務台夏子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アメリカの作家アレン・エスケンスの長篇ミステリ小説『あの夏が教えてくれた(原題:Nothing More Dangerous)』を読みました。
アレン・エスケンスの作品は2年前に読んだ『たとえ天が墜ちようとも』以来ですね。
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謎と友情、そして哀しみに、僕はこの夏を捧げた。
小さな町を揺るがす女性の失踪事件が、高校生のボーディの運命を変える――
『償いの雪が降る』の著者の青春ミステリ!
ボーディは田舎町で暮らす15歳の少年。
父を亡くし母親と寂しい日々を送っている。
高校に馴染めず、友達は一人もいない。
静かすぎるその町で最近大事件が起きた。
町最大の企業に勤める黒人女性が不審な失踪を遂げたのだ。
捜査中の保安官が、ボーディが慕っている隣人のホークを訪ねてきた。
女性はかつてホークの部下で、ふたりのあいだには噂があったという。
思いがけない事件が、ボーディの日常に不穏な影を落とす――。
現実に悩みながらも、少年は鮮やかに成長する。
『償いの雪が降る』の著者による心震える青春ミステリ!
解説/古山裕樹
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2019年(令和元年)に刊行されたアレン・エスケンスの長篇第6作です。
15歳のボーディ・サンデンは高校に馴染めず、静かすぎる田舎町で孤独な毎日を送っている……そんなある日、黒人女性ライダ・ポーが不審な失踪を遂げ、ボーディが慕う隣人ホーク・ガードナーを保安官が訪ねてくる、、、
ライダは実はホークの知人で、彼らのあいだには噂があったというのだ……ホークは失踪に関係しているのか? 事件をきっかけに少年は鮮やかに成長する……『償いの雪が降る』の著者が贈る感動の青春ミステリ!
ミステリの緊張感を備えつつ、読み終えたあとに青春小説としての清々しさが静かに残る作品でした……ミズーリ州の田舎町ジェサップという小さな町に漂う閉塞感や偏見が入り混じった差別意識が物語の背景にありながら、主人公のボーディ・サンデンが、隣人の黒人で片手が不自由、顔面に傷を持つホーク・ガードナーとの付き合いや近所に引っ越してきた黒人少年・トーマス・エルギンとその家族との出会い、ボーディが通うハイスクール・聖イグナチオを仕切っている4年生のジャーヴィス・ハルコムのグループとのトラブル等を経験しながら、成長していていく過程は、とても瑞々しく感じましたね、、、
ボーディが自分の弱さや恐れと向き合いながら、少しずつ世界の複雑さを理解していく過程は、ミステリの枠を超えて、普遍的な成長物語として胸に響きました……事件の真相が少しずつ明らかになる展開も魅力ですが、それ以上に、友情が芽生える瞬間や、自分の弱さと向き合う時間が丁寧に描かれていて、心をそっと揺らされた感じです。
どこか『スタンド・バイ・ミー』を思わせる、<あの夏の匂い>が端々に漂っていて、ページを閉じたあと、自分の中の遠い季節がふっと蘇るような、そんな印象を受けながら読み進めた感じです……ボーディが何を見て、何を感じ、どう変わっていくのか、、、
その軌跡こそが、この作品の魅力なんでしょうね……ミステリとしても青春小説としても愉しめるエヴァーグリーンな一冊です。 -
Posted by ブクログ
主人公となる3人の意図が複雑に絡みながら、殺人事件の真相を追い求めるサスペンスだ。
3部構成からなり、それぞれの編で3人の人物像がはっきりと綴られることになる。
⚫︎主人公の一人:マックス・ルパート刑事
住宅街の路地で女性の死体が発見され、検察官からの強い指示もあって犯人を追うことになる。
