務台夏子のレビュー一覧
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ネタバレ目次より
・いま見てはいけない
・真夜中になる前に
・ボーダーライン
・十字架の道
・第六の力
ゴシックサスペンスの小説『レベッカ』で有名な、ダフネ・デュ・モーリアの短編集。
全体像が見えないことによるドキドキ感は健在で、「どういうこと?どういうこと?」と手さぐりで読み進めていくことの快感。
特に表題作の「いま見てはいけない」は、なんとなく結末が想像できるのではある。
けれど、押し寄せる不安で、結末を確認しないではいられない。
ただ、カタルシスを得られるかと言えば、それはない。
この短編集全体がもやもやを抱えたまま沈んでいくような読後感。
「ボーダーライン」はアイルランド問題、「十字架 -
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デュ・モーリア作のもうひとつの「レベッカ」とも呼ばれる作品。
今回も状況の描写が素晴らしく、登場人物と同じ場で物語を見ているような気持ちにさせる。
両親を亡くし、従兄アンブローズによって育てられるわたし。
アンブローズはイタリアで結婚し急逝する。アンブローズからの便りに、ただならぬものを感じるわたしは、彼の妻であるレイチェルを憎む。
そんな折、レイチェルがわたしの暮らす屋敷にやって来る。
「レベッカ」と同じくイギリスの上流家庭と言える裕福な家族の物語。
タイトルともなっているレイチェルは、魅力溢れる女性だが、それだけではないように思わせる謎を秘めている。そういうところも「レベッカ」に似てい -
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ネタバレ少女が二人誘拐された。
一人は副知事の娘で超がつくほどの美少女。
もうひとりは、中の上くらいの家の女の子。しかし、とにかくユニーク、ホラー映画マニアで悪趣味ないたずらもしょっちゅう、およそ正反対の二人だが無二の親友。
実はこの町では10年以上前から何度も類似の事件が起きている。美少女が誘拐され、クリスマスの朝に凌辱された遺体が発見されるというおぞましい未解決事件。
さらに犯人は捕まっているものの類似事件が過去にあり、その被害者は今回の事件を担当することになるハンサムな警察官の双子の妹。
双子と言っても、二人はありえない一卵性双生児の兄妹で離れがたく結びついていた。
彼が優秀な子供たちが集められ -
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ネタバレ*クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。十五年前に双子の妹が殺された刑事ルージュの悪夢が蘇る。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れ―。一方、監禁された少女たちは力を合わせ脱出のチャンスをうかがっていた…。巧緻を極めたプロット。衝撃と感動の結末。超絶の問題作*
まさかこういう話だったとは!原題「 囮の子」もいいけど、この邦題には唸らずにはいられない。
「みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」。その言葉通り、ホラー映画フリークの超問題児でやんちゃ過ぎる、勇敢で健気なサディーに心底魅惑された。これは、「少女たち」の救済と贖罪の物語。そして、クリスマスに少女は還る。 -
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ネタバレサディーのお母さんの「みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」の言葉は、読者にとってもその通りだ。冒頭の登場シーンのサディーの印象はちっとも良くないのに、読み終えてみれば一番魅力的なキャラクターは間違いなくサディー。前半を乗り切れば彼女が活躍する中盤からは本当に面白い。
主人公格の一人美貌の青年警察官ルージュ・ケンダルにそっくりで一心同体の双子の妹スーザンの存在はルージュが少女誘拐の捜査にのめり込む重要なファクター。彼ら双子にまつわる表現にはなにやら背徳的な雰囲気(果たして一般的米国人は妹にAIMMなどと書くものなのか!?)を感じたが別になんでもなかった。考えすぎか。
ルージュが警察官と -
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これを読みながらずっと「レベッカ」を思い出していた。「昨夜、わたしはまたマンダレイに行った夢を見た」という冒頭の一文から、ミステリアスで繊細な物語は始まっていた。ここに収められた短篇にも、「レベッカ」と同様の叙情が漂っている。そのストーリーテリングを堪能できる一冊。
「レベッカ」では、謎めいた物語に引き込まれるのと同じくらい、舞台となるマンダレイという土地や、そこに建つ邸宅などに魅せられたように思う。奥深く、底の知れない気配が立ちこめていた。本書でも、「真夜中になる前に」のクレタ島や、「十字架の道」のエルサレムなど、その土地こそが主役なのではないかとまで思わせる舞台が、それぞれ異なる魅力を持 -
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・ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)は表題作を含めて全5作、約420頁の短篇集である。最近の文庫は活字が大きいといつても、単純平均で80頁ある。長めの短篇といふところであらう。いかにもデュ・モーリアといふ感じの作品が収められてゐる。やはりおもしろい。
・巻頭の表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」として映画化されてゐる作品である。未視感といふのであらうか。いや、起きるべき未来が見えてしまつた、あるいはまだ起きてゐない出来事を見てしまつたことから起きる悲劇である。ヴェネチアに滞在中のジョンとローラの夫婦にイギリス人老姉妹が関はつて事件が起きる。 -