な印象に残った。鮮麻呂は嶋足も同じ気持ちだったのかと思い耽る場面があるが、私はレベルが違うと思う。嶋足は重用はされずとも自ら蝦夷に手を下すことはなかったが、鮮麻呂は忠誠心を示すために仲間を殺さなければならなかった。最後に自死を選んだのはその贖罪もあるのだろうと思う。
鮮麻呂は風、阿弖流爲は炎。風が炎の勢いを強める。まさに言い当て妙。
Posted by ブクログ 2020年09月07日
風の陣最終刊。伊治鮮麻呂を中心に展開。蝦夷を狼とし、卑しい蝦夷を刈り取り滅ぼせ、との勅令についに、鮮麻呂は決起を決意する。
阿弖流為という次代のリーダーをみて、鮮麻呂は、
紀広純、道嶋大楯らの首をとり、蝦夷らを一つにするため、身を捨てる覚悟をする。
自分がかけた橋を阿弖流為らが渡っていくだろう。その...続きを読む先の大地は阿弖流為らが切り開く。たとえ、自分が見られなくても構わない。
素晴らしい、壮大な物語。
Posted by ブクログ 2017年06月25日
奈良時代、陸奥の鮮麻呂は、蝦夷の誇りを懸けてついに決起を覚悟する。朝廷と蝦夷の戦乱を描く歴史大河ロマン最終巻。
シリーズ最終巻の主人公は、今までの嶋足から鮮麻呂に引き継がれ、舞台は陸奥に移り、蝦夷がどれだけ朝廷からさげすまれていたのかが、描かれています。
これまでの嶋足や天鈴の権謀術数も通...続きを読むじず、戦いを避けては通れなくなった鮮麻呂の苦悩がとてもよく伝わってきました。
戦うことで蝦夷の思いを若い世代に伝えていこうとする鮮麻呂の生き方は、一人の人間として価値あるものだと感じました。
自分が子供たちや次の世代にどんなことを伝えていくことができるのかそんなことも考えさせられました。
Posted by ブクログ 2015年11月02日
1立志篇 2大望篇 3天命篇 4風雲篇 5裂心篇
上記5巻からなる火怨の前篇となる時代の物語。
火怨の主人公であるアテルイの生まれる前から、青年期をを迎える749年から30年くらいの間の話である。
主人公は1~4までは道嶋嶋足で5で伊治鮮麻呂に移る。
嶋足と物部天鈴は京にて、蝦夷への不遇を避け...続きを読むるために
ありとあらゆる手段を用いて暗躍する。
1では橘奈良麻呂と藤原仲麿の権力争いに絡み、嶋足を出世させ発言力のある地位へ押し上げていく。
2では権力を握った仲麻呂をその座から落とすために活躍し、3で坊主の弓削道鏡を権力の座へつかす。
4でその道鏡を失墜させ、坂上田村麻呂の父、坂上苅田麻呂を国府多賀城の主とさせる為活躍。
5では一変、嶋足、天鈴の仲間である鮮麻呂を中心に、京ではなく蝦夷の暮らす東北が舞台となり、朝廷に蝦夷が挑んでいく先駆けとなる物語になる。
嶋足、天鈴が京で、朝廷と蝦夷の争いを防ごうと頑張るのだが、結局はそれは時間稼ぎでしかなく、どうしようもない流れに呑みこまれていく。
鮮麻呂はアテルイ達、次世代に全てを託し自分は風になる決断を下し去っていく。
出来れば、火怨を読む前にこちらを先に読みたかった気がする。
順序はどうであれ、完璧に面白く、中弛みもなく感動と、小説の面白さを堪能できた。
Posted by ブクログ 2012年11月09日
シリーズラスト。先に読んだ火怨に、どうつながって行くのかを思いながら、わくわくしながら読み進みました。
最終章では、火怨では胆沢側の視点で描かれていたシーンが、鮮麻呂側の視点で描かれているのも良かったです。
あとの時代の物語(火怨)を先に読み、そのきっかけとなった前の時代(風の陣)を後から読むという...続きを読むスタイルは、スターウォーズシリーズのエピソード展開のようでもあり、わかりやすだけではなく、作者のより深い想いが感じられた気がします。