過去にマックスの妻は交通事故によってひき逃げされ、犯人は未だ捕まっていない。
しかも捜査は事実上未解決のまま撤収されている。
⚫︎主人公の一人:ボーディ・サンデン教授
過去には辣腕刑事専門弁護士として法律事務所を営んでいたが、弁護に努めた少年が獄中で無実を訴えて自死した出来事があり、自責の念でサンデン氏は弁護士の職から身をひいていた。
⚫︎主人公の一人:ベンジャミン・リー・ブルイット
現役刑事専門弁護士で、過去にはボーディ・サンデン氏のもとで弁護活動に従事していた。
彼の自宅の寝室で、ベッドに多量の血痕が遺されいて、ブルイットの妻の血液と断定される。
▪️第一部:死
ブルイット氏の妻は巨額の資産家で、資産相続目当てでブルイット氏が妻を殺害したのではとの疑いが及ぶ。
ブルイット氏は過去に仕事仲間だったボーディ・サンデン教授に弁護を依頼するのだが、サンデン教授の妻は過酷な弁護の仕事を受けることに反対する。
▪️第二部:ディフェンス
妻を殺害されたブルイット氏は、ルパート刑事が完璧とも云えるアリバイに疑問を抱き、捜査を行なっていることを知る。
しかも妻の妹のブルイット氏に対する評価は辛辣なもので、姉は離婚を考えていたと証言をする。
▪️第三部:公判
容疑者となったブルイット氏は状況証拠によって起訴され、陪審員たちは有罪を宣告する。
だがサンデン教授の最後まで諦めない弁護活動によって、陪審員による有罪判断に予想外の動きが生ずる。
マックス・ルパート刑事の職責に対する自覚と己の正義感との対峙。
ボーディ・サンデン教授が擁している法律の深い理解、その法律に対峙することになる友との友情との関わりに悩みながらも、結局サンデンは法律を優先した自らの正義を貫く。
ベンジャミン・リー・ブルイット氏はサンデン教授との友情を逆手に取り、自らの都合を優先してサンデン教授の力量を借りる算段をする。
さて、ベンジャミン・リー・ブルイット氏の妻は誰の手によって殺害されたのか⋯、最後の最後まで見通せない物語だった。
私にとって壱番の盛り上がり場面は、捜査を担当するマックス・ルパート刑事とボーディ・サンデン教授が対立する場面だった。
お互い友人としての立場を理解しつつも、正義のために妥協のない行動を選択する二人の姿に、静的なハードボイルドタッチに触れた思いだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公ハリーの母はハリーが15歳のときに癌で亡くなっている。
父ビリーは15歳年の離れたアリスと2年ほど前に再婚していたが、そのアリスから大学卒業を目前に父の訃報を受け取る。
散歩中に足を滑らせて崖から転落死したという父の死の状況にまつわる事件性の有無を巡る「現在」。
「過去」として語られるアリスの来歴。
話の真相が分かるまでのピーター・スワンソンが好きだ。
導入の事件だったり背景語りの分かりやすさの中にあるちょっと引っかかる感じ。
話が進んで裏の事情とかも見え隠れする中での全ては明かさずおあずけ状態で引っ張っていく牽引力。
ただ、霧が晴れてからのもうひと捻りを期待するところで案外普通に終わってしまう印象を持っていた。
本作もまあ基本的にはそういう感じだったけれど、さりげなく入れてきたちょっとした真意が象徴する負の連鎖の部分がぞわっときて全体的にも締まっていたなという印象。
舞台となる街の名が『そしてミランダを殺す』の舞台と同じケネウィックだったり、後に隠れた変人であることが明かされる主要登場人物の故郷が『死の接吻』の主人公と同じミナセットだったり(いずれも架空の街の名かつ前者は自身の作品、後者は物語中でもその作品に言及しているので、明らかに意識している)という繋がりを入れてきているところも雰囲気が広がり面白い。 -
Posted by ブクログ
後半からの盛り上がりが、すごくおもしろかった!
