務台夏子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ面白いというので、読んでみた。
参った!本当に面白い!
主人公フィリップの父親代わりであった従兄アンブローズが、レイチェルという女性と結婚する。
その後、すぐにアンブローズは病に犯され、フィリップは彼を看取ることなく亡くなってしまう。
その原因はレイチェルにあるとし、憎悪さえ抱いていたフィリップだが、彼女との対面の夜、そうした気持ちは一転してしまう。
そして、レイチェルとフィリップの生活が始まるのだが……という話。
フィリップの右往左往ぶりが、見ていて滑稽なくらいで、ちょっとは頭を冷やしなさいよ!と言いたくなるほどのバカ御曹司っぷり。
しかし、そんな私自身がフィリップのフィルターマジックにやられ、レイチェルに対する感情を二転三転させられることもまた、面白い。
結局、彼女は何者なのだろう?
分かりそうで、分からないままに物語は終わる。
ファムファタル、恐るべし。。。
坂道の連続で、分量のある本なのに、ほんとうに一気読みしてしまった。すばらしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ少女が二人誘拐された。
一人は副知事の娘で超がつくほどの美少女。
もうひとりは、中の上くらいの家の女の子。しかし、とにかくユニーク、ホラー映画マニアで悪趣味ないたずらもしょっちゅう、およそ正反対の二人だが無二の親友。
実はこの町では10年以上前から何度も類似の事件が起きている。美少女が誘拐され、クリスマスの朝に凌辱された遺体が発見されるというおぞましい未解決事件。
さらに犯人は捕まっているものの類似事件が過去にあり、その被害者は今回の事件を担当することになるハンサムな警察官の双子の妹。
双子と言っても、二人はありえない一卵性双生児の兄妹で離れがたく結びついていた。
彼が優秀な子供たちが集められている学校の寮に入り、離れてしまい妹を救えなかったその時から彼は心に穴を抱えて生きている。
さらに、顔の半分に傷跡がありながらも魅力的な謎の女性博士が現れ、過去の事件も今回の事件も同じ犯人、つまり拘留されている神父は無罪だと主張する。
さらには二人ずつ誘拐されているうちの、一人が犯人の真の目的であり、もうひとりは囮や手段であるため、本命を手に入れた犯人はすぐさま一人を殺す、この場合は美少女はまだ生きているが、もう一人の親友は殺されていると断定する。
しかし、少女たちは二人で犯人の隠れ家から逃げ出そうと手を取り合い模索していた。
この話の魅力の八割はホラーマニアのサディーの活躍に尽きる。
彼女はいい子キャラではない。冒頭は言葉をあまりしゃべられない少年をひどくからかったり、結果的にけがをさせたりしている。
けれど、その少年も彼女の魅力に引っ張られているということが中盤でわかる。
グウェンを溺愛し、彼女に悪影響を与えると引き離したグウェンの娘の友達としては賛成しかねるが、彼女のことが好きだった。
主人公ルージュや少女たちの通う学園の校長はルージュに容疑をかけられたときに、もし自分が少女を恋人に選ぶ嗜好があるならサディーを選ぶという。
サディーの母親が断言するように、皆が彼女を好きになるという魅力的なキャラなのだ。
さらに、その親友グウェンも自分ならサディーを見捨てて逃げてしまうかもと自責の念に囚われたりしながら、必死で脱出方法を考えるやはり勇敢な子供なのだ。
子供だけではない、登場人物はそれぞれ個性的だ。
過去の被害者であるルージュは事件を追いながらも、娘を奪われた怒りですべてを破壊してしまった父の過ちを調べ、母や己の再生へ向かって歩き出す。
他も最初はやな奴と思った人間が実はけっこうロマンティストだったり、強いと思っていた人が過去の傷に苦しめられていたりとミステリーとしてより群像劇として楽しめる。
無実の罪を着せられ、牢獄で性的な虐待を受けた神父の人物造形もすばらしい、普通は彼の心境のうつりかわりなどスルーしてしまうだろう。
ただ、あまりに登場人物が多すぎて混乱してしまうのも確かだ。
犯人もだいたい途中で見当がつく。しかし、犯人の書き込みがほかの人間に比べて希薄だ。
最後にタイトル、特に邦題はすばらしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ*クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。十五年前に双子の妹が殺された刑事ルージュの悪夢が蘇る。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れ―。一方、監禁された少女たちは力を合わせ脱出のチャンスをうかがっていた…。巧緻を極めたプロット。衝撃と感動の結末。超絶の問題作*
まさかこういう話だったとは!原題「 囮の子」もいいけど、この邦題には唸らずにはいられない。
「みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」。その言葉通り、ホラー映画フリークの超問題児でやんちゃ過ぎる、勇敢で健気なサディーに心底魅惑された。これは、「少女たち」の救済と贖罪の物語。そして、クリスマスに少女は還る。 -
Posted by ブクログ
ネタバレサディーのお母さんの「みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」の言葉は、読者にとってもその通りだ。冒頭の登場シーンのサディーの印象はちっとも良くないのに、読み終えてみれば一番魅力的なキャラクターは間違いなくサディー。前半を乗り切れば彼女が活躍する中盤からは本当に面白い。
主人公格の一人美貌の青年警察官ルージュ・ケンダルにそっくりで一心同体の双子の妹スーザンの存在はルージュが少女誘拐の捜査にのめり込む重要なファクター。彼ら双子にまつわる表現にはなにやら背徳的な雰囲気(果たして一般的米国人は妹にAIMMなどと書くものなのか!?)を感じたが別になんでもなかった。考えすぎか。
ルージュが警察官として活躍するシリーズがあったら読みたいと思ったが残念ながらないみたい。 -
Posted by ブクログ
これを読みながらずっと「レベッカ」を思い出していた。「昨夜、わたしはまたマンダレイに行った夢を見た」という冒頭の一文から、ミステリアスで繊細な物語は始まっていた。ここに収められた短篇にも、「レベッカ」と同様の叙情が漂っている。そのストーリーテリングを堪能できる一冊。
「レベッカ」では、謎めいた物語に引き込まれるのと同じくらい、舞台となるマンダレイという土地や、そこに建つ邸宅などに魅せられたように思う。奥深く、底の知れない気配が立ちこめていた。本書でも、「真夜中になる前に」のクレタ島や、「十字架の道」のエルサレムなど、その土地こそが主役なのではないかとまで思わせる舞台が、それぞれ異なる魅力を持って描かれている。
中でも圧巻なのは表題作のベネチアだ。ひたひたと水に洗われる古い街が目の前に立ち現れてくる。映画になっているらしいが、まことにさもありなん。場面場面が目に浮かぶような気がする。不安で不穏な空気がこれ以上美しく似合う街もないだろう。
ゆったり贅沢な読書を楽しんだが、一つだけ、最後の一篇「第六の力」にはやや違和感があった。他の五篇とは趣が違っていて、これはない方が全体としてまとまりがあったのではないかなあ。 -
Posted by ブクログ
・ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)は表題作を含めて全5作、約420頁の短篇集である。最近の文庫は活字が大きいといつても、単純平均で80頁ある。長めの短篇といふところであらう。いかにもデュ・モーリアといふ感じの作品が収められてゐる。やはりおもしろい。
・巻頭の表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」として映画化されてゐる作品である。未視感といふのであらうか。いや、起きるべき未来が見えてしまつた、あるいはまだ起きてゐない出来事を見てしまつたことから起きる悲劇である。ヴェネチアに滞在中のジョンとローラの夫婦にイギリス人老姉妹が関はつて事件が起きる。構成も起承転結がきつちりできてをり、老姉妹と知り合つてからの2人の心理の推移がよく分かる。これはジョンが老姉妹を嫌ひ、ロー ラは引かれるといふだけのことなのだが、個人的には、ジョンが老姉妹を嫌ふ様子がたぶんに教科書的といふか、紋切り型といふか、それにもかかはらずおもしろい。さう、ジョンがいかにもそれらしく老姉妹を嫌ふがゆゑに、ここに事件の起きる気配を漂はせて読む者を引きつける。しかも、まだ起きてゐない3人を見 てしまつて以後のジョンの行動もまた、所謂スリルとサスペンスに満ちてゐてなかなかおもしろい。要するに、これがデュ・モーリアなのである。映画化された だけのことはある。次の「真夜中になる前に」も似た感じの作品である。主人公の教師がクレタ島での休暇中に体験したスリルとサスペンス(といふほどのもではないか)である。起承転結もはつきりしてをり、3人の登場人物の描写もまた分かり易い。絵を描くのに最適なバンガローではあつても、それが最も外れに位置してゐたために起きる、これもまた悲劇であらう。不躾な米国人夫妻と知り合つて別れるまでの主人公の心理がおもしろい。先のと同様に、追ひつめられてい く、あるいは考へすぎていくのは、ある意味、紋切り型ではあつても、それがやはりこの作品にふさはしい。これらとはいささか異なるのが「ボーダーライン」である。父が死んだことにより、かつての父の親友を訪ねることにしたといふ物語である。父と友との別れの原因を突きとめるためにアイルランドまで行つて主 人公が知つたのは……最後にどんでん返しがあると言つては言ひすぎか。