務台夏子のレビュー一覧
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ネタバレ最後のオチが「え、そっち!?」だった。
レイチェルの趣味が『園芸』と聞けば、ミステリー好きにはピンと来そう。
レイチェルの人物描写が実に見事。読みながらうっかり私も恋しちゃった。
主人公フィリップのウブさもまた見事!こういう男性いる!作者はいつもどんな風に他者を観察してるんだろう。
実は、ルイーズにもう少し頑張って欲しかった。これからリベンジが始まるか!という時に物語が終わってしまって、少し物足りなかった。でも人によっては「語り過ぎないからこそ」なのかな。
でもさ、彼女は毒婦なのかそれとも…ってあったんだけど、普通の常識と礼儀貞節を知る女性なら亡き夫の実家に何ヶ月も居座らんだろう。愛だからとかでなく、亡き夫の育てた男の子狙うって毒婦中の毒婦でしょう。こわやこわや… -
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氷の天使キャシー・マロリーのシリーズ最新作。実は、前々作『ルート66』感動の最終章を境に、確実に我らが美しきソシオパス刑事マロリーは、変化を遂げたように思う。
機械の如く無感情に見える彼女の中で何かが少しだけ変わった。ほんの片鱗に過ぎないかもしれないが、ある種の愛情に近いもの、優しさ、女性らしさのようなものが加わってきたように、ぼくには思えてならない。
そんなものはおくびにも出さないという不愛想さは、無論かつてのままである。どう見ても、常時、鋼鉄の鎧で武装しているように見える。ホルスターに吊るした銃を意図的に覗かせる。超高級ブランドしか身に着けない。皮肉と攻撃性に満ちた会話と、人を寄せつけない無表情が彼女のスタイルである。それでも、瞬間が描かれるのだ。血の通わない人形のようなヒロインに、一瞬だけ流れる人間らしさ、という貴重極まりない一瞬が。
前作では、ウィリアム症候群の少女ココとの相互の愛情がとても印象深かったし、本書でも、心に傷を負った人々、愛情に恵まれぬ育ち方を余儀なくされた者たちとの交情のシーンなど、マロリーの、ここのところの魂の安定ぶりを感じさせ、エキセントリックな主人公から親近感の持てる素敵なヒロインへと、わずかながら境界を超えてきたような安心感を読者に与えてくれる。冷徹なヒロインだからこそ、その瞬間が心に響いてくる。
さて、劇場型殺人事件というと、怪人二十面相のような派手な悪役を想起するのだが、最近ではネットライブを利用したような公開処刑のようなドラマ・映画が増えているように思える。本書は、その手の劇場型ミステリというより、むしろ劇場で三夜連続して起こった、人の死の謎を捜査するという警察小説である。つまり劇場型ミステリではなく、劇場を舞台にしたミステリなのである。
上演される舞台劇の脚本が、謎のゴーストライターによって書き換えられ、上演一幕後の暗転のときに毎夜、殺人が起こる。それだけを聴くと、どこか古臭そうなネタに思えるが、実際は、スピード感と展開力のあるストーリーテリングによって、ぐいぐい読める、さほどおどろおどろしくもない、時にはユーモアすら感じさせるエンターテインメント小説である。
舞台監督、舞台演出家、役者たち、脚本家、衣装係、舞台係、照明係、劇評家といった人物たちが登場するのだが、それぞれのキャラクターたちの癖の強さに圧倒され、眩暈がしそうになる。かつてネブラスカ州で起こった一家惨殺事件との繋がりも見えてくる。惨劇から生き残った二人の子供たちの話も絡んで来るなど、現在の事件の謎は、さらに奥行きを増し、それぞれの人物の思惑も錯綜してくるのだが、マロリー、ライカー、チャールズのレギュラー・トライアングルを軸にした捜査網は、複雑に入り組んだ人間関係を解明してゆくことで、それぞれの真実に迫ってゆく。
捻じれて縺れ合った幾本もの縄を丹念に解きほぐしてゆくような快感を、悲しみには復讐という快感を、ラストで必ず補償してくれるシリーズの王道は、本作でもいささかも崩れない。前作同様、このシリーズ、波に乗っているな、との感を強くした一冊であった。 -
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劇画的なまでのけれん味たっぷりな誇張により、常に超越的な存在として彫刻のように描写されてきたこの世で最も美しく冷たい女刑事キャシー・マロリーのシリーズ最新作。と言っても10ヶ月前に邦訳された作品。さらに言えば原作は2011年にUSA出版済み。
創元推理文庫の翻訳作品が原作出版から10年単位の遅れというのは今に始まったことではないのだが、そういった長い長い時差を経てもなお良作と呼べる物語(もう完結してしまったがR.D.ウィングフィールドのフロスト・シリーズや、新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの作品群等含め)をしっかりと日本人読者に届けてくれる地道な無骨さは、海外小説の老舗出版社としての信頼性に確実に繋がるものだろう。
