務台夏子のレビュー一覧
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ネタバレ*クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。十五年前に双子の妹が殺された刑事ルージュの悪夢が蘇る。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れ―。一方、監禁された少女たちは力を合わせ脱出のチャンスをうかがっていた…。巧緻を極めたプロット。衝撃と感動の結末。超絶の問題作*
まさかこういう話だったとは!原題「 囮の子」もいいけど、この邦題には唸らずにはいられない。
「みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」。その言葉通り、ホラー映画フリークの超問題児でやんちゃ過ぎる、勇敢で健気なサディーに心底魅惑された。これは、「少女たち」の救済と贖罪の物語。そして、クリスマスに少女は還る。 -
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ネタバレサディーのお母さんの「みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」の言葉は、読者にとってもその通りだ。冒頭の登場シーンのサディーの印象はちっとも良くないのに、読み終えてみれば一番魅力的なキャラクターは間違いなくサディー。前半を乗り切れば彼女が活躍する中盤からは本当に面白い。
主人公格の一人美貌の青年警察官ルージュ・ケンダルにそっくりで一心同体の双子の妹スーザンの存在はルージュが少女誘拐の捜査にのめり込む重要なファクター。彼ら双子にまつわる表現にはなにやら背徳的な雰囲気(果たして一般的米国人は妹にAIMMなどと書くものなのか!?)を感じたが別になんでもなかった。考えすぎか。
ルージュが警察官として活躍するシリーズがあったら読みたいと思ったが残念ながらないみたい。 -
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これを読みながらずっと「レベッカ」を思い出していた。「昨夜、わたしはまたマンダレイに行った夢を見た」という冒頭の一文から、ミステリアスで繊細な物語は始まっていた。ここに収められた短篇にも、「レベッカ」と同様の叙情が漂っている。そのストーリーテリングを堪能できる一冊。
「レベッカ」では、謎めいた物語に引き込まれるのと同じくらい、舞台となるマンダレイという土地や、そこに建つ邸宅などに魅せられたように思う。奥深く、底の知れない気配が立ちこめていた。本書でも、「真夜中になる前に」のクレタ島や、「十字架の道」のエルサレムなど、その土地こそが主役なのではないかとまで思わせる舞台が、それぞれ異なる魅力を持って描かれている。
中でも圧巻なのは表題作のベネチアだ。ひたひたと水に洗われる古い街が目の前に立ち現れてくる。映画になっているらしいが、まことにさもありなん。場面場面が目に浮かぶような気がする。不安で不穏な空気がこれ以上美しく似合う街もないだろう。
ゆったり贅沢な読書を楽しんだが、一つだけ、最後の一篇「第六の力」にはやや違和感があった。他の五篇とは趣が違っていて、これはない方が全体としてまとまりがあったのではないかなあ。 -
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・ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)は表題作を含めて全5作、約420頁の短篇集である。最近の文庫は活字が大きいといつても、単純平均で80頁ある。長めの短篇といふところであらう。いかにもデュ・モーリアといふ感じの作品が収められてゐる。やはりおもしろい。
・巻頭の表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」として映画化されてゐる作品である。未視感といふのであらうか。いや、起きるべき未来が見えてしまつた、あるいはまだ起きてゐない出来事を見てしまつたことから起きる悲劇である。ヴェネチアに滞在中のジョンとローラの夫婦にイギリス人老姉妹が関はつて事件が起きる。構成も起承転結がきつちりできてをり、老姉妹と知り合つてからの2人の心理の推移がよく分かる。これはジョンが老姉妹を嫌ひ、ロー ラは引かれるといふだけのことなのだが、個人的には、ジョンが老姉妹を嫌ふ様子がたぶんに教科書的といふか、紋切り型といふか、それにもかかはらずおもしろい。さう、ジョンがいかにもそれらしく老姉妹を嫌ふがゆゑに、ここに事件の起きる気配を漂はせて読む者を引きつける。しかも、まだ起きてゐない3人を見 てしまつて以後のジョンの行動もまた、所謂スリルとサスペンスに満ちてゐてなかなかおもしろい。要するに、これがデュ・モーリアなのである。映画化された だけのことはある。次の「真夜中になる前に」も似た感じの作品である。主人公の教師がクレタ島での休暇中に体験したスリルとサスペンス(といふほどのもではないか)である。起承転結もはつきりしてをり、3人の登場人物の描写もまた分かり易い。絵を描くのに最適なバンガローではあつても、それが最も外れに位置してゐたために起きる、これもまた悲劇であらう。