【感想・ネタバレ】時宗 全4冊合本版のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

ネタバレ購入済み

日本を守ったのは20代の若者だ

2020年02月08日

【巻の壱】まだ時宗は最後の最後で産まれたばかりの第一巻。主に北条時頼が5代執権に就任した前後の権力闘争を描く。やたらと兄弟や親戚が多いから、誰と誰が味方で敵なのか把握が実に難しい。北条家内部でのお家騒動に始まり、将軍家との対立や最大豪族三浦氏との対立、源氏の復権を狙う足利氏との対立など、様々な思惑が...続きを読む絡み合う中で、冷静に対処していく時頼が頼もしい。また、『徒然草』の中で障子の張り替えの話に登場する時頼の母松下禅尼の賢母ぶりが、ここでもいかんなく発揮されていて、兼好法師が称賛する理由も頷ける。

【巻の弐】北条時頼の生き様が格好いい。北条家得宗としての帝王学、私利私欲のない奉仕精神、日本国の行く末を憂慮する先見性とスケールの大きさ。執権職を退いて、出家してからも益々政治的手腕に磨きがかかる。全国行脚の旅の場面で、学校で習った『鉢木』らしき話が出てくるが、佐野源左衛門という名前も鉢木も出てこなかったのが残念。この頃、日蓮も登場し、外敵の襲来を警告。蒙古ではクビライがハーンとなり、いよいよ宋の攻略が始まる。日本に危機が迫る中、37歳という若さでの時頼の逝去が無念。でも、死に際もお見事!

【巻の参】驚くべきは時宗が執権に就任したのは18歳の時だという。イメージ的にもっとオッサンかと思っていたのだけど…。その歳にして北条一族をまとめ、将軍家や朝廷からの圧力にも屈せず、きたるべき蒙古襲来に備えて着々と準備を進めているあたり、とても18歳の成せるわざではない。日蓮上人の有名な処刑未遂シーンも出てくるが、通説とはちょっと違う解釈で描かれている点が興味深い。いよいよ次の巻では元が攻めてくる。時宗が亡き父時頼から授けられた乾坤一擲の秘策とは?

【巻の四】シリーズ最終巻にして最高傑作と言える一冊。一冊まるまる元寇の戦いが描かれるが、九州の局地的な話に留まらず、高麗や元の本拠地の大都までスケールは広がっていく。マルコ・ポーロまで出てくるとは驚きだ。高橋氏の真骨頂と言える作戦の緻密さや戦の駆け引きの描写はこの本でもいかんなく発揮されていて、敵が攻めてくるのが待ち遠しく感じられるほど。死を恐れぬ武者たちの激闘に胸が熱くなる。そして24歳と31歳という若さで二度も蒙古を防ぎ、34歳にして早逝した執権時宗と彼を支えてきた熱い男たちのさわやかな生き様に感動を覚える。

0

「歴史・時代」ランキング