主人公は相手をだましたつもりでゐたのに、実はだまされてゐたといふことである。これも構成的によくできてゐる。初めのうちは何だこれはと思つてゐるのだが、そのうちに引き込まれていく。ところが、最後の「第六の力」はさうはいかない。 SF仕立てであるらしいが、あまり良い出来とは思へない。少なくとも私はかういふのは好きではない。アイデアを消化できずに終はつたのであらうか、内容的に中途半端であつて、とてもSFとは思へない。更に言へば、ここには先の作品のやうな雰囲気がない。「十字架の道」もおもしろくない。これも「第六の力」 同様である。物語は現代のエルサレム巡礼といふところであらう。その人々の行動が描かれる。従つて、一つのきつちりとしたストーリーはない。個々のエピ ソードの積み重ねである。ゲッセマネを求めての散策等での登場人物の描き分けはなされてゐても、そのエピソード自体が私にはおもしろくない。どの登場人物 も不平不満を述べるばかりである。そもそもこれがおもしろくないうへに、その行動も、そこから生じる出来事もおもしろくない。これでは物語がおもしろくならうはずがない。そんなわけでこの作品集、私には前3編と後2編が対照的に思はれて、巧拙、良し悪しとに二分されたのであつた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ20年ぶりに故郷に帰ってきたオーレン・ホッブス。20年前にオーレンと共に森に入った弟のジョシュアはそのまま行方不明に。ジュシュアの骨が帰ってくる。ジョシュアの骨以外に別人の骨も。否応なく捜査に関わることになったオーレン。オーレンのためにアリバイを証言した2人の女。オーレンと肉体関係にあったホテルの女主人イヴリン・ストラウブ、オーレンに恋するイザベル・ウィンストン。発見されたジョシュアの遺体と謎の女性の遺体。現場に残された黄色いレインコート。元警官のウィリアム・スワンの捜査。かつてスワンをはめたロス警察との裏取引を主導したイザベルの義父アディソン。保安官ケイブル・バビットと対立しながら捜査をする州捜査官サリー・ポーク。かつてジョシュア、オーレンと乱闘騒ぎを起こした副保安官デイブ・ハーディ。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ敬愛する杉江松恋氏の昨年のベストワンなので、読むことに。
最初は文学的な香りのする文章に二の足を踏んだものの、
徐々に暗示的な描写や台詞がたまらなく面白くて惹き込まれた。
人物描写や人間関係が濃密に描かれているのがいい。
この狭い田舎町にこんなに多くの奇人変人曲者達がいて、
誰もが亡くなったジョシュに関係していて、
誰もが異様な程怪しく、そして森に秘密が隠されているなんて、
昔ハマった「ツインピークス」のよう。
ひょっとしたらこれは「バ○ミス」(※)なのかと
中盤を過ぎてもただひたすら疑念は増すばかり…。
そんな感じで、後半までフーダニットを楽しめる。
が、ラストでは「バ○ミス」との期待は見事裏切られ、
ラスト100ページは場面展開も加速し、 一気にゴールへと突入する。
ストーリーには直接関係無い小遊び的な設定も多々あり、
暗示的な文章と共にその辺が私にとっては魅力的なポイントだった。
それと、悪い癖で、また見つけてしまった。
「」の括りがおかしかった箇所が1点と、
ジョシュのカメラの機種が 「キャノンFTb」となっている点。
(正しくは「キヤノンFTb」。)
「キユーピー」や「シヤチハタ」、「富士フイルム」など
発音と表記が違う企業はわりとある。
ミステリーとしては珍しく再読したくなる素敵な小説だった。 -
Posted by ブクログ
カルフォルニア州北西部にある広大な森に隣接した小さな町『コヴェントリー』。当時一七歳の『オーレン』は二つ下の弟『ジョシュア』と共に森へ行き、戻ってきたのは兄一人だった。
二十年ぶりに呼びもどされたオーレンは、誰かが玄関先に死んだ弟の骨を一つづつ置いていくことを知る。彼を疑う保安官に協力を強要され調べ始めたオーレンと、次第に明かされる町の人々の秘密。
二十年の時を超えて、止まっていた時間が再び動き出す。
海外物はどうしても人物名が頭に入ってこない。しかも場面によって役職で書かれていたり、一つの省の中で視点が次々に入れ替わるので、何度人物紹介を見返したことか・・・。しかも事件との関連が見えてこないことの描写が多く、正直前半は中々読み進めるのに苦労しました。
ですが、物語が進むにつれ、引き込まれ最後は一気に。
ミステリー要素としてだけではなく、親子・友人・男女など色々な愛情がテーマであり、中でも不思議な家政婦の『ハンナ』は魅力的に書かれています。血のつながりがないどころか身元さえ不確かな彼女を受け入れた家族との間に築かれた深い心の繋がり。
「家族の死には罪悪感がつきもの」というかに序の言葉は深く残りました。