遠田潤子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ第一回未来屋小説大賞受賞作
圧倒的な筆力で人間の激情を描ききった
先が気になり、寝不足になりながら読み進めた。そういう意味では、帯の通り「圧倒的な筆力」なのだろう。
そして、読後感も悪くはない。ずっと続く重く暗い雰囲気と、旧い因習にとらわれた小さな田舎町の人々の陰湿さと、読んでいて重たくなる一方の気持ちだが、最後は少し救われる。
評価をそこまで高くしなかったのは、個人的には、
これを現代の話の設定としては入り込めなったことと、なぜ倫次が愛美をそこまで好きになり(年の差も含めて)、甥っ子を殺めてしまったことを隠すことまでしたのか、徐々に事実が明らかになればなるほど、納得や共感よりも、なぜ?と言う感覚になったから。
そんな田舎町の歪んだ狭い関係性の大人たちからでも、
結季と言う、希望のような存在が生まれたことが救い。
結季が大きくなって、望まなくても自分や周りに関する情報を知ってしまったとしても、残すべき文化・伝統と、残すべきでない因習を分けて考えて、嘆き諦めるのではなく、賢さと可愛さを失くさずに、新しい世代を作っていってくれるといいな。 -
Posted by ブクログ
初・遠田潤子さん。
ざっくり、生まれ育った悪環境から抜け出すのは容易ではないという重いお話。
森二一家は父親のギャンブル狂いで家庭崩壊。
兄の光一とノミ屋を生業としていた森二は、ある事件で将来の義兄となる圭一と出会う。
圭一は良家の育ちの大学院生で温厚な人物。
森二に人生をやり直す機会を与えてくれた。
共に応援してくれた妹の唯と結婚し娘にも恵まれた。
なのに、なぜ唯を殺したのか。
それはそれは複雑に絡まり合った不運のドミノ倒し。絡まってるから綺麗には倒れないのがポイント。
予想つくところと私には不発なところがあったので
強引に複雑にしているようにも感じましたが。
足を引っ張る。と言うのは上を目指してる者同士のイメージだったのですが、ここでは一人だけ悪環境から出ようなんて許しまへんで(大阪舞台なので関西弁で)という下へ引き込む話で使われていて、頑張っても無駄という無力感が絶望しか生まず、悪環境から抜け出すのは相当難しいものだとズンと胸が重くなりました。
最後の方に明らかになる森二の過去。親から受ける体罰とその理由があまりにも身勝手で酷く、それを知ってから見る表紙の絵は悲しいです。
隣に住む少女は指名手配の父親の帰りを待って、アルゼンチンに住む母親に会いにいく希望を持って真面目に一生懸命生きています。その真っ直ぐさ、胸が痛いです( ᵕ ᵕ̩̩ ) ズル賢いヤツらがいい目を見るのはやりきれない。
重い話ではありましたが光は見えたと思います。
⚫︎オブリヴィオン
忘却・人事不省
恩赦・大赦
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Posted by ブクログ
不妊治療を10年続けていても妊娠しない主人公。同居の義母からもひたすら嫌味を言われ、夫は味方になるどろこか一緒に彼女をなじり全てを束縛しようとする。
4回目の流産が判明した日、夫が交通事故を起こすが、同乗中の彼女に責任を負わせる。事故の被害者の若い男性はは他人と関わりを持ちたくなさそうで治療費を受け取ることさえも拒んだが、彼が算数障害であることに主人公が気づき、それがきっかけで算数を教えることになったのだが、夫に浮気の疑いをかけられ、彼と共に逃亡する。
一方で妻をある女に殺された男性は、その事件に関わりのある若い男性を偶然映り込んだテレビ中継で発見したが、その男は子供の頃に死んでいるはずだった。違和感を感じた男性はテレビで見た男を探し、それがやがて逃亡中の男女とも絡み、事の真相が明らかになっていく。
それぞれが闇の部分を抱え、それをどうにか処理しようとして、逃げる者、口を閉ざす者、真相を明らかにしようとする者などが交錯する。善意の悪が引き起こした事件だったり、悪意の悪が引き起こした事件だったり、どうにも救われない感じ。 -
Posted by ブクログ
夫と義母に苦しめられながらも十年間不妊治療を続けてきた妻。その苦しみがやがて「事件」を引き起こし、彼女はとあるきっかけで出会っていた青年と逃避行に出ることになる、という物語。
最初から最後までどろりどろりとした展開で、主人公も青年も夫も誰もかれもが一癖あり過ぎて、簡単に感情移入を許さない「翳」をまとっている。だから例えば酷い目に遭って逃げている主人公にだって「可哀想」とだけ思うことができない部分があって、どう考えたって未来のない行動をしていくのをただ眺めていくしかできない。その無力感を抱かせる人々の物語を、けれど作者のよどみない筆致で読まされてしまう。苦しいと、楽しいことなどないとわかっている物語を最後まで負わせる力がある。素直に凄い、と感じるばかりでした。
惹かれ合ってその先に地獄しかないとわかっていても、それでもともに歩もうとする二人。妻を自身の所有物として完全に疑わずに行動できる男。善意を振りまいて正義を疑わない女。その正義に怯えてついには自らを罪人にした女。
業が業を呼び、人と人のわかりあえなさが痛烈に描かれていて、つらくてたまらないお話。けれど、おそらく、見たくないと顔を背けている人の一面であることも間違いはないのだろう。だから、興味を持って読んでしまえるのだろう。
そう、真正面から人のいやらしさに挑んだお話だと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ田舎の村の二大旧家、藤屋と斧屋。後者は廃れ、前者は健在。斧屋に生まれた実菓子が藤屋を狂わす。人気歌手となった彼女にインタビューすることになった藤屋の多聞。父親も兄も実菓子に殺されたようなもの。しかし本当にそうなのか。
彼女はそんなに酷い女ですか。最低の女ですか。凄まじい美貌の不幸な少女。男たちが勝手に、彼女をわかってやれるのは自分だけだと思い込んでいたように感じます。彼女は思わせぶりなことなんて何もしていない。冷めた目をしているようでいて、周囲のことをよく見ている。彼女は人をかばって嘘をつく。みんな彼女に救われていたのに、気づかない。結局、相手のことをいちばん考えていたのは彼女なのでは。
『雪の鉄樹』と『アンチェルの蝶』と同じくらい重くて暗いけど、その2作ほどの圧倒的な余韻はありません。信頼していた人が急に変わる様子など、ついていけない部分があります。それでも、たったひと言、彼女が聞きたかった言葉が明らかになったときはたまらない。