遠田潤子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
再読。カレル・アンチェルとチェコ・フィルの9番を聴いた後で、改めて読みたくなったのだが、前回読んだときとは、また異なる思いを抱くことになりました。
藤太、秋雄、いづみ、この三人の人生は再読でも、とても痛々しく、思わず目を覆いたくなるような、筆舌に尽くしがたい悲しみに加えて、その要因が、それぞれの親なのだから、余計にやるせない。
しかし、それでも私は、アンチェルのあの出来事と、彼らの悲しみを比較するのは違うと思うし、それは、どちらがより辛いとかの概念ではなく、そもそも比べる事ができるような、そんな単純で軽いものじゃないでしょ、人生って。
ただ、それを生きる為の希望と感じられる事も、本書から読み取れて、おそらく、彼らの青春時代は、アンチェルの音楽(ドヴォルザークの交響曲第9番《新世界より》)で表現された、まさに『新世界』を夢見ていて、今はどれだけ悲惨な思いをしていても、いつかきっと、そんな世界に辿り着けると思っていたことでしょう。
前回の感想で、私は、藤太の最後の場面について、「僅かな晴れ間がのぞいたのだろう」と書いたのですが、今回の再読はそうではなく、実は誰よりも、潔く覚悟を決めていたのではないかと感じました。
そこにあるのは、その行為が、どれだけ人生に影響を与えるのかということで、それは、『どこにも行けず、袋小路を虚しくさまようだけの人生になる』と、藤太自身感じているように、そんな思いを、ほづみにだけは絶対にさせてはいけない、ここに、これまで逃げてきた彼の、償いを為さんとする、剥き出しの覚悟が窺えた気がしました。
新世界は、藤太たちにとって、『あの頃の俺たちのすべて』だったのが、次第に苦痛へと変わっていき、終いには『たどりつけない世界』へと感じられたのかもしれない。
しかし、私は、タイトルの「アンチェルの蝶」には、『新世界へと旅立つ蝶』の意味があると感じており、無事そこに辿り着けるのかは分からないけれど、それでも最後の蝶の旅立ちには、藤太、秋雄、いづみ、それぞれの夢がやっと動き出してくれた、そんな風に感じられたことが、本書を読んで、最も嬉しかったことでした。 -
ネタバレ 購入済み
算数障害って
まだ読んでる途中ですが大西麗の人格がどのようにして出来上がってきたか千穂と転々と旅をしながら徐々にわかってきます。生まれつき算数障害があるなんて悲しすぎる。まだせめて親が気付いて学校に通わせてたら人生が全然違ったかもしれません。そう思うとやりきれないです。
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Posted by ブクログ
物語は、事の真相が全くわからないまま、半ば以上まで進む。主人公はひどく屈折した愚直な男性で、終始イライラさせられっぱなし。もう読み進めるのを止めようか?と思ったあたりで、急速に一つ一つが明らかになってゆく。その引っ張り加減が絶妙で、結局最後まで読まされてしまった。
正直、人に薦めたくなる作品ではないし、誰にも共感できない。だが、棘のように刺さる。妙に忘れ難い。
煩悶、懊悩する人々に、自身が重なるようになり、まるでロシア文学を読んでいるように感じた。
人間とは、文学でどこまで深く潜っていけるのか?作者の挑戦心のようなものを感じた。
心に余裕があるときに一読を。 -
Posted by ブクログ
遠田さんの作品は、「月桃夜」、「アンチェルの蝶」と読んできての、この作品ですが、何となく共通点というか、伝えたい事が見えてきた気がしました。
人生には、楽しいことだけではなく、辛いこと、苦しいこと、やるせないこと等も存在すること。そして、それに向き合わなければならない。遠田さんの作品は、とても辛いことの方が多いのだけど、その中でも数少ないが、強く在り続けるひかりのようなものが、生き続けていれば見えてくること。そこに、辛い現実を生きてきた甲斐があったなと、思えるような素晴らしさ。この作品では、あたらしい世界ということになるのでしょうが、家族の在り方について、色々考えさせられました。
家族という特別な関係は、思いが深い故に、時に悲しみや怒りとともに、誤った方向へ、人をいざなってしまうこともあるのだろうか。この作品では、家族という関係の素晴らしさと悲しさを、共に示された気がします。ただ、素晴らしさの方には、やるせない部分もあるので、それがまた、作品だから美しいと思えるのかもしれませんが、当事者たちにとっては、本当に大変だっただろうと思いました。
また、登場人物の「片瀬和彦」の、本当に細かくて繊細な心理描写には、脱帽させられました。遠田さんの人物に対する真剣なまでの創造力を感じました。
ただ、物語がほとんど片瀬和彦の息子「在(ある)」の、父親の真実探しに終始するため、そこは、ややもどかしく単調な展開と思われるかもしれません。
以下、ネタバレ含みますので、ご注意を。
私が最も印象に残ったのは、上記した家族の素晴らしさである、片瀬和彦と森下翠のお互いの愛情です。
唯一、翠の吃音を気にしないでいてくれた和彦と、家族から愛情を注がれなかった故に、寂しさを覚えて、ぶっきらぼうに見られた和彦に対して、自然に接した翠のふたりは、正に、お互いがお互いを必要としており、ふたりには、それがしっくりいっていることが無意識に実感出来ていた。それが、これまで体験したことのなかったことで、あたらしい世界と呼んだわけです。
ただ、そう思っていたのは当事者たちだけで、周りとの悲しいくらいの温度差と誤った解釈による悲劇は、本当にやるせないものがありました。
そして、終盤の和彦の手紙を読むと、和彦が本当にどれだけ辛い人生を送っていたのかを痛感させられました。それでも、亡くなった時に、笑うことが出来たって。人はここまで強くなれるのだろうか?
一瞬、疑ってしまう自分自身が恥ずかしいが、物語の力というのは、こういうところにあると、私は思っています。
また、エンディングの、在と、翠の姪の「水樹」の、ささやかだけど、前向きな終わり方も良かったです。物語が終わった後も前途は暗いかもしれない。特に、水樹はまだまだ辛いことがあるだろうけど、そこは成長した在が、正に、和彦のように格好良く支えてくれるだろうといった希望を感じました。
水樹には、本当に幸せになってほしい。 -
ちょっとしんどい
主人公は、子供が産めないことで夫と義母にないがしろにされ続けるのですが、それも読んでいてきついのですが、夫のあまりにも自分勝手な感じ(潔癖症?不潔症っぽいところ)と、えらそうな義母、わたし的はちょっと読むのがしんどいです。絵もきれいで気になっていた作品だったのではありますが・・・。