務台夏子のレビュー一覧
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キャロル・オコンネル『ルート66(下)』創元推理文庫。
マロリー・シリーズの第9作。
マロリー・シリーズの根幹を成すのはマロリーの数学やコンピュータの分野での天才的能力を活かした捜査というより、その特異な謎に満ちた生い立ちとトラウマにあると思う。そう言う意味で、原点回帰という色合いが強い本作はシリーズでのターニングポイントとなる作品ではなかろうかと思う。
ルート66上で起きた幼い子供を狙った連続殺人事件。殺人鬼の魔の手は大人にも及ぶ。行方不明となった子供の親たちの奇妙なキャラバン、事件を追うFBI捜査官。マロリーは幼い子供たちを守り、犯人を逮捕できるのか。そして、マロリーの自らの過去を辿 -
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キャロル・オコンネル『ルート66(上)』創元推理文庫。
マロリー・シリーズの第9作。マロリーの幼少期が描かれるプロローグの後、いきなり警察がマロリーの自宅で亡くなっていた女性を検死する場面から物語は始まる。当のマロリーは改造したフォルクスワーゲンに乗り込みルート66をひた走る。マロリーが立ち寄る先々で発見される死体…暗躍する連続殺人鬼…一体、物語はどこに向かうのだろうか。
少し中弛みしていたシリーズだが、久し振りに面白い作品だと思う。また、シリーズ第1作にも描かれたマロリーの生い立ちが再び描かれ、もしかしたらシリーズのターニングポイントとなる位置付けの作品なのかも知れない。
現在は東京創 -
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マロリーシリーズ。
邸宅で保釈中の殺人犯が殺された。屋敷には70歳の老婦人とその姪がいるだけだった。屋敷は、58年前に9人の人間が殺された場所で、老婦人は事件後行方不明になっていた当家の娘だった。
過去の事件が!! って思うのだけど、マロリーなので過去には興味ない。
相変わらずの割り切りっぷりで、姪と知り合いだったバトラーは不機嫌なのである。
とはいえ、結局は過去が今に追いついてきた、って感じでそれを無視はできないのだけど。つか、無視できないことに、今度はマロリーがいら立つという。
なんか、みな、ずっと不機嫌だったねww
にしても、結局は家族のゆがみによっても -
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人は闇を嫌う。恐れる。
闇の中に光があれば、それに向かって歩みだす。
光は希望で、光は正義だ。
人は光に近づき、そのまぶしさに目を細め、
そして穴に落ちる。
もっと端的にいえば、
ろうそくの明かりにひき寄せられ、
炎で羽を焦がしかけた蛾の気分、というか。
この前に読んだ同じ著者の作品「愛しい骨」も
子供の殺人事件を扱い、犯人を追うのは残された兄弟という似たような設定だが、
まったく展開も雰囲気も違う。
強烈な女性が登場するところは、どちらも共通しているが。
犯人の追及の過程もさることながら、
途中で子供たちの居場所がわかりかけた後の、
引き込まれ感はすごい。
そして、私は穴に落ちたわけだ -
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ネタバレ私たちには、天才を見ることができるのだろうか。
否。
太陽を見ようとした瞳が焼き払われてしまうように、
その光り輝く才能を見測ることはできない。
ただ、その放たれた光によって照らしだされた新しい世界を、
その恵みによって育てられた果実を、
享受するだけだ。
確かに、この作品はその光の一片であり、輝く果実だ。
長年行方不明だった少年の骨が、
その父親のもとに届きだすことによって始まる極上のミステリーであるとともに、
容疑者でもあり事件を追う帰ってきた兄、
判事だが夢遊病を発症した父、
異能者ともいえる家政婦と、
個性際立つ登場人物たちの過去と現在と未来がからみあう見事な人間ドラマであり、
心か -
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ヒッチコックの映画「レベッカ」の原作者として有名なデュモーリア。
「レベッカ」と双璧をなすといわれる作品です。
フィリップは、幼くして両親を失い、年の離れた従兄アンブローズに育てられます。
時代は19世紀。ひろびろとした荘園で、独身男ばかりの気楽な暮らし。
フィリップも成人した後、イタリア旅行に出かけたアンブローズはかの地で出会った女性レイチェルと結婚。
ほどなく病で世を去ります。
衝撃を受けたフィリップは、レイチェルを恨み、怪しむ。
訪ねてきたレイチェルを迎え撃とうという勢いでしたが、小柄でおとなしやかな美しいレイチェルに、あっという間に魅了されてしまいます。
微妙に態度を変えるレイチェ -
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2011年版このミス第一位(海外編)。
緩やかに時が進む小さなまちで、引退した判事の下に、
彼の失踪した息子の骨が、欠片になって帰ってくる・・・。
いったい誰が、何の目的でいまさら骨を送るのか。
そして、彼の失踪した原因は?兄(主人公)は真相解明に乗り出す。
幻想的な森を印象深くストーリーに組み込ませ、
小人のような家政婦ハンナが絶妙に物語の引き出し手となっています。
技巧に走るミステリとは一線を画し、ストーリーそのものに引き込まれます。
敢えて赤裸々に書くのではなく、曖昧さを効果的に使い、
上質の物語へ引き上げていく書き方がすばらしい。
自然ともう一度読み返したくなります。 -
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常識を持ち合わせないがそれなりに筋の通った特異な性格のマロリーを描くのが作者は本当に楽しそうですね。
ニューヨークに結集したマジシャン達はもともと第二次大戦中のフランスで関わりがあり、マラカイの妻ルイーザが当時、舞台の上で死んだ事情が今度の事件の大きな鍵となっていました。
さすがのマロリーも曲者揃いの老人達に振り回されがちですが、そのためにいぜんより感情がわかりやすいので、内に秘めた思いが時々かいま見えて切ない。周りの人間も皆そんなマロリーに惹かれていくのです…
姿の見えない妻が舞台にいるかのように演出しながらイリュージョンを続けている狂気の魔術師マラカイが何とも印象的。違う立場で長い戦後を生 -
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マロリーのシリーズ4作目。前作のラストで刑事の身分を捨て、ニューヨークから姿を消したキャシー・マロリーが実は故郷に帰っていた!
チャールズがたどり着いた田舎町にはマロリーそっくりの天使像が…それは17年前に謎のリンチ事件で惨殺された女医の墓。
亡き母そっくりに成長したマロリーが町に着いた途端に事態は動き始め、宗教団体の教祖が殺されて、よそ者のマロリーは黙秘したまま既に拘留の身。
しかし保安官はマロリーが子供の頃を知っているので、実はその身を案じていた。
6歳の時に全てを奪われた事件の真相を追って、どんな手段も辞さない決意のマロリー。
町で進行する奇妙な出来事の歯車が次第にかみ合い、幼いマロリー -
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キャロル・オコンネル著、務台夏子訳『クリスマスに少女は還る』(原題:JUDAS CHILD)のレビューです。
600ページを超える長編で、読むのが大変でしたが、読み終わったときの達成感と余韻はなかなかのものでした。
序盤から中盤にかけては、登場人物が多くて名前が覚えられないとか、誰が大切なのか分からなくなるとか、海外文学あるあるの読みにくさはあります。
・過去に双子の妹を事件で亡くしたルージュが主人公ポジションですが、この本の真の主役は、サディーとアリ・クレイでしょうか。
・今回行方不明になった二人の少女のうち、グウェンは裕福な政治家家庭の可愛い娘で、サディーはその親友でぶっ飛んだ性格。