酒と金と男にだらしない母親に翻弄される大学生ジョーが主人公。大学の課題で年長者の伝記を書くことになったジョーは、30年前に残酷な犯罪を犯して服役、今は末期がんで施設に仮釈放中のカールにインタビューすることにしたのだが、どうも冤罪ではないかと思うようになり・・・
聡明なガールフレンドと愛らしい自閉症の弟と一緒に事件の絡まった糸を解いていく。
誰もが抱いて秘密にしている過去が、少しずつ事件の解明に導いていく流れが見事。
読んでいくうちに冴えない主人公のジョーがとても魅力的に思えて来る。無鉄砲で軽率な行動がいくつもの窮地を呼ぶのだが、ハフハフしながら切り抜けていく姿は、読んでいて思わず握りこぶし。
ジョーとガールフレンドと弟くんは、ずうっといいトリオでいてほしいな。幸せになってほしい。
続編があるようなので、楽しみにしようと思う。 -
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ネタバレアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』へのオマージュでありながら、
登場人物は集まらず、孤島にも行かず、クローズド・サークルにもならない──
その構造自体がとても斬新でした。
一方で、犯行動機にはまったく共感できず、
自分の行いを完全に棚に上げているように感じられたのも正直な印象です。
物語は、1人ずつ人が減っていく過程が淡々としているようでありながら、
それぞれの人生が突然、他人の手によって断ち切られていく点では非常にドラマチックでもあり、
結末に至るまでの展開は大変読み応えがありました。
この緊張感の持続こそが、ピーター・スワンソン作品の魅力なのだと感じました。
↓この下読むとネタバレ、多分犯人わかっちゃうので注意↓
被害者たちは悪いことをしていないし、
(怪しいやつはいたけど)
なんなら自分はまぁまぁ結構長生きして、
お金持ちにもなって、最後は若い子と過ごしたりも
して、それで10才妹の事件について復讐と言われても、兄のくせに救えなかった自分だけで苦しんでいて欲しかったなぁ〜
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Posted by ブクログ
キャロル・オコンネル著、務台夏子訳『クリスマスに少女は還る』(原題:JUDAS CHILD)のレビューです。
600ページを超える長編で、読むのが大変でしたが、読み終わったときの達成感と余韻はなかなかのものでした。
序盤から中盤にかけては、登場人物が多くて名前が覚えられないとか、誰が大切なのか分からなくなるとか、海外文学あるあるの読みにくさはあります。
・過去に双子の妹を事件で亡くしたルージュが主人公ポジションですが、この本の真の主役は、サディーとアリ・クレイでしょうか。
・今回行方不明になった二人の少女のうち、グウェンは裕福な政治家家庭の可愛い娘で、サディーはその親友でぶっ飛んだ性格。
・主人公ポジションのルージュは、地方警察署の警官。
地方警察署には上司にあたるクロフト署長がおり、また職員のマージ・ジョナスは世話焼きおばちゃんのイメージ。
・州警察のコステロとバディー・ソレルはエリートの位置づけでしょうか。ルージュの妹の事件の捜査を担当したオズ・アルモも州警察で、いまは辞めて私立探偵。
・事件に首を突っ込んでくる法心理学者、アリ・クレイはヒロインポジション。FBI捜査官のアーニーも捜査に入ってきますが、彼はアリと男女の仲の模様?
・オズに逮捕された神父のポール・マリーは服役中です。
・アリの伯父には、精神科医のモーティマーがいて、医師兄弟、ウィリアムとマイルズの二人と懇意にしています。
・他にも警察、教会、学校それぞれでいろいろな登場人物がおり、物語に重厚感を与えています。ただ、霊能者のくだりは冗長かも……。
過去と現在の事件を題材にして緻密に組み立てられた読み応えのある小説ですが、ミステリとして読むと少し違和感があるかもしれません。
信仰と職業倫理に関する考え方が核に据えられた、硬派な文学のような雰囲気も漂います。
厚さも相まって手を出しにくいかもしれませんが、読んで良かったと思いました。
—「グウェンは、自分がひとりぼっちで生き延びられるとは思っていなかった。だから、親友だったサディーが、あの子のためにもどって来たんでしょう」 -
Posted by ブクログ
ネタバレジャンルとしてはミステリーなのだが、犯人は分かってるのでそういう謎解きを楽しむものではない。
むしろ自分が犯人の立場になって、周辺の人物との攻防でハラハラドキドキ楽しむタイプのものかな。
完璧な殺人、のはずが予想外の事が次々に起こって、先の読めない展開になっていく。
第一部はリリーとテッド、第二部はリリーとミランダ、第三部はリリーとキンボールの独白が交代で進んでいく構成もなかなか面白い。
リリーはいわゆるソシオパス、サイコパス、なのだが、それは人間の価値観・倫理観での基準であって、動物の価値観に当てはめると自分に害をなす者を排除する、というのはごく自然、という記述にするっと納得した。
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Posted by ブクログ
面白かった。ピーター•スワンソンは私には合う作家なので、読み始めから終わりまでずっと読んでて心地良い読み心地だった。
話も細部まで考えられていて良かった。単純な動機じゃ無いところがピーター•スワンソンらしい。
本当にミステリーが好きな作家さんだなあ、と思わせられるところが沢山あり、そこもやっぱり好き。本が好きで沢山読んできたんだなあ、と思わされる描写が随所にある。
何故か今までのピーター•スワンソン作品に比べて穏やかで、平和な終わり方に感じた。最終的な結果は全然穏やかじゃないし、むしろ酷いのに、穏やかな事件に感じる不思議。
次回作も楽しみ。