Posted by ブクログ 2012年10月06日
風の陣の完結篇は、これまでの嶋足から鮮麻呂の陸奥での戦いが中心となる。蝦夷の部族としての心意気と葛藤は最後まで心を揺さぶる。鮮麻呂に惹かれて配下となった登場人物一人一人がその時代の歴史を表しているのだろう。長い物語だったが、感動の完結。
Posted by ブクログ 2020年01月01日
蝦夷の誇りを守るために生きる漢たちの話です。
命をどう使うのか?ということを考えさせられます。
この後、火怨に続きますが、この風の陣を読んでからが、絶対おすすめです。
火怨読んだばかりですが、もう一度読まずにはいられなくなりました。
Posted by ブクログ 2017年10月01日
鮮やかに描かれる「人として扱われない苦しみ、忌まわしさ」の受け手の感覚。
「蝦夷は人ではないこと」が普通になっている天皇を含めた大和の感覚に随分温度感があるように感じます。
ずっと堪えてきた蝦夷がついに決起。
やっぱりそうこなくっちゃ、と思いつつ、戦の時代に雪崩れ込む予感にゾクゾクします。
個人...続きを読む的には、前半主人公の嶋足が全く出てこないで終わったのが少し残念。。
Posted by ブクログ 2013年06月05日
「風の陣」シリーズ、5作目。完結編。
この巻だけ、主人公は鮮麻呂。それまで主人公がずっと嶋足だっただけに、嶋足に対して悪態さえつく鮮麻呂に前半は正直、感情移入し辛かった。しかしながら、いざ鮮麻呂が決起を決断したところからはグイグイと物語に入り込み、最後は結局泣いてしまった。「火怨」のストーリーとも...続きを読むオーバーラップし、次代に繋ぐ重要な場面を読むことが出来て、感嘆たる思いに駆られた。この後の東北三部作に出てくるアテルイたちといい、蝦夷の男たちの、勝負に勝って死ぬ姿は皆、物凄く格好イイ。
惜しむらくは、最後だけでいいから嶋足が登場して欲しかったこと。嶋足側から見た鮮麻呂の決起を描いて欲しかった。確か「火怨」でもちゃんと描かれていなかったように思う。それが本書で読めると思っていただけに残念だった。
Posted by ブクログ 2013年02月22日
ついに完結!
「火怨」冒頭の鮮麻呂の乱を鮮麻呂側から見られたのに感動。しかし4巻まで苦しんでた嶋足が全く出てこなかったのが残念。ラスト鮮麻呂と別れた猛比古が都で嶋足に会う場面とかが欲しかった。
Posted by ブクログ 2013年01月17日
良かった。けど、嶋足どこいった?
結局タイトルの風って鮮麻呂の事だったのね。
そしてラストの〆を丸々鮮麻呂が持って行っちゃってそれまでの嶋足の話しが薄れて消えたのは私だけか。
終わり方は火怨に繋がってもう一度火怨から読みたくなるけど…。
どうせなならラスト嶋足出して欲しかった。
Posted by ブクログ 2012年09月25日
「風の陣」完結編。物語内では前作から8年が経過。舞台は陸奥へ移り、伊治鮮麻呂を中心に話が進む。
これまでの都における嶋足や天鈴の苦労むなしく、搾取と差別にひたすら耐える蝦夷。
大望を抱きつつ朝廷に従い続ける鮮麻呂。
お涙ちょうだいを適度に挟みつつ終盤の反乱へ向けて一気に読ませる。
「火怨」では阿...続きを読む弖流為サイドから描かれていた鮮麻呂の乱が、鮮麻呂サイドから語られる。本書を読み終えてから「火怨」の冒頭を読み返してみたら台詞や場面がかなり重なっていたのが面白い。
文庫版の1巻が出たのが2001年。10年かけて完結したという感慨も深い。
けどただただ残念なのは、嶋足を中心とした話で終わって欲しかった。
「火怨」では忌み嫌われていた道嶋嶋足。
4巻まで主人公だった彼はどうなったの?
なので星は3つ。