遠田潤子のレビュー一覧
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ネタバレ田舎の村の二大旧家、藤屋と斧屋。後者は廃れ、前者は健在。斧屋に生まれた実菓子が藤屋を狂わす。人気歌手となった彼女にインタビューすることになった藤屋の多聞。父親も兄も実菓子に殺されたようなもの。しかし本当にそうなのか。
彼女はそんなに酷い女ですか。最低の女ですか。凄まじい美貌の不幸な少女。男たちが勝手に、彼女をわかってやれるのは自分だけだと思い込んでいたように感じます。彼女は思わせぶりなことなんて何もしていない。冷めた目をしているようでいて、周囲のことをよく見ている。彼女は人をかばって嘘をつく。みんな彼女に救われていたのに、気づかない。結局、相手のことをいちばん考えていたのは彼女なのでは。
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ネタバレ評価は3.
内容(BOOKデーターベース)
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
親を選べない子供達が懸命に生きる姿が良く描かれている。しかし、結局誰も大人になりきれず再び子供が被害者じゃないかぁ~。懺悔も必要だし反省も必要だが今目の前にある現実を受け入れられない主人公にイライラしどうしだった。 -
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ネタバレ親による虐待や、ろくでなしの男に追われるという要素から「アンチェルの蝶」を連想させられました。ただ、登場人物のほとんどに共感できなかった点で、これまでに読んだ遠田作品に比べると心象が悪く感じます。
確かに、高山徹(=大西麗)や安西千穂の過去には哀れみを感じますが、殺人に対する罪悪感のない徹と彼に尽くす千穂、そして実の娘をないがしろにする賢治の身勝手さに対する苛立ちが、それを上回ってしまうのです。
さらに私が本作を受け入れづらいと感じた決定打があったとすれば、千穂の懐妊を徹が知った時の「あんたの自己満足のために子供を産むな」というセリフ。本作の登場人物のほとんどに嫌悪感を覚える要因はこれかな -
Posted by ブクログ
恋愛?ミステリー?ある意味ファンタジーな作品。
すべての登場人物が嘘をつきまくっている中、主人公てある多聞だけがすべての嘘を知らずにいて、村の人々は事実を知りつつ隠して暮らすし、都会で知り合ったはずのマネージャーたちも実は関係あるという、クローズドな関係性を描いたらうまい作家だな、という印象。
因習に囚われた田舎の村に生まれたことの悲劇が、ひとつの家族を通じてドロリと暗くひたすら書かれている。
最後の最後、主人公の多聞と実菓子がお互いの思いを吐き出すシーンは、過去の因習から解き放たれるクライマックスなのだが、そこでひたすら「バケツ」「バケツ」と繰り返しているのがなんだか滑稽であった。
な -
Posted by ブクログ
デビュー作から注目していたものの、あまりの昏い破壊力に、自分の気力が負けそうで、気になりながらしばらく手に取っていなかった遠田潤子さん。
が、近作で爽やかさをまとうようになったと知り、読んでいなかった過去作品を遡って読むことにした。
撃沈…
なんという絶望、悪意、閉塞感。
善意の人の好意すら受け止めることのできない、大きな欠落を抱えた、傷つきすぎた心。
それでも、泥の中から美しすぎる蓮の花が咲くように、そんな心にも、咲く花があるのだろうか。
くらくらしながらも、ぐいぐい読まされてしまう力は、やっぱりすごい。
読後しばらく、リハビリが必要になった。