遠田潤子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
妻を殺害し、出所したところから物語は始まり、なぜ殺したのかわからないまま、進行していきます。過去を振り返りながら、読み手はそれまでの空白の時間を徐々に知ることになります。罪に苛まれながらも生きなければならない人達の痛みや再生が描かれていて、なぜそうなったのか理由を知りたいと思いつつ、グイグイ引き込まれました。
要となるのは、妻を殺害した動機です。それにより、翻弄される登場人物達が描かれていて、骨太な作品になっていました。
全体として、陰湿な雰囲気を醸し出していました。実の兄や妻の兄、娘の昔と今の変貌ぶりに冷酷さが加わって、主人公の目線に立つと、絶望という文字が浮かび上がり、この先どうなるんだろうと気持ち重めで読んでいました。
隣人の女性も加わり、とにかく女性陣の存在感が凄かったです。これが映画だったら、助演賞を獲るのではと思うくらい、発揮していて、より物語を引き立たせていました。
もちろん男性陣も引き立っていますが、特に陰の部分が際立っていました。ゲス野郎ばかりで、良い意味で腹が立ちました。
後半になると、様々な真相が段々とわかってくるのですが、その事実がため息をつくくらい、残酷なことばかりでした。
それでも生きていく登場人物達には、頑張ってほしいと思いました。それまで、淀んでいた気持ちだった分、最後は冷たさの中に温かみを感じたような気持ちになれました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ個人的に、雪の鉄樹より好きだった。
はじめ、状況がほとんどわからない状態から始まって、藤太とほづみの危なっかしい関係にハラハラさせられる。
居酒屋「まつ」の客と、ほづみ、藤太の三者が、どんどんいい関係を築いていくのと裏腹に、過去の事実が明らかになっていくのが切なかった。
ラストは息を飲むし、涙も止まらなかった。遠田潤子さんの作品を読むのはまだ2作目だけれど、2冊とも、ちょっと自分には考えられないくらい悲惨な人生を歩んでいる人たちばかりが出てきて、感受性が追いつかないことだけが悔しいし、自分の甘さを思い知る。「それでも」生きていく人間の強さを感じる反面、「それでも」生きるしかない人間の辛さから逃げれない作品。 -
Posted by ブクログ
ここのところ、本を手にとってみてもあまり盛り上がらず挫折していたが、
久々にヒットだった。
遠田先生は好みの作風だが、これはなかなか良かった(*^-^*)
雪の鉄樹ほどではないが、何も分からない状況から物語が始まり、
次第に全貌が明らかになってくる手法は、そうだと分かっていても期待感が増してくる。
居酒屋「まつ」を経営する藤太の元へ、中学時代の同級生 秋雄 が少女 ほずみ を連れてくるところから物語が始まっていく。
秋雄とは誰なのか?何者なのか?ほずみとはどういう子供なのか?
全く分からないところから物語は少しずつ進んでいく。
過去の回想、現代、次第に解き明かされていく事実。
絶望の中でも、希望を見出していく少年。
痛い描写が苦手な私には、かなり厳しいところもあったが、全体通して飽きることなく読み進められたので★★★★(*^-^*)
暫く読書スランプだったが、また読みだしてみようかという気にさせてくれた。 -
Posted by ブクログ
相変わらずの遠田節炸裂。思い出したように読みたくなる。本作もそういう意味では軽く及第点。その一方で、同じ系統にちょっと飽きてきたかもしれないのと、多少の粗が気になるのとで、絶賛高評価!って訳にはいかんかった、個人的に。諸事情はさておき、やっぱり主人公たる私と、その母親に対する仕打ちはあんまりぢゃなかろうか。完璧だった父親にも暗い過去やらはあった訳で、その成長過程とかが示される中で、納得していくべきことなんだろうけど…って感じ。とはいえ、他作品においても、偏屈なまでの自己理論で過去を背負う者たちが語られている訳で、本作が特別成り立っていないのではない。結局、個人的にもう、この世界観に慣れてきてしまっているのが一番の原因かも。でもまだ読むけど。
-
Posted by ブクログ
アンチェルの蝶も面白かったがこちらも甲乙つけ難い。錯そうする情と思惑があらゆる人々を不幸にしていく。ハッピーエンドとはいかないがあの二人のこれからに救いが見えたのが良かった。
あらすじ(背表紙より)
歌詞のない旋律を母音のみで歌う「ヴォカリーズ」の歌手として絶大な人気を誇る実菓子。彼女の自伝のインタビューの相手として選ばれたのは、売れないギタリストの青鹿多聞だった。なぜ実菓子は、多聞を指名したのか―2人は幼い頃同じ家で育ち、さらに実菓子の夫は、多聞の亡兄だったからだ。インタビューが進むにつれ、明らかになっていく、おぞましく哀しい出来事。その真実が解き明かされた時、新たな事件が起きる。 -
Posted by ブクログ
大人買いするほどは著作が出ていないため、マイブームになっているとまでは言えないけれど、まちがいなく今いちばん惹かれる作家です。
見初められて身分違いの結婚をした千穂。玉の輿に乗ったはずが、不妊のせいで姑と夫から嫌みを通り越して虐待を受けている。そろばん塾を経営する千穂は、透という若い男と知り合う。算数障害の透に親身になる千穂を見て、浮気を疑う夫。一方、かつて殺人事件で妻を亡くした老人は、殺人犯の息子で死んだはずの少年・麗の面影を持つ透を見かけ、麗と透が同一人物ではないかと考える。
引き込まれ度という点では満点です。主要な登場人物に心から共感できる人柄は出てこないのに、千穂と透の逃避行の行く末がどうなるのか気になり、途中で本を閉じることができません。算数障害というものも初めて知りました。
人は、自分の測りでしかものを見ていない。幸せか不幸せかも本人しかわからないこと。障害に対する無理解に気づかず、いかに自分の尺度でおせっかいを焼いていることか。心に闇を抱える人の役に立てるはずだとの思い込みが、時にその人を苦しめているのだと痛感します。また、報道は必ずしも真実ではないということ。本当にわかってくれている人がわずかでもいればいいんだろうか。辛すぎて、厳しすぎて、読後は呆然。それゆえ、引き込まれ度は満点だけど、好き度の点では悲しすぎてマイナス。
蓮の花がポンポンと音と立てて咲くシーンだけが美しく目に浮かぶ。