不躾な米国人夫妻と知り合つて別れるまでの主人公の心理がおもしろい。先のと同様に、追ひつめられてい く、あるいは考へすぎていくのは、ある意味、紋切り型ではあつても、それがやはりこの作品にふさはしい。これらとはいささか異なるのが「ボーダーライン」である。父が死んだことにより、かつての父の親友を訪ねることにしたといふ物語である。父と友との別れの原因を突きとめるためにアイルランドまで行つて主 人公が知つたのは……最後にどんでん返しがあると言つては言ひすぎか。主人公は相手をだましたつもりでゐたのに、実はだまされてゐたといふことである。これも構成的によくできてゐる。初めのうちは何だこれはと思つてゐるのだが、そのうちに引き込まれていく。ところが、最後の「第六の力」はさうはいかない。 SF仕立てであるらしいが、あまり良い出来とは思へない。少なくとも私はかういふのは好きではない。アイデアを消化できずに終はつたのであらうか、内容的に中途半端であつて、とてもSFとは思へない。更に言へば、ここには先の作品のやうな雰囲気がない。「十字架の道」もおもしろくない。これも「第六の力」 同様である。物語は現代のエルサレム巡礼といふところであらう。その人々の行動が描かれる。従つて、一つのきつちりとしたストーリーはない。個々のエピ ソードの積み重ねである。ゲッセマネを求めての散策等での登場人物の描き分けはなされてゐても、そのエピソード自体が私にはおもしろくない。どの登場人物 も不平不満を述べるばかりである。そもそもこれがおもしろくないうへに、その行動も、そこから生じる出来事もおもしろくない。これでは物語がおもしろくならうはずがない。そんなわけでこの作品集、私には前3編と後2編が対照的に思はれて、巧拙、良し悪しとに二分されたのであつた。 -
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ネタバレ20年ぶりに故郷に帰ってきたオーレン・ホッブス。20年前にオーレンと共に森に入った弟のジョシュアはそのまま行方不明に。ジュシュアの骨が帰ってくる。ジョシュアの骨以外に別人の骨も。否応なく捜査に関わることになったオーレン。オーレンのためにアリバイを証言した2人の女。オーレンと肉体関係にあったホテルの女主人イヴリン・ストラウブ、オーレンに恋するイザベル・ウィンストン。発見されたジョシュアの遺体と謎の女性の遺体。現場に残された黄色いレインコート。元警官のウィリアム・スワンの捜査。かつてスワンをはめたロス警察との裏取引を主導したイザベルの義父アディソン。保安官ケイブル・バビットと対立しながら捜査をする州捜査官サリー・ポーク。かつてジョシュア、オーレンと乱闘騒ぎを起こした副保安官デイブ・ハーディ。
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ネタバレ敬愛する杉江松恋氏の昨年のベストワンなので、読むことに。
最初は文学的な香りのする文章に二の足を踏んだものの、
徐々に暗示的な描写や台詞がたまらなく面白くて惹き込まれた。
人物描写や人間関係が濃密に描かれているのがいい。
この狭い田舎町にこんなに多くの奇人変人曲者達がいて、
誰もが亡くなったジョシュに関係していて、
誰もが異様な程怪しく、そして森に秘密が隠されているなんて、
昔ハマった「ツインピークス」のよう。
ひょっとしたらこれは「バ○ミス」(※)なのかと
中盤を過ぎてもただひたすら疑念は増すばかり…。
そんな感じで、後半までフーダニットを楽しめる。
が、ラストでは「バ○ミス」との期待は見事裏切られ、
ラスト100ページは場面展開も加速し、 一気にゴールへと突入する。
ストーリーには直接関係無い小遊び的な設定も多々あり、
暗示的な文章と共にその辺が私にとっては魅力的なポイントだった。
それと、悪い癖で、また見つけてしまった。
「」の括りがおかしかった箇所が1点と、
ジョシュのカメラの機種が 「キャノンFTb」となっている点。
(正しくは「キヤノンFTb」。)
「キユーピー」や「シヤチハタ」、「富士フイルム」など
発音と表記が違う企業はわりとある。
ミステリーとしては珍しく再読したくなる素敵な小説だった。 -
Posted by ブクログ
カルフォルニア州北西部にある広大な森に隣接した小さな町『コヴェントリー』。当時一七歳の『オーレン』は二つ下の弟『ジョシュア』と共に森へ行き、戻ってきたのは兄一人だった。
二十年ぶりに呼びもどされたオーレンは、誰かが玄関先に死んだ弟の骨を一つづつ置いていくことを知る。彼を疑う保安官に協力を強要され調べ始めたオーレンと、次第に明かされる町の人々の秘密。
二十年の時を超えて、止まっていた時間が再び動き出す。
海外物はどうしても人物名が頭に入ってこない。しかも場面によって役職で書かれていたり、一つの省の中で視点が次々に入れ替わるので、何度人物紹介を見返したことか・・・。しかも事件との関連が見えてこないことの描写が多く、正直前半は中々読み進めるのに苦労しました。
ですが、物語が進むにつれ、引き込まれ最後は一気に。
ミステリー要素としてだけではなく、親子・友人・男女など色々な愛情がテーマであり、中でも不思議な家政婦の『ハンナ』は魅力的に書かれています。血のつながりがないどころか身元さえ不確かな彼女を受け入れた家族との間に築かれた深い心の繋がり。
「家族の死には罪悪感がつきもの」というかに序の言葉は深く残りました。