さて、キャシー・マロリーだが、このシリーズ、実は作品毎に独立したカラーやアイディアを持っており、作品世界の振れ幅が並ではない。特に前作『ルート66』は、キャシー・マロリーの真実を知る上で『天使の帰郷』以来の重要な作品であった。
完璧に美しく冷静な女刑事マロリーは、シリーズ一作毎に新たに彫刻され、徐々にその本当の姿が露わになるように作られている。孤児であるところを刑事に拾われ育て上げられた元野生児にして泥棒少女、今では天才ハッカー、社会病質者、敏腕捜査官、氷の天使。前作でニューヨーク市警を3ヶ月無断で不在にしルート66を走り回って帰還したマロリーは、市警上層部の組織圧力を跳ね除け、セントラルパークの森に吊るされた三体の遺体の謎に迫る。
マロリーの同僚ライカーと、コンサルタントであり信奉者であるチャールズ・バトラーとの個性のトライアングルは、シリーズを通して健全。健全というのはつまり葛藤だらけだということ。
そして二人の印象的な子どもたち。染色体異常の病に侵されつつも言語的かつ音楽的早熟の才能を示すココ。存在を葬られた影となって15年前の現実を示すアーニー。
事件の裏には家族たちの恩讐、社会構造の歪みを示す財団の影、警察や法曹界を組み立てる官僚組織の中に確実に蔓延る腐敗、そして何よりも喜劇的までの人間のエゴと醜悪等々が見え隠れする。
マロリーの射るような冷たい眼差しから、奴らは決して逃れることはできない。複雑に絡み合った枝葉を通してストレートパンチのような小気味良さが最後に響き渡るシリーズのリズムは、本作でも実に健全である。 -
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ネタバレ「キャシー・マロリー」シリーズ。
悪徳警官の賄賂とか証拠隠滅とか、極端な例として殺人とかは、
刑事ミステリーにはある意味欠かせないパーツだが、
腹黒上官、それもトップに上り詰めようとしている元警官が直接手を汚したというのは、
なんだかしっくりこなかった。
いくら金と権力を併せ持つ存在の後押しがあるという設定としても。
現在の殺人事件、マロリーの処遇、過去の殺人事件、
遺伝的特徴を持つ目撃者である少女とマロリー、
といろいろな話が盛り込まれていたが、この順で興味が引かれたので、
正直現在の殺人事件のことは途中でどうでもよくなっていた。
とはいえ、シリーズの中では面白かった。
きっちりしっかり読み込むタイプの人には余計なお世話だが、
そうでない人は一度読み終わった後に、
日記の部分だけ読み直した方が良い。
そこだけでも、素晴らしい作品だ。
悲しい物語だが。 -
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キャロル・オコンネルの作品で読んだことがあるのは『クリスマスに少女は還る』と『愛おしい骨』だけなので、このマロリーシリーズは読んだことがない。最初に感想を言うと、主人公であるマロリーの過去を知っていれば、もっと面白いんだろうな、と思った。マロリーはこの巻の前には、どうやら何か月か失踪していたようだ。クールビューティ&タフネスの女刑事という、いかにもアメリカらしい鉄板キャラ。結構この設定は好き。相棒のライカーはそんな彼女とは好対照で、ややお調子者のような感じ。そこそこ切れ者なのだが、なにぶんマロリーの能力が突出しているので、ライカーは損している。ただ彼がいないとマロリーの行動は謎が多すぎるので、物語を理解する上ではとても重要な人物。
ストーリーの展開は冒頭のショッキングな描写を除けば、いたって王道のミステリーという感じ。トリックより物語性を重視している。奇をてらう感じもなかったので、分厚い割には読みやすい。
事件は昼間の公園ではじまる。幼児たちを引率して広場を訪れていた老女が、突如として現れたネズミの群れに襲われて噛み殺された。
なぜ、こんなところでネズミが多量発生したのかを捜査していたところ、木の上に吊るされ、口をふさがれ拘束されていた瀕死の男をみつける。生きたままネズミにかじられていた男。この男がネズミの発生源だった。それをきっかけに同様に木に吊るされ、ネズミに齧られた二人の被害女性が発見される。
その後、別の事件で保護された少女ココがこの事件の目撃者であったことが判明する。しかし少女はウイリアムズ症候群と言う疾患を抱えていたため、証言をさせることが困難であった。
誰がこんな凄惨な事件を引き起こしたのか、その犯人像は…
快楽殺人だとすると、この3人で犯行が止まっているのが不可解だ。被害者に接点はあるのか…
マロリーやライカーの過去の活躍を知らなくても、今回の物語だけでも十分面白いのだけれど、その他の登場人物たちも、過去の作品からの流れで登場してくるので、読んでいないと絡みがよくわからないところもある。
1作目から読んでみたいが、これが10作目だからなぁ… 分厚いし、ためらう。
1作目から読んでいる人がうらやましい。