遠田潤子のレビュー一覧
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アンチェルの蝶も面白かったがこちらも甲乙つけ難い。錯そうする情と思惑があらゆる人々を不幸にしていく。ハッピーエンドとはいかないがあの二人のこれからに救いが見えたのが良かった。
あらすじ(背表紙より)
歌詞のない旋律を母音のみで歌う「ヴォカリーズ」の歌手として絶大な人気を誇る実菓子。彼女の自伝のインタビューの相手として選ばれたのは、売れないギタリストの青鹿多聞だった。なぜ実菓子は、多聞を指名したのか―2人は幼い頃同じ家で育ち、さらに実菓子の夫は、多聞の亡兄だったからだ。インタビューが進むにつれ、明らかになっていく、おぞましく哀しい出来事。その真実が解き明かされた時、新たな事件が起きる。 -
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大人買いするほどは著作が出ていないため、マイブームになっているとまでは言えないけれど、まちがいなく今いちばん惹かれる作家です。
見初められて身分違いの結婚をした千穂。玉の輿に乗ったはずが、不妊のせいで姑と夫から嫌みを通り越して虐待を受けている。そろばん塾を経営する千穂は、透という若い男と知り合う。算数障害の透に親身になる千穂を見て、浮気を疑う夫。一方、かつて殺人事件で妻を亡くした老人は、殺人犯の息子で死んだはずの少年・麗の面影を持つ透を見かけ、麗と透が同一人物ではないかと考える。
引き込まれ度という点では満点です。主要な登場人物に心から共感できる人柄は出てこないのに、千穂と透の逃避行の行く -
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自分的に、この作風が若干食傷気味になってきてしまってるんかな?確かに、毎回同じものばかり書かれても飽きてくるし、作者的にも違ったものを書きたいという思いもあるだろうし、そういう意味では、望みどおりのものが出てくることなんかないだろうし、それはそれでつまらん。リーダビリティの高さは相変わらず圧倒的ながら、今までに読んだ数作と、同じレベルで本作を好きになれなかったのは、おそらく主人公への反感かな。抱えている闇が深いとはいえ、相当な凶悪犯罪者やからね、これ。別に飽くが主人公だから気に入らんなんてことを言ってるんじゃなく、それに対する周囲の穏やかな眼差しが理解出来ん。まあ、病んでる人たちを上手く描くっ
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身勝手に思える行動も男の性なのだと同性だからか擁護してしまう。男にとって初恋とは一生忘れられない特別な宝物なのだ。だから許してもらえるとは思わないが・・・。個人的にはとても好きな作品でした。
あらすじ(背表紙より)
交通事故で唯一の肉親である父を亡くした、大学生の片瀬在。尊敬する父の「弔いごと一切不要」という遺言に戸惑いつつも、その通りにすませた。しかし、生前は立入禁止だった父の書斎で遺品整理をはじめた矢先、全く知らない女性と自分の名が書かれた母子手帳を見つけてしまい、激しく混乱する。父は一体何を隠していたのか――在は主を亡くした書斎で、まるで葬儀を営むかのように、父親の本当の姿と向き合ってい -
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遠田潤子『あの日のあなた』ハルキ文庫 。
2015年に刊行された『お葬式』の改題、文庫化。確かに『お葬式』という標題では余りにあからさまというか、えげつない感じがする。そういう点で改題は正解だと思う。
遠田潤子の『アンチェルの蝶』『雪の鉄樹』と何とも深く、重い、素晴らしい傑作を堪能したが、本作もまた余韻を残す素晴らしい作品だった。不満を言えば、主人公の片瀬在が極めてファザコンの清純で中性的に描かれている点であろうか。出来れば主人公の在には汚れて欲しかった。
二年前に母親を亡くし、父親の和彦と二人きりで暮らす主人公の片瀬在にとって父親は憧れであり、尊敬する存在だった。ある日、百合の花を買い